AENTRO Research
Initiation Report | 2026年4月28日
Laboro.ai5586
受託AI開発から、拡大再生産エンジンを持つオーダーメイド型AIパートナーへ
No Rating / No Target Price
TSE Growth
株価(2026/4/28終値)時価総額発行済株式数FY25/9 売上高FY25/9 営業利益率FY26/9E 売上高
851円131億円1,591.86万株1,900百万円10.1%2,486百万円
項目FY2022FY2023FY2024FY2025FY2026E
売上高百万円7331,3691,5151,9002,486
営業利益百万円-55206183191294
営業利益率%-7.515.112.110.111.9
当期純利益百万円-39139133146201
当期純利益率%-5.410.28.87.78.1
EPS-3.319.708.439.2312.63
DPS0.000.000.000.000.00

1. 会社概要

1-1. サマリー

項目内容
会社名株式会社Laboro.AI(Laboro.AI Inc.)
代表者代表取締役CEO 椎橋 徹夫/代表取締役COO兼CTO 藤原 弘将
設立2016年4月1日
本社東京都中央区銀座8-11-1
上場2023年7月31日(東証グロース・5586)
決算期9月末
従業員数96名(2025年9月期末、単体ベース)
資本金1,014百万円(2025年9月期末、連結)
資本準備金1,004百万円(同上)
連結子会社株式会社CAGLA(2025年4月1日、100%取得)
発行済株式数15,918,577株(2025年9月期末、自己株式38株を含む)
FY2025(連結)売上高1,900百万円
FY2025(連結)営業利益191百万円(OPM 10.1%、EBITDA 228百万円・EBITDAマージン12.0%)
FY2025(連結)当期純利益147百万円
FY2026(連結)ガイダンス売上2,486百万円(+30.8%)/営業294百万円(+53.6%)/当期純利益201百万円(+36.9%)
1Q FY2026(連結)売上高630百万円

出所:公開情報より AENTRO Research 作成

株式会社Laboro.AIは、2016年4月に椎橋徹夫氏と藤原弘将氏の2名で創業された、個社オーダーメイドのAI開発会社である。2023年7月に東証グロース市場へ上場し、2025年4月にはシステム開発会社の株式会社CAGLAを100%子会社化して単独事業から連結決算へ移行した。足元のFY2025(連結)売上高は1,900百万円、営業利益は191百万円、当期純利益は147百万円、従業員数は2025年9月期末時点で100名と、AIベンダーの中でも小ぶりな規模にとどまる。

ただし、同社を単なる「生成AIブームに乗った受託AI会社」として捉えると、実像を見誤る。創業者2名はボストン・コンサルティング・グループ出身で、代表取締役CEOの椎橋氏は東京大学松尾豊研究室の産学連携業務を、代表取締役COO兼CTOの藤原氏は産業技術総合研究所での機械学習・自然言語処理研究を経て合流している。創業期からの主要株主には、SCREENアドバンストシステムソリューションズ、SCREENホールディングス、博報堂、THK、日本ガイシといった「顧客でもある事業会社」が並ぶ。戦略コンサル × 研究機関の出自を、産業パートナー資本と組み合わせることで「産業を深く分かるカスタムAI開発」というポジションを確立した、国内でも少数の純粋系プレイヤーである。

この立ち位置は、顧客ポートフォリオの数字に表れている。売上高上位3社の構成比は、2021年9月期の67%から2025年9月期には29%へと4期で△38pt低下した。また、売上1億円以上の高額顧客層の売上高は2024年9月期の870百万円から2025年9月期には650百万円へと減少し、高額顧客への依存度が低下している。特定事業会社への依存が進んだ受託企業ではなく、創業期の資本関係を起点に顧客を開拓し、そこで得た知見を別産業へ面展開していく構造である。FY2025の業界別売上構成も、研究開発型産業52%(半導体17%/建設10%/自動車10%/その他製造16%等)、社会基盤・生活者産業48%と、特定産業への偏りが小さい。

会社のフェーズは「単独事業のオーダーメイドAI受託」から「2セグメント×3領域のハイブリッド」へ移りつつある。2025年9月期よりセグメントは、フルカスタムのAIソリューションデザイン(AI-SD)とセミカスタムの生成AIエージェント開発(AGT-X)を擁する「カスタムAIソリューション事業」(FY2025売上1,892百万円・セグメント利益250百万円)と、CAGLAが担う「システム開発事業」(FY2025売上12百万円・セグメント損失△59百万円)の2本柱に再編された。併せて、2024年5月に設立したグロービングとの合弁会社X-AI.Laboは2025年9月に解消し、本体同士の業務提携へ再編している。上場から2年を経て、事業ポートフォリオそのものが変化のただ中にある企業として読む必要がある。

1-2. 基本情報

同社の正式名称は株式会社Laboro.AI(Laboro.AI Inc.)、本社所在地は東京都中央区銀座8-11-1である。代表は代表取締役CEO 椎橋徹夫氏、代表取締役COO兼CTO 藤原弘将氏の2名の共同代表体制。事業内容は「機械学習を活用したオーダーメイド型AI『カスタムAI』の開発」と「カスタムAI導入のためのコンサルティング」であり、FY2025より株式会社CAGLAを連結子会社とするかたちでシステム開発事業を新たに加えた。決算期は9月末で、上場区分は2023年7月31日上場の東証グロース市場、証券コードは5586である。

人的資本の基礎データとしては、FY2025期末時点の連結従業員数は100名である。同社は人材を職種別に4区分で管理しており、ソリューションデザイナ(SD、ビジネスとAI双方の知見を持つ専門人材)、機械学習エンジニア/システム開発エンジニア、コーポレート部門、そして2026年9月期から立ち上げるエージェントトランスフォーメーションプロデューサー(AX-P)が主要区分である。従業員の平均年間給与水準は2025年9月末時点で968万円で、同社は決算説明資料上「AI構築サービス企業のなかでもトップクラスの水準」と位置付けている。コンサルティングファームや大手事業会社でのビジネス経験を持つ人材の中途採用比率が高く、即戦力/ハイポテンシャル人材の採用と社内での育成を通じ、組織を積極的に拡大する段階にある。

FY2025は上場から3期目にあたり、CAGLA取得に伴い連結決算へ移行した初年度である。前期までは単体決算のため、FY2021~FY2024の時系列を連結と直接比較することはできない。この境界はレポート全体を通じて数字の読み方に影響するため、後続の第4章・第7章でも繰り返し明示する。

1-3. 主な株主

同社の主な株主は順不同ベースで開示されており、2025年9月30日時点の主な株主5社は、株式会社SCREENアドバンストシステムソリューションズ、株式会社博報堂、THK株式会社、株式会社SCREENホールディングス、日本ガイシ株式会社である。持株比率は本資料執筆時点の公表資料では未特定のため空欄とし、後続の第6章では有価証券報告書を参照する前提とする。

主要株主(順不同、2025年9月30日時点)業種資本関係とビジネス関係
(株)SCREENアドバンストシステムソリューションズ半導体製造装置関連ソリューション株主・顧客
(株)博報堂広告・メディア株主・顧客
THK(株)直動機器株主・顧客
(株)SCREENホールディングス半導体製造装置株主・顧客
日本ガイシ(株)素材・化学株主・顧客

出所:決算説明資料および事業計画及び成長可能性に関する説明資料(2025年12月)より AENTRO Research 作成

この株主構成は同社の事業特性を端的に示している。2023年7月の上場時には、上記5社に加えてMCIイノベーション投資事業有限責任組合(三井化学)、ZFP第1号投資事業有限責任組合(株式会社ゼンリン)も主要株主として名を連ねていたが、上場後は順不同開示の中心が、半導体(SCREEN系2社)、広告(博報堂)、機械(THK)、素材(日本ガイシ)に収斂している。これらの多くは主要顧客/協業先であり、「資本と受注を両方差し出す事業会社」が主力株主層を形成している点に、純粋なVC調達型スタートアップとの違いが現れる。

もっとも、創業期から現在までの資本政策は「ファンド系株主の退出と、顧客兼株主である事業会社への集約」という方向で進んでいる。上場時には主要株主に名を連ねていたMCIイノベーション投資事業有限責任組合(三井化学系)やZFP第1号投資事業有限責任組合(ゼンリン系)といったファンド形式の株主が直近の順不同開示から姿を消し、現在は同社と直接の取引関係を持つ事業会社5社(SCREEN系2社・博報堂・THK・日本ガイシ)が中心に残る構図となっている。創業経営陣の経営裁量を確保しつつ、顧客兼株主である事業会社との長期的な共通利益(顧客の産業課題をAIで解く)に紐付ける設計である。

1-4. 経営理念

同社のミッションは「すべての産業の新たな姿をつくる。」および「テクノロジーとビジネスを、つなぐ。」の2つを並列に置く構成である。前者は「産業に革命を起こそうと奔走する各企業のイノベーターに、オーダーメイドという方法でビジネスにジャストフィットするAIソリューションを提供する」ことを掲げ、後者は「ビジネス環境や課題に合わせて必要なデータを集め、アルゴリズムを設計し、検証と調整を繰り返す」ためにテクノロジーとビジネス双方の知見を一体化することを宣言している。

投資家目線で重要なのは、この2文がいずれも「汎用AIプロダクトを広く売る」という方向性ではなく、「個社の課題に合わせて都度つくる」ことを明示している点である。これは、後続第2章で詳述する収益モデル(案件型・PJアサイン工数ベース、非ARR)および拡大再生産の仕組み(先行事例をソリューション・技術基盤として型化し、別産業PJへ再投下する循環)と論理的に一致する。経営理念は事業特性と無関係の飾り文句ではなく、モデル選択そのものを支える枠組みとして機能している。

1-5. 沿革

年月イベント
2016年4月株式会社Laboro.AI設立(共同代表:椎橋徹夫・藤原弘将)
2019年3月決算期を3月から9月へ変更(2019年9月期は6カ月変則決算)
2019年〜建設企業の制振AI等、強化学習の産業応用プロジェクトに着手
2023年7月31日東証グロース市場へ新規上場(証券コード5586)
2024年〜強化学習のプロジェクトで得た知見を活かし、強化学習を含めた最適化テーマのプロジェクトを展開
2024年5月グロービング株式会社との合弁会社X-AI.Labo株式会社を設立
2025年~AIエージェントの案件が拡大
2025年4月1日株式会社CAGLA(グラフデータベース技術・UI/UX)を100%子会社化(取得価額153百万円、取得関連費用等込189百万円、のれん63百万円/8年均等償却)
2025年9月25日X-AI.Labo全株式を売却、グロービングとは業務提携契約へ再編(関係会社株式売却益48百万円計上)
2025年9月期連結決算初年度。2セグメント化(カスタムAIソリューション事業/システム開発事業)

出所:事業計画及び成長可能性に関する説明資料(2023年7月、2025年12月)および決算短信より AENTRO Research 作成

同社の歩みは、創業期(2016–2019)、産業応用の型化期(2019–2023)、上場・ポートフォリオ再編期(2023–)の3段階に分けて理解すると整理しやすい。まず創業期は、BCGで消費財・流通プロジェクトやデジタル部門立ち上げに携わった椎橋氏と、京大大学院で博士号を取得し産総研で機械学習・音声信号処理・自然言語処理の研究に従事した後にBCGへ合流した藤原氏の2名が、2016年4月にLaboro.AIを立ち上げた時期にあたる。戦略コンサルのビジネス知見と研究機関のAI知見を「一人の事業者のなかで統合する」という発想は、後にソリューションデザイナ(SD)という職種として制度化される。

続く型化期(2019–2025)は、強化学習・最適化及び生成AIを軸にした産業応用の先行事例を積み重ねた局面である。建設企業向け制振AI、塗料工場や半導体製造装置の制御AI、鉄道路線の工事計画最適化といったプロジェクトで得た知見を「強化学習による振動制御ソリューション」「最適化ソリューションズ」等として型化し、別産業の新規案件へ再投下していった。また、2023年以降、大規模言語モデル(LLM)の技術的な進展に伴い、主に消費者に近いメディアや消費財等の領域で生成AIを活用したプロジェクトが増加した。こうしたプロジェクトで得た知見を「AGT-Xソリューション」として型化し、エージェントAI開発関連の新規案件へ再投下している。この循環は同社が「拡大再生産の仕組み」と呼ぶ競争優位の原型である。FY2025までの通算カスタムAIプロジェクト件数は400件超に達した。

2023年7月の東証グロース市場上場以降は、ポートフォリオ再編のフェーズに入っている。2024年5月に経営コンサルのグロービングと合弁会社X-AI.Laboを設立したが、実務的な工数が多くJV形式を解消し、2025年9月に本体同士の業務提携へ再編した。並行して、2025年4月1日には株式会社CAGLAを100%子会社化し、グラフデータベース技術とUI/UX開発力をグループに取り込んで、システム開発事業を新設した。2025年9月期は連結決算初年度であり、セグメント構成・資本関係・提携関係のいずれもが同一年度内に再設計された、同社にとっての転換点である。

1-6. コーポレート・ガバナンス

同社は監査役会設置会社を採用しており、2025年9月期末時点の取締役は社内2名(代表取締役CEO 椎橋徹夫氏、代表取締役COO兼CTO 藤原弘将氏)と社外取締役2名(菅野寛氏:早稲田大学大学院経営管理研究科教授、岩崎俊博氏:日本旗艦キャピタル代表取締役)の計4名、監査役は常勤監査役1名(前田晴美氏)と社外監査役2名(井ノ浦克哉氏、田中洋子氏)の計3名である。執行役員はCAO松藤洋介氏以下5名が業務執行を担っている。社内取締役2名に対し社外取締役2名を配置する構成は、創業経営陣主導のスピード感を保ちつつ、外部の視点を取締役会に確保するバランス型である。

重要なのは、連結化に伴うガバナンス体制の整備が2025年9月期中に行われたことである。CAGLAの子会社取得後、グループ内の各種規程類や管理体制の整備をPMI(Post Merger Integration)の一環として進め、2025年9月期末までに完了。2026年9月期以降は「上場企業の子会社として求められるガバナンスの運用フェーズ」に入ると会社は説明している。単体上場のグロース企業が、連結初年度に一通りの内部統制・ガバナンスをグループに広げたうえで運用期に入る、という時期的整理になる。

1-7. ESG/サステナビリティ

同社は一般的な環境指標よりも、S(社会)とG(ガバナンス)を中心に開示を積み上げる構造にある。人的資本面では、ソリューションデザイナの平均年間給与が2025年9月末時点で968万円(参考:2024年9月末時点で990万円)と、AI構築サービス企業のなかでもトップクラスの報酬水準を維持している。同社は「バリューアップ型AIテーマという難易度が高くやりがいのあるトピックと、それに見合う報酬」を両輪とし、戦略コンサル出身者・AI関連スタートアップ出身者・事業会社企画職出身者といった多様なバックグラウンドの中途人材を採用している。FY2025からFY2026にかけては、全社で96名(FY2025期末)→140名(会社計画値、+44名、+46%)への積極的な人員拡張計画を進めており、採用ポリシーそのものが社会面の主要施策を兼ねる構造となっている。

環境面の取り組み、女性管理職比率等の開示は、本稿執筆時点で公表資料にまとまった形では示されていない。今後の有価証券報告書・統合報告書に合わせて補完することとする。

1-8. 本章まとめ

同社は、BCG × 東大松尾研/産総研というTech-originの経営陣が、SCREEN・博報堂・THK・日本ガイシといった「顧客 = 株主」の産業パートナー資本を得て育った、国内では数少ない純粋系の個社オーダーメイドのAI開発会社である。連結化した2025年9月期を境に、単独事業のオーダーメイド受託から、AI-SD・AGT-X・システム開発の2セグメント×3領域構造へと骨格を広げた。

残る問いは明快である。通算400件超のプロジェクトを実行してきた同社は、「先行例のないテーマを解く」という労働集約の受託構造から、「解いた知見を型に固めて別産業へ再投下する」拡大再生産の構造へと、どこまで重心を移せているのか。次章では、カスタムAIソリューション事業(AI-SD/AGT-X/プロダクト)とシステム開発事業の2セグメントを分解し、売上・顧客・ソリューションの3つの層から、その回路を具体的に検証する。

2. 事業内容

2-1. 全体像

Laboro.AIの事業を理解するうえでまず重要なのは、同社を「生成AIブームに乗った労働集約的な受託開発会社」と捉えないことである。同社の事業は、先行例のないテーマに顧客と踏み込んで得た知見を「ソリューション」「技術基盤」「ワークフロー」として結晶化し、次のプロジェクトへ再投下する拡大再生産の回路を内蔵している。投下した人と時間に比例して売上が伸びる単純な工数売りとは、構造が異なる。

同社は2025年4月にグラフデータベース技術・UI/UX開発に強みを持つ株式会社CAGLAを100%子会社化し、2025年9月期第3四半期より連結決算に移行した。これに伴い、従来は「カスタムAIソリューション事業」の単一セグメントだった報告区分が、2025年9月期通期ではカスタムAIソリューション事業とシステム開発事業の2セグメント体制に変わっている。ただし連結売上高1,900百万円のうちカスタムAIソリューション事業が1,892百万円と99.6%を占め、当面の収益構造はカスタムAIソリューション事業が全てを規定する。

カスタムAIソリューション事業のなかには、技術・体制・提供形態の異なる3つの領域がある。コア領域がフルカスタムでAIを開発する「AI-ソリューションデザイン(AI-SD)」、成長領域が汎用技術基盤を活用してセミカスタムで開発する「エージェントトランスフォーメーション(AGT-X)」、投資領域が自社プロダクト(代表例「未来リサーチ™」)である。会社はこれをバリュー・マイニング(VM、AI-SD)で先行例のないテーマを掘り、バリュー・ディストリビューション(VD、AGT-X)で型を面展開する二層モデルとして整理しているが、当社としては、このVM→VDの回路が同社の競争優位の中核であり、従来単一セグメントだった会社が領域を切り出して連携運用し始めたことこそ、2025年9月期最大の構造変化だとみる。

2-2. セグメント別事業

セグメント別業績の全体像を押さえたうえで、各領域に入る構成を採る。連結初年度のため前期連結対比は取れないが、カスタムAIソリューション事業の単体継続比較と、子会社取得に伴うシステム開発事業の一時費用の影響を並べて読むと、収益源の厚みとPMI(子会社統合)フェーズの位置が明確になる。

項目(百万円)カスタムAIソリューション事業システム開発事業連結
売上高(FY2025)1,892121,900
売上総利益1,26561,272
粗利率67%52%67%
営業利益250△59191
営業利益率13%10%
前年比(単体売上高・参考)+25%

出所:決算説明資料および決算短信よりAENTRO Research作成

カスタムAIソリューション事業は売上高1,892百万円(単体実績対比+25%)、営業利益250百万円(同+37%)で、第4四半期に過去最高水準の売上を計上した。これに対してシステム開発事業は、2025年3月に取得したCAGLAの第3四半期以降半期分のみの計上であるうえ、取得関連費用とのれん償却等41百万円(連結ベース)を吸収したためセグメント損失△59百万円で着地している。つまり全社業績の実態は「稼ぐ土台はカスタムAI、補完的な技術と製造業顧客を取り込むための先行投資がシステム開発」と整理するのが正確である。以下、事業の中身はカスタムAI側の3領域(2-3〜2-5)→システム開発事業(2-6)の順で見る。

2-3. AI-SD(フルカスタム)

AI-SDは同社のコア領域であり、顧客個社の戦略や課題に合わせてフルカスタムでAIを開発する領域である。担い手はソリューションデザイナ(SD)と機械学習エンジニアで、ビジネス知見とAI知見を併せ持つ人材で構成される。技術的には生成AI、最適化、その他(音声認識・画像解析等)を扱い、2025年9月期に開始・終了したプロジェクトの技術分類は生成AI37%・最適化34%・その他28%と、従前広く取り組んできた領域が「生成AI」「最適化」の2つに収れんしつつある。

AI-SDの本質は、単発のAI受託に留まらず、プロジェクトで得た知見を型化してカスタムAIソリューション事業全体の生産性を底上げする知見蓄積基盤として機能している点にある。代表的な型化成果は、最適化領域の『最適化ソリューションズ』、生成AI領域の『AGT-Xソリューション』、AI開発フレームワーク『Laboro Agent Template』などである。これらは、同社が通算400件を超えるカスタムAIプロジェクトを遂行するなかで蓄積してきた再利用可能な知的資産であり、AGT-Xや新規領域への展開の原資になる。

収益面では、大林組向けの制振制御、精密機器メーカー向けの生産工程スケジューリング、日本線路技術向けの線路設備不良判定、味の素向けの献立作成エンジン、大広向けの対話テキスト自動生成など、産業実装例が珍しい高難度テーマを一社ずつ取りに行く組立てである。重要なのは、同社が受託した個別プロジェクトが単発で終わらず、後述する拡大再生産の回路を通じて次の案件パイプラインに還元されていることだ。

2-4. AGT-X(セミカスタム・生成AI/エージェント)

AGT-Xは2025年9月期から切り出された成長領域で、生成AIとエージェントAIに的を絞り、共通技術基盤を活用してセミカスタムで開発する領域である。会社は「市場の旺盛な需要を捉え、企業成長を加速化するエンジン」と位置づけ、中期的にはAI-SDと比肩する規模へ育てる方針を掲げている。

AI-SDとの違いは3つある。第一に、技術基盤(『Laboro Agent Template』等)を前提にするためAI-SDよりクイックに立ち上がる。第二に、組織的にはSDとは濃淡の異なるスキルセットを持つ「エージェントトランスフォーメーションプロデューサー(AX-P)」という新チームが担い、生成AIに領域を絞りつつ顧客変革(経営コンサル/事業企画に近いケイパ)に寄った役割を持つ。第三に、受注の入口が既存AI-SD顧客への追加提案と親和し、2025年9月期は消費財業界の営業AIエージェント、コンサルティング企業の社内知見の利活用AIエージェント、学校法人の学生サポートAIエージェント等の案件を獲得しており、通期で約2件(累計)、2025年9月期通期時点で2026年9月期には3件の追加獲得を見込んでいる。

ここで見るべきは、AGT-XがAI-SDで型化した知見(『AGT-Xソリューション』『Laboro Agent Template』)の上で立ち上がっている点である。AI-SDで先に案件を取り、ソリューション化し、AGT-Xで面展開するという順序そのものが、同社の拡大再生産の設計図と一致する。当社のAGT-Xの初期立ち上がりスピードは型化資産の厚みに規定されているとみる。

2-5. プロダクト・未来リサーチ

プロダクトは同社の投資領域で、対話型の生成AIエージェントプロダクト『未来リサーチ™』(商標・特許出願中)の開発・検証が中心である。「リサーチ発想のアイデア拡張コレクション」をコンセプトに、マーケティングの企画業務におけるアイデア創出や仮説検証を支援する設計で、2025年6月にプロトタイプを公開しユーザーフィードバックを蓄積中である。会社は事業モデル・マネタイズ手法・既存事業とのシナジーを実験しながら検証する段階と説明している。

現時点でのプロダクト売上高は音声コーパス『LaboroTVSpeech』が2025年9月期6百万円と軽微で、カスタムAIソリューション事業全体の1%に満たない。当社としては、未来リサーチは当面の収益寄与というより、「受託以外の事業モデルへの染み出しが可能か」を検証する実験枠として位置づけるのが実態に近いとみる。

2-6. システム開発事業(CAGLA)

システム開発事業は2025年4月に子会社化した株式会社CAGLAの事業が主要構成で、企業向けデザイン・システムの企画開発、PC・スマートフォン・タブレット向けアプリケーション開発、AIおよびUI/UXの研究開発を手掛ける。CAGLAの強みは①グラフデータベース技術に関する知見、②自動車産業をはじめとする製造業の顧客基盤、の2つに集約される。

2025年9月期は第3四半期以降の半期分計上で売上高12百万円、セグメント損失△59百万円と、検収タイミングを迎える受注案件が限定的ななか一時費用を吸収し赤字着地となった。ただしLaboro.AIが受注する案件でCAGLAがUI/UX開発を担う協業は既に始動しており、1Q FY2026資料ではLaboro.AIが受注したAIエージェント開発案件や自動車関連案件でCAGLAが一部開発を担うなど、協働案件が複数推進中とされる。

同事業の位置づけは、単独の売上拡大というより、Laboro.AI本体のカスタムAIと組み合わせることで、同社が従来取れていなかった「AI × システム開発」の切り口と、自動車・製造業の顧客チャネルを取りに行くための補完機能である。2026年9月期はプロジェクトマネジメント人材・UI/UXデザイナの採用を進め、上場子会社としてのガバナンスを整えながら、協働案件の数を積み上げていくPMIの実行フェーズにある。

2-7. 収益モデル

同社の収益モデルは、カスタムAIソリューション事業、システム開発事業ともに顧客企業からAI開発/コンサルティング/システム開発の対価を受け取る案件型・PJアサイン工数ベースの受託型である。SaaSのようなARR型ではなく、プロジェクトの検収に応じて売上を計上するフロー型収益が中核を占める。

このモデルの特性は2つある。第一に、大型案件の売上の計上タイミングで四半期売上が大きく振れる。2025年9月期は4QのカスタムAIソリューション事業の売上522百万円が過去最高を更新する一方、連結通期では期末近傍の案件が2026年9月期1Qにずれ込んだ影響で連結移行時予想(売上高1,934百万円)に対して△34百万円の未達となった。第二に、粗利率は工数の売れ行きと単価、そして外注に左右される。2025年9月期の連結粗利率は67%で、単体のカスタムAIと同水準だが、2026年9月期会社予想では65%と2pt低下を織り込む。体制拡充投資の先行と外注費の増加が粗利を一時的に押し下げたためである。

コスト構造を見ると、2025年9月期は売上高1,900百万円に対し人件費958百万円(売上比50%)、業務委託費197百万円(同10%)、研修採用費96百万円(同5%)、広告宣伝費52百万円(同3%)、その他費用404百万円(同21%)で、人件費の比重が高い人材集約型ビジネスであることが端的に表れている。つまり同社の収益モデルは「案件型フロー×人件費主導」であり、ARR型SaaSと同じフレームで読むと本質を取り違える。

2-8. 主要KPI

KPIは会社の設計意図そのものを映す。同社は「売上の主要な構成を占めるカスタムAIソリューション事業において、顧客企業との長期的な関係性を構築することを重視する観点から」、継続顧客売上成長率と年間新規顧客獲得数をモニタリングKPIに据えている。加えて投資家が押さえるべきは、顧客構造の分散と大口の厚みを示す上位3社構成比・1億円超顧客売上高である。以下のテーブルは、第4章(業績動向)および第6章(株価インサイト)でも繰り返し参照する核となる数値である。

KPI21/9期22/9期23/9期24/9期25/9期1Q 26/9期
継続顧客売上成長率(%、単体)△3%
年間新規顧客獲得数(社、単体)20113
新規顧客売上寄与度(%)111%
上位3社構成比(%、単体)67%50%46%35%29%
売上高1億円超顧客の合計売上高(百万円、単体)288178629870650
新規顧客売上高(百万円、単体)41283352225417
既存顧客売上高(百万円、単体)6094371,0011,2831,470
通算カスタムAIプロジェクト件数400件超

出所:決算説明資料・決算短信よりAENTRO Research作成

このテーブルの読みどころは4つある。第一に、上位3社構成比が2021年9月期67%から2025年9月期29%へ、4期で38pt低下した。特定顧客依存リスクは実質的に解消したといってよい。第二に、一方で売上高1億円超の高額顧客の合計売上高は2024年9月期870百万円から2025年9月期650百万円へ減少しており、高額顧客への依存度が下がり収益源が多様化している。

第三に、最も読みを間違いやすいのが継続顧客売上成長率△3%である。会社の算式は「(プロダクトを除く当該年度の売上高−当該年度の新規顧客からの売上高)/プロダクトを除く前年度の売上高 − 1」で、2025年9月期では(1,892−6−417)/(1,515−5)−1=△3%になる。表に載せた既存顧客売上高1,283→1,470百万円だけを見ると+15%の伸びに見えるが、これは「前年度に既に顧客だった先」の定義が年度ごとに更新されるため、単年のKPI計算とは比較対象が一致しない。KPI定義ベースでは既存顧客への売上は前年比3%縮小しており、新規顧客11社からの417百万円が売上増分を埋める構造になっている。会社は新規顧客の売上増への寄与度を111%と開示しており、これは売上増分の全量超が新規依存であることを意味する。

第四に、業界別の分散は別次元で確認する必要がある。2025年9月期の業界別売上高構成は、研究開発型産業52%(半導体17%/建設10%/自動車10%/化学・素材4%/その他製造12%)、社会基盤・生活者産業48%(消費財・小売18%/交通・輸送10%/人材5%/メディア・広告1%/その他業界15%)と、産業ドメインが大きく2つに分かれたバランス構造である。1Q FY2026では自動車業界が売上の26%(157百万円)と単四半期トップに浮上し、研究開発型産業が69%まで高まった。顧客企業単位の分散に加え、産業単位での偏りも時期によって変動する点は押さえておきたい。

2-9. 競争優位

同社は自社の競争優位を「人材」「拡大再生産の仕組み」「顧客基盤」の3軸で整理している。当社の見方もこれに重なるが、3軸は並列ではなく連動して作用する。

第一に、人材。バリューアップ型AIテーマに取り組む難易度と、それに見合う報酬水準で、コンサル・スタートアップ・事業会社・学術機関から越境してきた人材を集めている。2025年9月末時点でソリューションデザイナの年収水準は968万円と、競合のAI構築サービス企業群と比較してトップクラスとされる。SDはビジネス知見(コンサルティングスキル)と技術知見(AI/機械学習)を兼ね備えるマルチディシプリン型で、単にコンサルタントを集めるだけでは成立しない希少人材である。

第二に、拡大再生産の仕組み。取組先行例のないテーマで得た知見を型化し、次案件に応用する回路である。2025年9月期は、その効果がプロジェクト件数で具体的に可視化された。強化学習を含む最適化問題のプロジェクトが通期で34件、エージェントAIのプロジェクトが通期2件(累計)を獲得し、2026年9月期には既に3件のAIエージェント案件が獲得見込みとなっている。いずれもAI-SDで蓄積した『最適化ソリューションズ』『AGT-Xソリューション』『Laboro Agent Template』という型の上で走っている。詳細は次節(2-10)で代表事例に即して整理する。

第三に、顧客基盤。上位3社構成比67%→29%の分散が進む一方で、株主でもあるSCREEN・博報堂・THK・日本ガイシといった事業会社や、大林組・味の素・大広・Rapidus・ロームといった各産業の大手企業との取引実績が示す通り、重要テーマを任される相手先との厚い関係を維持している。顧客が同社を「テーマが決まってから発注する外注先」ではなく、「テーマそのものを一緒に掘る共創パートナー」として扱うからこそ、AI-SDで先行例のないテーマに入ることができ、型化の種が生まれる。

この3軸は循環している。優秀な人材が先行例のないテーマに挑む→ソリューション化する→顧客基盤が厚くなり次のテーマを任される→その案件から新しい知見が積み上がる→また人材が集まる。競争優位は単独の資源ではなく、この循環そのものに宿っている。

2-10. 拡大再生産の仕組み(代表事例)

同社が示す拡大再生産の回路は、(1)顧客企業とともに先行例のないテーマに取り組む→(2)プロジェクト化→(3)知見を集約して型化しソリューション化→(4)蓄積したノウハウ・技術を応用したプロジェクトを受注→(5)派生プロジェクト化、というサイクルで記述される。以下、2つの代表事例に照らして実態を確認する。

第一の事例が、最適化関連のプロジェクトの面展開(2019〜2025年)である。起点は建設物の制振AI(大林組)や塗料工場の生産計画最適化といった、産業実装例が珍しい強化学習テーマだった。そこから半導体製造装置の制御AI、土木工事の工事計画最適化、鉄道路線の工事計画最適化、半導体製造工場の生産計画、印刷裁断等の製造工程最適化、電子製品の図面設計最適化、レシピ組合せ最適化、インフラ構造物の設計パラメータ最適化、駐車場レイアウト最適化、物理・化学モデリングを用いた調合・動作点パラメータ最適化、交通サービスの人員配置計画最適化と、リアル産業を中心に業種・業界を跨いで派生してきた。累積されたノウハウは『最適化ソリューションズ』という型にまとめられ、2025年9月期には強化学習を含む最適化問題関係のプロジェクトが通期で34件獲得された。

第二の事例が、AIエージェントの面展開(2025〜2026年)である。消費財業界の営業AIエージェント、コンサルティング企業の社内知見利活用AIエージェント、学校法人の学生サポートAIエージェント、大手メディア・コンテンツ企業の社内知見利活用AIエージェント、大手小売店の市場情報調査に基づく商品開発示唆提供AIエージェントといったプロジェクトから、小売業界・メディア業界・コンサルティング業界向けの『AGT-Xソリューション』が立ち上がり、共通技術基盤『Laboro Agent Template』として結晶化した。AIエージェント関連プロジェクトは2025年9月期末時点で2025年9月期で約2件(累計)、2026年9月期には既に3件の案件を獲得見込みで、2025〜2026年の短期間で面展開が始まっている。

重要なのは、この2事例はいずれもAI-SDで先行例のないテーマを取りに行き、そこで得た知見を型化してから、次のプロジェクトを効率的に取りに行く順序になっていることだ。人と時間の投入量に比例する単純な工数売りではなく、同じ人員でもより多くの案件をより高単価で取れる生産性拡大の仕組みが内蔵されている。これが、第1章で示した会社定義「拡大再生産エンジンを内蔵したオーダーメイド型AI開発企業」の根拠である。当社は、AI-SDが知見蓄積基盤、AGT-Xが面展開エンジンという役割分担のもとで、2026年9月期以降、AIエージェント領域での拡大再生産のスピードが見えてくると見ている。

2-11. 論点

事業構造と競争優位を整理したうえで、投資家として見極めるべき論点を3つに絞る。

第一に、継続顧客売上成長率△3%という足元トレンドの解釈である。2025年9月期の成長は、会社KPI定義ベースでは既存顧客売上の3%縮小を新規顧客11社(売上寄与417百万円、新規売上寄与度111%)が埋める構造で実現されており、新規獲得の蛇口が細った瞬間に成長が止まるリスクを抱える。2026年9月期連結予想は売上高2,486百万円(+31%)・営業利益294百万円(+54%)と、既存顧客の売上縮小トレンドを覆しに行く計画線だが、継続顧客売上成長率が反転するかは、AGT-Xでの継続案件化(既存顧客への追加提案)が鍵になる。

第二に、案件型・非ARRモデル固有の業績ボラティリティである。2025年9月期は第4四半期カスタムAI売上が522百万円と過去最高を記録する一方、第4四半期カスタムAIの粗利率は前年同期68%から62%へ縮小した。これは体制拡充投資の先行と外注費の増加によるものである。

第三に、人員計画の執行リスクである。2026年9月期の体制計画は、通期末人員を2025年9月期末96名(単体)から140名(会社計画値、単体)へ+44名(+46%増)拡張する意欲的なもので、内訳はSD 25→35名(+10名、+40%)、AX-Pをゼロから6名新設、エンジニア42→61名(+19名、+45%)である。2025年9月期はSD期初目標34名に対し25名着地(△9名)だった経緯があり、AI人材獲得競争が激化するなかで計画通り採れるか、採れても立ち上がりまでのラグをどう吸収するかが、2026年9月期ガイダンス達成の最大の実行論点になる。

2-12. 本章まとめ

表面上は「生成AIブームに乗った受託AI開発会社」に見えるが、実態としては、VM(先行例のないテーマ)→型化→VD(面展開)という拡大再生産の回路を内蔵したオーダーメイド型AI開発企業である。AI-SDで産業実装例が珍しいテーマを取りに行き、知見を『最適化ソリューションズ』『AGT-Xソリューション』『Laboro Agent Template』として結晶化し、AGT-Xやシステム開発事業(CAGLA)と連動して面展開する。この回路が、投下した人と時間に比例しない生産性拡大を可能にしている。通算400件超のカスタムAIプロジェクト、上位3社構成比67%→29%の分散、1億円超顧客の合計売上高870→650百万円の減少は、いずれもこの回路が機能してきた結果である。

他方で、この回路の"絶対値"をKPIで読むと、2025年9月期は既存顧客売上△3%・新規売上寄与度111%という"新規で埋める"構造になっており、2026年9月期はAGT-Xでの継続案件化と+44名の人員拡張を同時に成立させる実行が試される。拡大再生産の仕組みは強固だが、その仕組みが2026年9月期の数字にどう跳ねるかは、AGT-Xの立ち上がりとSD・AX-P・ENGの採用進捗の両輪でしか説明できない。次章(第3章 経営戦略)では、この2軸を会社の戦略設計のどこに位置づけるかを詳述する。

3. 経営戦略・市場環境

本章の結論を先に置く。AI-SD(コア)とAGT-X(成長エンジン)の二層に、2025年4月の株式会社CAGLA子会社化によるシステム開発事業を重ねた3層ポートフォリオは、生成AI関連サービスのコモディティ化に対する防御策であり、同時に単一オーダーメイド受託の一本足モデルからの脱却戦略である。一見すると「生成AIブームに乗った人員拡張」と「足元のM&A」「新ブランドAGT-X」の三題噺に見えるが、順序を入れ替えて読むと、市場側(顧客DX予算のバリューアップへのシフト)と供給側(拡大再生産の仕組み)が同じ方向を指しており、96名→140名(+44名、+46%)の人員計画はその連立方程式の解として置かれている(定義差は §5-3 脚注参照)。

3-1. 国内AIビジネス市場

同社が戦場とする国内AIビジネス市場は、2023年度1.1兆円から2026年度2.2兆円へと3年で倍増する見通しにある(富士キメラ総研「2025 生成AI/LLMで飛躍するAI市場総調査」、2024年11月)。単純CAGRで+26%前後、いわゆる"市場の追い風"が現に吹いている局面である。

ただし、投資家が本章で押さえるべきは総額の倍増ではなく、総額の中にある バリューアップ型AIテーマ市場 の拡がりである。同社定義では、「新規製品・サービスの創出やビジネスモデル変革に資するAI投資テーマ」が当領域に該当する。会社資料によればこの市場は2023年度1,500億円から2026年度2,200億〜3,000億円へ、年率+15〜27%で拡大する(同社試算。富士キメラ総研の前掲調査およびJUAS「企業IT動向調査報告書」を参考に当社算出)。当社はこのレンジの幅そのものが、生成AIコモディティ化の影響の幅だと読む。下限2,200億円ケースでは既存のランザビジネス用途の焼き直しにとどまり、上限3,000億円ケースでは顧客企業のビジネスモデル変革に真に紐づくAI投資が立ち上がる。同社がAGT-X領域を「AI-SDと比肩する規模まで伸ばす」と宣言しているのは、この上限シナリオを取りに行くという戦略的コミットメントと読むのが正しい。

3-2. 顧客DX予算のシフト(ランザビジネス→バリューアップ)

市場規模より重いのは、顧客企業のIT予算の"質"が変わりつつある という事実である。JUAS「企業IT動向調査報告書 2025」によれば、日本企業のIT予算のうちランザビジネス予算(現行業務の維持・運営)の比率は2021年度76.7%から2024年度75.5%とほぼ横ばいだが、3年後目標では68.2%まで低下させる意向が示されている。裏側の バリューアップ予算(新規施策展開)比率は24.5%→31.8%へ +7.3pt という意向である(n=935〜1,078社、2021〜2024年度調査)。

ここで見るべきは、日本企業が「DXに意欲がある」ではなく「DX予算配分の意思決定が実際に動き始めている」という点である。IPA「DX白書2025」の日米比較では、日本企業でDXによる「ビジネスモデルの根本的な変革」に十分な成果を出しているのは4.1%にとどまり、米国の26.8%と大きく離れている。追いつきの余地そのものが、同社が狙う需要の源泉である。

加えて、この予算シフトは同社の事業構造と直接的に接続する。バリューアップ型テーマはランザ型と異なり、顧客側で発注仕様を固めてから外部に投げるという従来型のRFP方式では開発できない。仕様の不確実性が高く、PoC段階での試行錯誤を伴い、顧客の経営層・事業部門との協働を前提とする。これはまさに同社のソリューションデザイナ(SD)が担ってきた領域であり、同社の競争優位3軸(人材・拡大再生産の仕組み・顧客基盤)の効き方も、ランザ型市場ではなくバリューアップ型市場でこそ際立つ。予算シフトの進展ペースが同社の売上成長ペースを規定する、というのが当社の基本線である。

3-3. AI-SD × AGT-X の二層モデル

同社のカスタムAIソリューション事業は、FY2025より AI-ソリューションデザイン(AI-SD) と エージェントトランスフォーメーション(AGT-X) の二層構造に再編された。AI-SDは最適化・生成AIを軸にしたフルカスタム開発で、FY2025売上1,892百万円の実績を持つコア事業。AGT-Xは生成AI/AIエージェントの共通技術基盤(Laboro Agent Template)を用いたセミカスタム開発で、FY2025に新設された成長領域である。「中期的にAI-SDと比肩する規模までグロース」と会社は位置づけている。

この二層化が戦略として重要なのは、単一セグメント時代のフルカスタム一本足ではカバーできない"コモディティ化リスク"への対応策だからである。生成AI系のワンショット実装は、2024〜2025年にかけて個別ツール・SaaSベンダーが急速に参入しており、顧客側の一般的なエージェント要求はコモディティ化する方向にある。AI-SDだけで受ければ、同社も単価下落圧力に晒される。AGT-Xは、自社で型化した共通基盤を先に当て、必要な箇所だけカスタムで差別化する「クイック立ち上げ+カスタム」モデルで、この圧力を吸収する設計となっている。

言い換えれば、AI-SDが「先行例のないテーマで技術的知見を蓄積する研究的収益源」、AGT-Xが「蓄積された知見を面展開してPJ生産性を引き上げる拡大再生産ドライバ」である。会社は「AI-SDでの型化が他領域に展開される知見蓄積の中核的基盤」と説明している。当社は、この二層の連関が機能するかどうかが、FY2026以降の粗利率維持(FY2025連結67%→FY2026E 65%ガイダンス)の成否を分けると見る。二層構造は、生成AI時代の受託モデルに対する防御と攻めを同時に組む回路であって、足元の目先施策ではない。

3-4. システム開発事業(CAGLA PMI)

2025年4月1日付で100%子会社化した株式会社CAGLA(愛知県豊田市、グラフデータベース技術/UI/UX開発)は、同社が従来の単一セグメントから連結2セグメント体制へ移るための構造転換の一手である。取得価額は153百万円(アドバイザリー等を含む概算価額189百万円)、のれん63百万円・8年均等償却。第3四半期より連結開始、FY2025のシステム開発事業売上は12百万円・営業損失△59百万円の着地で、数字だけ見れば「PMI初期の赤字」だが、戦略的重みは別のところにある。

戦略的な狙いは2つに整理できる。第一に、CAGLAが保有する自動車産業を中心とした 製造業の顧客基盤 を、同社の研究開発型産業向けAI実装力(52%構成)と結合させて協働提案を成立させる点。研究開発型産業内では半導体17%/建設10%/自動車10%の分布を持つ同社にとって、自動車領域の顧客接点が増える効果は小さくない。第二に、グラフデータベース技術+生成AI という技術融合の回路を確保する点である。知識グラフは2025年以降のエージェントAIで再評価が進む技術領域であり、同社のR&D WGでも「最適化・生成AI・知識グラフ」で連携を組んでいる。1Q FY2026 ではLaboro.AIが受注したAIエージェント開発案件や自動車関連案件でCAGLAが一部開発を担う協働がすでに走っている。

もっとも、投資家目線では、CAGLAは依然としてFY2026もPMIフェーズであり、のれん償却費(年率63÷8=約8百万円)と取得関連費用が連結営業利益に下押し圧力を残す点は第4章セグメント別業績で確認すべきである。戦略としての合理性と、数字として現れる期間損益は、当面ズレて見える。

3-5. 拡大再生産の実装

拡大再生産の「仕組み」そのものは§2-7で整理した通りで、本節ではこれが FY2026にどう具体施策として実装されるか に論点を置く。会社は3つのトリガーを掲げている。

第一に、最適化領域 の面展開である。同社はFY2025までに最適化関連プロジェクトを累計34件受注しており、強化学習による振動制御・組合せ最適化などの技術パターンが型化されている。FY2026はAI-SDの営業活動で、この型をベースにした「プッシュ型提案」を強化する方針で、これは従来の顧客からの引き合いを起点としたPJに加えて、能動的な営業・提案で新規案件を取りに行くという意味を持つ。

第二に、AIエージェント領域の垂直立ち上げ である。FY2025のAIエージェント関連PJ受注は累計2件、FY2026にはさらに3件の受注見込みで、絶対数は多くない。しかし同社は2025年10月に「AGT-Xソリューション」をリリースし、共通基盤(Laboro Agent Template)を先に置いて、業界別のエージェント型商品を面展開する体制を整えた。ここでの注目は数ではなく、型化された商品を売る営業サイクル が回り始めるかどうかである。

第三に、CAGLA/グロービング/未来リサーチ の補完領域。CAGLAはAI開発の下流(UI/UX・グラフDB)、グロービング(2024年5月JV設立→2025年9月業務提携へ発展)はAI戦略の上流(経営・戦略策定)、未来リサーチは対話型プロダクトという3方向の染み出しで、従来の受託ワンショットの前後を埋める配置である。受託型のフロー収益のままでは成長に天井がある、という認識が同社の戦略の根底にある。

3-6. 人員拡張計画

FY2026の成長計画(売上+31%、営業利益+54%)を支える実行インフラが、人員の拡張計画である。通期で全社96名(FY2025期末、単体)→140名(会社計画値、単体)、+44名(+46%) の拡張を予定する。内訳は次のとおりである。

区分FY2025通期末FY2026計画(通期)増減増加率
ソリューションデザイナ(SD)25名35名+10名+40%
エージェントトランスフォーメーションプロデューサー(AX-P)0名(新設)6名+6名
エンジニア(機械学習/システム開発)42名61名+19名+45%
全社合計(単体ベース)※上記のSD/AX-P/ENGにコーポレート部門等を含む96名140名+44名+46%

出所:公開情報より AENTRO Research 作成。人員計画は期末時点、取締役/監査役を含む役員および社員(契約社員を含む)でカウント、アルバイト・パートタイマーは含まない。

この計画は3つの論点を含む。第一に、SDの採用 である。FY2025はSDが期初目標34名に対し25名で着地(△9名)と未達だった経緯があり、FY2026計画10名増の蓋然性は四半期ごとに検証する必要がある。もっとも、1Q FY2026時点で内定受諾者が期末目標に対し約半数積み上がっており、足元の進捗は改善傾向にある。第二に、AX-Pの新設。FY2025末時点で0名の新チームを6名まで立ち上げる計画で、SDからの社内異動と新規採用のハイブリッドで母集団を形成中と会社は説明している。SDとAX-Pの相互送客も発生しており、人材プールの使い方は機動的である。第三に、エンジニア採用リスク が最も重い。19名増、+45%という拡張は、AI人材獲得競争が激化する環境下では挑戦的であり、事業会社による内製化圧力のなかで計画通り採れるか、採れても立ち上がりラグをどう埋めるかが課題となる。1Q FY2026時点ではエンジニアは増減なしでの着地で、進捗はSD/AX-Pに比してビハインドである。

人員は第4章の業績章(ガイダンス達成条件)、第6章の株価章(モニタリングKPI)と接続する 重ね塗り数字 の一つで、+44名の採用進捗は四半期ごとに追うべき最重要指標の一つである。

3-7. 中長期展望

同社に正式な中期経営計画はなく、中長期方針は「事業計画及び成長可能性に関する説明資料」(最新:2025年12月19日、旧版:2023年7月31日上場時)を起点に整理される。本レポートでは詳細は第5章で扱うが、本章の文脈で押さえるべきは、中長期の3柱が次の通りであるという点だけである。

中期(FY2025〜)は「カスタムAI事業の確立」と「非連続な成長機会の模索」の並走。AI-SDの技術的エッジの強化とAGT-Xの垂直立ち上げが柱①、体制整備(採用・育成)が柱②、補完領域へのM&A/業務提携が柱③である。長期は「更なる拡大に向けた新たな事業モデルの確立」で、会社はVM(バリュー・マイニング、先例のないテーマ)→ソリューション化→VD(バリュー・ディストリビューション、面展開)の好循環で市場成長を超えるペースでの収益安定成長を掲げている。

当社はこの3柱を、時間軸の異なる3つのベット(コア深耕/隣接拡張/新領域染み出し)と読み替える。どれかが単独で成立すれば業績は出るが、3つが同時に回れば拡大再生産エンジンの二階建てが見える、という構造である。FY2026は、この3柱のうち少なくとも2つ(柱①と柱②)が回っていることを定量で確認する年と位置づける。

3-8. 論点

本章までで見えてきた戦略に対し、以下の3点を次期以降の論点として提示する。

第一に、人材の量と質の両輪での執行リスク。+44名計画のうちエンジニア19名増の蓋然性が最も不透明で、人材獲得競争激化とオンボーディング遅延は、計画通りに採れても売上貢献のタイミングがズレる構造リスクを残す。SD・AX-Pは1Q時点で順調だが、採用はペース配分であり年間を通じた進捗をモニタリングする必要がある。

第二に、拡大再生産サイクルの"速度"。AGT-Xが「AI-SDと比肩する規模」に到達するには、受注件数(FY2025累計2件+FY2026見込3件)から面展開フェーズへの遷移が必要で、1〜2年単位での観察が不可欠である。共通基盤(Laboro Agent Template)の実装度合いと、業界別ソリューションのリリースペースが先行指標となる。

第三に、新規顧客依存の緊張。第2章で述べた通り、FY2025の+25%成長は既存顧客売上△3%と新規顧客11社獲得(新規売上寄与度111%)のミックスで成立している。FY2026は、AGT-Xの立ち上がりによって既存顧客内での 継続案件化 が進むかどうかが分水嶺で、新規獲得のペースが維持できたとしても、既存顧客の継続化が進まなければ受託型モデル固有のボラティリティが残ったままになる。この緊張は第6章のアンチテーゼでも再度扱う。

3-9. 本章まとめ

本章の要諦を最後に明示する。AI-SDとAGT-Xの二層、そしてCAGLAの連結化は、もはや「生成AIブームに乗った受託AI開発会社」の目先施策として読むべきではない。顧客DX予算のバリューアップへのシフト(24.5%→31.8%)という需要側の構造変化と、拡大再生産の仕組みという供給側の競争優位を接続させる構造転換であり、市場の成長ペース(バリューアップ型AIテーマ市場 +15〜27%/年)を超える成長を取りに行くためのポートフォリオ再設計である。

この再設計の成否は、+44名(+46%)の人員拡張計画が単なる投資先行ではなく、AGT-Xの垂直立ち上げとAI-SDの最適化深耕を同時に回す"実装"として完走できるかにかかる。FY2026は、戦略の合理性が数字として現れるか、それとも先行投資のコスト側だけが先に見える年になるかの分岐点にある。次章の業績動向では、この戦略が四半期の数字にどのように落ちているかを検証する。

4. 業績動向

FY2025の数字を最初に一言で置くと、「単体ベースで見れば売上+25%・営業+37%の絶好調」であり、「連結ベースで見れば売上1,900百万円・営業利益191百万円・営業利益率10.1%」である。この二つの見え方のズレこそが、本章で解きほぐすべき構造の入口である。同社は当期、5つのイベントを経験した — ①FY2025第3四半期からのCAGLA連結化(2025年4月1日取得、100%)、②報告セグメントの単一セグメントから2セグメントへの分割、③JV(X-AI.Labo)解消と関係会社株式売却益48百万円の特別利益計上、④大型受注済案件の一部がFY2025からFY2026第1四半期へ後ろ倒れ、⑤第4四半期に単体四半期で過去最高の売上高522百万円。見かけの数字に踊らされないためには、この5本を分解して読む作業が要る。

本章では、まずFY2021〜FY2024単体/FY2025連結の境界を太字で区切ったうえで、セグメント別(4-2)・主要KPI(4-3)・コスト構造(4-4)・直近四半期(4-5)・BS/CF(4-6)・通期見通し(4-7)と層を重ねる。最後に、この章で拾っておくべき論点を4-8で整理する。

4-1. 売上・利益(5年PL)

重要な断り:FY2021〜FY2024は単体決算、FY2025は連結決算である。 同社は従来カスタムAIソリューション事業の単一セグメントだったが、2025年4月のCAGLA取得を機に連結財務諸表を初めて作成した。ゆえにFY2024以前とFY2025の比較は、厳密には「単体と連結の比較」であって純粋なYoYではない。会社側も決算短信(FY2025)で「2024年9月期は連結未作成のため対前期増減率は記載しない」としている。本レポートではこの慣行に従い、5期の表には単体と連結を並列で載せ、YoYは参考値として示す。

項目(百万円)FY2021単体(参考)FY2022単体FY2023単体FY2024単体FY2025連結FY2026E連結
売上高6577331,3691,5151,9002,486
売上原価217481499628
売上総利益5168881,0151,2721,603
粗利率(%)70.464.967.066.964.5
販管費5716818321,080
EBITDA△44224210228
営業利益△55206183191294
営業利益率(%)△7.515.112.110.111.9
経常利益△55193183166294
親会社株主に帰属する当期純利益△39139133146201
EPS(円)△3.319.708.439.2312.63

出所:公開情報より AENTRO Research 作成。FY2021単体の売上高は会社IR「事業計画及び成長可能性に関する説明資料」の推移表、FY2022-FY2025 は有価証券報告書および決算短信を正本とする。FY2026E は会社業績予想(2025年11月12日開示)で開示のある売上高・営業利益・経常利益・当期純利益のみ記載。EBITDAは会社非開示のため、営業利益に償却費等を足し戻し、独自算出。

出所:会社開示資料よりAENTRO Research作成

5年の流れを俯瞰すると、変曲点はFY2023にある。上場(2023年7月31日)を挟む同期に売上が733→1,369百万円へ+86.8%と跳ね、営業損益は△55百万円から206百万円へ黒字転換した。一方、FY2024は売上+10.7%・営業△11.1%と、上場後の体制拡充先行による一時的な利益率低下を経験している。FY2025は連結移行のため単純比較はできないが、参考としてカスタムAI事業単体(1,892百万円)でFY2024単体(1,515百万円)と比較すると+24.9%、セグメント利益250百万円は+36.6%の伸びにあたる。EBITDAで見ても 210→228百万円(+8.6%)と、OP と同様に増益基調にある。

ここで見るべきは、FY2025連結の営業利益率10.1%が、FY2023単体15.1%・FY2024単体12.1%から段階的に低下している構造である。粗利率はFY2024単体67.0%→FY2025連結66.9%とほぼ横ばいだが、販管費は833→1,081百万円(+30%)と売上伸び率25%を超えて増加した。体制拡充に伴う人件費・採用費の先行投資と外注費が営業利益率を2ポイント押し下げている、と読むのが素直である。EBITDAマージンも FY2024 13.9%→FY2025 12.0% と 2pt 低下しており、同じ構造が EBITDA ベースでも確認できる。

4-2. セグメント別業績

FY2025から報告セグメントが「カスタムAIソリューション事業」(AI-SD/AGT-X/プロダクト)と「システム開発事業」(CAGLA)の2区分になった。連結初年度のセグメント別業績は以下のとおり。

セグメント(FY2025連結、千円)外部売上高セグメント利益/損失セグメント資産
カスタムAIソリューション事業1,892,494250,5152,859,794
システム開発事業7,845△59,278145,767
調整額200△192,240
連結計1,900,339191,4362,813,321

出所:FY2025 決算短信 セグメント情報より AENTRO Research 作成。

カスタムAI事業は売上1,892百万円・セグメント利益250百万円・セグメント利益率13.2%で、単体決算の数字と一致する(単体:売上1,892百万円/営業利益250百万円)。つまりカスタムAI事業の単体実績をそのまま読めば、FY2024単体(売上1,515百万円/営業183百万円)に対しYoY売上+24.9%・営業+36.6%の増収増益である。ここが「表面は好調」の源泉にあたる。

一方、システム開発事業(CAGLA)は外部売上7.8百万円・セグメント損失△59百万円で、連結半期分(2025年4月1日〜9月30日)の実績ながら赤字で着地した。内訳を解きほぐすと、のれん償却3.9百万円・顧客関連資産償却0.7百万円・子会社取得関連費用(アドバイザリー報酬等)37.5百万円が一度に乗ったため、売上12.9百万円(セグメント間取引5.1百万円含む)の事業規模に対しコストが相対的に大きい。会社側は決算説明資料で「人件費等のコストに加え、一時費用としての子会社取得関連費用等(合計41百万円)もあり、営業利益は赤字で着地」と整理している。当社は一時費用を除いたCAGLA単体の実力損益は△20百万円前後で、PMI(Post-Merger Integration)フェーズの体制立ち上げコストが先行している局面と読む。

のれんは63,360千円が計上され、8年均等償却(年間約7.9百万円、FY2025は半期分3.9百万円)である。取得原価153百万円+アドバイザリー等37.5百万円=計190百万円規模のM&Aは、FY2025末の現金2,048百万円に対し10%弱であり、財務インパクトは限定的。問題は損益インパクトでもなく、AI-SD事業とのシナジー(グラフデータベース × 生成AI)が今後どれだけ連結売上に乗ってくるかに集約される。

4-3. 主要KPI推移

セグメント財務の下に、事業の実態を示す4つのKPIを並べて見る — 上位3社構成比、売上規模別構成、新規顧客獲得数、業界別売上構成である。

KPIFY2021FY2022FY2023FY2024FY2025
上位3社構成比(%)6750463529
100百万円超 顧客 売上(百万円)288178629870650
50-100百万円 顧客 売上(百万円)151248380219575
10-50百万円 顧客 売上(百万円)165244307327607
10百万円未満 顧客 売上(百万円)5161519759
新規顧客獲得数(社)112011
新規顧客売上寄与度(%)111
既存顧客売上成長率(%)△3

出所:FY2025 決算説明資料(顧客ポートフォリオ)より AENTRO Research 作成。既存顧客売上成長率は「プロダクト除く当該年度の売上高−当該年度の新規顧客売上高/プロダクト除く前年度の売上高−1」(会社定義)。新規顧客売上寄与度は「当該年度の新規顧客売上高/(当該年度売上高−前年度売上高)」(会社定義)。

ここで顧客ポートフォリオの構造変化を読む。第一に、分散は劇的に進捗した — 上位3社構成比は4期で67%→29%と38ポイント低下し、特定顧客依存リスクは実質的に解消したと言って良い水準である。第二に、売上1億円超の高額顧客層の合計売上高は2024/9期870百万円→2025/9期650百万円と減少しており、高額顧客への依存度も低下している。顧客の分散と大口依存の解消が同時に進んでいるのは、収益基盤の安定性という意味ではポジティブだが、裏を返せば大型案件のリピート率が低下している可能性も示唆しており、次に見る既存顧客売上成長率と合わせて読む必要がある。

一方で、FY2025の成長の内訳を開けると景色が変わる。既存顧客売上成長率は△3%、新規顧客売上寄与度は111%である。言い換えれば、カスタムAI事業の売上+25%成長の中身は「継続顧客の売上はむしろ縮小し、新規顧客11社の獲得(新規売上41百万円)で埋め合わせて辛うじて成長している」という構造にある。新規顧客数はFY2024の20社から11社へ減少しており、獲得ペース自体も減速した。

業界別の売上構成は相対的に健全で、研究開発型産業(半導体17%/建設10%/自動車10%/化学素材4%/その他製造12%)が52%、社会基盤・生活者産業(消費財小売18%/交通輸送10%/人材5%/メディア広告1%/その他15%)が48%とバランスは良い。特定産業の景気サイクルに業績が引きずられる構造ではない。

4-4. コスト構造

損益率の議論の根になるのがコスト構造である。FY2025連結とFY2024単体を並べて売上対比で見る。

項目(百万円・売上対比)FY2024単体FY2024 構成比FY2025連結FY2025 構成比
売上高1,5151,900
人件費(原価+販管費合算)78352%95850%
研修採用費866%965%
業務委託費1168%19710%
広告宣伝費564%523%
その他費用28919%40421%
営業利益18312%19110%

出所:FY2025 決算説明資料(コスト構造)より AENTRO Research 作成。人件費はPJ執行工数(原価要因)及び営業/管理工数(販管費要因)の合算。

売上対比で見ると、人件費比率は52%→50%とむしろ2ポイント低下しているにもかかわらず、営業利益率は12%→10%と2ポイント下がった。差分の主因は業務委託費(8%→10%、金額では+81百万円)と「その他費用」(19%→21%、+115百万円)である。業務委託費増は、会社側が第4四半期決算説明で「PJ執行における業務委託費の増加により粗利率/営業利益率が縮減」と言及しており、大型PJの進行に外部リソースを厚めに使った結果と読める。「その他費用」の膨らみには、CAGLA取得関連費用37.5百万円と連結化に伴うのれん償却・顧客関連資産償却(合計4.7百万円)が含まれる。

単体ベースで見れば、人件費比率の低下が効いてFY2024単体の営業利益183百万円→FY2025単体250百万円と増益を確保したが、連結では子会社取得関連の一時費用とシステム開発事業の立ち上げ赤字に吸収された。ここは「連結決算の見かけが単体より悪い」ことの会計的な説明にあたり、事業の実力としては単体250百万円を起点に読むのが当社の見方である。

4-5. 直近四半期(FY2026 Q1)

FY2026第1四半期(2025年10月〜12月)は、売上高630百万円・営業利益113百万円・親会社株主に帰属する四半期純利益88百万円で着地した。通期ガイダンス(売上2,486百万円/営業利益294百万円)に対する進捗率は売上25.3%・営業38.4%である。

項目(千円)FY2026 Q1連結
売上高630,091
カスタムAI事業 外部売上615,833
システム開発事業 外部売上14,257
売上原価202,939
売上総利益427,151
粗利率(%)67.8
販管費313,948
営業利益113,203
営業利益率(%)18.0
経常利益113,653
親会社株主に帰属する四半期純利益88,350
セグメント利益(カスタムAI)116,805
セグメント損失(システム開発)△3,901

出所:FY2026 第1四半期 決算短信より AENTRO Research 作成。

出所:会社開示資料よりAENTRO Research作成

Q1を単純に4倍すると売上高2,520百万円・営業利益453百万円となり、ガイダンスの売上2,486百万円は射程内、営業利益294百万円はむしろ上振れ余地が大きい。ただし、このQ1の強さには二つの会計的注釈が要る。第一に、FY2025 Q4で売上の計上が後ろ倒れた大型案件の一部がQ1へ取り込まれた(会社開示:連結予想未達△34百万円の一部)。第二に、カスタムAI事業の過去の四半期パターン(下表)を見ると、同社は従来Q4偏重の季節性を持つ。

期(単体、百万円)Q1Q2Q3Q4
FY2023 売上283354382349
FY2024 売上335377369432
FY2025 売上513465391522
FY2023 営業利益37646539
FY2024 営業利益19482986
FY2025 営業利益12184△2166

出所:FY2025 決算説明資料(四半期推移)より AENTRO Research 作成。カスタムAI事業単体ベース。

ここで見るべきは、FY2025のカスタムAI事業Q1が営業利益121百万円と好調だった一方、Q3では体制拡充投資の先行により△21百万円の赤字に沈んだ四半期ごとの振れの大きさである。FY2026 Q1は連結ベースで営業113百万円と堅調に入ったが、その背景にはQ4→Q1の売上計上ズレ込み分が含まれるため、Q1単独の進捗率38.4%をそのまま通期の上振れ期待に直結させるのは尚早である。Q2の着地で、ズレ込み分を除いた「素の」収益力が見えてくる。

新規顧客はFY2026 Q1で3社を獲得した(FY2025通期は11社)。1四半期の数字だけで年間ペースを論じることはできないが、通期目標(公表はされていないがFY2025と同水準11〜20社を想定するのが妥当)に対しては無理のない滑り出しである。ただし、FY2025で確認された「既存顧客売上△3% × 新規顧客+11社=新規寄与度111%」という構造がFY2026も続くのかは、この段階では判断できない。継続顧客売上の反転は、この業績章とは別の視点(第6章 株価インサイト)でも追う投資テーマとなる。

システム開発事業(CAGLA)は外部売上14百万円・セグメント損失△3.9百万円で、FY2025半期(赤字△59百万円)と比べると赤字幅は大きく縮小している。取得関連費用が剥落し、のれん償却も四半期分(2百万円)に平準化したことが寄与した。AIエージェントの開発案件でCAGLAがUI/UX開発を担う協業事例も出始めており、PMIは順調と評価してよい。

4-6. BS・CF

FY2025末連結のバランスシートは、現金及び預金2,048百万円、総資産2,813百万円、純資産2,548百万円、自己資本比率90.6%で、固定負債はゼロである。上場調達資金(2023年7月)の保守運用を継続しており、財務基盤は極めて厚い。

項目(百万円)FY2023単体末FY2024単体末FY2025連結末FY2025/12 LTM
現預金同等物1,9431,5232,0482,081
売上債権461575552589
流動資産合計2,4142,1092,6232,703
固定資産合計75481189192
うち 無形固定資産(のれん含む)7067
総資産2,4902,5912,8132,896
流動負債合計242200265255
固定負債合計0000
純資産2,2472,3912,5472,640
自己資本比率(%)90.292.290.691.2
BPS(円)141.96150.49160.04

出所:有価証券報告書および決算短信より AENTRO Research 作成。

FY2024末からFY2025末の資産構造の変化には2つの動きが同時に走っている。第一に、FY2024末に計上されていた関係会社株式390百万円(X-AI.Labo出資、2024年5月設立時の払込)がFY2025にJV解消で売却され、現金410百万円として回収された(特別利益48百万円計上)。第二に、CAGLA取得の対価153百万円(連結範囲変更伴う支出55百万円は取得時点のCAGLA保有現金を差し引いた純額)とのれん63百万円・顧客関連資産8.9百万円が固定資産に乗った。ネットでは投資活動CFで+300百万円の資金流入が生じており、JV整理と小規模M&Aを同一期で同時に捌いた結果、財務余力はむしろ拡大した。

FY2025連結キャッシュフローの概要は、営業CF 215百万円・投資CF +300百万円・財務CF 8百万円で、期末現金は1,523百万円(FY2024単体末)→2,048百万円(FY2025連結末)と+525百万円増加した。営業CFは税引前利益215百万円をベースに、減価償却費・のれん償却・持分法投資損失・売上債権減少といった非現金費用と運転資本の戻しを足し、関係会社株式売却益△48百万円を差し引いた結果215百万円で、税引前利益とほぼ一致する健全な形である。投資CFがプラスに転じているのはJV株式売却+410百万円の一過性要因で、本業投資(有形固定資産取得/CAGLA取得)は差し引きで常態的にマイナスが続く構造にある。

過去3期の単体→連結比較は下表のとおり。

CF(百万円)FY2022単体FY2023単体FY2024単体FY2025連結
営業CF△1821164215
投資CF△54△15△434300
財務CF98787698
フリーCF(営業+投資)△236101△430515

出所:有価証券報告書および決算短信より AENTRO Research 作成。

FY2024の投資CF△434百万円は関係会社株式取得(X-AI.Labo出資390百万円)、FY2025の投資CF+300百万円は同株式の売却回収(410百万円)とCAGLA取得・有形固定資産取得の差し引きで成り立っており、両期ともに特殊要因で投資CFが大きく振れている。事業の基礎体力としての営業CFは、単体ベースでFY2023 116→FY2024 4百万円と運転資本増加の影響で一度急減したが、FY2025連結で215百万円へ回復した。売掛金の回収サイクルが改善に寄与している(売上債権 FY2024末575→FY2025末552百万円)。

4-7. 通期見通し

FY2026通期の連結業績予想は、売上2,486百万円(YoY+30.8%)・営業利益294百万円(+53.6%)・経常利益294百万円(+76.8%)・親会社株主に帰属する当期純利益201百万円(+36.9%)・EPS 12.63円である。粗利率は65%(FY2025 67%から2ポイント低下想定)・営業利益率は11.9%(10.1%から1.8ポイント改善想定)。

項目FY2025連結実績FY2026予想増減率Q1進捗率
売上高(百万円)1,9002,486+30.8%25.3%
売上総利益(百万円)1,2721,603+26.1%26.6%
営業利益(百万円)191294+53.6%38.4%
経常利益(百万円)166294+76.8%38.5%
当期純利益(百万円)146201+36.9%43.8%

出所:有価証券報告書、決算短信および FY2026 Q1 決算短信より AENTRO Research 作成。

出所:会社開示資料よりAENTRO Research作成

同社は連結業績予想をセグメント別には開示していない(会社側注記:「連結決算移行に伴い各セグメント単体の予想は非公表」)。したがって、売上+31%・営業+54%の内訳を機械的に分解することはできない。ただし、方向性としては、①カスタムAI事業本体の+25%成長を継続(FY2025単体実績ベース)、②AGT-X領域の垂直立ち上げによる加算、③システム開発事業(CAGLA)の黒字転換またはPMI費用の剥落、の3つの組み合わせで到達する絵と読める。

実現の鍵は4-3で見た通り継続顧客売上の反転と、大型PJの売上計上タイミング管理、そして第3章で論じた140名体制(FY2025期末96名→140名、+44名)の執行である。人員増+40%前後に対して売上増31%と、コストが先行する人的投資サイクルのなかで営業利益率を2ポイント改善させる計画は、見かけよりタイトである。Q1の進捗率38.4%は好発進だが、前述のとおり後ろ倒れ分の取り込みを含むため、Q2・Q3での通常検収ベースの売上進捗を見届けたい。

4-8. 注目点・論点

本章で解きほぐした構造から、FY2026を評価するうえで追うべき4つの論点を整理する。

第一に、既存顧客売上成長率の反転である。FY2025の△3%が、FY2026に正に転じるか、少なくとも△3%を下回らないか。これが同社の「拡大再生産エンジン」(既存PJから知見を型化→継続案件化)が想定通り動いているかの最大のシグナルとなる。既存顧客からの継続案件比率は、生成AI/AGT-X領域が立ち上がった後の構造転換期にこそ要注意である。

第二に、大型案件の売上計上タイミング管理である。FY2025は「一部大型案件の進行計画変更」によって連結予想未達△34百万円で着地した。非ARR・案件型受託モデルでは、四半期ごとの売上が大型案件の売上計上タイミングに強く依存する。FY2026 Q1の強い進捗率には後ろ倒れ分が含まれるため、Q2単独の数字で素の実力を測る必要がある。

第三に、CAGLAの黒字転換と連結シナジーの可視化である。FY2025半期で△59百万円だったシステム開発事業セグメント損失は、Q1で△3.9百万円まで改善した。一時費用(取得関連費用37.5百万円)の剥落によるものか、本業の収益改善によるものかの切り分けはQ2以降の推移で読む。加えて、AI-SD・AGT-X × CAGLAの協業案件(AIエージェント × UI/UX)が連結売上の押し上げに寄与する姿が、FY2026中にどこまで見えるか。

第四に、人員計画の執行力である。SDはFY2025の期初計画34名に対し25名(△9名)で未達だった。FY2026計画はSD +10名・AX-P +6名・ENG +19名の+35名で、FY2025の未達実績を踏まえると難度は高い。人件費の先行計上が営業利益率に効く構造のなかで、採用ペースが計画を下回れば売上にも効いてくる。

4-9. 本章まとめ

FY2025の業績は、表面を撫でれば「売上+25%・営業+37%」の好調企業だが、連結初年度として読むと景色が変わる。カスタムAI事業単体の+25%成長を、連結側で①システム開発事業の立ち上げ赤字△59百万円(CAGLA取得関連費用とのれん償却)、②JV解消に伴う持分法投資損失28百万円(営業外)と特別利益48百万円、という2つのノイズが覆い、連結営業利益率は10.1%へ着地した。本章のテーブル群が示すのは、単体ベースの事業の実力は依然強い一方、連結ベースでは一時費用と構造転換コストが先行しているという二層構造である。

さらに、カスタムAI事業の+25%成長そのものの中身にも注意が要る。既存顧客売上△3% × 新規顧客+11社=新規寄与度111%という構造は、継続案件の細りを新規で埋めるフェーズにあることを示す。顧客ポートフォリオの分散(上位3社構成比29%、1億円超顧客 870→650百万円)は強いが、それが継続的な売上成長の基盤として機能するかは、既存顧客売上成長率の反転を待って判断する類の問題である。

総じて、本章からの見方は次の通りである — 単なる「AI受託の急成長企業」として読むのではなく、連結初年度の会計ノイズと構造転換コストを剥いだ素の事業実力(カスタムAI単体の売上+25%・営業+37%)を起点に、その成長の内訳(新規依存)と継続顧客の反転タイミングを追うべき企業として読む。FY2026 Q1の好発進は期待値を前倒しさせるが、Q2までズレ込み分を除いた素の収益力を確認してからが本番である。次章(第5章 中長期成長方針)では、この+31%成長ガイダンスの背後にある施策と人員計画を掘り下げる。

5. 中長期成長方針

正式な中期経営計画は公表されていないが、「事業計画及び成長可能性に関する説明資料」(2025年12月19日)とFY2026業績予想、およびIPO時の資金使途の進捗から、中長期の方向性は十分に整理できる。同社が2023年7月の上場時に公表した旧版資料と対比すると、方針の骨格は「AI-SD(コア)× AGT-X(成長)× 補完領域M&A/業務提携」の3柱に整理し直されており、正式な中計フォーマットを取らないまま、体制目標・資金使途・ポートフォリオ再編が方針資料上で明示されている構造である。本章では、この「方針資料の読み替え」を起点に、FY2026単年計画の定量目標、体制目標、事業ポートフォリオ再編、資金使途の進捗、キャピタルアロケーション、配当政策、評価軸の順で整理する。

5-1. 方針の位置づけ

同社のIR上、いわゆる「◯年売上◯◯億円・営業利益◯◯億円」といったフォーマット化された中期経営計画は現時点で存在しない。中長期の方向性は、2025年12月19日に更新された「事業計画及び成長可能性に関する説明資料」(以下、成長可能性資料)と、2025年9月期決算短信および2026年9月期第1四半期決算説明資料の3点に分散して開示されている。

このうち、方針レベルの骨格は成長可能性資料に集約されている。会社は中期(2025年9月期〜)の取組みを、柱①市場成長を超えるペースでの安定収益成長、柱②成長を支える体制整備、柱③非連続な成長に向けた新領域への染み出し、の三本柱として整理している。定量的な数値コミットは短信開示のFY2026単年予想に絞られ、3年先の売上・利益レンジは提示していない。

当社は、この状態を「中計が無いから不透明」と読むのは適切でないとみる。成長可能性資料には、注力領域(AI-SD/AGT-X/プロダクト)、体制増強目標(FY2026期末計画140名)、IPO調達資金の使途別進捗、事業ポートフォリオ再編(CAGLA子会社化・グロービング業務提携)が揃っており、方針としての輪郭は十分に描けている。中計形式でないのは、連結初年度(FY2025)で前期連結対比が不能な時期に3年先の定量目標を置いても蓋然性が低いという、ステージ特性の反映と解釈するのが妥当である。

5-2. 単年計画(FY2026)

現時点で会社が定量コミットしているのは、FY2026通期連結予想のみである。

FY2026通期連結業績予想

項目FY2025実績(連結)FY2026予想(連結)前年比
売上高(百万円)1,9002,486+586(+30.8%)
売上総利益(百万円)1,2721,603+331(+26.1%)
売上総利益率66.9%64.5%△2.4pt
EBITDA(百万円)228
営業利益(百万円)191294+103(+53.6%)
営業利益率10.1%11.9%+1.8pt
当期純利益(百万円)146201+54(+36.9%)

出所:有価証券報告書、決算短信およびFY2026第1四半期決算説明資料より AENTRO Research 作成

売上+31%・営業利益+54%の増益計画である。粗利率は67%から65%へ2pt低下する見込みで、これは体制拡張に伴う人件費の先行負担を織り込んでいる。一方、販管費コントロールと売上規模拡大で営業利益率は10%→12%へ2pt改善する設計になっている。

足元の進捗は計画を前倒す形で入っている。2026年9月期第1四半期(2025年10-12月)の連結実績は売上高630百万円・営業利益113百万円・当期純利益88百万円で、通期予想に対する進捗率は売上25.3%・営業利益38.4%・当期純利益43.8%である。ここで重要なのは、第1四半期の売上には「FY2025第4四半期からの計上タイミングズレ込み案件」が取り込まれている点である。会社はFY2025通期で、大型受注済案件の進行計画変更により収益計上タイミングがFY2026第1四半期に後ろ倒れ、FY2025業績予想を△34百万円下回って着地したと説明している。言い換えれば、FY2026第1Qの好進捗の相当部分は、FY2025からの前倒し計上に支えられており、第2四半期以降の新規案件立ち上がり・収益計上ペースが通期達成の実質的な焦点になる。

当社は、FY2026計画の達成蓋然性を評価するうえで、売上よりも先に、後述の体制拡充(96名→140名)の進捗と、AGT-Xの受注件数の積み上がりを見るべきとみる。単年計画の数字そのものは上振れ余地を残す構造であるが、そこに依存して評価すると、翌期以降の連続性を見誤る。

5-3. 体制目標

同社は成長可能性資料で、FY2026期末(2026年9月末)までに連結従業員を140名へ拡張する計画を掲げている。本レポートでは以後、FY2025期末の単体従業員数を96名、FY2026期末を140名(単体、会社計画値)とし、+44名・+46%の拡張として整理する。職種別内訳の合計(下表)は会社IR区分の96名となる。

体制の増強目標(FY2026計画、期末人員)

区分FY2025期末FY2026計画増加目標
ソリューションデザイナ(SD)2535+10
エージェントトランスフォーメーションプロデューサー(AX-P)0(新設)6+6
エンジニア(機械学習・システム開発)4261+19
その他(コーポレート等)2231+9
役員77+0
合計96140+44

出所:FY2025決算説明資料およびFY2026第1四半期決算説明資料より AENTRO Research 作成。

体制目標の読み方で重要なのは、単なる頭数の拡張ではなく、事業ポートフォリオ構造と一対一で対応している点である。SD(+10名)はAI-SDのコア領域を担うフルカスタム人材、AX-P(+6名)はFY2026に新設区分として切り出した生成AI/エージェントAI領域のセミカスタム人材、ENG(+19名)はAI-SD/AGT-Xの開発実装を支える機械学習エンジニア・システム開発エンジニアである。職種構成の比率そのものが、AI-SDを守りつつAGT-Xを立ち上げるという方針の可視化になっている。

足元(2026年9月期第1四半期末)の連結人員は106名、前四半期末96名から+10名の純増で進捗している。内訳は、ENG横ばいの42名、SD 25名→29名(+4)、AX-P6名とAX-P新設局面でのシフト、その他22→24名などで、AI営業・プロマネ側(SD/AX-P)の採用は順調、ENGは前四半期比横ばいに留まっている。会社は第1四半期時点で、SDとAX-Pの採用は「年間目標に向けて順調に体制拡大が進捗」と評価する一方、ENGは人材獲得競争の激化を受け、候補者体験の向上や集客強化で対応中としている。

前期(FY2025)の実績も参照しておく価値がある。FY2025の期初目標では、SDを34名まで拡張する計画だったが、実績は25名(2025年12月開示時点の分類)で△9名の未達に終わった。ここに、AI人材の採用マーケットが供給制約に入っている構造が出ている。その経験を踏まえ、FY2026の+44名計画は、SDだけでなくAX-P・ENG・コーポレートに分散する設計に組み替えられており、リスク分散は意識されている。

当社は、FY2026の+44名計画を「採れれば順当、採れなければFY2027以降の成長余力が目減り」という、執行リスクのまま引き受けられた計画とみる。評価上の焦点は、通期目標の達成可否そのものより、職種別(とくにENG)の四半期進捗である。

5-4. 事業ポートフォリオ再編

FY2025は、同社が単一セグメント(カスタムAIソリューション事業)の単体会社から、2セグメント(カスタムAIソリューション事業/システム開発事業)の連結企業へ移行した期にあたる。この移行は、中計を伴わずに起きた事業ポートフォリオ再編として、中長期方針の中心論点である。

ポートフォリオ再編は3つの動きに整理できる。第一が、カスタムAIソリューション事業の内部構造の書き換えである。会社はFY2025末時点で、従来のオーダーメイド一本足構造を、コア領域のAI-SD(フルカスタム、最適化・生成AI領域)、成長領域のAGT-X(セミカスタム、生成AI/エージェントAI領域)、投資領域のプロダクト(未来リサーチ™)の3領域に分解した。会社はAGT-Xを「今後の当社の成長のエンジンと位置づけ、中期的にはAI-SDと比肩する規模にグロースさせる」と明示している。言い換えれば、AI-SDは規模を維持しながら技術的エッジで単価を取り、AGT-Xは新チーム(AX-P)を立ち上げて垂直的に量を積む、という役割分担を領域単位で固定した。

第二が、2025年4月のCAGLA子会社化である。普通株式の取得価額は153百万円、アドバイザリー費用等を含めた合計価額は189百万円、のれん63百万円(8年均等償却)で、FY2025第3四半期より連結決算に反映されている。CAGLAはグラフデータベース技術とUI/UX開発に強みを持ち、自動車産業を含む製造業の顧客基盤を保有する。FY2025のシステム開発事業セグメント売上は12百万円(半期分のみ)で、営業利益は取得関連費用とのれん償却等を含んで△59百万円の赤字である。規模として見ればPMIフェーズだが、Laboro.AI本体の研究開発型産業(半導体・建設・素材)とCAGLAの製造業顧客基盤との協働提案という、顧客基盤の相互補完が狙いに置かれている。

第三が、2025年9月のグロービング業務提携への発展的移行である。同社はグロービングと2024年5月に合弁会社X-AI.Labo(出資比率Laboro.AI 22%)を設立したが、約1年で合弁契約を解消し、保有株式410百万円で売却、業務提携契約へ切り替えた。会社は解消理由として、JVという"ハコ"を介することで人材アサインや契約実務に時間がかかること、JVを介さない本体同士の協働で既に成果が出ていることを挙げている。株式売却に伴いFY2025は特別利益48百万円を計上し、X-AI.Labo向け390百万円の出資は回収済みとなった。業務提携そのものは継続しており、経営/AI戦略の策定からAI開発の実装までを一気通貫で提供する方向で共同案件創出を進めている。

当社は、この3つの動きを束ねると、同社は「単体×単一セグメントのカスタムAI会社」から、「連結×2セグメント×3領域のハイブリッド型AI開発企業」へ、中計フォーマットを経由せずに構造転換を済ませたと評価する。中計が無いのではなく、中計の代わりにポートフォリオそのものを書き換えたと読むのが正確である。

5-5. 資金使途の進捗

IPO時(2023年7月31日上場)の公募・売出しで調達した資金の使途は、成長可能性資料の最新版でアップデートされている。

IPO調達資金の使途別進捗(単位:百万円)

資金使途予定金額2023/9期実績2024/9期実績2025/9期計画2025/9期実績
採用(SD/エンジニア等の確保)265258514092
マーケティング(広告・展示会等)14111567252
インフラ構築(GPUサーバー増強等)85404545
借入金返済4646
JVへの出資金(X-AI.Labo)390390
合計92983571257189

出所:FY2025成長可能性資料よりAENTRO Research作成。千円表示を百万円で再計算、小数点以下切り捨て。

進捗の読み方には3点ある。第一に、借入金返済46百万円は完了、JV出資390百万円はX-AI.Labo株式売却(回収額410百万円・特別利益48百万円)で実質回収済みで、929百万円の調達枠のうち437百万円が流動化した。第二に、採用・マーケティング・インフラの3費目(計491百万円枠)の累計消化は、2025/9期末までで採用202百万円、マーケ119百万円、インフラ85百万円で、残余枠は採用62百万円、マーケ21百万円、インフラ0百万円である。第三に、2025/9期単年では予定257百万円に対し実績189百万円と約67百万円の未消化が発生している。これはSDの採用進捗未達等が主因である。

当社は、IPO調達資金の使途として中期方針上の意味は、「予定どおりに計画内で使い切る」ことより、「成長投資の原資がまだ柔軟に残っていること」にあるとみる。借入返済・JV出資が完了し、運転資金にも余裕があるため、インオーガニック成長(M&A/業務提携)の追加原資を本体キャッシュから捻出できる構造になっている。

5-6. キャピタルアロケーション

同社の成長投資余力は、正式中計が無くても財務指標から十分に測定できる。

2025年9月期末時点で、現金及び預金2,048百万円、自己資本比率90.6%(連結)、固定負債は1年内返済予定の長期借入金1百万円を除き実質ゼロである。FY2025営業キャッシュフローは215百万円、投資キャッシュフローは+300百万円(X-AI.Labo株式売却410百万円の寄与)で、期末現金残高は期初比+525百万円の2,048百万円まで積み上がった。2026年9月期第1四半期末の現金及び預金は2,081百万円とさらに積み増している。

この財務基盤のうえに、キャピタルアロケーションの優先順位は明確である。第一に、FY2026の体制拡張(+44名)に伴う人件費・採用費の内部充当。採用265百万円枠の未消化分(計62百万円)と、営業キャッシュフローで十分に賄える規模である。第二に、補完領域へのM&A・業務提携。CAGLA取得実例(合計189百万円・のれん63百万円)は現金残高に対し限定的で、数億円規模の追加M&A複数件を自己資金で吸収できる余力がある。会社も「M&A/協業:補完的な機能を持つ領域への染み出しの検討/推進。M&Aや企業提携等の複数の手法を活用し、当社事業と補完的な領域への進出の機会を探索」と、FY2026の取組み方針として明示している。第三に、プロダクト領域(未来リサーチ)の実験的投資。これは連結売上・費用に与える影響が「軽微」と会社が注記している通り、試行段階の投資である。

当社は、同社のキャピタルアロケーションは「守り=体制投資の内部充当/攻め=補完領域M&A・業務提携」の二段構造になっているとみる。株主還元(後述)よりも成長投資を優先するのは、連結化直後の事業構造転換期として合理的であり、現金残高の厚みは当面の自由度を担保している。

5-7. 配当政策

FY2025の配当は1株0円、FY2026予想も1株0円で、継続無配である。会社はFY2025決算短信で、配当性向・純資産配当率の項目も空欄としている。

配当政策に関する明示的な方針は、上場時の有価証券届出書で示された「内部留保を将来の事業展開と経営体質強化のための投資に充てることが最大の利益還元につながる」という整理が継続している。同社はグロース上場企業として、現金を成長投資に回す段階にあり、継続無配は方針の結果である。

当社は、現段階の同社を配当株として評価するのは適切でないとみる。配当政策の論点化は、AGT-Xが立ち上がり、AI-SDとの二層モデルで利益キャッシュが安定的に積み上がる局面(早くてもFY2028以降)まで繰り延べるのが妥当である。

5-8. 評価軸

正式中計が存在しない中長期方針をどう評価すべきか。本レポートとしての見方は、3つのモニタリング軸に集約する。

第一に、継続顧客売上成長率の転換である。FY2025はプロダクトを除く既存顧客売上が前年比△3%で、成長は新規顧客11社(新規売上寄与度111%)に支えられた構造だった。中長期方針の成否は、この継続顧客売上がマイナスからプラスへ転換するかに一次的に依存する。AGT-Xが既存顧客向けの「継続案件化」装置として機能するかが、四半期ごとの観察対象である。

第二に、AGT-Xの垂直立ち上げ進捗である。会社はFY2025累計でAIエージェント関連PJを2件受注し、FY2026には既に3件の案件を獲得見込みと開示している。さらに最適化関連PJの累計受注件数は2025/9期累計で34件に達している。AI-SDのコア案件に加え、AGT-Xの四半期受注件数(および単価)が想定通り積み上がるかは、「AI-SDと比肩する規模へ」という会社の中期コミットの実現可能性を規定する。

第三に、体制拡張(96→140名、+44名、単体ベース)の執行力である。SD+10/AX-P+6/ENG+19/コーポレート等+9の職種別内訳のうち、とくにENGは第1四半期時点で前四半期比横ばいに留まっており、AI人材獲得競争が激化する中で通期達成できるかが試される。人員計画の未達は、FY2026単年の売上達成だけでなく、FY2027以降の受注キャパシティに波及するため、先行指標としての重要度が高い。

5-9. 本章まとめ

総じて、同社の中長期成長方針は、正式中計の形を取らない代わりに、成長可能性資料で「AI-SD × AGT-X × 補完領域M&A/業務提携」の3柱として輪郭が描かれ、FY2026単年ガイダンス(売上2,486百万円・営業利益294百万円・当期純利益201百万円)と体制目標(96名→140名)で定量面を支える構造になっている。連結初年度での構造転換(CAGLA子会社化・グロービング業務提携・AGT-X新設)、IPO調達資金の柔軟な残存(採用枠84百万円、JV出資390百万円は株式売却で実質回収)、強固な財務基盤(自己資本比率90.6%・固定負債ゼロ・現金2,048百万円)を組み合わせると、方針の"粗さ"は中計不在ゆえの情報不足ではなく、転換期の会社が選んだ情報開示の形態と読むのが妥当である。

本レポートとしての見方を最後に明示すると、同社の中長期方針は「受託AI開発会社から、生成AI時代の拡大再生産エンジンを持つオーダーメイド型AIパートナーへ」の構造転換を、正式中計を通らずに進めているフェーズにある。評価軸は、(1)継続顧客売上成長率のマイナスからの転換、(2)AGT-Xの垂直立ち上げ進捗、(3)+44名の体制拡張の執行力の3点で、これらのKPIが揃ってプラスに向かうかが、中計なしで進む中長期方針の成否を決める。第6章の株価インサイトは、この評価軸を前提に、非ARR・案件型モデルのバリュエーション特性と併せて読む必要がある。

6. 株価インサイト

本章は No Rating / No Target Price の方針で記述する。Laboro.AIの株価を、案件型受託・非ARR・連結初年度という3つの制約のもとでどう読むべきかを整理し、PER/PBRの絶対水準ではなく「継続顧客売上成長率の転換」と「AGT-X立ち上がり」の二点をモニタリングKPIとして提示する。

6-1. 株価推移の読み方

Laboro.AIの株価は、2023年7月31日の東証グロース上場から2年半強が経ち、「生成AIブームに乗ったカスタムAI受託小型株」という第一印象を、一度ほどいて読み直す段階に来ている。上場当時は国内の生成AI関連銘柄が一斉に物色された局面で、同社もカスタムAI × 東大松尾研・BCG出自という希少性でテーマ株的に扱われた。しかし実態は、ARR型SaaSではなくPJアサイン工数ベースの受託モデルであり、四半期業績は大型案件の計上タイミングで揺れる。株価も、同じグロース市場の生成AI関連プレイヤーと同じリズムでは動かない。ここが出発点である。

市場データの現況は下表のとおりである。市場倍率は市況で日々動くため、絶対水準として本文に固定化はせず、半期/四半期ベースの推移から「評価軸の揺れ」を読むことを優先する。

項目基準日
上場市場東証グロース(ティッカー5586)2023年7月31日上場
決算期9月期
発行済株式数15,918,577株(自己株式38株)2025年9月末
EPS(実績)9.23円FY2025実績(連結)
EPS(会社予想)12.63円FY2026会社予想
BPS160.04円2025年9月末
配当0円(無配継続)FY2024〜FY2026会社予想
株価(終値)877円2026年4月22日
時価総額13,523百万円LTM ベース(2025/12 時点)
企業価値11,442百万円LTM ベース(2025/12 時点)
実績PER(FY2025連結)104.93倍EPS 9.23円ベース
予想PER(FY2026会予)67.28倍EPS 12.63円ベース
PBR5.12倍LTM
PSR8.12倍FY2025/09
EV/EBITDA(FY2025)58.67倍FY2025/09
EV/EBITDA(FY2026E)
EV/売上高(FY2025)7.04倍FY2025/09

出所:公開情報および Yahoo Finance(2026-04-22終値)より AENTRO Research 作成

重要なのは、EPSが9.23円→12.63円(前期比+37%)と伸びる計画である一方、同社の株価はこの短期EPS伸長率だけでは説明しづらい構造を持っている点だ。連結初年度ゆえ前期連結対比が存在せず、FY2026にならないと"本来の連結成長率"が見えない。市場は暫定的に、単体ベースの売上+25%・営業+37%(FY2025)と、連結ベースFY2026会社予想の売上+31%・営業+54%という二本の成長軌道を重ねて眺めている段階にある。

6-2. 評価軸(非ARR・連結初年度での見方)

Laboro.AIを評価する際、PER/PBRの絶対水準でSaaS系と並べるのは誤読を招きやすい。当社は、評価軸として次の3点を置くのが適切とみる。

第一に、収益モデルが非ARR・案件型であることである。売上はPJアサイン工数ベースで発生し、四半期ごとに大型PJの売上計上のタイミングで粗利率が揺れる。実際、FY2025 4Qのカスタムソリューション事業売上は522百万円と過去最高水準だったが、粗利率は前年同期68%→62%へ低下した。この構造を踏まえると、同社のバリュエーションをストック収益型SaaSのフォワードPER倍率で機械的に測ると実態を取り逃がす。

第二に、FY2025が連結初年度である点である。CAGLA子会社化が2025年4月1日、第3Qから連結に反映されたため、FY2024との比較は単体対連結の混合になる。のれん63百万円(8年均等償却、年7.9百万円相当)とPMI関連費用が営業利益率を10.1%(連結)に押し下げる形になっており、FY2024単体の営業利益率12%台との単純比較は避けるべきである。市場が評価軸を「再起動」できるのは、FY2026の連結対連結比較が出てくる2027年以降である。

第三に、同社は中期経営計画を正式に開示しておらず、「事業計画及び成長可能性に関する説明資料」(2025年12月19日版)がその代替となっている点である。定量目標はFY2026単年ガイダンス中心で、FY2027以降の数字は明示されていない。ゆえに、フォワード評価の射程は短く、「四半期ごとのKPI転換の有無」が株価の材料になりやすい。

言い換えれば、PERやPBRを一点で切り取るより、「継続顧客売上成長率が反転するか」「AGT-Xが四半期ごとに積み上がる形になるか」の二つを継続的に追うほうが、Laboro.AIの株価理解には近道である。

6-3. Opportunity(ポジティブ・シナリオ)3点

第一のOpportunityは、バリューアップ型AIテーマ市場の構造的追い風である。国内AIビジネス市場は2023年度1.1兆円から2026年度2.2兆円へ倍増の見通しで、同社が狙う「バリューアップ型AIテーマ」領域は1,500億円から2,200〜3,000億円へ広がる。JUAS調査でも、企業IT予算のバリューアップ比率は2024年度24.5%から3年後目標31.8%へ上がる意向が示されており、顧客側の予算構成がランザビジネスからバリューアップへ移るタイミングと、同社の事業領域がちょうど重なる。市場テーマとしては、生成AI一般ではなく「産業特化のバリューアップ型AI」という二階建てのポジショニングが株価の背中を押しうる。

第二のOpportunityは、顧客ポートフォリオの分散と収益源の多様化が同時に進んでいる点である。上位3社構成比は2021年9月期の67%から2025年9月期は29%へ、4期で38pt低下した。売上1億円/年を超える高額顧客層の合計売上高も2024年9月期870百万円から2025年9月期650百万円へ縮小しており、特定の大口顧客への依存度が低下している。顧客の分散と大口依存の解消が並行して進むことは、収益基盤の安定性という意味でポジティブである。研究開発型産業52%(半導体17%/建設10%/自動車10%/その他製造16%等)と社会基盤・生活者産業48%という産業分散も、特定セクター固有のダウンサイドに対して耐性を持つ。特定顧客への依存を理由としたディスカウントは、FY2025の数字が積み上がるほど剝がれていく余地がある。

第三のOpportunityは、強固な財務基盤である。2025年9月期末で現金及び預金2,048百万円、自己資本比率90.6%(連結)、固定負債ゼロ。X-AI.Labo株式売却で410百万円を回収し、特別利益48百万円を計上した。CAGLA取得価額189百万円(のれん63百万円、8年均等償却)は取得余力に対し限定的であり、今後のインオーガニック成長(M&A/業務提携)の原資は十分確保されている。AI人材獲得競争が激化するなかで、採用・育成・提携に投じうるキャッシュを持っていることは、相対的な競争優位として株価の下支えになりうる。

ポジティブ要因
バリューアップ型AIテーマ市場の構造的追い風
国内AIビジネス市場は2023年度1.1兆円から2026年度2.2兆円へ倍増見通し。バリューアップ型AIテーマ市場は1500億円から2200〜3000億円へ拡大し、顧客DX予算のバリューアップ比率(24.5%→31.8%)と同社の事業領域が重なる
顧客ポートフォリオの分散と収益源の多様化
上位3社構成比は67%(FY2021)から29%(FY2025)へ38pt低下。売上1億円超顧客の合計売上高も870百万円(FY2024)から650百万円(FY2025)へ縮小し大口依存が解消。研究開発型52%と社会基盤・生活者48%の産業分散も特定セクターへの耐性を持つ構成
強固な財務基盤
FY2025末で現金2048百万円・自己資本比率90.6%・固定負債ゼロ。X-AI.Labo株式売却で410百万円回収し特別利益48百万円計上。CAGLA取得189百万円は取得余力に対し限定的で、今後のM&A・業務提携の原資は十分確保
ネガティブ要因
既存顧客売上△3%×新規顧客11社という構造の持続性
FY2025の売上+25%成長の中身は既存顧客△3%と新規顧客11社獲得(新規寄与度111%)のミックス。継続PJが細る一方で新規獲得を毎期二桁積み上げられるかが焦点で、案件型受託モデル固有の案件ボラ・ディスカウントが乗りやすい
人員拡張計画の執行リスク
FY2026は96名から140名へ+44名・+46%の拡張計画。SD+10、AX-P新設+6、エンジニア+19。FY2025のSDは期初34名目標に対し25名で着地(△9名)の経緯があり、AI人材獲得競争が激化する中で採れるか、また定着・立ち上がりラグが営業利益+54%計画のボトルネック
非ARR・案件型モデルの構造的ボラティリティ
SaaS的ストック収益ではなくPJアサイン工数ベースのため、四半期業績が大型案件の売上計上タイミングに振られる。FY2025 Q4の粗利率は前年同期68%→62%へ縮小。連結初年度ゆえ前期連結対比が不能でFY2026まで"本来の連結成長率"が見えない
出所:会社開示資料よりAENTRO Research作成

6-4. Anti-thesis(アンチテーゼ)3点

第一のAnti-thesisは、既存顧客売上成長率 △3% × 新規顧客11社という構造の持続性である。FY2025の売上+25%成長の中身は、プロダクト除く既存顧客売上の前年比△3%と、新規顧客11社獲得(新規売上寄与度111%)の組み合わせであり、数字の上では新規依存が極めて高い。継続PJが細る一方で、新規獲得を毎期二桁積み上げられるかが持続性の焦点になる。FY2026 1Qでは大型受注済案件の一部売上がFY2025から持ち越されて取り込まれた経緯があり、案件型受託モデルの四半期見通しが売上計上タイミング依存で揺れることを、株価は常に織り込み続ける必要がある。この構造が残るかぎり、同社のPERには「案件ボラ・ディスカウント」が乗りやすい。

第二のAnti-thesisは、人材の量と質の両輪で動くアグレッシブな人員計画の執行リスクである。FY2026は人員を96名(FY2025期末、単体ベース)から140名(会社計画値、単体)へ+44名・+46%の拡張計画で、ソリューションデザイナ(SD)は25→35名(+10、+40%)、エージェントトランスフォーメーションプロデューサー(AX-P)はゼロから6名新設、エンジニア42→61名(+19、+45%)と、成長領域の人員を一気に引き上げる設計になっている。FY2025も期初SD目標34名に対し25名で着地(△9名)した経緯があり、AI人材獲得競争が激化する環境下で計画どおり採れるか、採れても定着・立ち上がりまでのラグを吸収できるかが、ガイダンス達成のボトルネックになる。ここが崩れると、FY2026営業利益+54%の計画は機械的に下振れする。

第三のAnti-thesisは、非ARR・案件型モデルの構造的ボラティリティそのものである。SaaS企業のようなストック収益がなく、四半期業績は大型案件の売上計上タイミングに振られる。FY2025 4Qのカスタムソリューション事業売上522百万円(過去最高)に対し粗利率は前年同期68%→62%へ縮小したように、体制拡充投資が先行しPJ進行遅延が売上を直撃する構造は、ガイダンス達成の持続性評価を難しくする。加えて、連結初年度ゆえ前期連結対比が不能で、FY2026にならないと"本来の連結成長率"が見えない期間が続く。市場が腰の入った高PERを与えるには、少なくとも連結2期目のトラックレコードが必要である。

6-5. 類似企業比較の考え方

Laboro.AI の比較対象は、一社に固定するのではなく、三つの箱で考えるべきである。「ソフトウェア(AI)・AIer業界(小分類)」には、Laboro.AI を含めて国内上場22社(対象1+競合22社、非上場除く)が登録されており、本節では業界集計と3つの箱の代表社を参照しながら同社の相対位置を整理する。各社の具体的な倍率は市況で日々動くため、ここでは2026年4月時点の直近年度ベースのスナップショットを使う。

第一の箱(ARR型/SaaS寄りの AIer) は、AI ソリューション・アルゴリズムを一定の継続性のある形で販売し、高い当期純利益率とストック的収益の含みを持つ一群である。国内上場22社のうち PKSHA Technology(3993、売上21,771百万円・純利益率12.3%・PER 35.81倍・EV/EBITDA 12.07倍)、pluszero(5132、売上1,546百万円・純利益率23.7%・PER 50.78倍・EV/EBITDA 29.92倍)、AVILEN(5591、売上1,673百万円・純利益率10.4%・PER 34.72倍・EV/EBITDA 17.07倍)、unerry(5034、売上3,726百万円・純利益率8.9%・PER 26.96倍・EV/EBITDA 22.82倍)あたりが代表格である。売上規模は Laboro.AI より大きいか近接し、純利益率は総じて同社(7.7%)と同水準以上で、倍率は PER 30〜50倍・EV/EBITDA 15〜30倍のレンジに収まる。

第二の箱(プロジェクト型/カスタムAI受託) は、顧客個社のテーマに合わせてフルカスタムで AI を開発する受託型の一群である。ExaWizards(4259、売上9,811百万円・純利益率△26.3%・PER —・EV/EBITDA 98.85倍)、HEROZ(4382、売上5,930百万円・純利益率△3.0%・PER —・EV/EBITDA 19.27倍)、JDSC(4418、売上23,056百万円・純利益率1.5%・PER 40.35倍・EV/EBITDA 18.21倍)、Ridge-i(5572、売上2,593百万円・純利益率5.4%・PER 69.41倍・EV/EBITDA 22.21倍)、VRAIN Solution(135A、売上3,278百万円・純利益率19.9%・PER 57.26倍・EV/EBITDA 38.58倍)、Sapeet(269A、売上996百万円・純利益率7.1%・PER 56.93倍・EV/EBITDA 45.58倍)などがここに入る。収益性のばらつきが大きく、ExaWizards・HEROZ のように先行投資で赤字を出している先と、VRAIN・Sapeet のように高成長を取りながら黒字化している先が混在する。Laboro.AI は売上規模ではこの箱の中位〜下位だが、黒字化済み(OPM 10.1%・純利益率 7.7%)という意味では Ridge-i/JDSC/Sapeet と近い立ち位置にある。

第三の箱(システムインテグレータ寄りのハイブリッド) は、AI 実装に加えて UI/UX・グラフDB・製造業向けシステム開発を組み合わせる一群である。ヘッドウォータース(4011、売上3,900百万円・純利益率1.5%・PER 148.00倍・EV/EBITDA 37.43倍)、グリッド(5582、売上2,063百万円・純利益率14.4%・PER 39.06倍・EV/EBITDA 17.63倍)、TDSE(7046、売上2,699百万円・純利益率5.1%・PER 20.70倍・EV/EBITDA 3.97倍)、トリプルアイズ(5026、売上5,714百万円・純利益率△6.0%・PER —・EV/EBITDA 34.55倍)などが代表社である。CAGLA を連結に取り込んだ Laboro.AI は、この第三の箱にも片足を置き始めている。なお、ABEJA(5574)は「ソフトウェア(AI)・AIer業界」リストには含まれておらず、本レポートの Peer からも外した。

Peer 整理テーブル(国内上場22社より代表7社を抜粋)

コード企業名決算期売上高 (百万円)純利益率 (%)時価総額 (百万円)PER (倍)EV/EBITDA (倍)
5586Laboro.AI2025/091,9007.713,79493.8451.52
3993PKSHA Technology2025/0921,77112.398,71935.8112.07
5132pluszero2025/101,54623.718,63750.7829.92
5591AVILEN2025/121,67310.46,04034.7217.07
4418JDSC2025/0623,0561.514,30440.3518.21
4259エクサウィザーズ2025/039,811△26.376,43898.85
4382HEROZ2025/045,930△3.013,05019.27
135AVRAIN Solution2026/023,27819.937,33257.2638.58
5572Ridge-i2025/072,5935.49,71869.4122.21

出所:各社公開情報より AENTRO Research 作成。Laboro.AI は2026年4月時点の直近年度ベースの時価総額・倍率(13,794百万円・PER 93.84倍・EV/EBITDA 51.52倍)を記載(§6-1 の LTM 時価総額13,523百万円とは基準日差)。

業界集計との相対位置(国内上場22社、直近年度)

業界の中央値は売上2,646百万円/当期純利益率 3.4%/時価総額 7,312百万円/PER 39.70倍/EV/EBITDA 17.99倍である。これに対して Laboro.AI は、売上 1,900百万円(中央値比 0.72倍)、当期純利益率 7.7%(中央値比 +4.3pt)、時価総額 13,794百万円(中央値比 1.89倍)、PER 93.84倍(中央値比 2.36倍)、EV/EBITDA 51.52倍(中央値比 2.86倍)の位置にある。つまり、売上規模は業界の中央値以下で、収益性(当期純利益率)と時価総額規模は中位〜上位だが、PER・EV/EBITDA はかなりのプレミアムが乗っている、という読み方になる。

当社は、現時点で市場は Laboro.AI を「黒字の受託AI(第二の箱)」としてまず評価しつつも、PER・EV/EBITDA 倍率としては第一の箱(ARR型/SaaS寄り)のレンジに近い水準まで先取りして付けている、と読む。同社がこの先 AGT-X で継続案件化・セミカスタム展開を進めて"第一の箱"に近づけるかどうかが、現在の倍率を正当化できるかの分水嶺である。逆に "第二の箱" にとどまる限り、現在の PER 93.84倍・EV/EBITDA 51.52倍は、業界中央値(PER 39.70倍・EV/EBITDA 17.99倍)に対して厚く乗ったプレミアムであり、四半期ごとの KPI 未達はボラティリティとして大きく跳ね返りやすい。

6-6. 注目KPI

株価の上方向を決めるKPIは、四半期ごとに機械的に追える形で整理できる。市場が次に確認したい論点は4点に絞られる。

第一に、継続顧客売上成長率の転換である。FY2025は△3%で着地したが、この数字が継続的に△のままか、ゼロ近辺へ戻るか、プラス転換するかは、同社が「新規で埋める会社」から「継続顧客の拡張で伸びる会社」へ移れるかの試金石になる。PJ単発受注ではなく、顧客内の複数プロジェクト展開・年間契約化・AGT-Xのセミカスタム化を通じてこの指標が反転するほど、PER倍率の水準訂正余地は大きくなる。

第二に、新規顧客獲得ペースである。FY2025の新規顧客11社・新規売上寄与度111%というベースラインに対し、FY2026 1Qでは3社を獲得した。単純年率換算では12社ペースで、前期並みの水準は視界に入っている。ただし、重要なのは社数そのものより、獲得した新規顧客のうちどの程度がFY2027以降に継続顧客として留まるかである。ここが薄いと、既存△3%のトレンドは来期以降も反復する。

第三に、人員の実績値、とくにSD・AX-P・エンジニアの合計である。FY2026計画96名→140名は、4期で通算400件超のカスタムAI実績を積み上げてきた同社にとって、組織規模の非連続変化にあたる。SD+10、AX-P+6、エンジニア+19という設計どおりに採れるかを、四半期末ごとの人員開示で確認する必要がある。採用進捗が鈍ると、計画されている売上2,486百万円・営業利益294百万円の根拠がそのまま揺らぐ。

第四に、AGT-X受注件数と累積PJ件数である。FY2025はAIエージェント関連PJが2件計上、FY2026はさらに3件の受注見込で、計5件が次期の種になる。最適化関連の累計34件に比べればまだ薄いが、AGT-XはAI-SDと比肩する規模を目指す成長領域であり、件数の積み上がりペース自体がテーゼの検証になる。Laboro Agent Templateを使ったセミカスタム化で1件あたりの立ち上げ期間が短縮されれば、生産性指標として株価に効きやすい。

これらのKPIは、同社が「拡大再生産エンジンを内蔵したオーダーメイド型AI企業」へ移行できるかを四半期単位で定量的に検証する装置であり、会計上の短期EPSよりも、株価の長期レンジ形成において重要度が高い。

6-7. 本章まとめ

Laboro.AI株は、「今の利益」を買う銘柄ではなく、「継続顧客売上成長率の転換」と「AGT-Xの積み上がり」というマイルストーンを買う銘柄である。非ARR・案件型・連結初年度という三重の制約のもとで、PERやPBRの絶対水準は評価軸として粗く、四半期KPIの方向転換の方が株価の材料になりやすい。同社は、受託AI開発会社から、生成AI時代の"拡大再生産エンジン"を持つオーダーメイド型AIパートナーへ進化できるか、まさにその臨界点にある。本章の結論を一文でまとめるなら、Laboro.AIの株価評価は、FY2026〜FY2027にかけて継続顧客成長率が反転し、AGT-Xが四半期ごとに受注を積み上げ、96→140名の人員計画が実体化する、この三つが同時に揃う局面で初めて次のレンジへ移る。逆に言えば、どれか一つでも崩れると、現在の評価は重く残る。市場が次に評価するのは、生成AIというテーマそのものではなく、その知見を「型」として積み上げ、再投下できる仕組みを同社が持っているかどうかである。

7. Appendix

7-1. 損益計算書(PL)

単位:百万円。FY2022〜FY2024 は単体決算、FY2025 より連結決算(2025年4月1日 株式会社CAGLA 100%子会社化、第3四半期より連結)。 FY2026Eは連結会社予想。

科目FY2022 (単体)FY2023 (単体)FY2024 (単体)FY2025 (連結)FY2026E (連結)
売上高7331,3691,5151,9002,486
売上総利益5168881,0151,2721,603
販売費及び一般管理費5716828321,080
EBITDA△44224210228
営業利益△55206183191294
営業利益率(%)△7.515.112.110.111.9
経常利益△55193183166294
特別利益合計49
特別損失合計0
税金等調整前当期純利益△56193183215
親会社株主に帰属する当期純利益△39139133146201
EPS(円)△3.319.708.439.2312.63

出所:有価証券報告書および決算短信より AENTRO Research 作成。FY2021 は本表に含めない(§4-1 本文の FY2021 657百万円参考値は会社IR「事業計画及び成長可能性に関する説明資料」推移表を出所とする)。決算区分は FY2022-FY2024 単体、FY2025 連結とした。FY2026E は会社業績予想(2025年11月12日開示)。

7-2. 貸借対照表(BS)

単位:百万円。FY2022〜FY2024 は単体、FY2025 から連結。 FY2025/12 LTM 列は LTM ベース(1Q FY2026末と概ね同期)。

科目FY2022 (単体)FY2023 (単体)FY2024 (単体)FY2025 (連結)FY2025/12 LTM
流動資産合計1,2292,4142,1092,6232,703
固定資産合計9075481189192
有形固定資産4341598175
無形固定資産6967
投資その他の資産46344223850
資産合計1,3192,4902,5912,8132,896
流動負債合計98242200265255
固定負債合計51
負債合計149242200265255
純資産合計1,1692,2472,3912,5472,640
株主資本等合計1,1692,2472,3912,5472,640
ネット有利子負債(除く現預金・短期性有価証券)△904△1,944△1,523△2,048△2,081
現預金同等物及び短期性有価証券9661,9441,5232,0492,082
運転資本238451565532563
売上債権245461575552589
買入債務810112327
自己資本比率(%)88.690.292.290.691.2
BPS(円)83.09141.96150.49160.04

出所:有価証券報告書および決算短信より AENTRO Research 作成。FY2024 の関係会社株式約390百万円は X-AI.Labo 社への出資分で FY2025 に売却済(410百万円の回収、特別利益49百万円)。FY2025/12 LTM 列は直近四半期末相当。

7-3. キャッシュ・フロー計算書(CF)

単位:百万円。FY2022・FY2023・FY2024 は単体、FY2025 から連結。 1Q FY2026 は四半期連結CF計算書未作成のため省略。

科目FY2022 (単体)FY2023 (単体)FY2024 (単体)FY2025 (連結)
営業活動によるキャッシュ・フロー△1821164215
投資活動によるキャッシュ・フロー△54△15△434300
財務活動によるキャッシュ・フロー98787688
フリー・キャッシュ・フロー(営業CF+投資CF)△236101△430515

出所:有価証券報告書および決算短信より AENTRO Research 作成。FY2024 投資CF △434 は X-AI.Labo への関係会社株式取得支出が主因。FY2025 投資CF +300 は X-AI.Labo 株式売却収入と CAGLA 子会社株式取得支出の差し引き。FY2025 期末現金同等物残高は2,048百万円(§7-2 参照)。

7-4. 主要財務指標

単位:百万円(売上・利益)、%(比率)、円(EPS・BPS)。FY2022〜FY2024 単体、FY2025 連結、FY2026 会社予想。

指標FY2022FY2023FY2024FY2025FY2026E
売上高増加率(%)11.686.810.730.8
営業利益増加率(%)△166.3△11.253.6
経常利益増加率(%)△165.5△5.776.8
当期純利益増加率(%)△165.6△4.336.9
EBITDA 増加率(%)△148.4△6.2
EPS 成長率(%)△162.9△13.136.8
総資産増加率(%)218.888.74.1
従業員増加率(%)
指標FY2022FY2023FY2024FY2025FY2026E
売上総利益率(%)70.464.967.166.9
EBITDAマージン(%)△6.016.413.912.0
営業利益率(%)△7.515.112.110.111.9
経常利益率(%)△7.514.212.18.711.8
当期純利益率(%)△5.410.28.87.78.1
営業CFマージン(%)△24.88.50.311.4
売上原価率(%)29.635.132.933.1
売上高販管費率(%)77.949.855.056.9
売上高総人件費率(%)52.338.141.119.3
売上高研究開発費率(%)2.90.81.31.4
指標FY2022FY2023FY2024FY2025
ROE(%)△5.88.25.8
ROA(%)△4.67.35.3
ROIC(投下資本、%)△5.18.75.7
ROIC(事業資産、%)△17.038.323.5
総資産経常利益率(%)△6.310.27.2
総資産回転率(回)0.850.720.60
売上債権回転率(回)3.623.872.92

流動性・安全性

指標FY2022FY2023FY2024FY2025FY2025/12 LTM
流動比率(%)1,254.1997.91,055.0990.21,060.0
当座比率(%)1,236.7993.81,049.5981.91,047.5
固定比率(%)7.73.420.27.57.3
株主資本比率(%)88.690.292.290.691.2
財務レバレッジ(倍)1.131.111.081.101.10
ネットD/E レシオ(倍)△0.77△0.86△0.64△0.80△0.79
現預金/総資産(%)73.278.058.872.871.9

バリュエーション(株式市場指標)

指標FY2023FY2024FY2025FY2025/12 LTMFY2026E
時価総額(百万円、自己株式調整後)15,42615,10915,42513,523
企業価値(百万円)13,48213,58613,37711,442
PER(倍)110.18112.75104.9367.28
PBR(倍)6.866.326.055.12
PSR(倍)11.279.978.125.44
企業価値/売上高(倍)9.858.977.044.60
企業価値/EBITDA(倍)60.1964.7058.67
企業価値/営業利益(倍)65.4574.2470.0438.92

出所:有価証券報告書および決算短信より AENTRO Research 作成。公開情報では FY2022 以降の5期を収録。効率性・生産性指標の FY2025 連結値および FY2026E の効率性指標は公開情報未整備のため `—` とした。

7-5. 主要 KPI 時系列

カスタムAIソリューション事業(単体)の非財務KPI。 FY2025 は連結初年度のため、KPI は引き続き単体ベースで開示。従業員数は連結ベースで示す。

KPIFY2022FY2023FY2024FY20251Q FY2026
上位3社顧客売上構成比(%)50463529
売上規模1億円以上/年の顧客売上(百万円)178629870650
売上規模50M〜100M/年の顧客売上(百万円)248380219575
売上規模10M〜50M/年の顧客売上(百万円)244307327607
売上規模10M未満/年の顧客売上(百万円)61519759
年間新規顧客獲得数(社)1120113
新規顧客売上寄与度(%、注1)111
継続顧客売上成長率(%、注2)△3
参考:会社IR 期末社員数(名、CAGLA含む)100
うちソリューションデザイナ(SD)12172525
うちエンジニア(注3)19243142
うち役員(注4)7777
通算カスタムAIプロジェクト件数(累計)400件超

(注1)新規顧客売上寄与度 = 当該年度の新規顧客の売上高 ÷ (当該年度の売上高 − 前年度の売上高)。

(注2)継続顧客売上成長率 =(プロダクトを除く当該年度の売上高 − 当該年度の新規顧客からの売上高)÷ プロダクトを除く前年度の売上高 − 1。

(注3)エンジニアには機械学習エンジニア及びシステム開発エンジニアを含む。

(注4)取締役、常勤監査役、社外取締役、社外監査役の合計。執行役員は含まない。

(注5)期末従業員数は 2022→2023→2024→2025 の増加率(29.0%→40.0%→26.8%)から逆算した参考系列で、FY2025 は実数100名。

業界別売上高構成(FY2025 連結)

大分類構成比内訳(金額・構成比)
研究開発型産業52%半導体 313百万円(17%)/建設 190百万円(10%)/自動車 180百万円(10%)/化学・素材 77百万円(4%)/その他製造 225百万円(12%)
社会基盤・生活者産業48%消費財・小売 331百万円(18%)/交通・輸送 186百万円(10%)/人材 85百万円(5%)/メディア・広告 22百万円(1%)/その他 278百万円(15%)

出典: 株式会社Laboro.AI 事業計画及び成長可能性に関する説明資料(2025年12月19日)、2023年9月期・2024年9月期・2025年9月期決算短信(各期末公表分)、2026年9月期第1四半期決算短信(2026年2月10日)より AENTRO Research 作成。四半期売上(1Q〜4Q)の時系列配列および25/9期の「プロダクト/新規/既存顧客売上」の完全配列は IR原文で対応関係の確認を要するため本表には含めていない。

7-6. 会社基本情報

項目内容
会社名株式会社Laboro.AI(Laboro.AI Inc.)
証券コード5586(東証グロース)
上場日2023年7月31日
決算期9月(通期:10月1日〜翌年9月30日)
本社所在地東京都中央区銀座8-11-1
代表者代表取締役CEO 椎橋 徹夫 / 代表取締役COO兼CTO 藤原 弘将
設立2016年4月1日
資本金1,014百万円(FY2025末 連結)
従業員数100名(FY2025期末、連結ベース)
期末発行済株式数15,918,577株(FY2025末)/ 15,932,550株(1Q FY2026末、2025/12/31)
期末自己株式数38株(FY2025末)
連結子会社株式会社CAGLA(2025年4月1日 100%取得、取得価額153百万円、アドバイザリー費用等含め189百万円)
連結財務諸表作成開始2025年9月期(第3四半期連結会計期間より)
ミッション「すべての産業の新たな姿をつくる。」「テクノロジーとビジネスを、つなぐ。」

出典: 株式会社Laboro.AI 事業計画及び成長可能性に関する説明資料(2025年12月19日)、2025年9月期決算短信(2025年11月12日)、2026年9月期第1四半期決算短信(2026年2月10日)より AENTRO Research 作成。

7-7. 株主構成(主な株主)

#株主名持株比率
1株式会社SCREENアドバンストシステムソリューションズ
2株式会社博報堂
3THK株式会社
4株式会社SCREENホールディングス
5日本ガイシ株式会社
6〜10

出典: 株式会社Laboro.AI 事業計画及び成長可能性に関する説明資料(2025年12月19日)。主な株主は上記5社(順不同、会社開示)のみ開示で持株比率の個別数値は本資料未記載。 上位10名の完全リスト・持株比率は有価証券報告書「大株主の状況」での確認を要するため本Appendixでは `—` とした。

7-8. セグメント別業績(FY2025 連結)

単位:百万円

セグメント外部顧客への売上高セグメント間内部売上計(内部含む)セグメント利益又は損失
カスタムAIソリューション事業1,8921,892250
システム開発事業7512△59
合計1,90051,905191(注1)
調整額△5△50
連結財務諸表計上額1,9001,900191

(注1)セグメント利益合計は連結損益計算書の営業利益 191百万円と一致。システム開発事業には CAGLA 取得関連費用およびのれん償却(63百万円、8年均等償却)・顧客関連資産償却(償却年数6年)を含む。CAGLA は2025年4月1日に100%子会社化、連結に含まれる業績期間は2025年4月1日〜2025年9月30日の6か月分。

セグメント資産・償却等の主な項目(FY2025 連結、百万円)

項目カスタムAIシステム開発合計連結計上額
セグメント資産2,8591453,0052,813
減価償却費3203232
のれん償却額333
顧客関連資産の償却額000
有形・無形固定資産の増加額555555

出典: 株式会社Laboro.AI 2025年9月期決算短信(連結)「セグメント情報等」(2025年11月12日)より AENTRO Research 作成。

7-9. 通期業績予想(FY2026E 連結)

項目FY2025 実績(連結) (A)FY2026E 予想(連結) (B)増減額 (B-A)増減率(%)
売上高(百万円)1,9002,486+586+30.8
売上総利益(百万円)1,2721,603+331+26.0
売上総利益率(%)66.964.5△2.4pt
EBITDA(百万円)228
営業利益(百万円)191294+103+53.6
営業利益率(%)10.111.9+1.8pt
経常利益(百万円)166294+128+76.8
親会社株主に帰属する当期純利益(百万円)146201+54+36.9
EPS(円)9.2312.63+3.40+36.8
配当(円)0.000.00

出所:株式会社Laboro.AI 2025年9月期決算短信「2026年9月期の連結業績予想」(2025年11月12日)より AENTRO Research 作成。FY2026E の売上原価・販売費及び一般管理費の個別予想は非開示。

体制構築計画(FY2025通期実績 → FY2026E計画、名)

区分FY2025 通期実績FY2026E 計画増減
合計人員(連結ベース)96140+44
ソリューションデザイナ(SD)2535+10
エージェントトランスフォーメーションプロデューサー(AX-P)0(新設)6+6
エンジニア(機械学習+システム開発)4261+19
役員77+0
その他(コーポレート部門等)2231+9

出所:事業計画及び成長可能性に関する説明資料(2025年12月19日)、FY2026 第1四半期決算説明資料より AENTRO Research 作成。

7-10. 経営陣(FY2025末時点)

取締役(社内)

役職氏名経歴・プロフィール
代表取締役CEO椎橋 徹夫米国州立テキサス大学理学部卒業後、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)入社。消費財・流通等のプロジェクトに参画後、社内デジタル部門の立ち上げに従事。東大発ベンチャーでのAI事業部立ち上げや東京大学 松尾豊研究室の産学連携業務を経て Laboro.AI を創業。
代表取締役COO兼CTO藤原 弘将京都大学大学院修了、博士(情報学)。産業技術総合研究所にて機械学習・音声信号処理・自然言語処理の研究に従事。Queen Mary University of London 客員研究員、ボストン・コンサルティング・グループ、AI系スタートアップを経て Laboro.AI を創業。

取締役(社外)

役職氏名主な経歴
社外取締役菅野 寛早稲田大学大学院経営管理研究科教授
社外取締役岩崎 俊博日本旗艦キャピタル代表取締役
役職氏名
執行役員 CAO松藤 洋介
執行役員和田 崇
執行役員吉岡 琢
執行役員入江 裕紀
執行役員谷山 太郎
役職氏名
常勤監査役前田 晴美
社外監査役井ノ浦 克哉
社外監査役田中 洋子

出典: 株式会社Laboro.AI 事業計画及び成長可能性に関する説明資料(2025年12月19日)より AENTRO Research 作成。取締役・監査役の合計は7名(FY2025末)。執行役員は取締役2名(椎橋・藤原)を兼任する可能性があり詳細は有価証券報告書「役員の状況」を参照。

ディスクレーマー(免責事項)

本レポートは対象企業についての情報を提供することを目的としており、投資の勧誘もしくは推奨を意図しているものではありません。本レポートは対象企業が公表した有価証券報告書、決算短信、決算説明資料、適時開示情報等の公開情報に基づき、レポート発行体である株式会社AENTROがその責任において作成したものです。本レポートの記載内容(分析・評価・将来見通し等を含む)は株式会社AENTROの見解であり、対象企業はその内容について責任を負いません。本レポートに記載されている数値や情報等の正確性については一切保証するところではございません。本レポートは対象企業からの委託に基づき株式会社AENTROにて作成し、対価として報酬を得ています。株式会社AENTROの役員・従業員は対象企業の有価証券について売買等の取引を行っているか、将来行う可能性がございます。本レポートに基づいた取引等については株式会社AENTROは一切責任を負いません。本レポートの著作権は株式会社AENTROに帰属するため、複製物の配布・転用・修正は固く禁じます。

Reader Survey

次に読みたい企業を教えてください

AENTRO Research が次に取り上げるべき日本の上場企業について、アンケートにご協力ください。いただいたご意見は今後のレポート選定の参考にいたします。

アンケートに回答する