AENTRO Research
Initiation Report | 2026年5月11日
サイバー・バズ7069
SNSコミュニケーション基盤の統合力で、マーケティングの「面」を押さえる
No Rating / No Target Price
TSE Growth
Stock Price (2026/5/11 close)Market CapFY2025/09 RevOPMPER (実績)PBREPSDividend
¥786¥3.16B¥7,131M4.9%8.19x4.50x¥95.93¥0
項目FY2021FY2022FY2023FY2024FY2025
売上高百万円3,1724,2685,7577,4627,131
営業利益百万円2144391-1,719350
営業利益率%0.13.46.8-23.04.9
当期純利益百万円-7386205-1,954386
当期純利益率%-2.32.03.6-26.25.4
EPS-19.5422.1652.06-488.2795.93
DPS0.000.000.000.000.00

1. 会社概要

1-1. サマリー

サイバー・バズを単なるSNS広告代理店と見るのは表層的な理解にとどまる。同社の本質は、自社で保有するインフルエンサーネットワーク(NINARY / Ripre / Be One Agent)、自社TikTokメディア(to buy / MYPE)、そしてSNS広告運用ノウハウの三層を統合し、広告主のSNSマーケティングを企画から実行・効果検証まで一貫して担える「SNSコミュニケーション・プラットフォーマー」である。広告代理店が「枠」を売るのに対し、サイバー・バズは「プロダクト」を設計する。また、約3年半前に買収した連結子会社WithLIVEもオンラインプラットフォームというユニークなビジネスモデルを展開している。こうした違いが、広告主のスイッチングコストを高め、競合との差別化を生んでいる。

FY2025/09の連結業績は、売上高7,131百万円(前期比▲4.4%)、営業利益350百万円、経常利益345百万円、純利益386百万円で着地した。売上はわずかに減少したものの、前期にFY2024/09で計上した貸倒引当金繰入額2,202百万円という一過性の衝撃から1年で営業黒字に復帰し、純利益では過去最高益を記録した。営業キャッシュフローも▲934百万円から+273百万円へ転換し、株主資本比率は12.6%から18.8%へ回復している。危機からの復元速度が、同社の収益構造の底堅さを証明したと言える。

変化の方向性も明確だ。2025年6月にデジタルガレージ(以下DG)からセレスへ株式が譲渡され、資本業務提携が締結された。セレス傘下のstudio15(TikTok領域)やAD.TRACK(アフィリエイト)との連携により、従来の「広告モデル」に成果報酬型の「コマースモデル」を加える布石が打たれた。FY2026/09の会社計画では、戦略投資150百万円を費用計上した上で売上高7,700百万円(+8.0%)、営業利益300百万円を見込む。戦略投資控除前の調整後営業利益は450百万円と、実質的には増益基調にある。CVC子会社Buzz Innovationの設立、男性市場特化のMen's B.P.の設立、インフルエンサーアフィリエイト「WESELL」の開始と、攻めの投資フェーズに移行した同社の次の問いは、この統合力を使って具体的にどう稼ぐのか、である。

1-2. 基本情報

項目内容
会社名株式会社サイバー・バズ
証券コード7069(東証グロース)
代表者代表取締役社長 高村 彰典
設立2006年4月
本社東京都渋谷区桜丘町12-10 住友不動産渋谷インフォスアネックス 4-6階
上場日2019年9月(東証マザーズ、現グロース市場)
決算期9月
従業員数202名(連結、2025年9月末)
資本金484百万円
売上高(FY2025)7,131百万円
営業利益(FY2025)350百万円
経常利益(FY2025)345百万円
純利益(FY2025)386百万円
総資産(FY2025)3,108百万円
純資産(FY2025)752百万円
株主資本比率(FY2025)18.8%

出所:有価証券報告書、CompanyFinancialSummaryよりAENTRO Research作成

事業は大きく3セグメントで構成される。売上の93%を占めるSMM(ソーシャルメディアマーケティング)事業が中核であり、インフルエンサーサービス(NINARY / Ripre / Be One Agent)、SNSアカウント運用(BRIDGE / Owgi)、SNS広告(自社TikTokメディアto buy / MYPE等を活用)、インターネット広告販売の4サービスから成る。ライブ配信プラットフォーム事業(子会社WithLIVE)がアーティストとの1対1コミュニケーションを、その他事業がHR領域(BuzzJob)と投資事業(Buzz Innovation)を担う。ミッションは「コミュニケーションを価値に変え、世の中を変える。」で、SNSと自社サービスを媒介に企業と消費者をつなぐ事業の軸は創業以来一貫している。

1-3. 会社の定義

サイバー・バズを理解するには、同社が単に広告主とインフルエンサーを「仲介」する会社ではなく、三つの独自レイヤーを社内に持ち、それらを統合して提供する「プラットフォーマー」である点を押さえる必要がある。

第一のレイヤーはインフルエンサーネットワークだ。自社登録インフルエンサーネットワークの中核となるNINARY、消費者の口コミを創出するサンプリングプラットフォームRipre、著名タレント・クリエイターとのエージェント契約を扱うBe One Agentの3サービスで、SNS上の「発信力」そのものを社内に保有している。これら3サービスを合わせた登録規模は数万名に及ぶ。FY2025のインフルエンサーサービス売上は1,944百万円で、SMM事業の約29%を占めた。

第二のレイヤーは自社メディアだ。TikTok特化型メディア「to buy」は総再生回数10億回超を記録し、講談社ViVi事業部との共同メディア「MYPE」、男性向け「menbase.」も立ち上がった。これらのメディアは広告主への提案において自社トラフィックを提供できるという意味で、媒体社としての側面を持つ。SNS広告はFY2025で3,394百万円とSMM事業最大の売上源だが、その中に自社メディアの広告枠活用が含まれている点が重要である。

第三のレイヤーは広告運用とコンサルティングだ。SNSアカウント運用(BRIDGE)、SNS運用管理ツール(Owgi)、広告審査エージェント、AIレポートツール(DigToc)など、広告主のSNS活用を継続的に支援するサービス群が並ぶ。これにより一過性のキャンペーン受注ではなく、継続的なリテイナー関係を構築できる。

この三層が一社で完結するプレイヤーは国内で限定的だ。広告代理店はネットワークを持たず、インフルエンサー事務所はメディアを運営せず、メディア企業は広告運用ノウハウを持たない。サイバー・バズが「統合」を強みと主張できるのは、この三層のいずれも自社で保有しているからである。

1-4. 沿革

同社の歴史は、サイバーエージェント(以下CA)子会社としての創業期から、独立・上場、成長とM&A、そして危機からの再生と新たな資本提携へと、4つの段階で整理できる。

年月出来事
2006年4月CA100%子会社として設立。渋谷区道玄坂に本社
2006年6月ブロガー向けサービス「CyberBuzz」開始
2010年7月「CyberBuzz」を「Ripre」に改称。SNS全般に拡張
2015年10月Instagramインフルエンサー施策(現NINARY)開始
2017年8月「NINARY」サービス化、SNSアカウント運用開始
2017年12月TikTokメディア「to buy」開始
2018年4月CAがユナイテッド・DGインキュベーションに株式譲渡。CA連結から離脱
2018年12月CA持分法からも離脱。DGが25.2%取得し持分法適用
2019年9月東証マザーズに上場
2020年10月宮崎拠点を母体にソーシャルベース設立
2021年3月HR子会社BuzzJob設立
2021年11月スタイル・アーキテクト完全子会社化
2022年10月WithLIVE完全子会社化
2023年8月スタイル・アーキテクト全株式譲渡(M&A見直し)
2024年1月エージェントサービス「Be One Agent」開始
2024年4月ソーシャルベースで「広告審査エージェント」提供開始
2025年6月DGからセレスへ株式譲渡。セレスと資本業務提携締結
2025年11月Men's B.P.設立、CVC子会社Buzz Innovation設立

出所:有価証券報告書よりAENTRO Research作成

第1段階(CA子会社期、2006〜2018年)では、サイバーエージェントのSNS事業部門として基盤を固めた。ブログ口コミの「CyberBuzz」から出発し、Instagramインフルエンサー(NINARY)、TikTokメディア(to buy)と、SNSプラットフォームの世代交代に合わせてサービスを拡張した。この時期に蓄積したインフルエンサーネットワークとSNS運用ノウハウが、現在の三層構造の土台となっている。

第2段階(独立・上場期、2018〜2019年)は資本構造の転換だ。2018年にCAが段階的に株式を外部へ譲渡し、CAの連結子会社・持分法適用会社から完全に離脱した。代わって株式会社DGが25.2%を取得し、主要株主の座についた。この資本独立を経て、2019年9月に東証マザーズへ上場を果たした。「CAの子会社」という認識は、この時点で事実上の誤りとなっている。

第3段階(成長・M&A期、2020〜2024年)では、宮崎拠点のソーシャルベースやWithLIVEの子会社化で事業領域を拡張した。一方、スタイル・アーキテクトの取得と1年半での全株式譲渡はM&Aの試行錯誤を物語る。FY2024/09には特定取引先の売掛金に対して貸倒引当金2,202百万円を計上し、営業損失▲1,719百万円と創業以来最大の危機に直面した。

第4段階(危機と再生・新提携期、2025年〜)は、危機からの回復と次の成長基盤の構築が同時に進行している。FY2025/09で営業黒字に復帰した同社は、2025年6月にDGからセレスへの株式譲渡と資本業務提携を発表。セレスの都木聡代表取締役社長が社外取締役に就任し、TikTokコマースを軸とした新たな成長シナリオが動き始めた。

1-5. 経営陣

代表取締役社長の高村彰典氏(1974年生まれ、青山学院大学卒)は、1999年にサイバーエージェントに入社し、広告事業本部担当執行役員、同社取締役を歴任した。2006年のサイバー・バズ設立時から取締役を務め、2010年に代表取締役社長に就任している。CA広告事業の中枢を担った経験が、同社のSNSマーケティング事業の根幹を形成した。高村氏は発行済株式の30.0%を保有する筆頭株主でもあり、所有と経営が一致するオーナー経営者だ。

取締役・執行役員の構成は以下のとおりである。

役職氏名背景
代表取締役社長高村 彰典CA出身。2010年〜社長。筆頭株主(30.0%)
取締役膽畑 匡志CA出身。人事本部長・社長室長を経て2021年取締役就任
取締役三木 佑太CA出身。2010年入社(CB出向)、2019年取締役就任
取締役岩田 真一元みずほ銀行、データセクション代表取締役を経て2024年取締役就任。CFO機能
社外取締役蓮見 麻衣子ファンドマネージャー。LINEヤフー社外取締役(監査等委員)兼任
社外取締役都木 聡セレス代表取締役社長。2025年12月就任
監査等委員(社外)都 賢治税理士。税理士法人アルタス代表社員
監査等委員(社外)吉羽 真一郎弁護士。潮見坂綜合法律事務所パートナー
監査等委員(社外)松本 浩介複数上場企業の社外取締役経験者
執行役員佐藤 亮平メディア第2本部・組織づくり本部担当
執行役員岡部 晃彦メディア第3本部担当
執行役員佐々木 空テクノロジー・クリエイティブ本部担当

出所:有価証券報告書よりAENTRO Research作成

経営陣の特徴は3点ある。第一に、常勤取締役4名中3名がCA出身であり、サイバーエージェントのDNA(広告営業力・組織文化)が色濃く残っている。第二に、2024年に就任した岩田真一取締役はみずほ銀行・データセクション出身で、CFO機能の強化を意図した外部招聘とみられる。FY2024の貸倒ショックを経て財務管理体制の刷新が図られた形だ。第三に、2025年12月にセレスの都木聡氏が社外取締役に就任したことで、資本業務提携が取締役会レベルで制度化された。セレスが持分法適用関連会社化する布石であり、両社の協業がガバナンス構造に組み込まれたことを意味する。

1-6. 主要株主・資本構成

出所:有価証券報告書(2025年9月30日基準)よりAENTRO Research作成

株主名所有株式数(株)持株比率
高村 彰典1,205,60030.0%
株式会社セレス770,00019.1%
株式会社サイバーエージェント600,00014.9%
株式会社マイナビ175,0004.4%
株式会社クリア160,0004.0%
株式会社SBI証券89,8132.2%
ユナイテッド株式会社84,4002.1%

出所:有価証券報告書(2025年9月30日基準)よりAENTRO Research作成。持株比率は自己株式控除後

資本構成の変遷は、同社のアイデンティティの変遷そのものだ。2006年の設立時はCAの100%子会社であり、資本金は15百万円に過ぎなかった。2018年にCAが段階的に株式を手放し、DGが25.2%を取得して主要株主となった。この時期、同社はCA系列からDG系列へと事実上の親会社が交代している。

2025年6月に再び大きな転換が訪れた。DGがセレスに当社株式19.14%を譲渡し、セレスが新たな主要株主に就いた。CAは依然14.9%を保有するが、連結・持分法のいずれにも該当せず、純投資に近い位置づけとなっている。現在の株主構成を整理すると、創業者の高村氏(30.0%)が筆頭株主として経営の自律性を確保し、事業パートナーとしてのセレス(19.1%)が第2位、創業母体のCA(14.9%)が第3位という三極構造になっている。

セレスとの資本業務提携は、単なる株式の移動にとどまらない。TikTokコマース支援でのstudio15との連携、アフィリエイト領域でのAD.TRACKとの協業、ポイントサービス「モッピー」とのデータ連携が掲げられており、SNSマーケティング事業のバリューチェーンを成果報酬型コマースへ拡張する戦略的な意味を持つ。セレスの都木聡代表が社外取締役に就任した点を含め、この提携は「資本の入替え」ではなく「事業の接木」として評価すべきだろう。

1-7. コーポレートガバナンス

サイバー・バズは監査等委員会設置会社を採用している。取締役会は取締役6名(うち社外取締役2名)と監査等委員である取締役3名(全員社外)の計9名で構成され、社外取締役比率は55.6%(5名/9名)だ。女性取締役は蓮見麻衣子氏の1名で、女性比率11.1%である。

監査等委員会は社外取締役3名で構成され、税理士(都賢治氏)と弁護士(吉羽真一郎氏)を含む専門家体制を敷く。経営会議は常勤取締役4名と執行役員3名で毎週開催され、取締役会との間で迅速な意思決定とチェック機能の分離を実現している。リスク・コンプライアンス委員会は四半期ごとに開催され、FY2024の貸倒事案を経て、内部統制への意識は組織全体で高まったとみてよい。

会計監査人は和泉監査法人が務める。取締役会は当事業年度に定時12回・臨時1回の計13回開催され、全取締役の出席率はほぼ100%であった。ガバナンス体制としては、グロース市場の同規模企業として標準的な水準にある。

1-8. ESG/サステナビリティ

サイバー・バズのESG評価は、環境面よりも社会(S)とガバナンス(G)に比重が置かれるべき企業だ。ソフトウェア・広告業という事業特性上、CO2排出や資源消費の直接的なインパクトは限定的である。一方、人的資本とコンプライアンスが企業価値に直結する。

人的資本については、従業員の平均年齢29.5歳という若い組織構成の中で、従業員定着率80.0%(目標80%以上)、女性管理職比率31.6%(目標40%以上)という指標を開示している。「えるぼし認定」では最高位の3つ星を2025年2月に取得した。フレックスタイム制度、認可外保育園補助、資格取得支援、社内公募制度など、若手の定着とキャリア形成を支える制度設計が進んでいる。代表取締役社長自らが次世代経営者候補の育成研修を行っている点は、202名規模の組織ならではの直接的な人材投資と言える。

コンプライアンス面では、2023年10月に施行されたステルスマーケティング規制(景品表示法改正)への対応が注目される。同社は子会社ソーシャルベースを通じて「広告審査エージェント」を2024年4月から提供開始した。インフルエンサーのPR投稿に対し、景品表示法やステマ規制の観点から表現チェックを行うサービスだ。インフルエンサーマーケティングを主力事業とする企業がステマ規制対応をサービス化した点は、規制をリスクではなく事業機会に転換する動きとして評価できる。加えて、AIレポートツール「DigToc」やSNS運用管理ツール「Owgi」、AI炎上検知ツール「RiskMill」など、テクノロジーを活用した品質管理・リスク管理の仕組みも構築されつつある。

この章でサイバー・バズの輪郭は定まった。SNSマーケティングの三層統合プレイヤーとして独自のポジションを持ち、FY2024の危機を1年で克服し、セレスとの提携で次の成長基盤を整えた企業像である。では、この統合モデルは具体的にどのような事業構造で収益を生んでいるのか。第2章で事業内容を分解する。

2. 事業内容

2-1. 事業全体像

サイバー・バズの事業を理解するうえでまず重要なのは、同社を単なる「SNS広告代理店」として捉えないことである。同社の本質は、自社で保有するインフルエンサーネットワーク(NINARY / Ripre / Be One Agent)、自社TikTokメディア(to buy / MYPE)、SNS広告運用ノウハウの三層を統合し、広告主のSNSマーケティングを企画から実行・効果検証まで一貫して担える「SNSコミュニケーション・プラットフォーマー」である。

FY2025/09の売上高7,131百万円は、3つの報告セグメントから構成される。

セグメント売上高 (百万円)構成比セグメント利益 (百万円)
SMM事業6,61092.7%1,187
ライブ配信PF事業4235.9%29
その他971.4%22
全社合計7,131100.0%350

出所:決算短信よりAENTRO Research作成。FY2025/09連結。営業利益は正本値350百万円

出所:決算短信よりAENTRO Research作成。FY2025連結

売上の93%を占めるSMM事業がこの会社のすべてであるかのように映るが、その中身は4つの異なるサービスに分かれ、それぞれ収益モデルが異なる。ここを解像度高く見なければ、同社の粗利構造も成長ドライバーも読み間違える。以下、SMM事業の4サービスを一つずつ分解し、その後ライブ配信PF事業、その他事業、そして全体を貫く収益モデルと競争優位を順に見ていく。

2-2. SMM事業 ― インフルエンサーサービス

SMM事業のインフルエンサーサービスは、同社の原点であり、事業全体の「仕込み層」に当たる。FY2025/09の売上高は1,944百万円で、SMM事業内の構成比は29.4%だった。

このサービスは3つのプロダクトで構成されている。第一に、NINARY。自社登録インフルエンサーネットワークの中核で、広告主の商材に合わせて同社がキャスティングを行い、インフルエンサーが体験・感想をSNSに投稿する。会員の9割はサイバー・バズ側からのスカウトで構成されており、質の管理を重視した設計になっている。NINARY、Ripre、Be One Agentを合わせた同社のインフルエンサーネットワーク全体の登録規模は数万名に及ぶ。第二に、Ripre。サンプリングを起点とした口コミ・モニターサイトで、承認制のプレミアム会員と登録制のスタンダード会員の二層構造を持つ。NINARY会員への報酬支払いがある一方、Ripre会員への報酬はなく、商品提供のみで口コミを生成するモデルのため、インフルエンサーサービス全体の粗利率を下支えする役割がある。第三に、Be One Agent。2024年に開始したSNS特化のタレント・クリエイターエージェントサービスで、著名タレントやクリエイターとエージェント契約を締結し、SNS案件の獲得とアカウント運用をサポートする。

サービスFY2024/09FY2025/09YoY
インフルエンサーサービス (百万円)2,1971,944△11.5%

出所:決算説明資料よりAENTRO Research作成。FY2024は新区分ベースの2,211百万円を参照、但しFY2025の通期値1,944百万円は決算説明資料のKPI実績値

FY2025/09の通期では前年比減収となった。主因は大型案件の反動減であり、四半期推移を見ると4Q単独では528百万円と前年同期比24.9%増に回復している。投資家が注視すべきは、Be One Agentのような高付加価値サービスの浸透が、キャスティング領域の単価をどこまで引き上げるかだ。インフルエンサーサービスは媒体費を伴わない純粋な企画・キャスティング収入であるため、同社のサービスラインの中では粗利率が最も高い。売上規模ではSNS広告に劣るが、利益貢献では中核的な位置にある。

2-3. SMM事業 ― SNS広告

SNS広告は、FY2025/09の売上高3,394百万円でSMM事業内最大のサービスである。構成比は51.3%に達し、同社の売上成長を量的に牽引してきた。

このサービスの本質は、ソーシャルメディアプラットフォーム(TikTok、Instagram、X等)上の運用型広告と、同社が自社で運営するTikTokメディア「to buy」を活用した広告配信の二本立てだ。to buyは「編集部が本当に使ってよかったもの」を紹介する縦型ショート動画メディアで、累計再生回数は10億回を超える。生活者のコメントにおける商品言及率や完全視聴率が高い点が広告主に評価され、タイアップ実績は累計100ブランドを超えた。2025年には講談社ViVi事業部との共同で次世代メディア「MYPE」もローンチし、メディアアセットの幅を広げている。

サービスFY2024/09FY2025/09YoY
SNS広告 (百万円)3,2433,394+4.7%

出所:決算説明資料よりAENTRO Research作成

ここで重要なのは、SNS広告の売上構造が「媒体費スルー型」を含む点にある。広告主から受領する金額には、SNSプラットフォームへ支払う媒体費が含まれる。同社はその媒体費を差し引いた運用手数料とクリエイティブ制作費を実質的な収入としている。売上が大きく見える一方、粗利率はインフルエンサーサービスより構造的に低い。全社の売上総利益率がFY2022の49.4%からFY2025の37.8%へ趨勢的に低下してきた最大の理由は、このSNS広告の構成比上昇にある。売上成長と粗利率低下のトレードオフは、同社の収益構造を読むうえで最も重要な論点の一つだ。

4Qの動きも確認しておく。FY2025/09 4QのSNS広告売上は962百万円で前年同期比18.7%増。TikTokに加え、XやInstagramの広告配信も伸びており、媒体の分散が進んでいる。

2-4. SMM事業 ― SNSアカウント運用

SNSアカウント運用は、FY2025/09の売上高542百万円。構成比8.2%と規模は小さいが、同社のサービスラインの中で唯一、月額課金型のストック収益を持つ点が特徴的だ。

サービスの中身は、広告主の公式SNSアカウント(Instagram、X、TikTok、LINE等)の運用代行である。アカウント開設から投稿企画、コンテンツ制作、効果検証までを一気通貫で請け負い、原則半年以上の契約で月額課金を行う。加えて、SNS運用管理ツール「Owgi」を展開し、投稿管理からレポート抽出までをワンストップで提供している。

サービスFY2024/09FY2025/09YoY
SNSアカウント運用 (百万円)764542△29.1%

出所:決算説明資料よりAENTRO Research作成。FY2024は新区分ベース

FY2025/09は前年比29.1%の減収となり、4サービスの中で最も落ち込みが大きかった。会社は生産性を意識した運用体制の見直しにより、取引案件の選別を進めた結果だと説明している。当社としてはこの見方を受け入れつつも、TikTokアカウント運用の構築やショートムービー領域への展開で巻き返しを図る必要があるとみる。

このサービスのオペレーションを支えているのが、宮崎拠点の子会社ソーシャルベースだ。投稿作成、ハッシュタグ設計、コメント監視、レポート作成、キャンペーン事務局運営、PR投稿の広告審査(薬機法・景表法チェック含む)といった作業を、独自のオペレーションスキームで高速に処理する。東京の企画・コンサルティング機能と宮崎のBPO機能を分離した体制は、労務コストの最適化とオペレーション品質の標準化を同時に実現する設計であり、後述する競争優位の一角をなしている。

2-5. SMM事業 ― インターネット広告販売

インターネット広告販売は、FY2025/09の売上高729百万円。SMM事業内の構成比は11.0%で、ソーシャルメディア関連広告を中心としつつ、マスメディア連動の広告商品も扱う広告全般の販売サービスである。

サービスFY2024/09FY2025/09YoY
インターネット広告販売 (百万円)996729△26.8%

出所:決算説明資料よりAENTRO Research作成

FY2025/09は前年比26.8%の減収。特定の広告商品(マスメディア関連を含む)の案件減少が主因である。会社はこの領域でショート動画メディアの広告商品化を推進する方針を打ち出しており、従来の「他社広告商品の販売」から、自社メディアのコンテンツ力を活かした商品設計への転換を図っている。

なお、セグメント分類の経緯について補足しておく。FY2024/09までは「インターネット広告販売」の中にSNS広告関連の売上も含まれていたが、FY2025/09からSNS広告を別掲する新区分に移行した。同社が注力するSNS広告を明示的に可視化する意図だが、時系列比較の際にはこの区分変更を考慮する必要がある。

2-6. ライブ配信プラットフォーム事業(WithLIVE)

ライブ配信プラットフォーム事業は、連結子会社WithLIVEが運営する。FY2025/09の売上高は423百万円(前年比20.6%増)、セグメント利益は29百万円だった。

WithLIVEの事業はBtoB面とBtoC面の二面構造を持つ。BtoB面は、レコード会社やタレントプロダクションに対し、有名アーティスト・タレントとファンをつなぐオンラインイベントのソリューションを提供する。電子チケットの発行からイベント開催、グッズ販売までをオンラインで一気通貫に請け負う。BtoC面は、WithLIVEアプリ上でファンとアーティストが1対1で対話できるオンライントーク、アーティストとコラボしたオンラインくじなどのサービスだ。

セグメントFY2024/09FY2025/09YoY
ライブ配信PF事業 (百万円)350423+20.6%

出所:決算短信よりAENTRO Research作成

FY2025/09は、BtoB向けのオンラインイベント受注伸長とBtoC向けのオンラインくじ施策が奏功し、通期で20.6%の増収を達成した。加えて、オフラインイベントにおける電子チケット事業の利用拡大や、独自の抽選システムの導入拡大により、「推し活における特典会のDX」を一気通貫で手がけるようになった点が、従来と異なる成長ドライバーとなっている。

全社売上に占める比率は5.9%と小さいが、SMM事業とは顧客層(エンタメ業界)も課金モデル(チケット・くじのBtoC課金)も異なるため、収益源の分散に寄与している。会社はFY2026/09に480百万円(前年比13.4%増)の売上を見込んでおり、安定成長が続く見通しだ。

2-7. その他事業(BuzzJob等)

その他事業は、FY2025/09の売上高97百万円、セグメント利益22百万円。主力は連結子会社BuzzJobが展開するHR事業で、SNS・デジタルマーケティング人材に特化した転職支援サービスと、プロコーチによる1on1コーチングサービス「ONEサポ」を提供する。

FY2025/09の実績は前年比3.7%増にとどまるが、前年のセグメント損失71百万円から黒字転換(+22百万円)を果たした点は注目に値する。中途人材紹介の人数・単価がともに改善した。

加えて、FY2025/09期末以降、この「その他」セグメントの顔ぶれは変わりつつある。2025年11月にはメンズ領域に特化したSNSマーケティング子会社Men's B.P.を設立。男性美容やセルフケア市場の拡大を見据え、自社TikTokメディア「menbase.」の運用やインフルエンサーキャスティングを展開する。同月にはCVC子会社Buzz Innovationも設立し、事業シナジーを見込めるアーリーステージ企業への投資を開始した。いずれも売上貢献は来期以降だが、同社が「SNSマーケティング周辺の新規事業を子会社形態で素早く立ち上げる」という行動パターンを持つことは押さえておくべきだ。

2-8. 収益モデル

ここまで見てきた7つのサービス・事業を、課金形態の視点で整理し直す。

課金形態該当サービスストック性
企画・キャスティング報酬(案件単位)インフルエンサーサービスフロー
媒体費+運用手数料(案件単位)SNS広告、インターネット広告販売フロー
月額課金(半年以上の継続契約)SNSアカウント運用ストック
SaaS利用料Owgi、DigTocストック
チケット・くじ販売(BtoC)WithLIVEフロー
イベントソリューション(BtoB)WithLIVEフロー
人材紹介手数料BuzzJobフロー

出所:有価証券報告書・決算説明資料よりAENTRO Research作成

この一覧から読み取れる構造は、売上の大部分がフロー型であるということだ。SNS広告(3,394百万円)とインフルエンサーサービス(1,944百万円)を合わせたフロー収入が売上の75%を占める。ストック性のあるSNSアカウント運用は542百万円で全社の7.6%にすぎない。収益の安定性という点では、広告代理業の特性が色濃く残っている。

粗利構造についても確認しておく。全社の売上総利益率はFY2022の49.4%からFY2025の37.8%へ、4年間で11.6ポイント低下した。この変化を説明する最大の要因は、SNS広告の構成比拡大である。SNS広告は媒体費をスルーする構造上、売上に対する粗利率が低い。インフルエンサーサービスやSNSアカウント運用は自社の企画力・人的リソースが直接の対価であるため粗利率が高いが、成長速度ではSNS広告が圧倒する。結果として、売上の成長と粗利率の低下が併走するミックスシフトが進んできた。

FY2025/09のセグメント別利益を見ると、SMM事業のセグメント利益は1,187百万円だが、全社費用(本社管理部門等)889百万円を差し引いた連結営業利益は350百万円となる。全社費用の大半は人件費(1,187百万円)とその他販管費で構成されており、SMM事業の粗利がそのまま会社の利益に落ちるわけではない。

2-9. 競争優位

サイバー・バズの競争優位は、以下の4点に集約できる。

第一に、インフルエンサーネットワーク、自社メディア、広告運用の三層を一社で統合している点。広告主に対し、「インフルエンサーによる認知拡大→自社メディアでのコンテンツ拡散→SNS広告での刈り取り」というファネル全体を一括で設計・提案できる。この統合力は、広告主から見れば複数の専門ベンダーを使い分ける手間を省くスイッチングコストの源泉であり、同社から見れば案件あたりの提案幅を広げるクロスセルの基盤になる。国内でこの三層を自前で保有するプレイヤーは限られている。

第二に、自社インフルエンサーネットワークの規模と質。NINARYは数万名規模の登録会員を抱え、9割がサイバー・バズ側からのスカウトで構成される。Ripreも承認制のプレミアム会員と登録制のスタンダード会員を分け、品質管理を制度化している。このネットワークは一朝一夕に構築できるものではなく、後発が追随するには時間がかかる。加えて、Be One Agentによるタレント・クリエイターとのエージェント契約は、インフルエンサーの囲い込みをさらに強化する動きだ。

第三に、自社メディアの集客力。to buyはTikTokでの累計再生回数が10億回を超え、タイアップ実績は100ブランド超。2025年には講談社との共同メディアMYPEもローンチした。自社メディアを持つことで、同社は「広告枠を買う側」から「広告枠を売る側」にもなれる。広告代理店が通常は外部メディアに支払う媒体費の一部を自社に取り込むことができるため、粗利構造の改善余地を内包している。

第四に、宮崎BPO子会社ソーシャルベースによるオペレーション品質。SNSアカウント運用、広告審査(薬機法・景表法チェック)、キャンペーン事務局運営といった反復性の高い業務を、地方拠点の専門チームが標準化されたスキームで処理する。東京の企画機能と宮崎のオペレーション機能を地理的に分離した体制は、コスト効率とサービス品質を両立する仕組みであり、同社のサービス提供能力のスケーラビリティを支えている。

2-10. 事業上の主要論点

以上を総括すると、サイバー・バズの事業構造は「インフルエンサー×メディア×広告運用の三層統合」という軸で明確に整理できる。SMM事業の4サービスはそれぞれ異なる収益モデルを持ちながらも、広告主のSNSマーケティング課題を複合的に解決するパッケージとして機能している。

事業上の最大の論点は、売上成長と粗利率低下のトレードオフをどう管理するかだ。SNS広告の構成比が高まるほど売上は伸びるが、媒体費スルー型の構造上、粗利率は下がる。FY2022の49.4%からFY2025の37.8%への低下は、収益構造の質的変化を示している。この傾向を反転させるには、自社メディア経由の広告販売比率の引き上げか、インフルエンサーサービスの高付加価値化が必要になる。同社がto buyやMYPEに投資を続ける理由は、ここにある。

では、この三層統合の事業構造を武器に、同社はどこに向かおうとしているのか。次章では、TikTokコマースへの参入、セレスとの資本業務提携、CVC設立など、FY2026以降の成長戦略を検討する。

3. 経営戦略

3-1. 戦略の全体像

サイバー・バズの経営戦略を「目先の施策の寄せ集め」と読むのは、構造を見誤る。FY2024の貸倒ショックから1年で営業利益350百万円への黒字回復を果たし、同社はいま明確に「危機対応フェーズ」から「攻めの投資フェーズ」へギアを切り替えた。その戦略は一言でいえば、SNS広告の代理販売で稼いだキャッシュフローを、成果報酬型のSNSコマースという新しい収益軸に転換する試みである。

会社は2026年9月期に戦略投資150百万円を個別予算として計上し、調整後営業利益450百万円(前期比+29%)を確保したうえで投資を実行するとしている。つまり本業の稼ぐ力を先に証明し、その余力で次の仕掛けを打つ設計だ。CVC子会社Buzz Innovationの設立、TikTok Shop参入、セレスとの資本業務提携、メンズ特化子会社Men's B.P.の新設。個々の打ち手だけを見ると散漫にも映るが、すべて「SNS上のコミュニケーションを、購買行動まで接続する」という一本の軸に収斂している。

3-2. 市場環境と市場機会

同社が成長を仕掛ける土壌は構造的に拡大している。サイバー・バズとデジタルインファクトの共同調査によれば、国内ソーシャルメディアマーケティング市場は2023年に1兆669億円、2024年に1兆2,038億円へ達し、2029年には2兆1,313億円まで成長する見通しだ。CAGR約12%の市場成長は、同社の売上成長率(FY2026会社予想+8.0%)を十分に下支えする水準である。

SMM市場規模 (億円)インフルエンサーマーケティング市場 (億円)
20229,317615
202310,669739
202412,038860
2025E13,732995
2029E21,3131,645

出所:サイバー・バズ/デジタルインファクト「2024年 国内ソーシャルメディアマーケティングの市場動向調査」よりAENTRO Research作成

とりわけ注目すべきはインフルエンサーマーケティング市場の伸びだ。2022年の615億円から2029年には1,645億円と約2.7倍に膨らむ見通しで、このうちTikTok関連は110億円から570億円へ5倍以上に拡大すると推計されている。同社がTikTokコマースに賭ける背景には、この媒体別成長率の傾斜がある。

もう一つの構造変化がTikTok Shopの日本上陸だ。中国・東南アジアで先行したTikTokコマースは、コンテンツ視聴からそのまま購買に至る「発見型コマース」として既存ECと異なる購買導線を作り出した。日本市場でも本格始動したことで、広告費を払って「認知」を獲得するモデルから、コンテンツ経由で直接「購買」を獲得するモデルへの移行が加速しうる。同社のSMM事業にとって、これは広告収入に加えて成果報酬型の取り分を得る新たな収益機会を意味する。

3-3. 成長戦略の基本骨格

同社の成長戦略は3層構造で整理できる。

第一層は既存深耕だ。SMM事業の4サービス(インフルエンサーサービス、SNSアカウント運用、SNS広告、インターネット広告販売)の着実な成長を土台とする。FY2026会社予想ではSMM事業売上を7,420百万円(前期比+12.2%)と置いており、市場成長率とほぼ同水準の成長を見込む。なかでもインフルエンサーサービスはFY2025 4Qに前年同期比+24.9%と回復が鮮明で、キャスティング領域の拡大やBe One Agentの浸透が寄与している。SNS広告もFY2025 4Qに前年同期比+18.7%と堅調だ。

第二層は横展開である。ここに含まれるのは、セレスとの資本業務提携による顧客基盤の相互活用、Men's B.P.による男性市場への参入、講談社との共同メディアMYPEによる新規メディア開発だ。いずれも同社が持つSNSマーケティングの実行力を、従来手薄だった顧客セグメントや媒体に広げる取り組みである。

第三層が縦展開、すなわちバリューチェーンの川下への進出だ。WESELLによるインフルエンサーアフィリエイト、TikTok Shop導入支援、CVC投資がここに該当する。広告主の「認知獲得」を支援するだけでなく、「購買成果」にまでコミットし、成果報酬を収益化する方向への転換である。

施策狙い
既存深耕SMM事業4サービスの成長市場成長率並みの安定成長、利益基盤の維持
横展開セレス提携、Men's B.P.、MYPE顧客基盤・ターゲット層の拡張
縦展開WESELL(アフィリエイト)、TikTok Shop支援(コマース)、CVC広告→成果報酬型への収益モデル転換

出所:決算説明資料よりAENTRO Research作成

重要なのは、この3層が時間軸で区切られていない点だ。既存深耕で利益を稼ぎながら、横展開と縦展開を同時並行で走らせる。FY2026の戦略投資150百万円はこの第二層・第三層への資金配分であり、調整後営業利益450百万円という第一層の稼ぎが投資の原資になる構図である。

3-4. TikTok戦略

縦展開の中核がTikTok戦略だ。同社は2025年9月にインフルエンサーアフィリエイトサービス「WESELL」の提供を開始した。WESELLはコマース戦略ではなくアフィリエイト領域に位置付けられるサービスで、インフルエンサーがSNS投稿にアフィリエイトリンクを設置し、商品を紹介・販売する。広告主は成果発生時のみ費用を支払う完全成果報酬型だ。

この成果報酬モデルは、同社にとって収益構造の質的な転換を意味する。従来のSNS広告は媒体費のスルー型で、売上は伸びても粗利率は構造的に下がりやすかった。実際、売上総利益率はFY2022の49.4%からFY2025の37.8%まで低下している。成果報酬型であれば媒体費の中抜きではなく、成約に対するテイクレートが収益源となるため、粗利率の改善余地が生まれる。

TikTok Shop参入においては、クロスシーとの業務提携が実行基盤を補完する。クロスシーは中国・東アジアでのライブコマース支援実績を持ち、TikTok Shop Partner(TSP)として国内登録済みだ。同社のSNS広告運用力・インフルエンサーネットワークと、クロスシーのコマース運営ノウハウを組み合わせ、出店準備から販促戦略、ライブ配信企画、効果測定までを一貫で支援する体制を構築するとしている。

ここで見るべきは、WESELLとTikTok Shop支援が補完関係にある点だ。WESELLはインフルエンサー側のアフィリエイト収益化、TikTok Shop支援は広告主側の出店・販促支援であり、両面からコマースのエコシステムを押さえにいく。同社が数万名規模の自社インフルエンサーネットワーク(NINARY / Ripre / Be One Agent)と自社TikTokメディア(to buy、総再生10億回超)を保有している事実は、このTikTok戦略においてコンテンツ供給力と販売チャネルの双方を自社で調達できることを意味する。

3-5. セレス提携と資本政策

2025年6月、同社はセレス(3696)との資本業務提携を締結した。セレスが19.1%を保有する第2位株主となり、社外取締役1名の派遣も予定されている。

提携の実質は3つの事業接続に分解できる。第一に、セレス連結子会社studio15との連携によるTikTokコマース支援領域でのリーディングポジション確立。studio15はTikTokクリエイターマネジメントの知見を持ち、同社のインフルエンサーネットワークと組み合わせることで、コマース領域でのクリエイター供給力が厚くなる。第二に、セレスが運営するアフィリエイトプラットフォーム「AD.TRACK」との協業だ。WESELLの顧客接点をAD.TRACKの広告主ネットワークで拡張する狙いがある。第三に、国内最大級のポイントサービス「モッピー」とのプロダクト連携で、SNSデータとポイント経済圏を接続する構想である。

投資家の視点でみると、この提携は「持分法適用関連会社化」という資本関係の変化を含む点が重要だ。セレスの取締役派遣と議決権比率を合わせれば、同社はセレスの持分法適用関連会社となる見通しであり、セレス側にとっても同社の業績がPLに反映される関係になる。資本の紐帯があるからこそ、表面的なアライアンスにとどまらない事業統合が進む可能性がある。ただし裏を返せば、セレスの経営方針や業績変動が同社の株主構成や意思決定に影響しうるリスクも内包する。

3-6. 投資計画と人材戦略

FY2026の戦略投資150百万円は、事業投資、M&A、CVC投資の3カテゴリに配分される。

事業投資は新規事業およびサービス開発、マーケティング強化に充てる。M&Aは事業ポートフォリオの拡大と成長加速を狙い、CVC投資はBuzz Innovationを通じたアーリーステージ企業への出資を基本方針とする。会社はこの150百万円を販管費として計上するため、表面上の営業利益は300百万円(前期比-14.2%)と減益に映る。しかし戦略投資控除前の調整後営業利益は450百万円で、前期の350百万円から+29%の増益となる設計だ。

項目 (百万円)FY2025実績FY2026予想増減率
売上高7,1317,700+8.0%
営業利益350300-14.3%
(参考)調整後営業利益350450+28.6%
戦略投資予算---150---

出所:決算短信・決算説明資料よりAENTRO Research作成

人員計画では、FY2025末の202名からFY2026に229名への増員を予定する。増加の27名は、事業拡大と体制強化に向けた「生産性向上を意識した適材適所の採用」と位置付けられている。一人当たり売上高はFY2025で35.3百万円だが、FY2026に229名で売上7,700百万円を達成すれば33.6百万円と若干低下する計算になる。新規領域への先行投資的な人員配置が含まれるためで、この生産性指標がFY2027以降に改善に転じるかが中期的な論点になる。

3-7. 戦略の優先順位と今後の論点

総じて、サイバー・バズの経営戦略は「SNS広告代理から、SNSコマースのプラットフォーマーへ」という構造転換を、既存事業の稼ぎを毀損せずに実行しようとする試みだ。投資家にとっての確認事項は3点に絞られる。第一に、WESELLとTikTok Shop支援が実際に成果報酬型の売上として立ち上がるか。第二に、セレスとの事業接続がクロスセル実績として可視化されるか。第三に、戦略投資150百万円が翌期以降の利益成長として回収できるか。これらはいずれもFY2026下期以降に初期的な検証が可能となる論点であり、短期の表面減益よりも、仕掛けた種の発芽速度に注目すべきだ。

4. 業績動向

4-1. 直近5年の経営成績

サイバー・バズの業績を「赤字企業」として括るのは、FY2024/09の一過性要因を通常の収益力と混同する誤読である。FY2024/09に計上された貸倒引当金繰入額2,202百万円を除けば、同社の本業は5期を通じて黒字基調を維持しており、FY2025/09にはわずか1年で営業利益350百万円、営業利益率4.9%まで回復した。この復元の速さこそが、同社の収益構造が持つ底堅さを最も端的に証明している。

科目(百万円)FY2021/09FY2022/09FY2023/09FY2024/09FY2025/09
売上高3,1724,2685,7577,4627,131
売上総利益2,1102,5212,9012,694
売上総利益率49.4%43.8%38.9%37.8%
販管費1,9662,1304,6212,345
営業利益2144391△1,719350
営業利益率0.1%3.4%6.8%△23.0%4.9%
経常利益4172412△1,712345
親会社株主に帰属する当期純利益△7386205△1,954386

出所:有価証券報告書、決算短信よりAENTRO Research作成

出所:会社開示資料よりAENTRO Research作成

FY2021/09からFY2023/09までの3期間は、売上高が3,172百万円から5,757百万円へ年率約35%で拡大し、営業利益も2百万円から391百万円へ急伸した。SNS広告需要の拡大とインフルエンサーサービスの浸透が重なり、トップライン成長と利益率改善が同時に進んだ時期である。

FY2024/09は、この成長軌道が一時中断した年だ。売上高は7,462百万円と前年比+29.6%の過去最高を記録したが、第2四半期に特定取引先の売掛金約22億円に対して全額の貸倒引当金を計上し、販管費が4,621百万円に膨張した。結果、営業損失1,719百万円、当期純損失1,954百万円と大幅な赤字に転落した。ただし、この損失の本質は本業の収益力悪化ではなく、与信管理上の一過性事故である。FY2024/09のNon-GAAP営業利益(貸倒引当金繰入額・のれん等償却費用・株式報酬費用を控除前)は624百万円と、前年の555百万円から+12.4%の増益だった。

FY2025/09は復元の年である。貸倒引当金の影響が消失し、販管費は2,345百万円へ正常化した。売上高は7,131百万円と前年比△4.4%の減収となったが、これはインフルエンサーサービスにおける前期大型案件の反動減が主因であり、SNS広告は通期で3,394百万円と堅調に推移した。営業利益350百万円への黒字転換に加え、特別利益(投資有価証券売却益53百万円等)と税効果の寄与により、当期純利益は386百万円と過去最高を記録した。

4-2. 収益構造の変化と利益率の見方

出所:会社開示資料よりAENTRO Research作成

売上総利益率はFY2022/09の49.4%からFY2025/09の37.8%へ、4期で11.6ポイント低下した。この数字だけを見れば収益力の劣化に映るが、実態はそうではない。粗利率低下の主因は、SNS広告の売上構成比が上昇したことにある。

サイバー・バズのSMM事業は4つのサービスで構成されるが、それぞれの粗利率特性は大きく異なる。インフルエンサーサービス(NINARY、Ripre、Be One Agent)やSNSアカウント運用は自社リソースを活用するため粗利率が相対的に高い。一方、SNS広告やインターネット広告販売は媒体費がスルーで計上されるため、売上規模は大きいが粗利率は低くなる。FY2025/09のサービス別売上を見ると、SNS広告が3,394百万円でSMM事業の51.3%を占めており、FY2023/09以前と比較して構成比が明らかに上昇している。

サービス(百万円)FY2025/09 通期構成比
インフルエンサーサービス1,94429.4%
SNSアカウント運用5428.2%
SNS広告3,39451.3%
インターネット広告販売72911.0%
SMM事業合計6,610100.0%

出所:決算説明資料よりAENTRO Research作成

したがって、粗利率の低下を「収益力の悪化」と読むのは正しくない。正しい読み方は、「媒体費スルー型の売上が増えたことで見かけの粗利率は下がったが、粗利額の絶対水準は2,694百万円と依然として高く、同社はSNSマーケティングの総合窓口として売上の面を広げている」というものだ。粗利額ベースでの推移は、FY2022/09の2,110百万円→FY2023/09の2,521百万円→FY2024/09の2,901百万円→FY2025/09の2,694百万円と、FY2024/09のピーク対比では減少しているが、FY2023/09対比では+6.9%の水準を維持している。

販管費の内訳では、FY2025/09の人件費が1,187百万円(前年1,123百万円、+63百万円)と増加した一方、その他販管費は1,157百万円(前年1,294百万円、△137百万円)へ減少した。構造改革費用の一巡、本社移転関連コストの消失、減価償却費の逓減が寄与しており、コスト構造は正常化している。売上高販管費率は32.9%とFY2024/09の61.9%(貸倒込み)から大幅に改善し、FY2023/09の37.0%をも下回った。

4-3. 財政状態と資本効率

FY2024/09の貸倒ショックは、PLだけでなくBSにも深い傷を残した。株主資本比率はFY2023/09の44.3%からFY2024/09に12.6%まで急落し、利益剰余金は△739百万円の赤字に転じた。FY2025/09はその修復に充てた1年であり、株主資本比率18.8%、純資産752百万円への回復は、同社が財務危機から着実に脱しつつあることを示している。

科目(百万円)FY2022/09FY2023/09FY2024/09FY2025/09
総資産2,6185,1012,7833,108
流動資産2,2134,3501,6362,483
固定資産4057511,147625
負債合計6242,8432,4302,356
純資産合計1,9932,258352752
株主資本比率76.1%44.3%12.6%18.8%
BPS(円)491.86538.7650.18145.44

出所:有価証券報告書および決算短信より AENTRO Research 作成

BS推移を読むうえで、FY2023/09のバランスシート膨張にも注意が必要だ。総資産が前期2,618百万円から5,101百万円へ急拡大した背景には、売上債権の増加(697百万円→2,896百万円)と買入債務の増加(369百万円→1,911百万円)がある。これはFY2024/09に貸倒の原因となった大口取引の拡大を反映しており、資産膨張と与信リスクが表裏一体だったことを示唆する。FY2025/09末の売上債権は1,030百万円、買入債務は841百万円と適正な水準に戻った。

資本効率の面では、ROEはFY2024/09に△149.7%と大きく毀損したが、FY2025/09は69.9%へ急回復した。もっとも、この高ROEは純資産が小さい状態で利益が回復したことによる数値的な効果であり、構造的に持続する水準ではない。ROAも13.1%と高水準だが、同様の文脈で割り引いて見るべきである。自己資本が回復するにつれ、ROEは20〜30%台へ収斂していくと見るのが妥当だ。

4-4. キャッシュフローと財務運営

キャッシュフローの改善はPLの黒字転換以上に重要なシグナルである。営業CFはFY2024/09の△934百万円からFY2025/09の+273百万円へ、1,207百万円の改善を達成した。

科目(百万円)FY2022/09FY2023/09FY2024/09FY2025/09
営業活動によるCF226△71△934273
投資活動によるCF△157△471△652433
財務活動によるCF6945374942
FCF69△542△1,586706
期末現金残高1,4541,3665291,277

出所:有価証券報告書および決算短信より AENTRO Research 作成

FY2025/09の営業CFの内訳は、税金等調整前当期純利益400百万円、減価償却費85百万円、仕入債務の増加132百万円が主な増加要因であり、法人税等の支払額204百万円、未払消費税等の減少133百万円が主な減少要因だった。利益が着実にキャッシュに転換されている。

投資CFが+433百万円のプラスとなった点も注目に値する。主因は敷金及び保証金の回収392百万円で、FY2024/09の本社移転に伴い差し入れた敷金の返還を受けたものだ。投資有価証券の売却収入53百万円も寄与した。通常の事業投資としてのキャッシュアウトはごく限定的であり、FY2025/09は投資よりも財務体質の修復を優先した年だったと読める。

財務面では、FY2024/09に緊急調達した短期借入金850百万円のうち350百万円を返済する一方、財務基盤の安定化を目的に社債300百万円を新規発行し、長期借入金も200百万円を調達した。短期の借入を長期の調達に置き換える「財務の長期化」が進んだ。FY2025/09末の有利子負債残高は1,216百万円(短期借入金500百万円、社債300百万円、長期借入金416百万円)で、ネット有利子負債は△61百万円と実質無借金に近い水準まで改善した。現預金1,277百万円は月商の約2.1ヶ月分に相当し、流動性も十分に確保されている。

4-5. 直近四半期の概要

FY2025/09 4Q(2025年7〜9月)は、回復基調が加速した四半期だった。連結売上高は1,957百万円(前年同期比+12.7%)、営業利益は155百万円(前年同期22百万円、+596.2%)と、売上・利益ともに前年を明確に上回った。

科目(百万円)FY2024/09 4QFY2025/09 4QYoY
売上高1,7361,957+12.7%
売上総利益649707+8.8%
売上総利益率37.4%36.2%△1.3pt
営業利益22155+596.2%
経常利益23148+539.6%
当期純利益27280+930.6%

出所:決算説明資料よりAENTRO Research作成

セグメント別では、主力のSMM事業が1,841百万円(前年同期比+14.0%)と牽引した。サービス別に見ると、インフルエンサーサービスが528百万円(+24.9%)、SNS広告が962百万円(+18.7%)と二本柱がともに伸長した。3Qまでは前期大型案件の反動減や案件の期ずれが影響していたが、4Qで正常化し、成長軌道への復帰が確認された。

営業利益155百万円は、FY2023/09 4Qの136百万円を上回り、貸倒ショック以前の水準を超えた。一過性要因のない平時の収益力として、四半期150百万円台の営業利益を安定的に確保できるかが、今後のモニタリングポイントとなる。

4-6. 通期見通し

FY2026/09Eの会社ガイダンスは、売上高7,700百万円(前年比+8.0%)、営業利益300百万円(同△14.2%)、経常利益285百万円(同△17.4%)、当期純利益185百万円(同△52.1%)である。表面上は減益予想だが、その読み方には注意が必要だ。

会社はFY2026/09Eにおいて、戦略投資予算として150百万円を費用計上する方針を示している。この戦略投資を控除する前の調整後営業利益は450百万円であり、FY2025/09実績の350百万円に対して+28.7%の増益となる。戦略投資の内訳は、(1)新規事業及びサービス開発への事業投資、(2)事業ポートフォリオ拡大のためのM&A、(3)CVC子会社(Buzz Innovation)を通じたアーリーステージ企業への出資、の3領域である。

科目(百万円)FY2025/09 実績FY2026/09E 予想YoY
売上高7,1317,700+8.0%
営業利益350300△14.2%
(参考)調整後営業利益450+28.7%
経常利益345285△17.4%
当期純利益386185△52.1%

出所:決算短信、決算説明資料よりAENTRO Research作成

セグメント別では、SMM事業が7,420百万円(+12.2%)、ライブ配信プラットフォーム事業が480百万円(+13.4%)、その他事業が123百万円(+26.7%)と、全セグメント増収を見込む。人員数も202名から229名へ+13.4%の増員を計画しており、生産性向上を意識しつつ積極採用を進める方針だ。

当期純利益が大幅減益となる背景には、FY2025/09に計上した債権譲渡に伴う税効果の反動がある。FY2025/09の税金等調整前当期純利益401百万円に対して当期純利益386百万円と税負担が軽かったのは、貸倒債権の処理に伴う繰延税金資産の取り崩し効果が寄与した。FY2026/09Eではこの一過性の税メリットがなくなるため、表面上の純利益減が大きく出る。ただし、会社自身が説明するとおり、実質的なキャッシュフローは良化方向にある。

4-7. 今後の注目点

第4章の数字が示す結論は明快だ。サイバー・バズはFY2024/09の貸倒ショックからわずか1年で営業黒字に復帰し、営業CF改善(△934百万円→+273百万円)、株主資本比率回復(12.6%→18.8%)、現預金積み増し(529百万円→1,277百万円)を同時に達成した。財務の修復フェーズは概ね完了しており、FY2026/09Eからは戦略投資150百万円を織り込んだ攻めのフェーズに移行する。今後の業績評価では、表面上の営業利益300百万円ではなく、調整後営業利益450百万円をベースに本業の成長力を測ることが重要になる。併せて、粗利率のトレンド(構成比変化の影響 vs 粗利額の絶対水準)と、四半期ベースでの営業利益の安定性が、投資判断の鍵を握る。

5. 中長期成長方針・資本政策

5-1. FY2026ガイダンスの構造を正しく読むには、表面と調整後を分けて見る必要がある

FY2026/09のガイダンスは、営業利益300百万円(前期比▲14.2%)という表面上の減益予想である。この数字だけを見れば「黒字回復から一転して後退」と映りかねない。しかし、ガイダンスの構造を丁寧に分解すると、見え方は逆転する。

会社はFY2026/09の業績予想にあたり、戦略投資予算150百万円を販管費に織り込んでいる。この150百万円を控除する前の営業利益、すなわち調整後営業利益は450百万円であり、FY2025/09実績の350百万円に対して+28.6%の増益となる。

項目 (百万円)FY2025/09 実績FY2026/09E前期比
売上高7,1317,700+8.0%
営業利益(表面)350300▲14.2%
戦略投資予算150
調整後営業利益350450+28.6%
経常利益345285▲17.4%
当期純利益386185▲52.1%

出所:決算短信・決算説明資料よりAENTRO Research作成

減益予想の実態は「本業の増益で投資余力を捻出し、そのうえで先行費用を意図的に積んだ」構図だ。つまり、FY2026ガイダンスは後退ではなく、FY2024の貸倒ショックから1年で黒字回復した会社が攻めのフェーズに入ったことの宣言として読むべきである。

当期純利益が185百万円と前期比▲52.1%の大幅減益になる点も補足が要る。FY2025/09の純利益386百万円には、債権譲渡に伴う税効果(繰延税金資産の取崩し等)が含まれており、税率換算後の実力値よりも嵩上げされていた。FY2026/09の純利益減少は、この一過性の税効果剥落が主因であり、本業の減速とは切り分けて見るべきだ。

5-2. 戦略投資150百万円は、事業投資・M&A・CVCの三方向に振り分けられる

戦略投資150百万円の使途について、会社は三つの方向性を示している。

第一は事業投資だ。新規事業およびサービス開発、マーケティング強化に充てる枠である。すでに顕在化した案件としては、講談社ViVi事業部との共同メディア「MYPE」、インフルエンサーアフィリエイトサービス「WESELL」、メンズ市場特化の新会社Men's B.P.(資本金20百万円、2025年11月設立)がある。いずれもSMM事業の守備範囲をTikTokコマース・Z世代メディア・メンズ領域へ面的に拡張する布石だ。

第二はM&Aである。事業ポートフォリオの拡大と成長の加速を狙う。決算説明資料では「将来的な事業成長・拡大を早期に実現するべく」と明記されており、自前開発では時間がかかる領域を外部取得で補完する意図が読み取れる。FY2025/09時点の有利子負債残高は1,216百万円だが、ネット有利子負債は▲61百万円(実質ネットキャッシュ)であり、小規模M&Aに踏み切るだけの財務的余裕はある。

第三はCVC投資だ。2025年11月にCVC子会社「Buzz Innovation」(資本金5百万円)を設立し、アーリーステージ企業への出資を基本方針として掲げた。代表には取締役の岩田真一が就いている。CVC自体はコスト規模が小さいが、重要なのは「自社グループとの事業シナジーまたは成長性の見込める技術領域」に限定している点だ。SNSマーケティング周辺の技術(AI解析、クリエイティブ自動生成、コマース決済基盤など)を広く探索する仕組みとして機能する可能性がある。

150百万円という投資規模は、年間売上高7,700百万円に対して2.0%にすぎない。「攻め」の看板にしては控えめだが、株主資本比率18.8%、利益剰余金がなお累積赤字(FY2025/09末で▲353百万円)の会社にとっては、まず「利益を出しながら投資もできる」姿勢を示すこと自体に意味がある。大型M&Aに走るフェーズではなく、複数の小粒な種を撒く年と位置付けるのが現実的だ。

5-3. セレス提携はTikTokコマースの実装基盤として読む必要がある

セレスとの資本業務提携(2025年6月締結、セレス持株比率19.1%)は、第3章で詳述した戦略的意義に加え、資本政策上の含意も大きい。ここでは定量面に焦点を絞る。

提携の柱は四つある。第一に、セレス子会社studio15との連携によるTikTokコマース支援でのリーディングポジション確立。第二に、セレス運営のアフィリエイトプラットフォーム「AD.TRACK」との協業で、WESELLの顧客接点を拡大すること。第三に、国内最大級のポイントサービス「モッピー」とのプロダクト連携。第四に、相互の顧客基盤を活かしたクロスセルだ。

資本政策面で注目すべきは、2025年12月の臨時株主総会でセレスの取締役1名が社外取締役として選任される予定であり、承認されればサイバー・バズはセレスの持分法適用関連会社となる点だ。これにより、セレスにとってサイバー・バズへの投資は「戦略的持分」に格上げされ、短期的な株式売却の動機が後退する。同社にとってはアンカー株主が一層安定することを意味する。

提携のP/Lへの定量的インパクトはまだ不透明だ。TikTok Shopの日本本格始動は2025年下期であり、WESELLの売上計上はFY2026/09から本格化する見込みだが、規模感は開示されていない。投資家が追うべきは、FY2026/09の四半期開示でWESELL関連売上がどの程度可視化されるかである。成果報酬型のアフィリエイトモデルは、広告費の先出しが不要な分、立ち上がりは緩やかだが、スケールすれば粗利率の高い収益柱になりうる。

5-4. 人員計画は「量の拡大」より「売上構成の変化」で読むべき局面にある

FY2026/09の人員計画は、連結229名(FY2025/09末:202名、+13.4%)である。会社は「事業拡大及び体制強化に向け、生産性向上を意識した適材適所となる積極的な採用を推進」としている。

年度従業員数 (名)売上高 (百万円)一人当たり売上高 (百万円)
FY2022/091544,26827.7
FY2023/091755,75732.9
FY2024/092057,46236.4
FY2025/092027,13135.3
FY2026/09E2297,70033.6

出所:有価証券報告書・決算説明資料よりAENTRO Research作成

一人当たり売上高はFY2024/09の36.4百万円をピークに、FY2025/09は35.3百万円、FY2026/09計画では33.6百万円へ低下する。増員先行で生産性が一時的に下がること自体は成長企業ではよくあるパターンだが、ここで見るべきは生産性の分母と分子の質的変化だ。

分子の売上構成はSNS広告の比重が増している。SNS広告は媒体費のスルー型であるため、売上は大きいが粗利率は低い。一人当たり売上高が下がっていても、一人当たり粗利額が維持されていれば事業としての効率は落ちていない。FY2025/09の売上総利益2,694百万円を202名で割ると、一人当たり粗利は13.3百万円となる。FY2023/09は2,521百万円÷175名=14.4百万円だったため、粗利ベースでも緩やかな低下傾向にはある。

ただし、FY2024/09以前は貸倒対応の構造改革で人員が削減された時期でもあり、FY2025/09の202名は「正常化後の再出発」に近い。FY2026/09の+27名は、WESELL・MYPE・Men's B.P.など新規事業の立ち上げ要員を含むとみられ、既存事業の自然増というより新領域への人的投資だ。生産性の評価は、新規事業が売上貢献を始めるFY2027/09以降に行うのが妥当だろう。

5-5. 無配継続だが、株主優待の導入で個人投資家との接点を作り始めた

FY2026/09も無配継続の予定である。利益剰余金がFY2025/09末で▲353百万円と累積赤字状態にあり、配当の原資がそもそも限られる。配当性向で論じる段階にはまだない。

一方で、FY2026/09末を基準日とする株主優待制度を新設した。100株(1単元)以上保有の株主にPayPayギフト1,000円分を贈呈する。権利確定日から3か月以内に発送する予定だ。

この施策を還元策として定量的に評価すると、全株主が100株保有と仮定した場合の上限コストは、発行済株式数4,037,100株÷100株×1,000円=約40百万円である。実際の適用株主数はこれより少ないが、営業利益300百万円の計画に対して無視できない金額にはならない。

会社は導入の目的を「当社株式への投資魅力を高め、より多くの皆様に事業理解や企業価値向上への貢献にもつながることを期待」としている。機関投資家向けの還元策としてはほぼ無意味だが、グロース市場の小型株として個人投資家の安定保有を促す効果は期待できる。中計が不在で成長ストーリーの視認性が低い現状では、まず株主数を増やして市場の認知度を上げるという実務的な判断だろう。

5-6. 中計の不在は不透明材料だが、評価軸は設定できる

サイバー・バズには正式な中期経営計画が存在しない。開示されているのはFY2026/09の単年度ガイダンスのみであり、FY2027/09以降の定量目標は示されていない。投資家にとってこれは不透明材料であり、中期のバリュエーションを組み立てにくい一因となっている。

しかし、中計がないこと自体を過度にネガティブ視する必要はないと当社はみる。理由は三つある。

第一に、FY2024/09に貸倒引当金2,202百万円を計上し、株主資本比率が12.6%まで低下した会社が、わずか1年で黒字回復と株主資本比率18.8%への修復を達成したこと自体が、事業の底堅さの証明になっている。計画を出す前に、計画を出せる状態に戻ったという事実が重い。

第二に、SMM市場の構造的成長(2023年1兆円→2029年2.1兆円、CAGR約12%)が同社のトップライン成長を下支えする。FY2026/09の売上成長率+8.0%は市場成長率をやや下回るが、貸倒ショック後の安定を優先した保守的な置き方だと解釈できる。

第三に、セレス提携・CVC設立・WESELL投入という一連の動きは、FY2026/09だけを見据えたものではなく、複数年にわたる布石として読める。中計を出さない代わりに、具体的な施策を先行させるスタイルは、スタートアップ出自の企業に多いアプローチだ。

投資家がFY2026/09以降のサイバー・バズを評価するうえで、当社は以下の五つの指標を追うべきだと考える。

第一に、調整後営業利益の進捗。戦略投資の実行額と本業利益の分離が可能な限り、表面のOP減益に惑わされずに実力値を追える。第二に、WESELL関連売上の立ち上がり。TikTokコマースの定量的寄与が可視化される最初の指標になる。第三に、粗利率の推移。SNS広告構成比の上昇による粗利率低下(FY2022/09の49.4%→FY2025/09の37.8%)が止まるかどうかは、利益構造の持続性を左右する。第四に、M&A・CVC投資の実行有無と内容。150百万円の戦略投資予算がどこに使われたかはFY2026/09の進捗開示で確認できる。第五に、株主資本比率の回復ペース。FY2025/09末の18.8%から、利益蓄積でどこまで積み上がるかが、次の成長投資の自由度を決める。

正式中計がない現在、これらのKPIを四半期ごとにモニタリングすることが、同社の中期的な評価を更新する最も実効的な方法である。

6. 株価インサイト

6-1. 株価の読み方

サイバー・バズの株価を見るうえで最も重要な補助線は、FY2024(2024年9月期)の貸倒ショックがまだ株価に影を落としているという点にある。同社はFY2025で営業利益350百万円の黒字回復を果たし、EPSは95.93円まで戻したが、時価総額はFY2023のピーク7,364百万円から半分以下の水準にとどまっている。現在の株価は「業績の復元は認めるが、再発リスクへの疑念を消していない」市場心理を映している。

項目
時価総額3,185百万円
発行済株式数4,037,100株
PER(FY2025実績)8.83倍
PER(FY2025/12 LTM)7.71倍
PBR(FY2025実績)4.53倍
PSR(FY2025実績)0.48倍
EV/EBITDA(FY2025実績)6.72倍
ROE(FY2025実績)69.9%
EPS(FY2025実績)95.93円
BPS(FY2025実績)145.44円
配当無配

出所:会社開示資料及び株価データを元に算出

PER 8.83倍は東証グロース市場の中央値を大幅に下回る水準だが、これだけを見て割安と断じるのは早計だ。この低PERにはいくつかの構造要因が折り重なっている。一つは、FY2025のEPSが特別利益59百万円を含んでおり、本業の稼ぐ力だけで見た場合のPERはやや高くなる点。もう一つは、FY2026の会社予想EPSが45.98円と半減する見通しであり、予想ベースPERは17.22倍へ切り上がる点だ。つまり現在のPER 8.83倍は「実績の一時押し上げ」と「来期の表面減益」の間に挟まれた過渡的な数字であり、額面どおりに受け取るべきではない。

6-2. バリュエーションの見方

PER 8.83倍をどう読むか。結論から言えば、この水準にはFY2024ショックの評価ディスカウントが色濃く残っている。

FY2024を振り返ると、特定取引先への売掛金が全額回収不能となり、貸倒引当金2,202百万円の計上で純損失1,954百万円を計上した。株主資本比率は44.3%から12.6%へ急落し、純資産は352百万円まで毀損した。この一過性イベントが市場の信頼を大きく損ない、時価総額はFY2023の7,364百万円からFY2024には4,329百万円、FY2025には3,408百万円と、本業が黒字回復した後も下落が止まらなかった。市場は業績の回復よりも、管理体制への不信を重く見ていると解釈すべきだ。

PBRの推移はこの構図をより鮮明に映す。FY2022のPBR 2.42倍はBPS 491.86円に対する穏やかな評価だった。FY2024にはBPSが50.18円まで毀損したためPBRは12.30倍に跳ね上がったが、これは分母の崩壊によるもので実質的な意味はない。FY2025ではBPSが145.44円に回復したものの、PBRは4.53倍と、FY2022の約1.9倍の水準にある。株価はBPSの回復に見合った速度では戻っていない。この「戻り切らなさ」こそが、FY2024ショックの残像だ。

指標FY2022FY2023FY2024FY2025
PER(倍)56.0135.928.83
PBR(倍)2.423.2612.304.53
PSR(倍)1.131.280.580.48
EV/EBITDA(倍)18.1811.456.72

出所:会社開示資料及び株価データを元に算出

もう一つ見逃せないのはPSR 0.48倍の低さだ。売上高7,131百万円に対して時価総額3,408百万円というのは、デジタルマーケティング企業として異例に安い。業界中央値のPSRが概ね1倍前後であることを踏まえると、市場はこの会社の売上の質そのものにディスカウントをかけている。粗利率の低下トレンド(後述6-4)を考慮すれば、売上が積み上がっても利益がついてこないリスクを織り込んでいるとも読める。

6-3. Opportunity 3点

第一に、SMM市場の構造的追い風がある。国内ソーシャルメディアマーケティング市場は2023年に1兆円を超え、2029年に2.1兆円へ達する見通しで、CAGR約12%の成長が続く。インフルエンサーマーケティング市場も2029年には2022年の約2.7倍に拡大する見込みだ。市場全体が年率二桁で伸びる環境下では、同社のような統合プレイヤーは市場成長率と同程度かそれ以上の売上拡大を享受しやすい。FY2026の会社予想売上高7,700百万円(前期比+8.0%)は市場成長率をやや下回る控えめな計画だが、裏を返せば達成確度は高い。

第二に、TikTokコマース(WESELL)による新収益軸の創出がある。TikTok Shopの日本上陸に合わせたインフルエンサーアフィリエイト事業は、従来の「広告枠を売る」ビジネスから「成果報酬で稼ぐ」ビジネスへの転換を意味する。成果報酬型は広告主の予算サイクルに左右されにくく、収益の安定性と成長の天井を同時に改善しうる。まだ売上貢献は初期段階だが、国内でTikTokコマースの実行基盤を持つ上場企業は限られており、先行者利得を取りうるポジションにいる。

第三に、セレス(3696)との資本業務提携がある。2025年6月にDGから株式19.14%を取得した同社は、傘下にstudio15(TikTok領域)、AD.TRACK(アフィリエイト)、モッピー(ポイントサービス)を持つ。サイバー・バズのインフルエンサーネットワークとセレスのコマース基盤が重なれば、SNS上での「認知→購買→ポイント還元」の一気通貫導線を構築できる。提携効果が数字として顕在化するのはFY2026後半以降になるとみられるが、実現すれば事業ポートフォリオの幅と収益性の両方を底上げする。

6-4. Anti-thesis 3点

第一に、粗利率の構造的低下が続いている。売上総利益率はFY2022の49.4%からFY2025の37.8%まで、3年間で11.6ポイント低下した。主因はSNS広告事業(媒体費がスルーで売上計上される構造)の構成比上昇であり、売上が伸びるほど原価率も高まるという逆説的な構造にある。FY2025/12 LTMでは38.2%とやや持ち直しているが、趨勢を反転させるにはインフルエンサー事業やTikTokコマースなど粗利率の高い事業の比率を意図的に引き上げる必要がある。仮にこのトレンドが止まらなければ、売上成長と利益成長の乖離が続き、PERの上昇余地は限定的になる。

第二に、特定取引先リスクの残存がある。FY2024の貸倒は特定取引先への売掛金が全額回収不能になったことが原因だった。広告代理業は構造的に大口顧客への売上集中が生じやすく、与信管理を強化したとしても、このリスクがゼロになることはない。市場はFY2024の経験を記憶しており、同種の事案が再発すれば、今度は「二度目」として信頼毀損の度合いはより深刻になりうる。現在のPER水準が低いのは、この「尾のリスク」が暗に織り込まれているからだと当社はみる。

第三に、自己資本の薄さが投資家の躊躇を招いている。FY2025末の株主資本比率は18.8%、純資産は752百万円にすぎない。有利子負債残高1,216百万円、D/Eレシオ1.62倍は、成長期のグロース企業としてもやや高い。ネットD/Eレシオは▲0.08倍と実質的にネットキャッシュだが、手元流動性は1,277百万円と潤沢ではない。FY2026でCVC設立やM&A投資を打ち出しているが、財務余力と成長投資のバランスに対する市場の視線は厳しい。利益の積み上がりで自己資本が厚くなるには時間がかかる。FY2026会社予想の純利益185百万円のペースでは、株主資本比率が30%を回復するのは早くてもFY2028頃になる計算だ。

6-5. 同業比較

サイバー・バズの比較対象を選ぶにあたっては、ビジネスモデルの類似度を最優先した。具体的には、SNSマーケティング・インフルエンサーマーケティングを主軸とし、売上規模が概ね同水準(3,000〜20,000百万円レンジ)のデジタルマーケティング企業5社を選定している。電通やサイバーエージェントのような大手総合広告会社は事業構造が異なりすぎるため除外した。

社名コード売上高(百万円)純利益率時価総額(百万円)PER(倍)EV/EBITDA(倍)
サイバー・バズ70697,1315.4%3,1968.256.27
トレンダーズ60696,1929.7%5,8089.262.73
トリドリ93375,3738.1%6,20914.217.89
THECOO42554,8313.6%4,52025.829.78
Orchestra Holdings653315,7685.2%10,74712.376.83
ブリーチ916217,1601.8%6,66521.92
業界中央値4,3732.5%4,27515.385.17
業界平均値65,982-0.5%44,69922.67-5.06

出所:各社開示資料及び株価データを元に算出

このテーブルから読み取るべきポイントは三つある。

一つ目は、サイバー・バズのPER 8.25倍が比較対象5社の中で最も低い水準にあることだ。トレンダーズ9.26倍が最も近いが、それでも1倍の差がある。THECOO 25.82倍やブリーチ21.92倍と比べれば、同社の評価がいかに抑制されているかが際立つ。業界中央値15.38倍との乖離は約47%に達しており、同業他社と比べても著しいディスカウント状態にある。

二つ目は、純利益率5.4%が中位に位置し、突出して高くも低くもない点だ。トレンダーズ9.7%やトリドリ8.1%にはやや劣るものの、THECOO 3.6%やブリーチ1.8%を上回る。FY2024ショックからの回復途上であることを踏まえれば、この水準は底堅い。FY2026の会社予想+8.0%成長が実現し、利益率が安定すれば、PERの再評価余地は十分にある。

三つ目は、EV/EBITDA 6.27倍が中央値5.17倍に近く、事業価値ベースでは極端な割安ではないことだ。PERほどのディスカウントが見られないのは、同社の有利子負債が相対的に重く、エクイティバリューが圧縮されているためだ。負債の返済が進み自己資本が積み上がれば、PERとEV/EBITDAの水準感は収斂に向かうとみる。

6-6. 今後の注目KPI・カタリスト

当レポートはレーティングおよび目標株価を付与しない。以下では、今後の株価動向を左右しうるKPIとカタリストを整理するにとどめる。

四半期ベースで最も注目すべきKPIは売上総利益率の推移だ。37.8%→38.2%(LTM)という微かな反転が本格的なトレンド転換なのか、一時的な揺り戻しなのかは、今後2〜3四半期の実績で判断が分かれる。粗利率が38%台で安定すれば、利益率の底打ちが確認され、バリュエーションの下支え要因になる。逆にさらなる低下が見られれば、市場の評価はより慎重に傾く。

第二のKPIは、WESELL(TikTokコマース)の取扱高と売上寄与だ。現在は事業立ち上げの初期段階にあるが、TikTok Shop日本展開の本格化に伴い、FY2026後半から数字が見え始める可能性がある。成果報酬型の売上は粗利率が比較的高いとみられ、粗利ミックスの改善にも寄与しうる。

第三のKPIは株主資本比率だ。18.8%からの回復速度が加速すれば、財務面のディスカウントは徐々に剥落する。会社が無配を継続しているのは利益を内部留保に回すためであり、この判断自体は財務再建期としては合理的だが、還元政策の転換がいつ射程に入るかも中長期の注目点になる。FY2026/09からは株主優待制度の導入が予定されており、個人投資家層への訴求力は一定程度高まる。

カタリストとしては、セレスとの提携効果が決算数値として顕在化する最初の四半期(FY2026 Q2以降)、TikTok Shop日本正式ローンチのタイミング、そして売上成長率がプラスに転じる四半期決算の発表が挙げられる。いずれも業績そのものというよりは、FY2024ショックの残像を薄め、「構造的に成長できる会社」という認識を市場に再構築するシグナルとして機能する。サイバー・バズの株価が次のステージへ進むために必要なのは、派手な材料ではなく、四半期ごとの着実な実行の積み重ねだ。

7. Appendix

7-1. 損益計算書

単位:百万円

科目FY2021/09FY2022/09FY2023/09FY2024/09FY2025/09FY2026/09E
売上高3,1724,2685,7577,4627,1317,700
売上総利益2,1102,5212,9012,694
売上総利益率(%)49.4%43.8%38.9%37.8%
販管費1,9662,1304,6212,345
EBITDA185562-1,555498448
営業利益2144391-1,719350300
営業利益率(%)0.1%3.4%6.8%-23.0%4.9%3.9%
経常利益4172412-1,712345285
純利益-7386205-1,954386185
純利益率(%)-2.3%2.0%3.6%-26.2%5.4%2.4%
EPS(円)-19.5422.1652.06-488.2795.9345.98

出所:有価証券報告書および決算短信より AENTRO Research 作成。

FY2022/09〜FY2023/09 にかけて売上高は CAGR+16.2%で成長し、SMM 事業の拡大が牽引した。FY2024/09 は特定取引先に対する貸倒引当金 2,202 百万円の計上が販管費を押し上げ、営業損失 1,719 百万円・純損失 1,954 百万円と大幅な赤字に転落した。しかし FY2025/09 には当該一過性要因が剥落し、営業利益 350 百万円・純利益 386 百万円と黒字復帰を果たしている。売上総利益率は FY2022/09 の 49.4%から FY2025/09 の 37.8%へ趨勢的に低下しており、SNS 広告(媒体費スルー型)の構成比上昇が主因である。

FY2026/09E は売上高 7,700 百万円(前年比+8.0%)、営業利益 300 百万円を会社予想としている。営業利益が前年比減益となるのは戦略投資 150 百万円を織り込んでいるためであり、同投資控除前の調整後営業利益は 450 百万円(同+28.6%)と実質増益の計画である。

7-2. 貸借対照表

単位:百万円

科目FY2021/09FY2022/09FY2023/09FY2024/09FY2025/09FY2026/09E
流動資産2,2134,3501,6362,483
固定資産4057511,147625
資産合計2,2192,6185,1012,7833,108
流動負債6242,4602,1781,728
固定負債383252628
負債合計6242,8432,4302,356
有利子負債4381,1741,216
ネット有利子負債-1,454-928645-61
純資産1,8221,9932,258352752
株主資本比率(%)80.8%76.1%44.3%12.6%18.8%
BPS(円)473.87491.86538.7650.18145.44

出所:有価証券報告書および決算短信より AENTRO Research 作成。

FY2023/09 に総資産が 5,101 百万円まで膨張したのは、特定取引先向け売上債権(2,896 百万円)の積み上がりによる。FY2024/09 に同債権を貸倒処理した結果、純資産は 352 百万円まで毀損し、株主資本比率は 12.6%に低下した。FY2025/09 は純利益 386 百万円の計上により純資産が 752 百万円へ回復、株主資本比率も 18.8%まで改善している。ネット有利子負債は FY2024/09 の 645 百万円から FY2025/09 に -61 百万円へ転じ、実質的なネットキャッシュ状態に復帰した。

7-3. キャッシュ・フロー計算書

単位:百万円

科目FY2021/09FY2022/09FY2023/09FY2024/09FY2025/09FY2026/09E
営業CF-73226-71-934273
投資CF-118-157-471-652433
財務CF-1306945374942
FCF69-542-1,586706
現金同等物期末残高1,3161,4541,3665291,277

出所:有価証券報告書および決算短信より AENTRO Research 作成。

FY2024/09 は貸倒関連の債権回収難から営業 CF が -934 百万円に沈み、投資 CF -652 百万円(主に子会社取得)と合わせて FCF は -1,586 百万円の大幅マイナスとなった。FY2025/09 には営業 CF が +273 百万円へ反転し、投資 CF も +433 百万円(子会社株式売却等)を計上した結果、FCF は +706 百万円と劇的に改善。現金同等物期末残高は 1,277 百万円まで回復し、手元流動性は FY2021/09 の水準に近づいている。

7-4. 主要経営指標

成長性

科目FY2021/09FY2022/09FY2023/09FY2024/09FY2025/09FY2026/09E
売上高増加率34.6%34.9%29.6%-4.4%8.0%
営業利益増加率4700.0%171.5%-539.6%-14.3%
EPS成長率134.9%-1037.9%-52.1%

収益性

科目FY2021/09FY2022/09FY2023/09FY2024/09FY2025/09FY2026/09E
売上総利益率49.4%43.8%38.9%37.8%
EBITDAマージン4.3%9.8%-20.8%7.0%5.8%
営業利益率0.1%3.4%6.8%-23.0%4.9%3.9%
経常利益率0.2%4.0%7.2%-22.9%4.8%3.7%
純利益率-2.3%2.0%3.6%-26.2%5.4%2.4%

効率性

科目FY2021/09FY2022/09FY2023/09FY2024/09FY2025/09FY2026/09E
ROE4.5%9.6%-149.7%69.9%
ROA3.6%5.3%-49.6%13.1%
ROIC(投下資本)2.7%10.6%-89.4%19.2%
総資産回転率(倍)1.761.491.892.42

安全性

科目FY2021/09FY2022/09FY2023/09FY2024/09FY2025/09FY2026/09E
株主資本比率80.8%76.1%44.3%12.6%18.8%
D/Eレシオ(倍)0.193.341.62
ネットD/Eレシオ(倍)-0.73-0.411.83-0.08
有利子負債/EBITDA(倍)0.782.44
流動比率354.6%176.8%75.1%143.7%

バリュエーション

科目FY2021/09FY2022/09FY2023/09FY2024/09FY2025/09FY2026/09E
PER(倍)56.0135.928.8317.22
PBR(倍)2.423.2612.304.53
PSR(倍)1.131.280.580.480.41
EV/EBITDA(倍)18.1811.45-3.206.726.94
EV/営業利益(倍)23.3516.46-2.899.5610.37

出所:有価証券報告書および決算短信より AENTRO Research 作成。

FY2025/09 の ROE 69.9%、ROA 13.1%は赤字期の低い純資産ベースからの回復局面で算出されているため、水準そのものを過大評価すべきではない。一方、ROIC 19.2%は投下資本ベースでも本業の収益力が回復したことを示唆している。安全性指標では、株主資本比率が FY2024/09 の 12.6%から 18.8%に改善し、ネット D/E レシオも -0.08 倍とネットキャッシュに復帰した。バリュエーション面では、PER 8.83 倍・PSR 0.48 倍と成長グロース市場の同規模企業と比較して低位に位置しており、FY2024/09 の業績ショックに対する市場のディスカウントが残存していると考えられる。

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