| 株価(2026/4/22終値) | 時価総額 | 発行済株式数 | FY25/7 売上高 | FY25/7 売上総利益率 | FY26/7E 売上高 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1,388円 | 263億円 | 1,961.77万株 | 1,407百万円 | 47.6% | 2,220百万円 |
| 項目 | FY2021 | FY2022 | FY2023 | FY2024 | FY2025 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高(百万円) | 161 | 260 | 380 | 815 | 1,407 |
| 営業利益(百万円) | -317 | -462 | -631 | -441 | -1,589 |
| 営業利益率(%) | -196.2 | -177.7 | -166.2 | -54.1 | -112.9 |
| 当期純利益(百万円) | -322 | -456 | -641 | -438 | 46 |
| 当期純利益率(%) | -199.6 | -175.2 | -168.8 | -53.7 | 3.3 |
| EPS(円) | — | -36.20 | -46.74 | -25.53 | 2.44 |
| DPS(円) | 0.00 | 0.00 | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
1. 会社概要
1-1. サマリー
Liberawareは、単なるドローンメーカーではなく、屋内狭小・危険空間の点検データ取得、解析、運用実装までを一体で担うインフラDX企業と捉えるのが適切である。会社としては「誰もが安全な社会を作る」をミッションに掲げており、屋内空間に特化した小型ドローン、取得データの画像処理・解析、さらに顧客ごとのソリューション開発を組み合わせて提供している。設立は2016年8月、2024年7月に東証グロースへ上場し、従業員数は128名、資本は19.7億円(いずれも会社プロフィール記載の直近値)まで拡大した。FY2025/7の売上高は1,406百万円、会社計画のFY2026/7売上高は2,220百万円であり、事業規模はすでに「実証中心の技術ベンチャー」から一段進み、市場形成と社会実装の段階へ入っている。
同社の現在地を理解するうえで重要なのは、成長の質である。2025年7月末時点の累計顧客企業数は360社で、鉄道、電力・ガス、建設、道路、石油化学、プラントなど、設備産業やインフラ領域の大手企業との取引が広がっている。加えて、福島第一原子力発電所1号機格納容器内の内部調査、能登半島地震での災害支援、2025年2月の八潮市下水道調査活動など、失敗が許されにくい高難度現場での実績が積み上がっている。Liberawareの会社概要は、創業物語よりもまず、「なぜこの会社が社会インフラの現場で使われ始めているのか」を軸に整理すべき局面にある。
1-2. 基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 株式会社Liberaware(218A) |
| 設立 / 上場 | 2016年8月 / 2024年7月(東証グロース) |
| 本社 | 千葉県千葉市中央区中央3-3-1 |
| 従業員数 | 128名(2026年1月31日時点) |
| 資本 | 19.7億円(資本剰余金含む) |
| FY25/7 売上高 | 1,407百万円(連結) |
| FY25/7 営業損益 | △1,589百万円(連結) |
| FY26/7 会社計画売上高 | 2,220百万円(連結) |
| 株価(2026/4/8終値) | 1,388円 |
| 時価総額 | 272億円 |
上場市場は東京証券取引所グロース市場、証券コードは218A、事業年度は毎年8月1日から翌年7月31日までである。従業員数は128名(2026年1月31日時点、非常勤役員除く・臨時雇用者/派遣含む)、資本は19.7億円(資本剰余金含む、2026年3月31日時点)である。取引銀行はみずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、りそな銀行、千葉銀行、商工中金、京葉銀行が並ぶ。事業内容は、ドローン事業、デジタルツイン事業、ソリューション開発事業の3本柱で整理されている。関連会社としては、韓国子会社LiberawareKorea Co.,Ltd.と、JR東日本グループとの合弁会社CalTa株式会社を有する。CalTaはデジタルツインプラットフォーム「TRANCITY」を担っており、Liberaware34%、JR東日本スタートアップ33%、JR東日本コンサルタンツ33%の出資構成で運営されている。会社の輪郭として重要なのは、国内インフラ向けハードウェア企業に見えて、実態は国内社会実装を核に、ソフトウェアと海外展開を重ねる複層型の企業体になっている点である。
1-3. 会社の定義
本レポートでは、Liberawareを「屋内狭小・危険空間の点検データ取得・解析・社会実装を担うインフラDX企業」と定義する。会計上はインフラDX事業の単一セグメントだが、事業理解の観点では、①現場でデータを取りにいくドローン事業、②取得データを処理・三次元化・解析するデジタルツイン事業、③顧客ごとの課題に応じてハードからソフトまで作り込むソリューション開発事業、という三層構造でみるのが自然である。これは会社プロフィールと事業説明資料の双方で一貫している。
この定義を置く理由は、同社の価値源泉が「機体を売ること」だけにないからである。公式サイト上のサービス区分は、点検・導入、自動巡回、DX、受託開発の4系統で整理されており、顧客のニーズは調査、監視、省力化、三次元化、解析、専用開発まで広い。さらに2025年7月期実績では、機体販売に加えてリカーリング収益の積み上がりが明確になっており、TRANCITYアカウント数や継続案件数も増加している。したがってLiberawareを「屋内ドローンのハードメーカー」とのみ捉えると、継続収益、解析サービス、共同開発、業界標準化という重要論点を落としやすい。むしろ同社は、アクセス困難な空間をデータ化し、意思決定可能な状態へ変換する企業として理解した方が実態に近い。
1-4. 沿革
| 時期 | イベント |
|---|---|
| 2016年8月 | 閔弘圭氏がLiberaware設立(千葉県千葉市) |
| 2018年 | 地下トンネル内部点検実験を実施 |
| 2019年 | 室内空間点検用ドローンのレンタル事業開始 |
| 2020年 | デジタルツイン事業開始 |
| 2021年 | JR東日本グループと合弁でCalTa設立 |
| 2022年5月 | デジタルツインPF「TRANCITY」リリース |
| 2022年9月 | ISO9001 / ISO27001 認証取得 |
| 2023年6月 | IBIS2リリース、グッドデザイン賞受賞 |
| 2024年2-3月 | 福島第一原発1号機格納容器内調査(世界初) |
| 2024年7月 | 東証グロース市場に上場(218A) |
| 2024年11月 | 韓国子会社Liberaware Korea設立 |
| 2025年2月 | 八潮市道路陥没に伴う下水管調査 |
| 2025年12月 | 九州電力と資本業務提携 |
| 2026年3月 | 日本ヒューム・日水コン・管清工業・山田商会と資本業務提携 |
出所:有価証券報告書、成長可能性資料、決算説明資料よりAENTRO Research作成
Liberawareの沿革は、社歴そのものは長くない一方、研究開発型の技術起点企業から、現場実装型のインフラ企業へ急速に移ってきた歴史として整理できる。創業者の閔弘圭氏は、千葉大学の研究員時代に経済産業省・資源エネルギー庁の廃炉等・安全技術基盤整備事業や、災害対応飛行ロボットに関する研究プロジェクトに従事した経験を持つ。その現場経験を出発点に、より現場ニーズに即したドローンを自ら作り、日本のものづくりで世界と勝負したいとの問題意識から、2016年8月にLiberawareを設立した。
創業後しばらくの段階では、まず「飛ばせる場所」を見つけることが主題だった。2018年には地下トンネル内部点検実験を実施し、2019年には室内空間点検用ドローンのレンタル事業を開始している。2020年にはデジタルツイン事業を開始し、2021年にはJR東日本グループと合弁でCalTaを設立、2022年にはTRANCITYをリリースした。つまり、同社は最初からハード単体で勝負したのではなく、現場取得→データ処理→顧客運用という流れを早期から志向してきた。
転換点は2023年から2024年にかけてである。2023年6月にIBIS2をリリースし、2024年2-3月には福島第一原発1号機格納容器内調査を世界で初めて実施、7月には東証グロース市場へ上場した。「危険環境で使われた」という実績が同社の企業価値の中核へ入ってきた点が重要である。
上場後は「市場形成」と「共創拡張」のフェーズに入り、2025年2月の八潮市下水道調査を契機に下水道領域が急拡大、2025年12月の九州電力、2026年3月の日本ヒューム・日水コン等との資本業務提携により、鉄道・電力・下水道など業界標準を狙う共創型企業へと変質しつつある。
1-5. 経営陣
Liberawareの経営陣は、技術起点の創業色を残しつつ、量産・営業・財務・人材を後から重ねてきた構成に特徴がある。代表取締役の閔弘圭氏は、災害対応や廃炉関連の飛行ロボット開発経験を持つ技術系創業者であり、創業の背景も現場課題起点である。取締役の和田哲也氏も工学系大学院出身で、レーザーセンシングシステム開発に従事した後、2016年の創業時から参画している。ハードウェア企業に見えて、トップが「製品企画」より前に「危険環境での実装」を見ている点は、同社の文化を理解するうえで大きい。
一方で、現在の経営陣は技術者だけではない。取締役の林昂平氏は日本製鉄、東レ、ラクスルでサプライチェーンと新規事業開発を経験しており、CFOの市川純也氏は公認会計士として監査法人と上場支援業務、ベンチャー管理本部長の経験を持つ。執行役員層も、人事を担う小山浩平氏、エネルギー・投資案件に強い内田太郎氏、オリックス出身で成長戦略を担う全貴成氏、事業承継・M&A・営業経験を持つ伊藤弘毅氏などで構成される。ここから見えるのは、Liberawareが「研究者集団」のままではなく、社会実装に必要な管理・営業・資本政策・人材機能を意識的に後付けしてきた会社だという点である。これは、技術系スタートアップが上場後に直面しやすい組織の細りを、先回りで補強していると評価できる。
1-6. 主要株主・資本構成
同社の株主構成は、創業者主導を維持しつつ、事業会社との関係性を強める方向に明確に動いている。2025年11月6日更新のコーポレートガバナンス報告書ベースでは、筆頭株主は閔弘圭氏18.23%、次いで東日本旅客鉄道株式会社11.73%、和田哲也氏4.23%、野平幸佑氏3.38%、楽天証券2.37%などである。すでにこの時点で、JR東日本が大株主に入っており、同社の資本政策が単なる財務投資家依存ではなく、実業パートナーとの長期関係を組み込む方向にあることが読み取れる。
さらに2026年3月の第三者割当増資に関する有価証券届出書では、割当後ベースで閔氏17.60%、JR東日本11.33%となり、日本ヒュームと日水コンがそれぞれ1.58%で上位株主に入る見込みが示されている。2025年7月期通期決算説明資料でも、上位株主の変化として「既存VC持分はなくなり安定株主で上位を占める」と整理されている。つまり、同社の資本構成はIPO前後にありがちなVC色の強いものから、鉄道・電力・下水道といった社会インフラ分野の事業会社が支える構図へと移っている。これは需給面だけではなく、実証・販路・制度対応を含む中長期の事業推進力に直結する変化である。
1-7. コーポレートガバナンス
Liberawareのガバナンスは、重厚長大ではないが、上場成長企業として必要な牽制機能を押さえた実務型と評価できる。組織形態は監査役設置会社で、取締役は5名、そのうち社外取締役は1名で独立役員でもある。監査役は3名で全員が社外監査役かつ独立役員であり、財務・企業経営・法務の視点が入る構成になっている。コーポレートガバナンス報告書では、コーポレートガバナンス・コードの基本原則をすべて実施しているとしており、経営の効率性、健全性、透明性を高め、中長期的な企業価値向上をガバナンスの基本と位置付けている。
監督機能の実効性をみると、監査役会、内部監査担当、会計監査人の三者が概ね四半期に1回会議を行い、相互の監査情報を交換している。また、成長可能性資料では、品質マネジメントに対する取り組み全体をリスク・コンプライアンス委員会でモニタリングし、不具合等の発生防止に最大限注意を払うとしている。創業者色が強い会社でありながら、監査役の独立性と品質・コンプライアンスの管理体制を補助線にしている点は前向きに評価できる。他方で、社外取締役は1名にとどまるため、将来的に事業領域が一段と広がる局面では、取締役会レベルの外部知見をどこまで厚くできるかが次の論点になる。
1-8. 技術・外部連携
同社の輪郭を特徴づけるのは、ハードウェアとソフトウェアの双方を押さえながら、足りない部分は外部連携で埋める設計思想にある。2025年10月時点の会社資料では、出願78件、登録35件の知財を保有し、産学連携や標準化連携も進めている。加えて、Liberaware・KDDIスマートドローン・大林組の3社で、建設現場に自動充電ポート付きドローンを1年間常設し、現場補助者なしの目視外飛行による週次遠隔自動測量を継続運用した事例も示されている。CalTaとの連携も含め、同社は単一製品の改良に閉じるのではなく、顧客運用に必要な仕組みごと外部と組んで作る企業である。
この外部連携の多さは、一見すると自前主義の弱さにも見えるが、むしろ同社の事業特性に合っている。狭小・危険空間の点検は、機体性能だけでは完結せず、通信、解析、業界知見、保守運用、規制、標準化が絡む。したがって、同社の優位性は「全部を自社で抱えること」ではなく、現場で必要なものを自社技術を核に統合できることにある。第2章で詳述するが、この会社の競争優位は製品単体ではなく、プロダクト、データ、パートナーの組み合わせにある。
1-9. サステナビリティ / 社会的意義
Liberawareのサステナビリティは、周辺的なESG施策ではなく、本業そのものが社会課題の解決に直結しているタイプである。公式のSDGsページでは、重点テーマとして、安全性向上による健康福祉の向上、生産性向上による経済成長、ドローンという新技術の利用、リスクの可視化を掲げている。これは単なる美辞麗句ではなく、人が入れない、入るべきでない場所を調査することで、労働災害や設備事故のリスクを下げるという同社の事業構造を、そのまま非財務価値に翻訳したものだといえる。
また、品質と情報セキュリティの観点でも、2022年にISO9001とISO/IEC27001の認証を取得している。これは、危険環境で使うハードウェアと、顧客設備の画像・点検データを扱うソフトウェア企業として、最低限ではなくむしろ必須の土台である。インフラ、電力、鉄道、下水道といった現場で使われる以上、同社のESGは気候変動開示よりも先に、安全性、品質、情報管理、社会実装責任の4点から読む方が実態に合う。Liberawareの社会的意義は、「新しい技術を作ること」より、「危険で人手の足りない現場を持続可能にすること」にある。
2. 事業内容
2-1. 事業全体像

Liberawareの本質は、屋内狭小・危険空間のデータ取得を入口に、3次元化、解析、クラウド管理、さらに顧客別の実装までを一気通貫で提供する産業インフラDX企業にある。したがって、同社を単なるドローンメーカーと捉えるのは不十分であり、実態としては「ハードウェアで現場に入り、ソフトウェアでデータを資産化し、ソリューションで運用定着まで持っていく会社」と定義するのが適切である。事業の中核は、屋内のGPSが届かない狭小・閉鎖・危険環境で、人が立ち入らずにデータを取得し、その後工程まで含めてデジタル化する点にある。
2025年7月期の通期実績をベースにみると、事業は大きくドローン事業、デジタルツイン事業、ソリューション開発事業の3層で構成される。サービス別には、ドローン事業の中に点検ソリューションとプロダクト提供サービスがあり、デジタルツイン事業はデータ処理・解析サービスとデジタルツインプラットフォームから成る。2025年7月期のサービス別売上は、点検ソリューション285百万円、プロダクト提供サービス521百万円、デジタルツイン事業223百万円、ソリューション開発事業376百万円であり、会社資料でもドローン事業が全体の6割程度を占める構図として整理されている。
この構造が重要なのは、収益源が最初から複線化されているからである。点検受託だけに依存しているわけでも、機体販売だけで伸ばすモデルでもない。現場点検、機体販売・レンタル、画像処理、3D化、ライセンス、受託開発が並行して存在し、顧客接点が増えるほど周辺サービスへ広がりやすい設計になっている。Liberawareの事業全体像は、単発案件を繰り返す点検会社でも機体を出荷して終わる製造会社でもなく、複数の収益レイヤーを持つ実装型インフラDX事業とみるべきである。
2-2. ビジネスモデル
Liberawareのビジネスモデルは、現場アクセスの困難さを起点に、取得データの価値を最大化する流れで理解すると分かりやすい。まず、IBISなどの屋内狭小空間点検ドローンを用いて施設・設備を点検し、動画データを取得する。次に、そのデータをLAPISで3次元化・オルソ化し、必要に応じてAI解析やBIM/CIM連携につなぐ。さらに、TRANCITYのようなクラウド上のデジタルツイン環境で共有・管理し、最後に顧客個別の運用フローや専用システムへ組み込む。この一連の流れが、同社の「ハード→データ→運用」の基本導線である。
この導線の強みは、各工程が独立した売上にもなり得る一方で、相互送客の関係にもなっている点にある。点検案件から画像処理案件が生まれ、画像処理案件からTRANCITY利用や追加解析案件が生まれ、さらに顧客固有の要件が見つかれば受託開発へつながる。逆に、機体を販売した顧客に対して保守、講習、レンタル補完、データ処理、ライセンス提供を重ねることもできる。つまり同社のビジネスモデルは、入口商品が複数ありながら、出口では継続収益化を志向するハブ型になっている。
2-3. ドローン事業
ドローン事業は、現在のLiberawareの売上中核であり、同時に顧客接点の起点でもある。この事業はさらに、点検ソリューションとプロダクト提供サービスに分かれる。前者は、同社が機体・パイロット・撮影まで含めて現場に入り、顧客へ点検データを納品するサービスである。後者は、機体そのものの販売・レンタルに加え、保守や講習会を含む導入支援型のサービスである。2025年7月期の売上は、点検ソリューション285百万円、プロダクト提供サービス521百万円であり、機体販売が本格寄与した結果、プロダクト提供の存在感が大きく高まっている。
点検ソリューションの価値は、単に「ドローンで撮る」ことではない。公式の点検・導入サービスでは、現場に合わせた機材準備、パイロット派遣、動画データ納品、オプションとしてのオルソ画像や3D・点群データ化までを提供している。つまり顧客からみた価値は、ドローンの保有ではなく、危険空間や停止コストの高い現場を短時間で安全に可視化できることにある。足場設置や人の立ち入りが不要になること、安全リスクを下げられること、物理的に入れない箇所にも到達できることが、導入判断の本丸である。
一方、プロダクト提供サービスは、同社の事業を単発受託から継続関係へ変える重要なレイヤーである。公式導入プランでは、実機確認、飛行体験、導入手続き、機体一式の提供、操縦講習会までがセットで示されている。2025年7月期のプロダクト提供売上521百万円のうち、機体販売は383百万円、レンタルは138百万円であり、機体販売49セット、レンタルセット数36で着地した。販売とレンタルが並立している点は、顧客の利用成熟度や予算制約に応じて導入ハードルを変えられるという意味で大きい。
ハードウェアとしてのIBIS2も、単なる小型ドローンではない。2023年6月リリース時の説明では、IBIS2は屋内狭小空間の点検・計測に特化した世界最小級のドローンと位置づけられ、過酷な環境での飛行安定性、狭小空間での利便性、鮮明な映像撮影能力の向上が打ち出された。2025年7月期の決算説明資料でも、ニデックとの共同開発による防塵モーター、IP5X相当の防塵性、自社設計プロペラなどが特徴として示されている。Liberawareのドローン事業の競争力は、「小さい」こと自体よりも、狭く、暗く、粉塵や危険を伴う屋内環境で壊れず、戻ってこられることにある。
また、足元では販売網の拡張も進んでいる。2026年7月期第2四半期の短信では、IBIS2の販売店制度に2026年2月末時点で5社が加入したとされる。これは単に販社を増やしたというより、各地域でインフラ関連の顧客基盤を持つ企業を通じて、導入・支援・運用価値を全国に広げる仕組みづくりとみるべきである。ドローン事業は今後、直販型だけでなく、販売店を通じた地域浸透型へも移っていく可能性が高い。
2-4. デジタルツイン事業
デジタルツイン事業は、Liberawareをハード企業に留めない中核レイヤーである。2025年7月期の売上は223百万円で、会社資料では23/7期に本格的に開始してから2年で大きく成長したと整理されている。この事業には、LAPISによるデータ処理・解析と、TRANCITYを軸にしたデジタルツインプラットフォーム提供が含まれる。機体で取得したデータを、その場限りの動画で終わらせず、再利用可能な3Dデータに変えることで、Liberawareのサービスは点検から情報資産化へ進む。
LAPISは、会社資料上、3次元解析を行うソフトウェアとして位置づけられている。処理難度の高い狭小・暗所・劣悪環境の3次元化が可能で、差分検知、異常検知、AI解析、BIMモデル、調書作成、体積計測などと連携できる。公式のDXサービスでも、動画データから3D・オルソ・点群・CADの生成と解析、狭小空間での実績、顧客要望に応じたカスタマイズが特徴として示されている。つまりLAPISは、撮影後の後工程を担う単なるビューアではなく、データを管理可能・比較可能・業務活用可能な形に変える処理基盤である。
TRANCITYは、この処理済みデータを共有・運用するプラットフォームの位置づけにある。2022年6月にCalTaがクラウドサービスを開始し、建設工事や維持管理におけるDXを目的に、動画から三次元データを生成し、PCやタブレットで遠隔共有できる仕組みとして提供が始まった。2025年7月期の会社資料では、ドローンやスマホで撮影した動画から3次元化・点群データ化が可能で、端末を選ばず閲覧でき、2025年5月末基準でユーザー数11,900名超の実績が示されている。Liberaware単体ではなく、CalTaを通じた事業展開である点も、この事業の特徴である。
ここで重要なのは、デジタルツイン事業が「機体販売後のおまけ」ではないことである。動画の3D化、BIM/CIM化、AI解析、クラウド共有まで含むため、顧客の運用プロセスに深く入り込める。点検の都度、現場に人が入らなくても、遠隔で関係者が同じ情報を見ながら判断できるようになるからである。この意味で、同事業はハードの普及を後押しするだけでなく、Liberawareの収益モデルを案件売上から継続利用型へ引き寄せるレイヤーでもある。
2-5. ソリューション開発事業
ソリューション開発事業は、Liberawareの技術資産を顧客固有の課題に合わせて再構成する事業である。2025年7月期売上は376百万円で、23/7期96百万円、24/7期129百万円から大きく拡大した。会社資料では、顧客ニーズに即したドローン等の開発、デジタルツインやデジタル管理システムの開発など、ハードからソフトまで幅広い開発を実施すると整理されている。ここでの価値は、既存商品を販売することよりも、顧客課題を起点に新しい用途や仕様を作り込むことにある。
実際の開発テーマも、一般的な受託ソフト開発とはかなり異なる。2025年7月期の事業構成図では、原発内ドローン調査プロジェクト、森林内飛行及び放射線量測定ドローンの開発、測量アプリケーション開発などが例示されている。つまり同事業は、目の前の売上を作るだけでなく、屋内狭小空間、放射線環境、測量、建設、鉄道といった領域で、次のプロダクトや標準化の種を生む役割を持つ。受託というより、実証と事業化の中間地帯に位置する事業とみた方がよい。
この事業が将来に向けて重要なのは、継続案件化が進んでいるためである。2025年7月期のKPIでは、ソリューション開発の継続案件数は前年の4件から12件へ増加した。資料上も、次フェーズへ移行した前年からの継続的な開発案件が増加傾向にあるとされている。単発受注で終わらず、複数年・複数フェーズで深まる案件が増えることは、将来の量産品や継続ソフト収益へ接続する可能性を高める。Liberawareにとってソリューション開発事業は、売上源であると同時に、将来事業のインキュベーターでもある。
2-6. サービスライン
公式サイト上のサービスラインは、点検・導入サービス、自動巡回サービス、DXサービス、受託開発の4つに整理されている。この区分は、先にみた3事業構造を顧客目線に置き換えたものと理解するとよい。事業区分が社内の収益管理軸だとすれば、サービスラインは顧客が何を頼めるかを示す市場側の入口である。Liberawareの特徴は、この両者がねじれておらず、ハード・ソフト・開発が連動して見える点にある。
点検・導入サービスは、危険箇所や稼働停止コストの高い現場での利用価値が明確である。公式ページでは、足場設置・撤去不要による時間短縮、人が入らずに済む安全性、業界最小クラスの機体による狭所対応が訴求されている。加えて、販売・レンタルプランでは、導入判断前のデモや飛行体験から、導入後の講習まで含めている。つまり顧客にとっては「買うか借りるか」の前に、「その現場に適用できるか」を試せる設計になっている。
自動巡回サービスは、Liberawareが点検から監視・巡視の定常業務へ広がろうとしていることを示す。公式ページでは、屋内非GPS空間での飛行技術としてLiDAR SLAM、Visual SLAM、モーションキャプチャを挙げている。これは、単に遠隔操縦できるという話ではなく、位置情報の得にくい屋内で自己位置推定と自律飛行を実現する技術基盤を持つという意味である。人手不足の深い現場では、スポット点検だけでなく、ルーティン監視の省人化が次の課題になるため、このサービスは中長期的な拡張余地が大きい。
DXサービスは、現場で取ったデータを業務利用可能な情報へ変えるサービスである。公式説明では、屋内ドローンだけでなく屋外ドローンやLiDARなど多様な機器からデータを取得し、設備点検に必要な解析やAIによる異常箇所検出システム構築まで行うとされる。特徴として、3D・オルソ・点群・CAD生成、狭小空間での実績、自社システム連携や特殊設備の異常検知への対応が挙げられている。したがってDXサービスは、ドローンを飛ばすサービスというより、設備データのデジタル化と業務組み込みを請け負うサービスである。
受託開発は、最も顧客個別性の強いサービスラインである。公式説明では、狭小空間飛行や非GPS空間での自動巡回に関する知見、インフラメンテナンス業界におけるDX知見、ハード・ソフト・アプリまで含むワンストップ体制が特徴として示されている。要件定義から設計、製造、量産まで対応すると明示しており、既存プロダクトを使いにくい領域や、導入先の特殊環境に合わせる案件で強みを持つ。Liberawareのサービスライン全体を眺めると、導入支援、現場運用、データ活用、個別開発の4象限がほぼ埋まっている。
2-7. 主要ユースケースと顧客業界
Liberawareのユースケースは、単に「ドローンを使える現場」ではなく、人が入るには危険、入れない、止められない、急ぎで見たいという条件が揃う現場に集中している。会社資料では、放射線環境下、夜間中に急いで行う必要がある時間外点検、硫化水素発生や酸欠・落下の危険がある下水道、工場地下の配管や水路など、物理的に人が入れない場所が例示されている。さらに、煙突、焼却炉、ダクト、老朽設備、災害直後のボイラーなども対象例に挙がる。つまり同社は、点検市場全体を狙うのではなく、高危険・高難易度・高付加価値の現場から市場を切り開いてきた。
顧客業界も、このユースケースに沿って広がっている。2025年7月期末時点の累計顧客企業数は360社で、鉄道、鉄鋼、電力・ガス、建設、道路、石油化学、プラントといったアセット産業が中心である。しかも資料では、業界別売上規模上位10位以内を「業界大手」と定義したうえで、業界大手企業取引実績が約50%とされている。これは、同社の案件がPoC段階のみに留まらず、実際に大手事業者の現場まで入り始めていることを示唆する。
足元では、下水道分野での存在感が一段と高まっている。2026年7月期第2四半期の短信では、全国10か所以上、累計40か所以上で下水管等インフラ調査を実施・受注したとされる。長崎市、佐賀市、鹿児島市、福井県、宇都宮市など自治体名も開示されており、八潮市の事故を契機に広がる社会課題に対して、同社のユースケースが具体化していることが分かる。したがって、Liberawareの顧客業界は多様に見えて、実際には安全性、保全効率、データ活用の必要度が高い産業インフラで一貫している。
2-8. 収益モデルとリカーリング収益

Liberawareの収益モデルを理解する鍵は、高粗利の機体販売と、継続性のあるサービス収益の組み合わせにある。2025年7月期の会社資料では、収益を機体販売、リカーリング収益、新規顧客点検等、スポットのソリューション開発案件に分けて整理している。通期ベースでは機体販売383百万円、リカーリング収益629百万円で、リカーリング収益額は前期355百万円から約1.7倍に増加した。一方で、機体販売以外売上に占めるリカーリング比率は67%から61%へ低下しているが、これは大型点検案件や新規ソリューション開発案件の獲得によるミックス変化であり、金額自体は着実に積み上がっている。
このリカーリング収益の実態は、継続顧客向けの点検・データ処理、レンタル、TRANCITY関連、継続的な開発案件の積み上がりに近い。四半期KPIでは、点検・データ処理サービスの継続顧客売上高割合、TRANCITYアカウント数、ソリューション開発継続案件数が並んで開示されている。つまり同社は、SaaSの月額課金だけをリカーリングと呼んでいるのではなく、継続利用・継続案件・継続運用を束ねた広義の反復収益として捉えている。これは、産業現場向け企業としては現実的な定義である。
会社が中長期で目指しているのも、この反復収益比率の上昇である。2025年7月期通期資料では、高粗利のドローン機体販売と、案件数増加に伴い粗利率が向上するサービス売上高を積み上げることで黒字体質へ移行し、中長期的にはリカーリングなサービスのみでの黒字化を目指すと明示されている。これは、ハード販売で顧客基盤を作り、その後はデータ処理、ライセンス、継続点検、開発保守へ寄せていく設計を意味する。Liberawareの収益モデルは、現時点ではハイブリッド型だが、方向性としてはサービス比率を高めるストック寄りモデルである。
2-9. 競争優位
Liberawareの競争優位は、第一に屋内狭小・危険空間という難所に特化していることである。屋外測量や一般的な点検ドローン市場ではなく、GPSが使えず、人が入りにくく、粉塵や暗所、危険物がある環境に焦点を当てているため、単純な価格比較になりにくい。公式サービス説明でも、ボイラー、天井裏、配管、煙突、ダクト、下水道など、通常の現場より制約条件の厳しい環境が前面に出ている。このニッチは市場規模の絶対額より、解決難度の高さが参入障壁になる。
第二に、ハードとソフトを一体で持つことである。IBIS2のような機体側の優位だけでなく、LAPISによる3次元化・AI解析、TRANCITYによるクラウド共有、さらに顧客個別開発まで抱えているため、競争相手が「機体専業」か「ソフト専業」かである場合、Liberawareはその間を埋める存在になれる。2025年7月期の会社資料でも、ハードとソフトの強み、大手企業との厚い取引関係を背景に、屋内点検利用でのポジション確立を狙う構図が示されている。競争優位の中心は、単体製品性能ではなく、現場取得から業務実装までを切らずにつなぐ統合力にある。
第三に、大手顧客のユースケース蓄積がそのまま標準化の種になることである。累計顧客360社、業界大手企業取引実績約50%という顧客基盤は、単なる営業実績ではない。鉄道、道路、電力・ガス、下水道など、制度や安全基準の影響が大きい業界では、大手導入事例がそのまま他社採用の判断材料になる。Liberawareはこの点を資料上でも「大手企業利用によるユースケース拡大で業界標準のポジショニングを狙う」と整理している。したがって同社の競争優位は、実績の蓄積が次の案件獲得を呼ぶ学習曲線型でもある。
2-10. 主要KPI
出所:事業計画及び成長可能性に関する事項よりAENTRO Research作成
| KPI | FY25/7実績 | FY26/7計画 | |
|---|---|---|---|
| 機体販売台数 | 49セット | 73セット | |
| 機体販売売上 | 383百万円 | 591百万円 | |
| リカーリング収益 | 629百万円 | 1,000百万円 | +59% YoY |
| 継続顧客売上比率 | 59% | 65% | 点検/データ処理 |
| TRANCITYアカウント | 148 | 200 | |
| 継続案件数 | 12件 | 12件 | ソリューション開発 |
| リカーリング比率 | 61% | 61% | 機体販売除く |
2-11. 事業上の主要論点
事業上の第一の論点は、ユースケースの多さを標準商品へどう還元するかである。Liberawareは危険環境・特殊環境での案件を多く持つ反面、案件ごとの個別性も高い。したがって、点検ソリューションや受託開発で得た知見を、機体仕様、LAPIS機能、TRANCITY利用、販売店制度といった再現可能な形へ落とし込めるかが重要になる。下水道分野での標準化協力体制や販売店制度の拡張は、そのための布石と読める。
第二の論点は、ハード主導成長からサービス主導成長へ本当に移れるかである。現時点では高粗利の機体販売が収益を押し上げる局面が続いているが、中長期ではリカーリング収益のみでの黒字化を目指す方針が示されている。これは、レンタル、継続点検、ライセンス、継続開発の積み上がりが十分に進まなければ成立しない。投資家目線では、機体販売セット数より、TRANCITY利用、継続顧客比率、継続案件数の伸びの方が、将来価値の確認には重要になる。
第三の論点は、プロダクト拡張の成否である。2025年12月には、自動巡視型カメラ「トリノス」が発売され、洞道、トンネル、データセンター、ダム監査廊などの広大施設向け巡視点検の省人化が打ち出された。これは、同社が「屋内狭小空間ドローン企業」から「屋内・閉鎖空間の保守点検ロボティクス企業」へ広がる可能性を示す一方、販売・運用・量産の難易度も上げる。事業機会は広がるが、開発テーマが増えるほどリソース配分の巧拙も問われる。
3. 経営戦略
3-1. 戦略の全体像
Liberawareの経営戦略の中核は、単にドローン販売台数を伸ばすことではない。「屋内狭小・危険空間での点検」という新市場を実需化し、その後に標準化・周辺展開・海外展開を重ねることにある。会社資料でも、25/7期を屋内ドローン点検市場が確立した年度と位置づけ、26/7期を主要業界の深掘りと将来の非線形成長を支える投資を加速する年として整理している。さらに26/7期2Q資料では、同社の現在地を「拡大フェーズを経て、スケールアップと市場定着の段階」と表現しており、特に下水道領域では業界中核企業、業界団体、自治体との連携を一気に広げている。
この会社の戦略を一本で表現するなら、技術先行ではなく市場形成先行である。点検困難空間で有効な機体を持つだけでは市場は広がらないため、運用基準、導入フロー、販売網、点検後の判断プロセスまで含めて整えようとしている。実際、26/7期2Q資料では、今後の成長ドライバーとして次世代IBIS、データビジネス、海外展開、国家プロジェクト、鉄道環境対応ドローンを並列に置いているが、足元で最も具体化しているのは下水道領域の市場形成である。
3-2. 社会課題と政策追い風
Liberawareに追い風となっている外部環境は明確で、第一に設備・インフラの老朽化、第二に点検人材の不足、第三に危険作業の無人化要求である。国土交通省によれば、建設後50年以上経過する道路橋の割合は2023年3月時点で約37%だが、2040年3月には約75%へ上昇する見通しであり、下水道管渠も同7%から34%へ高まる。つまり、点検対象は減るのではなく、むしろ加速度的に増える。
人手面でも環境は厳しい。パーソル総合研究所の推計では、2030年時点で日本の労働需給ギャップは644万人に達する。加えて、国土交通省は上下水道分野で、ベテラン退職や専門人材不足が、日常点検の質低下、更新計画の遅れ、DX導入判断の停滞につながると整理している。点検の必要量が増える一方で、人は足りなくなる。この構図そのものが、同社の需要背景になっている。
政策面でも風向きは悪くない。国交省の第2次提言では、地下空間の安全確保を目的とする技術の高度化・実用化、そして管内作業の無人化・省力化を進めるべきだと明示されている。さらに2026年3月の資料では、下水管内での飛行式ドローン普及に向けたロードマップが示され、現時点では飛行式活用がまだ限定的である一方、技術資料整備、供給面の拡大、低コスト化、ドローン業界との連携促進が課題として整理されている。これは、まさにLiberawareが解こうとしている論点と重なる。

3-3. 市場機会と市場形成局面
この会社の市場機会を考えるうえで重要なのは、すでに成熟した既存市場を奪う戦いではなく、これから実務に定着する市場を作る戦いであるという点である。国交省の2026年3月資料でも、全国特別重点調査では潜行目視が約6割、浮流式が約14%、飛行式はまだ数スパン程度にとどまっている。飛行式ドローンは有効性が認められつつも、まだ当たり前の手法にはなっていない。だからこそ、機体性能だけではなく、誰がどう使うか、どこまで使えるか、どう積算するかまで含めた市場形成余地が大きい。
Liberaware自身もこの局面認識をかなり明確に持っている。25/7期通期資料では、同年度を「屋内ドローン点検の市場が確立された年度」と整理し、点検ソリューション売上が継続受注と案件大型化によって実需利用へ移行したとしている。26/7期2Q資料では、その次の段階として、下水道領域のIBIS標準化に向けた連携、多数自治体での点検実施、新規プロダクトや海外基盤の整備を並行推進している。つまり同社は、PoC企業から普及企業へ移る局面にある。
3-4. 下水道領域の標準化戦略
Liberawareの経営戦略で最重要なのは、現時点では明らかに下水道領域の標準化戦略である。理由は単純で、社会課題の切迫度が高く、政策の後押しがあり、かつ現場の業務フローそのものを再設計する余地が大きいからである。26/7期2Q資料では、下水道調査におけるドローン普及のための打ち手を、①業界中核企業との資本業務提携、②業界団体との連携による標準化、③全国自治体での点検実施、の三層で整理している。これは単なる営業トピックではなく、標準化を通じた市場支配力の取りに行き方として理解すべきである。
まず資本業務提携の意味が大きい。26/7期2Q資料では、日水コン、日本ヒューム、管清工業、山田商会を、計画・設計、更新・更生、維持管理、生活インフラ工事の中核プレイヤーとして並べ、提携の期待効果を「開発高度化」「社会実装加速」「販売・導入拡大」としている。特に下水道分野では、計画・設計から維持管理・更新までのバリューチェーン中核企業が同時に参画したと説明しており、同社が狙っているのは"1社への機体販売"ではなく"バリューチェーン丸ごとの巻き込み"である。
この提携がなぜ強いかは、提携先側の開示からも見える。日本ヒュームは、材料・構造に関する知見とデジタル技術を組み合わせ、管路劣化を定量的に把握する診断高度化や、将来的な修復技術開発まで視野に入れてLiberawareと連携すると説明している。つまり、Liberawareの役割は「撮ること」だけにとどまらず、点検データを更新判断や補修判断へ接続する入口技術として位置付けられ始めている。ここまで踏み込めると、ドローンは部材ではなく意思決定インフラになる。
次に、業界団体への接続も重要である。2026年1月、Liberawareは日本下水道管路管理業協会に入会し、技術基準整備、人材育成、運用基準の確立、歩掛・積算の標準化に取り組む方針を示した。続いて日本下水道協会にも賛助会員として参加し、技術基準、指針、マニュアル、制度設計の議論を通じて、IBIS2を下水道調査の標準的技術モデルの一つとして普及させることを目指すとしている。ここで重要なのは、標準化の対象が技術仕様だけでなく、資格・教育・積算・制度まで及んでいることである。
さらに、自治体実績の積み上げが同時進行している。25/7期通期資料では、上下水道関連のIBIS2導入数は第4四半期だけで12セット、関連売上は90百万円まで拡大した。26/7期2Q資料では、全国で新たに10か所以上、累計40か所以上の下水道調査を実施・受注したとされる。つまり、政策・提携・現場導入の三つが同時に進んでおり、同社の下水道戦略は単なる将来構想ではなく、現場で反復可能な"標準モデル"を先に取りにいく戦略としてかなり具体化している。

3-5. 既存主要業界の深掘り
ただし、下水道一本足ではない。近い将来の業績を支えるのは、引き続き鉄道、電力、鉄鋼、プラント、建設など既存主要業界の深掘りである。25/7期通期資料でも、26/7期は鉄道・電力・鉄鋼といった主要業界を深掘りしつつ、下水道や自治体関連で標準化を狙うと整理されている。したがって、同社の戦略は「既存の屋内点検需要を伸ばすコア」と「新市場を作るフロンティア」の二層構造で読むべきである。
このコア側の強みは、IBIS2が適する環境の広さにある。会社資料では、同機体が「狭い」「暗い」「劣悪」「危険」な環境で、人が実施しにくい点検を代替できると説明している。直径50cm程度の空間進入、防塵モーター、高感度カメラ、危険空間での帰還性といった特性は、業界ごとに別製品を用意するというより、共通課題を横展開できる共通基盤として機能する。だから一つの業界で作ったユースケースが、電力、鉄鋼、焼却炉、天井裏、ダクト、タンクへ移植しやすい。
加えて、販売店制度の整備は、既存主要業界の深掘りを加速させる打ち手として重要である。九電ドローンサービス(QDS)とのGold Partner契約では、販売・マーケティング・一次対応を販売店が担い、Liberawareが講習、修理、事業計画、技術研修まで支援する枠組みが示された。これは、同社が直販だけで拡大するのではなく、業界知見を持つパートナーを通じて地域・業界深耕を外部化する戦略へ踏み出していることを意味する。QDS向けには、下水道設備の調査・実証、画像処理検証、共同実証などの蓄積もあり、販売と運用が分断されていない。
3-6. 国家プロジェクトの位置づけ
Liberawareの国家プロジェクトは、会計上は補助金や研究開発費の論点として語られやすいが、経営戦略上は将来の新規事業を先行育成する"事業化装置"として捉えるべきである。25/7期通期資料では、国家プロジェクト(SBIR)3件、補助金総額約57億円の開発が予定どおり進捗したとされる。26/7期2Q資料でも、各種成長戦略の順調な進捗として、鉄道環境対応ドローン、建設DXソリューション、新規プロダクト、海外基盤整備が並列に示されている。
鉄道向けは特に重要である。26/7期2Q資料では、鉄道点検向けドローンソリューション開発は量産試作機フェーズに入り、28年4月の事業開始を目指して関連システムも開発中としている。別スライドでは、同プロジェクトが「安全・安心な公共交通等の実現」に向けたSBIRに採択され、施設老朽化、職員高齢化、担い手不足、さらに触車・感電・墜落といった鉄道特有の労働災害リスクを背景に進められていることが明示されている。これは、同社が屋内狭小点検の知見を、より大きい隣接市場へ展開する典型例である。
市場性の見立ても強気だ。26/7期2Q資料では、鉄道点検ドローンソリューションについて、国内鉄道事業者のみを対象にしたSOMを約2,000億円と推定している。もちろんこれは会社側の試算であり、そのまま実現するとは限らないが、少なくとも同社が鉄道を単なる実証テーマではなく、独立した成長エンジン候補として位置付けていることは明確である。しかも資料では、現時点でSBIR事業に参加する鉄道事業者が6社とされており、実証相手が単独ではない点も重要である。
建設DXも同じ文脈で読むべきである。26/7期2Q資料では、建設DXソリューションは26/7期中の事業開始に向けてビジネスモデル構築と現場実証を進めているとされる。さらに2025年8月の公式リリースでは、Liberaware、KDDIスマートドローン、大林組の3社が、建設現場に自動充電ポート付きドローンを1年間常設し、現場補助者なしのレベル3飛行による週次の遠隔自動測量を継続運用した。ここでは撮影からクラウド転送、3次元化、掘削量算出、進捗可視化までが一気通貫で自動化されており、同社が「撮る会社」から「現場管理を自動化する会社」へ広がる可能性が見えている。
3-7. 新規プロダクト・データビジネスの拡張
中長期でより重要になるのは、IBIS2そのものの改良より、IBIS2の周辺にどれだけ高付加価値レイヤーを積めるかである。会社資料では、今後の成長戦略として、次世代IBIS、AI診断・判定、業界特化デジタルツイン、オプション拡張、遠隔化・自律化を挙げている。つまり、機体性能の改善は手段であり、目的は用途拡大と単価向上である。点検後の3D化、判定、履歴管理、業務ソフト連携まで含めて価値を取れれば、競争はハードの価格競争から外れやすくなる。
この文脈で見ると、「トリノス」の意味は大きい。26/7期2Q資料では、トリノスをIBIS2に続くロボットプロダクト第2弾と位置付け、対象領域を「狭小空間」から「広大施設の巡視」へ拡張すると説明している。IBIS2が高難度・スポット型のプロフェッショナルサービスに向くのに対し、トリノスはデータセンター、プラント、洞道、ダム監査廊、トンネルなど長距離・広域ルートの定期巡視を自動化する常設インフラ型のプロダクトである。これは、同社の収益モデルをスポット点検から高頻度・常設型の運用収益へ広げる布石と見てよい。
3-8. 海外展開
海外展開については、短期の売上貢献よりも、市場基盤づくりを優先する戦略として読むべきである。26/7期2Q資料では、海外市場での成長に向けて「政策・市場形成」「実装・人材基盤」「Dual Use連携」の3レイヤーを明示している。韓国では政策対話と市場プレゼンス確立、東南アジアではインストラクター育成と技能移転、国際的には災害対応や安全保障周辺のDual Use議論への参加を進めている。これは一般的な輸出営業というより、規制・人材・ユースケースを先に押さえる立ち上げ戦略である。
地域別の役割分担もかなり明確だ。25/7期通期資料では、韓国を現地法人による直販モデル、香港を東・東南アジアのビジネスハブ、マレーシアをIBIS操縦者育成拠点として位置付けている。24年11月の韓国子会社設立以降、事業会社との提携は計7社に広がり、韓国ではALUXやMorphing I、マレーシアではAerodyneなどとの連携が進んだ。ALUXは製造・開発・販売面で、Morphing Iは上下水道向けAIロボティクス面で、Aerodyneは技能移転と人材育成面で、それぞれ異なる役割を担う。単一国への一括展開ではなく、機能ごとに国を使い分けている点が同社の特徴である。
もっとも、海外戦略の収穫はまだこれからである。現時点では市場調査、認知拡大、認証取得、現地講習、政策対話の色彩が強い。したがって投資家としては、短期の売上寄与よりも、①韓国で直販モデルが立ち上がるか、②東南アジアで人材基盤が再現性ある形になるか、③将来的に欧米展開への橋頭堡になるか、の順で見るべきだろう。会社資料でも、欧米はIBISや鉄道ドローンの最大市場候補として示されているが、足元ではまずアジアで勝ち筋を磨く段階とみるのが自然である。
3-9. パートナー戦略・資本業務提携の位置づけ
Liberawareのパートナー戦略は、単に販路を借りるための提携ではない。むしろ、技術、運用、販売、制度、資本を束ねて「導入される仕組み」そのものを作る戦略である。下水道中核企業との資本業務提携は業務フローへの埋め込みを狙い、業界団体との連携は標準や積算への接続を狙い、Gold Partner制度は地域導入の実行力を狙い、海外提携は市場立ち上げ機能を狙う。こうして見ると、提携先はすべて役割が異なっており、ばらばらに見えて実は一つの戦略の部品になっている。これは推論だが、同社の参入障壁は今後、機体性能よりもこの提携網の制度化・運用化の深さに宿る可能性が高い。
3-10. 成長戦略の優先順位
ここまでを踏まえると、Liberawareの成長戦略の優先順位は、第一に下水道での標準化と全国展開、第二に既存主要業界の深掘りによる継続成長、第三に国家プロジェクトを量産・事業化へつなぐこと、第四にデータ・ロボティクス化による単価と継続収益の引き上げ、第五に海外市場基盤の先行構築、と整理するのが妥当である。前二者が近い将来の売上と粗利を支え、後三者が将来の非線形成長を担う。これは会社が開示している複数の成長ドライバーを、時間軸で並べ替えた見方である。
投資家が今後確認すべき論点も、この優先順位に対応する。すなわち、下水道で標準化が制度・積算・教育まで進むか、自治体導入が"実証"から"定常採用"へ移るか、鉄道・建設DXの国家プロジェクトが量産/正式サービスへ移るか、トリノスやデータサービスが新しい継続収益源になるか、海外で再現可能な導入モデルが見えるかである。本章の結論は明快だ。Liberawareの経営戦略は、優れたドローンを作ること自体ではなく、危険空間点検を標準業務へ変える市場設計を先に押さえ、その上に新市場と新プロダクトを積み上げる戦略として理解すべきである。


4. 業績動向
4-1. 総論
Liberawareの業績は、単純な赤字拡大型企業としてではなく、売上高と売上総利益が急拡大する一方、SBIRに起因する研究開発費と補助金収入の認識タイミングが営業段階・経常段階の見え方を大きく変える企業として読むべきである。実際、FY2025/7の売上高は1,406百万円まで拡大し、売上総利益率も47.6%まで上昇したが、営業損益は△1,588百万円、経常損益は46百万円と、段階損益で印象が大きく異なる。さらにFY2026/7計画では、売上高2,220百万円、営業損失△2,412百万円、経常損失△177百万円を見込む一方、SBIR精算期ずれと株式報酬費用を調整した経常損益は3百万円の黒字見込みとしている。したがって、同社の収益性を評価する際は、営業赤字の大きさだけではなく、粗利創出力、リカーリング収益の積み上がり、そしてSBIRの会計処理を含めた実質採算を分けて捉える必要がある。
加えて、数字を追う際の前提として、FY2022/7〜FY2024/7は単体、FY2025/7以降は連結である点を押さえる必要がある。会社はFY2025/7期末決算から連結財務諸表を作成しており、FY2026/7中間期についても前年中間期の連結比較数値を開示していない。したがって、過去推移を見る際は「事業の伸び」と「会計基準の切り替え」を切り分けて読むべきであり、本章でもその前提で整理する。
4-2. 過去業績の推移
FY2022/7からFY2024/7までは、同社にとって市場形成から本格立ち上がりへ移る準備局面だった。売上高はFY2022/7が260百万円、FY2023/7が379百万円、FY2024/7が815百万円と拡大した一方、営業損益はそれぞれ△462百万円、△630百万円、△440百万円で推移した。特に重要なのは売上総利益率の変化で、FY2022/7の16%、FY2023/7の13%から、FY2024/7には44%へ大きく改善している点である。つまり、FY2024/7はまだ営業赤字ではあったが、粗利を伴う売上成長モデルへ移行し始めた年度と位置付けられる。
FY2024/7が転換点だった理由は、IBIS2の本格販売開始とリカーリング収益の見え方が変わったためである。2024年7月期通期実績では、IBIS2の機体販売が39セットに達し、機体販売を除く売上高に占めるリカーリング収益比率も67%となった。また、会社資料では「全てのサービスが前年比増加」と整理されており、点検受託だけではなく、機体販売・レンタル、データ処理、継続案件が並行して立ち上がったことが確認できる。ここで同社の収益構造は、実証色の強い技術企業から、複数の売上レイヤーを持つ事業会社へ一段進んだ。
FY2025/7は、その流れがさらに一段進んだ年度である。売上高は1,406百万円、売上総利益は669百万円、売上総利益率は47.6%となり、前期の44%からさらに改善した。一方で、販売管理費は2,258百万円まで膨らみ、その内訳は人件費及び経費654百万円、SBIR以外研究開発費89百万円、SBIR研究開発費1,514百万円であった。この結果、営業損失は△1,588百万円となったが、営業外収益1,647百万円の計上により経常利益は46百万円、当期純利益も46百万円で着地した。つまりFY2025/7は、売上成長と粗利改善が鮮明になった一方、国家プロジェクト起因の研究開発費が営業段階で大きく表出した年度だったと総括できる。
なお、FY2025/7実績は会社予想に対しても売上高が上振れた。会社は、屋内ドローン点検市場の拡大、点検ソリューションとデータ処理・解析サービスの伸長、さらにソリューション開発案件の好調を上振れ要因として挙げている。他方、営業損失の赤字幅が予想より縮小したのは、SBIR研究開発費の予算消化が想定より少なかったためであり、ここでも損益の見え方にSBIR要因が強く影響している。Liberawareの業績は、需要面だけでは説明できず、投資執行タイミングの影響を常に伴う。

4-3. 収益構造の変化
FY2025/7の売上構成を見ると、同社の収益がすでに単線ではないことがよく分かる。事業別では、ドローン事業が57%、デジタルツイン事業が27%、ソリューション開発事業が16%である。さらにドローン事業の内訳を見ると、点検ソリューションが285百万円、プロダクト提供サービスが521百万円であり、プロダクト提供の中には機体販売383百万円とレンタル138百万円が含まれる。デジタルツイン事業は223百万円、ソリューション開発事業は376百万円まで成長している。つまり、Liberawareは「点検受託企業」でも「機体メーカー」でもなく、点検、機体、データ処理、受託開発の複合モデルとして収益を形成している。
この複合性は、継続収益の増加という形でも表れている。FY2025/7のリカーリング収益額は629百万円で、FY2024/7の355百万円から大きく増加した。点検・データ処理サービスにおける継続顧客売上高割合は59%、TRANCITYアカウント数は148、ソリューション開発の継続案件数は12件である。機体販売も49セット、レンタルは36セットまで増えている。機体販売以外売上高に占めるリカーリング収益比率は61%と、前年の67%から見かけ上は低下したが、これは大型点検案件や新規ソリューション開発案件が増えたミックス要因によるもので、金額そのものは着実に積み上がっている。したがってFY2025/7は、継続性のある売上の絶対額が大きく伸びた年度とみるべきである。
四半期ベースで見ても、粗利創出力はかなり安定してきている。会社資料では、売上総利益率はFY2024/7第2四半期以降、安定的に40%以上で推移しており、FY2025/7第2四半期以降の売上総利益額も、閑散期である第1四半期を除けば概ね高水準で推移している。販管費(研究開発費以外)も固定費的性格が強く、FY2025/7通期では537百万円から654百万円へ増えたものの、売上の伸びに比べれば増加幅は限定的だった。収益モデルとしては、高粗利の機体販売と継続収益が、固定費を吸収し始める段階に入ったと整理できる。
4-4. SBIR研究開発費・補助金収入・段階損益の読み方
LiberawareのPLを読むうえで最重要論点は、やはりSBIR研究開発費と補助金収入の期ずれである。FY2025/7実績では、SBIR研究開発費が1,514百万円、営業外収益が1,647百万円だった。FY2026/7計画では、SBIR研究開発費が2,335百万円へ増加し、営業外収益は2,244百万円を見込む。営業段階では研究開発費が先に費用計上され、補助金は営業外で後追い認識されるため、営業利益は事業の実力以上に悪く見えやすい。一方で、経常利益も補助金の精算タイミングによって期ごとのブレが出る。したがって、同社のPLは営業利益だけでは実態が掴みにくい構造にある。
FY2025/7が典型例で、営業損失は△1,588百万円だったが、補助金収入を含む営業外収益の計上で経常利益は46百万円まで回復した。会社はこの年度を、屋内ドローン点検市場の確立と市場拡大に注力しつつ、成長戦略も推進した年度として位置付けている。ここで重要なのは、営業赤字が需要不足によるものではなく、市場形成と国家プロジェクトを同時に進めた結果としての先行投資負担である点だ。売上総利益率は改善し、機体販売・継続収益も拡大しているため、本業の需要自体はむしろ強い。
FY2026/7計画では、この特徴がさらに鮮明になる。売上高2,220百万円、売上総利益1,123百万円、売上総利益率50.6%と、トップラインと粗利は大きく伸ばす前提だが、販売管理費は3,535百万円へ増加し、営業損失は△2,412百万円を見込む。他方で、会社はSBIR精算期ずれ151百万円と株式報酬費用29百万円を調整した「調整後経常損益」を3百万円の黒字見込みとして開示している。これは会社が自ら、本業採算を見るうえでは調整後経常損益を補助線として見てほしいと示しているに等しい。投資家の視点でも、同社を見る際は①売上総利益率の改善、②リカーリング収益の増加、③調整後経常損益の安定、の三つを優先して確認すべきである。
直近でも、補助金タイミングの影響は続いている。FY2026/7第1四半期は売上高294百万円、営業損失△614百万円、経常損失△605百万円で、営業外収益は約15百万円にとどまった。会社は、1Qは閑散期であるうえ、鉄道SBIRの補助金収入は第2四半期以降に計上予定と説明している。実際、中間期には補助金収入441百万円が営業外収益に入り、経常損失は△515百万円まで縮小した。さらに2026年4月1日には、国交省所管プロジェクトに関する167百万円の補助金収入を第3四半期に営業外収益として計上すると公表している。足元の経常損益を読む際にも、補助金の認識時期を横に置かないと見誤る。

4-5. BS / CF と資金需要
BSから見ると、FY2025/7末時点の財務はまだ一定の余力を持っていた。総資産は1,700百万円、純資産は932百万円、自己資本比率は53.6%、現金及び預金は751百万円である。まだ大規模な設備保有型ビジネスではないため総資産規模自体は大きくないが、上場後の資本調達と利益剰余金振替もあり、年度末時点では成長投資を継続できるバランスシートだったといえる。
もっとも、FY2026/7中間期末ではその姿がかなり変わる。総資産は1,385百万円、純資産は489百万円、自己資本比率は32.6%まで低下し、現金及び預金も532百万円へ減少した。主因は中間純損失△516百万円の計上であり、加えて契約資産や前払金、仕掛品など運転資金関連科目の動きも影響している。つまり、高成長と研究開発投資を同時に進める会社として、上期末BSだけを見ると資本余力は薄く見えやすい。この点は、同社の株式ストーリーを考えるうえで無視できない。
キャッシュ・フローも、投資先行企業らしい内容である。FY2026/7中間期の営業CFは△327百万円、投資CFは△13百万円、財務CFは+118百万円で、期末現金は532百万円となった。営業CFのマイナスには、中間純損失に加えて前払金の増加や棚卸資産の増加が含まれており、補助金収入441百万円を受け取ってなおマイナスである点は重い。これは、同社の成長モデルがまだ補助金受領前の先行支出を相応に伴うことを示している。
ただし、H1末BSだけで資金面を悲観しすぎる必要もない。中間期中には、新株予約権行使と2025年12月26日付の九州電力向け第三者割当により資本金・資本剰余金が増加している。さらに2026年3月31日払込予定の第三者割当増資では、657,800株、払込総額1,060,373,600円を日本ヒューム、日水コン、管清工業、山田商会に割り当てる予定であり、資金使途は次世代IBISの研究開発と上下水道領域の営業・開発活動である。つまり、上期末に見える資本の薄さは、その後の資本増強によってかなり補完される構造になっている。財務の論点は、資金不足というより、成長投資の継続に伴う希薄化と資本効率のバランスにある。

4-6. 直近四半期の評価
FY2026/7第1四半期だけを見ると、売上高294百万円、営業損失△614百万円、経常損失△605百万円で、かなり厳しい数字に見える。ただし、会社は1Qを閑散期と位置付けており、売上総利益率45.7%は前年同期の46.0%とほぼ同水準で、1Qとしては売上高が過去最高だったと説明している。つまり、第1四半期の赤字拡大は、売上の失速というより、鉄道SBIR研究開発費の増加と人員投資、さらに補助金認識の後ずれが重なった結果と理解する方が実態に近い。
中間期まで広げると、売上高697百万円の中身も見えてくる。サービス別では、ドローン事業が424百万円、そのうち点検ソリューション107百万円、プロダクト提供317百万円である。デジタルツイン事業は82百万円、ソリューション開発事業は166百万円、新規領域は24百万円だった。売上構成上は、引き続きプロダクト提供が中核だが、デジタルツインとソリューション開発も一定規模を維持している。また、上期も全国10か所以上、累計40か所以上で下水管等インフラ調査を実施・受注したとされ、需要の基礎体力が崩れているわけではない。H1の数字は悪いが、事業面ではむしろ下水道を軸に導入拡大局面へ入っている。
4-7. 通期見通しの読み方
会社はFY2026/7通期について、売上高2,220百万円、売上総利益1,123百万円、売上総利益率50.6%、営業損失△2,412百万円、経常損失△177百万円、当期純損失△178百万円を見込んでいる。H1時点で会社予想は据え置かれており、決算短信でも変更はない。したがって、会社の見立ては、下期に売上規模を大きく伸ばしつつ、補助金認識も順次進む前提だと理解してよい。H1売上高697百万円に対して通期計画2,220百万円であるため、下期偏重の色は強いが、同社はもともと下期に案件が寄りやすい傾向を持つうえ、機体販売や下水道関連案件の拡大を成長ドライバーに置いている。
一方で、通期計画の見どころは売上高よりも、その質にある。会社資料では、引き続きリカーリング収益の増加と高粗利の機体販売を積み上げ、売上総利益率50%台を目指すとしている。また、KPI計画として機体販売73セット、TRANCITYアカウント数200、ソリューション開発継続案件数12、点検・データ処理サービスの継続顧客売上高割合65%を掲げている。通期の焦点は、単に2,220百万円を達成するかどうかではなく、高粗利・継続収益・業界標準化の三点が同時に前進するかにある。
4-8. 今後の注目点
今後の注目点は三つに整理できる。ひとつ目は、粗利を伴う売上成長が続くかである。FY2022/7の売上総利益率16%からFY2025/7の47.6%まで改善してきた流れが、FY2026/7計画の50.6%へつながるかは、本業のスケーラビリティを測る重要な試金石になる。ふたつ目は、リカーリング収益がさらに積み上がるかである。機体販売は強いが、長期的な企業価値の源泉は、点検・解析・ライセンス・継続案件の積み上がりにある。三つ目は、資本政策と研究開発投資が無理なく両立するかである。補助金と第三者割当を活用しつつ成長投資を継続できれば、足元のPLの見えにくさは将来の参入障壁に転化しうる。
5. 中長期成長方針・資本政策
5-1. 総論
Liberawareの中長期方針は、短期の会計利益を優先して投資を抑えることではなく、屋内狭小空間点検という新市場で標準ポジションを取り、その上に下水道、鉄道、建設DX、海外、新規プロダクトを積み上げることにある。2025年10月公表の「事業計画及び成長可能性に関する事項」では、FY2024/7からFY2026/7にかけて売上高ベースで高成長を維持しつつ、成長戦略の柱として海外展開、データビジネス、領域拡大、国家プロジェクト、鉄道環境対応ドローン、次世代IBISを並列に置いている。会社自身も、屋内ドローン市場の確立後は各種成長戦略の実現による非線形の成長を目指すと整理している。
5-2. 会社が描く中長期像
Liberawareの中長期像は、既存事業の延長だけではなく、危険空間点検の標準業務化と、その先の保全DXの拡張にある。2025年10月の成長可能性資料では、今後の成長イメージとして、次世代IBIS、データビジネス領域拡大、海外展開、国家プロジェクト、鉄道環境対応ドローンを明示している。さらに、短期は既存サービスの拡充と付加価値向上、中長期は次世代IBISおよびソフトウェア、鉄道環境対応ドローンのローンチによって新しい成長エンジンを獲得する整理になっている。
ここで重要なのは、会社が目指す姿が「IBIS2をもっと売る」だけではない点である。資料上でも、IBISの進化に合わせた空間データ事業領域の拡大、AI診断・判定による付加価値増、業界特化デジタルツインPF、遠隔化・自律化による用途拡大が示されている。つまり、中長期的な企業価値の源泉は機体台数そのものではなく、点検困難空間のデータ取得を起点に、解析・運用・標準化までを押さえることにある。
5-3. 最重要テーマは下水道領域の標準化
Liberawareの中長期方針の中で、現時点で最も具体性が高いのは下水道領域の標準化である。2026年3月13日の資本業務提携開示では、会社は現在注力する領域として上下水道、とりわけ下水道を明示し、その理由を老朽化・人手不足という構造課題と、ドローン/DXソリューション市場が立ち上がりつつあることに求めている。さらにこの文書では、普及局面では技術単体では足りず、計画・設計・制度・ガイドラインと、施工・更新・維持管理・運用までのプレイヤーが連携し、業務フロー・評価基準・データ活用の枠組みを整備する必要があると踏み込んでいる。
この戦略の強さは、パートナーの配置に表れている。日本ヒュームとは点検データを更新・施工の意思決定へつなぐ連携、管清工業とは現場知見を織り込んだソリューション高度化と「No Entry」型点検モデルの普及、さらに資本業務提携全体としては点検手法の高度化、機体・システム・データ取得手法の共同検討、点検業務フローの設計・標準化、自治体向け共同提案まで視野に入れている。これは単なる販路提携ではなく、点検から維持管理、更新、制度対応までを巻き込んで業界標準を取りに行く設計である。
足元の進捗も、この方針の具体性を裏付けている。2026年7月期中間期の決算短信では、日本下水道協会、日本下水道管路管理業協会に参画し、ドローンによる下水道点検の標準化に向けた協力体制を構築したこと、さらに全国で10か所以上、累計40か所以上の下水管等インフラ調査を実施・受注したことが示されている。したがって、下水道戦略は構想段階ではなく、標準化、現場導入、提携、営業展開が同時に進んでいる実装フェーズにある。
5-4. 収益モデルの中長期像は「リカーリング化」
Liberawareの中長期方針を収益面から要約すると、高粗利の機体販売を梃子にしつつ、最終的にはリカーリング収益を中核にした黒字体質へ移ることに尽きる。2025年10月の成長可能性資料では、会社は明確に「中長期的には、リカーリングなサービスのみでの黒字化を目指す」としている。併せて、点検ソリューション、レンタル、TRANCITYライセンス、継続案件などを束ねたリカーリング収益を積み上げつつ、機体販売という高粗利収益を重ねることで収益性を高める構図を描いている。
この方針は、FY2026/7会社計画のKPIにも表れている。会社資料では、FY2026/7計画として機体販売73セット、TRANCITYアカウント数200、ソリューション開発継続案件数12を掲げている。さらに、FY2025/7実績で点検・データ処理サービスの継続顧客売上高割合59%、TRANCITYアカウント数148、継続案件数12まで来ており、同社は「継続利用される仕組み」を量的に伸ばす局面にある。つまり、中長期の収益モデルは、案件型収益の積み上げではなく、機体→点検→データ処理→ライセンス→継続開発という反復関係の強化に向かっている。
ここは第4章の業績動向ともつながる。足元ではSBIRに伴う研究開発費が営業段階の赤字を大きく見せる一方で、会社はQ1決算説明資料で、今後複数年にわたりSBIR研究開発費を計上するが、補助金で補填されるため、中期経営計画期間内では経常利益ベースでの黒字化を図るとしている。言い換えると、会社が見ている中期の利益指標は、単純な営業利益ではなく、成長投資を吸収したうえでの経常採算である。
5-5. 国家プロジェクトは将来事業の育成装置
Liberawareの国家プロジェクトは、単なる補助金案件ではない。中長期方針の観点では、新市場へ入るための実証・開発・信用補完の装置として位置付けるべきである。建設DXでは、会社は国土交通省所管のSBIRに採択され、建設現場の業務効率化を目的としたドローンDXソリューション開発を進めている。資料では、屋外ドローンによるデータ取得、3次元化、高度データ解析、建設ソフト連携の自動化によって、建設現場の人手不足解決を狙う構想が示されている。
鉄道も同じである。2025年10月資料では、鉄道環境対応ドローンを成長戦略の中核に置き、屋内外点検ドローンの標準を取りに行く構図を示している。さらに2025年10月時点で、鉄道ドローンPJは原理試作機から量産試作機フェーズへ移行する段階にあることが示されていた。2026年4月1日には、国土交通省所管プロジェクトとして167百万円の補助金収入を第3四半期に計上することが公表され、プロジェクト自体も、巡視点検と災害時一次確認ができる自動巡回ドローンと、取得情報を閲覧・分析できるデジタルツインPFの開発へ進んでいる。
重要なのは、これらが短期業績よりも将来の製品ポートフォリオに効く点である。建設DXは屋外・広域・自動連携、鉄道は安全性と国産高性能機、下水道は「NoEntry」型点検、というように、SBIRを通じて隣接市場へ入るための技術・顧客・制度知見を同時に獲得している。Liberawareの中長期成長は、既存事業の延長線だけではなく、国家プロジェクトを通じた新市場創出の積み上げでもある。
5-6. プロダクト拡張は「屋内狭小ドローン企業」からの脱皮を意味する
中長期方針のもう一つの柱は、プロダクトの横展開である。2025年12月には、会社は自動巡視型カメラ「トリノス」を発売した。公式発表では、対象を大型データセンター、プラント、洞道、ダム監査廊、トンネルとし、広大施設の巡視点検業務を省人化する設備保全DX製品と位置付けている。さらに同社は、「トリノス」をIBIS2に続く第2弾のロボットと明確に説明している。
この意味は小さくない。IBIS2が高難度・狭小空間のスポット点検に強い一方、トリノスは長距離・常設・定期巡回に向く。つまり、同社は「人が入れない空間を撮る会社」から、「人手をかけずに保全運用を回す会社」へ射程を広げ始めている。加えて、2025年10月資料では、短期は既存サービスの付加価値向上、新デバイスのソリューション開発、中長期は次世代IBISとソフトウェア、鉄道環境対応ドローンのローンチと整理されており、製品拡張は単発の新製品ではなく、複数のロボティクス/ソフトウェア群を束ねる構想の一部である。
5-7. 海外展開は売上回収より「基盤づくり」優先
海外展開については、現時点では短期業績よりも将来の市場基盤づくりとして捉えるべきである。2025年10月資料では、Liberawareはアジア展開の三極体制として、韓国を現地法人による直販モデル、香港をビジネスハブ、マレーシアをIBIS操縦者育成拠点と位置付けている。韓国では市場形成に向けたユースケース創出と認知拡大を継続し、2024年11月の子会社設立以降、事業会社7社との業務提携を進めたとされる。 実績面でも、2026年7月期第1四半期決算短信では、韓国子会社Liberaware KoreaがSAMSUNG E&A向けIBIS2販売実績を獲得したことが開示されている。つまり海外はまだ「本格収益化」ではないが、少なくとも机上検討ではなく、案件創出と拠点機能の実装が始まっている。中長期的にみれば、韓国での直販モデル確立、香港での地域ハブ機能、マレーシアでの人材供給基盤が整えば、日本で作った屋内ドローン市場モデルを外に持ち出す土台になる。
5-8. 資本政策は「提携を前提にした成長投資型」
Liberawareの資本政策は、一般的な「とりあえず現預金を積む」型ではない。むしろ、事業提携と資金調達を一体化し、その資金を具体的な研究開発・社会実装へ充てるという、かなり目的が明確なタイプである。2026年3月13日の第三者割当増資では、657,800株、調達資金総額1,060,373,600円、差引手取概算額1,051,589,600円を確保し、使途は次世代IBIS研究開発費800百万円と、上下水道領域の販促・機能改良・現場適用支援に係る開発費251百万円に分けて示された。払込は3月31日に完了している。
この資本政策のポイントは二つある。第一に、誰から資本を入れるかが戦略そのものであることだ。会社は、当該割当先を、事業戦略との整合性、協業の具体性・実現可能性、中長期的企業価値向上への貢献可能性を総合勘案して選定し、中長期保有意思も確認したと説明している。つまり、資金の出し手は単なる財務投資家ではなく、下水道DXの社会実装を進める共創パートナーとして選ばれている。第二に、資金使途がかなり絞られていることである。成長投資の中心は、次世代IBISと上下水道実装であり、現時点では大規模M&Aのための待機資金ではない。
また、2025年12月の九州電力との資本業務提携も、同じ文脈で読むべきである。九州電力は、発電所などの現場を活用したドローン機体・ソフトウェアの共同開発を通じて、電力設備を含む社会インフラのDXとドローンの社会実装を加速させる目的を示しており、九電ドローンサービスはGoldPartnerとして九州エリアでIBIS2利用拡大を担う。つまりLiberawareの資本政策は、資本提携→共同開発→販売/導入体制→社会実装という連鎖を前提にしている。
5-9. 株主還元方針は当面「成長投資優先」
株主還元については、現時点の結論は明快で、当面は配当より成長投資を優先する段階にある。2026年7月期中間期決算短信では、2025年7月期実績の年間配当は0.00円、2026年7月期予想も0.00円と開示されている。少なくとも現時点で、定常配当を通じた還元は中長期方針の中心ではない。
もっとも、これは株主還元を軽視しているという意味ではない。新規上場申請時の有価証券報告書では、会社は株主還元を重要課題と認識しつつも、現状は成長過程にあり、内部留保を将来の事業展開と経営体質強化のための投資に充てることが最大の利益還元につながると整理していた。今もなお、次世代IBIS、上下水道、鉄道、海外、新規プロダクトへ資金を振り向けている状況を踏まえると、現段階のLiberawareを配当株として評価するのは適切ではなく、資本の使い方そのものがリターンの源泉になり得るかで判断すべき局面にある。
5-10. まとめ:Liberawareの中長期方針をどう捉えるか
総じて、Liberawareの第5章は、一般的な中計のように「売上○○、利益○○」だけで読む会社ではない。会社が公式に示しているのは、下水道の標準化、リカーリング化、国家プロジェクトの事業化、次世代プロダクト、海外基盤構築を同時に進め、そのために提携と資本を組み合わせるという中長期方針である。短期の営業赤字や無配だけを見ると重いが、会社の本当の論点はそこではない。危険空間点検を標準業務に変えられるか、その過程で継続収益と業界内ポジションをどこまで積み上げられるかにある。
本レポートとしての見方を最後に明示すると、Liberawareの中長期評価軸は五つに整理できる。第一に下水道で制度・運用・積算を含む標準化が進むか、第二にリカーリング収益が機体販売依存を相対化できるか、第三に鉄道・建設DXなど国家プロジェクトが正式事業へ移るか、第四にトリノスや次世代IBISでポートフォリオが拡張するか、第五に提携型資本政策で成長投資と希薄化のバランスを取れるかである。Liberawareの第5章は、会社がまだ「完成形」ではなく、標準化を軸に次の産業インフラ企業へ変わろうとしている途中経過であることを示す章として位置付けるのが適切である。
6. 株価インサイト
6-1. 総論
Liberaware株は、現時点の利益や配当で評価する銘柄ではなく、屋内狭小・危険空間点検の標準化主体になれるかどうかという将来オプションに対して値が付いている銘柄である。2026年4月9日9:55時点の株価は1,347円、時価総額は264.25億円、発行済株式数は1,961.77万株、会社予想配当は0円、会社予想PERは算出不能、実績PBRは56.62倍である。つまり市場は、足元の損益計算書をそのまま値付けしているのではなく、「将来どこまで社会実装が進むか」を先回りして評価している。
この見方は、会社計画を当てはめるとさらに分かりやすい。FY2026/7会社計画は売上高22.20億円、営業損失24.12億円、経常損失1.77億円、最終損失1.78億円で、1株利益もマイナス予想である一方、売上総利益は11.23億円、売上総利益率は50%を目標とし、SBIR精算期ずれと株式報酬費用を調整した経常損益は3百万円の黒字継続を見込む。4月9日時点の時価総額264.25億円を会社計画売上高22.20億円で割ると、単純PSRは約11.9倍になる。これは、現在利益ではなく、高粗利の売上成長と標準化進展にプレミアムが乗っている状態だと解釈するのが自然である。
6-2. 市場が現在織り込んでいるもの
市場がまず織り込んでいるのは、ドローンそのものではなく、国策と社会課題が交差する"点検インフラ化"のテーマである。政府資料では、無人航空機はすでに重要なインフラ機能を果たしており、2030年時点で国内需要は約14万台、そのうち安定供給とサイバーセキュリティ確保が特に求められる点検・物流・防犯用途だけで約8万台とされている。政策パッケージでも、機体・重要部品の量産投資支援、運航管理システムや自律化ソフトウェアの開発実証、認証・標準化、サイバーセキュリティ整備が並んでいる。Liberawareは、このうち「点検」用途の中核に近い位置にいるため、政策支援の方向性そのものが株価材料になりやすい。
次に市場が見ているのは、下水道領域で本当に標準ポジションを取れるかである。2026年3月13日の第2四半期決算説明資料では、会社は「拡大フェーズを経て、スケールアップと市場定着の段階」と位置づけ、下水道領域では業界中核企業との資本業務提携、業界団体との標準化協力、全国自治体での導入拡大を並行推進していると説明している。実績面でも、全国で新たに10か所以上、累計40か所以上の下水道調査の実施・受注が示されており、市場形成が概念から実装へ移っていることが分かる。株価が見ているのは、単なる案件獲得ではなく、この流れが標準仕様・継続発注・更新判断データへつながるかである。
三つ目に市場が織り込んでいるのは、高粗利化と成長投資の両立可能性である。第2四半期決算説明資料では、H1売上高は前年同期比13%増の697百万円、売上総利益率は46%と高水準を維持し、最繁忙期である第3四半期以降で通期計画をカバー可能と会社は判断している。加えて、H1時点で機体販売は前年同期比124%増、機体販売以外の売上も受注残などが業績予想の61%まで積み上がっているとされる。つまり市場は、H1の赤字そのものより、H2で売上総利益をどこまで積み上げられるかを見ている。
6-3. なぜプレミアムが付くのか
Liberawareにプレミアムが付く理由は、第一に市場そのものがまだ形成途上であることだ。既存市場でシェアを奪い合う局面より、標準化・制度化の初期局面の方が、勝者に付く期待値は大きい。しかも同社は、単独で機体を売るだけではなく、下水道バリューチェーンの中核企業と資本業務提携を結び、発行価格1,612円、総額10.60億円、657,800株の第三者割当を2026年3月31日に完了させている。これは単なる資金調達ではなく、外部プレイヤーが事業仮説に資本を張ったという意味を持つため、株式市場でも「社会実装の確度が上がった」と評価されやすい。
第二に、収益認識の見え方と実態がずれる会社だからこそ、将来の収益性に賭ける余地が大きいという点である。会社はFY2026/7計画で営業損失24.12億円を見込む一方、SBIR精算期ずれと株式報酬費用を調整した経常損益では黒字継続を見込むとしている。さらに2026年4月1日には、鉄道点検ソリューションに関する補助金167百万円を第3四半期の営業外収益に計上すると公表した。足元の営業赤字が大きく見えても、政策連動の研究開発費と補助金受領のタイミングを切り分けると見え方が変わるため、市場は「本業の将来収益力」を先回りで見にいきやすい。
6-4. それでも株価が荒い理由
もっとも、このプレミアムは非常に不安定でもある。2026年4月9日時点の株価1,347円は、年初来高値1,808円(2026年1月8日)を大きく下回り、3月13日に公表された第三者割当の発行価格1,612円も下回る。つまり、戦略提携と資本増強が好材料である一方、それだけでは株価を下支えしきれていない。市場は、社会実装加速というポジティブ材料と、赤字・希薄化・資金需要というネガティブ材料を同時に織り込んでいる。
この背景にあるのは、やはり財務面の重さである。2026年7月期中間期の連結実績は、売上高697百万円、営業損失△942百万円、経常損失△515百万円、中間純損失△516百万円で、総資産は13.85億円、純資産は4.89億円、自己資本比率は32.6%、現金及び預金は5.32億円まで低下した。3月末の第三者割当で10.60億円を調達したとはいえ、株式市場から見れば、同社は依然として高成長のために継続的な研究開発投資と運転資金を必要とする会社である。したがって株価は、売上成長だけでなく、資本政策と資金繰りに強く反応しやすい。
さらに重要なのは、こうした不安定さが個社固有の問題だけではないことである。政府資料でも、無人航空機分野の主要課題として、国産機体の市場形成の不確実性、海外機体との競争、スタートアップ中心での開発に伴う資金調達の困難性、キャッシュフローの不安定性、制度整備の遅れが明示されている。言い換えれば、Liberawareの株価ボラティリティは単なる投機性ではなく、産業形成の初期段階にある企業が抱える構造的な不確実性でもある。
6-5. 類似企業比較の考え方
Liberawareの比較対象は、一社に固定するのではなく、三つの箱で考えるべきである。 第一に、機体販売と量産コストを見るためのドローン機体メーカーの箱。第二に、取得データの継続利用と高粗利サービス化を見るためのインフラ点検DX・データプラットフォームの箱。第三に、SBIRや業界標準化など制度連動で先行開発を進める国策型ディープテックの箱である。Liberawareはこの三つの交点に位置するため、どれか一つの箱だけで比較すると必ず見誤る。これは同社の株価が割安か割高かを考えるうえで、かなり重要な前提である。
もし機体メーカーの箱だけで見るなら、会社計画FY2026/7売上高22.20億円に対して時価総額264.25億円、PBR56.62倍は水準として明らかに重く、単なるドローン製造業としては割高に映る。 一方で、もしインフラ点検DX/データプラットフォームの箱だけで見るなら、売上総利益率50%目標、360社を超える顧客基盤、下水道40か所超の調査・受注実績、JR東日本グループとの合弁CalTaを通じたTRANCITY、そしてH1時点で機体販売以外売上が業績予想の61%まで積み上がっているという事実は、高粗利の反復収益として将来価値を評価する余地を残す。さらにディープテックの箱で見るなら、SBIR3件・補助金総額約57億円、業界中核企業との資本業務提携、下水道・鉄道での標準化連携を並行して進める企業自体が国内に少なく、希少性プレミアムが乗りやすい。この"評価の揺れ"こそがLiberawareの難しさであり、同時に妙味でもある。市場はまだ同社を完全には言語化できていない。だからこそ、今後どの箱に近づくかで株価のレンジ自体が変わりうる。
当社は、現時点では市場はLiberawareをやや国策型ディープテック寄りに見ていると考える。 その理由は、PERが算出不能、PBRが56.62倍でBPSが薄く、静態的な利益倍率や簿価倍率が評価軸としてほぼ機能しておらず、評価の中心が足元の損益ではなくSBIR採択実績と第三者割当を含む政策連動の社会実装進捗に置かれているからである。つまり株価は、機体の売上規模や会計上の利益水準よりも、国家プロジェクトの進捗と提携先からの実需立ち上がりに反応する銘柄として価格付けされている。ただし、2026/7期後半から2028/7期にかけて下水道の継続発注、リカーリング収益の積み上がり、トリノスや次世代IBISによるサービス拡張が具体的に収益化してくれば、比較対象は徐々にインフラ点検DX寄りへ移る可能性がある。そのとき初めて、株価は単なる"国策テーマ型小型株"ではなく"屋内点検を標準業務に変える産業インフラ株"として再評価されうる。
6-6. リレーティング要因
今後のリレーティング要因は、第一に下水道の標準化が売上へ転化することである。業界中核企業との資本業務提携、業界団体との連携、自治体での実証・導入拡大まではすでに進んでいるため、次に問われるのは、それが継続発注・標準仕様・導入拡大へどこまでつながるかである。市場は、40か所超の実績そのものより、再現可能な受注モデルが見えたかを見にいく。
第二に、H2の業績進捗が会社説明どおりに立ち上がるかである。会社は最繁忙期の第3四半期以降でカバー可能と説明しているが、H1時点の売上進捗率は31%であり、ここは確認が必要な論点として残る。一方で、機体販売は前年同期比124%増、機体販売以外の売上高も受注残等が業績予想の61%まで積み上がっているとされるため、もし第3四半期で売上と粗利が想定どおりに出れば、「市場定着フェーズ」への移行期待は一段強まりやすい。
第三に、資金面の見え方が改善するかである。3月31日に第三者割当の払込が完了し、4月1日には167百万円の補助金収入計上が公表された。今後、補助金受領と提携先との実需案件が積み上がれば、株式市場が最も嫌う「成長はあるが資金負担が重い」というディスカウントは縮みやすい。逆に、提携が発表にとどまり、売上化や資金余力改善が見えない場合、評価は再び不安定化しやすい。
6-7. ダウンサイドリスクと次に市場が確認したいこと
ダウンサイドリスクは大きく三つある。第一に、標準化の遅れである。下水道や鉄道のような社会インフラ分野は、技術が優れているだけでは普及せず、制度、積算、運用フロー、教育まで整う必要がある。第二に、補助金と研究開発費の期ずれである。会計上の赤字拡大が続く局面では、投資家の許容度が下がりやすい。第三に、追加希薄化への警戒である。3月末の増資で一息ついたとはいえ、高成長を続ける限り資本政策は今後も論点であり続ける。これらはすべて、政府資料が無人航空機産業の不確実性として挙げている論点と重なる。
したがって、次に市場が確認したい論点はかなりはっきりしている。第3四半期以降の売上加速、売上総利益率の維持、下水道案件の定常化、提携先との実需立ち上がり、補助金収入の着実な計上、そして追加資金調達なしでも成長投資を回せるかである。本章の結論を一文でまとめるなら、Liberaware株は「今の利益」を買う銘柄ではなく、危険空間点検を標準業務に変える主体になれるかというマイルストーンを買う銘柄である。ゆえに、今後の株価は、会計上の最終利益よりも、標準化と社会実装の進捗をどこまで具体的な数字に落とし込めるかで決まりやすい。
7. Appendix
7-1. 損益計算書
単位:百万円
| 科目 | FY2022/07 | FY2023/07 | FY2024/07 | FY2025/07 | FY2026/01 LTM | FY2026/07 会予 | FY2026/07 コンセンサス |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 260 | 380 | 815 | 1,407 | — | 2,220 | 2,250 |
| 売上総利益 | 43 | 51 | 360 | 670 | — | — | — |
| 販売費及び一般管理費 | 506 | 682 | 801 | 2,259 | — | — | — |
| EBITDA | -446 | -565 | -377 | -1,542 | — | -2,365 | — |
| 営業利益 | -463 | -631 | -441 | -1,589 | — | -2,412 | — |
| 経常利益 | -456 | -636 | -435 | 47 | — | -177 | — |
| 特別損失 | — | 3 | — | — | — | — | — |
| 税金等調整前当期純利益 | -456 | -639 | -435 | 47 | — | — | — |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | -456 | -641 | -438 | 46 | — | -178 | -200 |
7-2. 貸借対照表
単位:百万円
| 科目 | FY2022/07 | FY2023/07 | FY2024/07 | FY2025/07 | FY2026/01 LTM | FY2026/07 会予 | FY2026/07 コンセンサス |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 資産合計 | 640 | 1,074 | 1,517 | 1,701 | 1,385 | — | — |
| 流動資産 | 499 | 846 | 1,356 | 1,462 | 1,168 | — | — |
| 固定資産 | 141 | 228 | 161 | 239 | 217 | — | — |
| 有形固定資産 | 91 | 179 | 113 | 129 | 110 | — | — |
| 無形固定資産 | 6 | 5 | 5 | 4 | 4 | — | — |
| 投資その他の資産 | 43 | 44 | 43 | 105 | 102 | — | — |
| 負債合計 | 335 | 511 | 652 | 768 | 896 | — | — |
| 流動負債 | 139 | 203 | 359 | 556 | 728 | — | — |
| 固定負債 | 197 | 308 | 293 | 212 | 168 | — | — |
| 純資産合計 | 304 | 563 | 866 | 933 | 489 | — | — |
| 株主資本等合計 | 304 | 563 | 866 | 933 | 489 | — | 730 |
| ネット有利子負債(除く現預金・短期性有価証券) | -151 | -223 | -691 | -259 | 27 | — | — |
| 現預金同等物及び短期性有価証券 | 349 | 609 | 1,061 | 752 | 532 | — | — |
| 有利子負債残高 | 198 | 386 | 370 | 493 | 559 | — | — |
| 運転資本 | 85 | 157 | 248 | 521 | 457 | — | — |
| 売上債権 | 43 | 21 | 144 | 360 | 288 | — | — |
| 棚卸資産 | 46 | 136 | 111 | 163 | 173 | — | — |
| 買入債務 | 4 | 0 | 7 | 2 | 4 | — | — |
7-3. キャッシュフロー計算書
単位:百万円
| 科目 | FY2022/07 | FY2023/07 | FY2024/07 | FY2025/07 | FY2026/01 LTM | FY2026/07 会予 | FY2026/07 コンセンサス |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 営業活動によるキャッシュフロー | -471 | -638 | -253 | -363 | — | — | — |
| 投資活動によるキャッシュフロー | -77 | -188 | -9 | -61 | — | — | — |
| 財務活動によるキャッシュフロー | 601 | 1,085 | 715 | 122 | — | — | — |
| フリーキャッシュフロー | -548 | -826 | -262 | -424 | — | — | — |
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