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AENTRO Research
Initiation Report | 2026年4月28日
Waqoo4937
化粧品D2Cから再生医療領域へ — SBCメディカルグループ傘下で臨床網258店舗と接続し、メディカルサポート事業の爆発的成長フェーズへ踏み込む
No Rating / No Target Price
TSE Growth
Stock PriceMarket CapFY2026/9E RevOPM (E)Dividend YieldROE (LTM)
¥1,305¥4.7B¥2,345M13.0%0.00%2.9%
ItemFY2022/9FY2023/9FY2024/9FY2025/9FY2026/9E
RevenueM JPY2,7311,7261,9431,9612,345
Operating incomeM JPY-4027856151304
Operating margin%-1.516.12.97.713.0
Net incomeM JPY-5728-1744184
Net margin%-2.11.6-0.92.27.8
EPSJPY-19.049.43-5.0312.3252.44
DPSJPY0.000.000.000.000.00

1. 会社概要

Waqooを理解するうえで最初に捉えるべきは、化粧品D2C専業ベンチャーという従来像ではなく、SBCメディカルグループ51.51%子会社として血液由来加工(PDF-FD)を中核にすえた再生医療領域プレイヤーへ軸足を移した企業であるという点だ。2005年にペット用品EC(旧商号:有限会社ぷらすぺっと)として創業し、2014年に化粧品ブランド「HADA NATURE」を立ち上げてD2C専業化、2021年6月に東証マザーズ(現グロース)に上場した同社は、2023年のセルプロジャパンとの株式交換・連結子会社化を経て、2025年12月のSBCメディカルグループによる公開買付け成立で同グループ企業となった。資本構成は入れ替わったものの、上場は東証グロース市場で維持されており、「TOBで市場から退場する斜陽D2C」という読み方は明確に誤っている。本章では、同社の位置づけを基本情報・沿革・経営陣・株主構成・ガバナンス・ESGの6角度から整理し、以降の事業・戦略・業績を読むための土台を作る。

1-1. サマリー

Waqoo(証券コード4937)の本質は、HADA NATUREに代表される化粧品D2Cブランドを単品で展開する企業ではなく、連結子会社セルプロジャパン株式会社を核とする血液由来加工受託サービス(PDF-FD)をメディカルサポート事業の柱として急拡大させ、提携クリニック800院超へのサービス展開を進めつつ、親会社SBCメディカルグループが運営する国内258店舗規模の湘南美容クリニックグループとの接続深化も視野に入れることで、製造・CRM・開発・販売を垂直統合する再生医療周辺プレイヤーである。同社の経営を一枚のサマリーとして示したのが以下の表だ。

項目内容
会社名株式会社Waqoo(Waqoo Inc.)
証券コード4937(東証グロース、2021年6月上場)
設立2005年12月2日(旧商号:有限会社ぷらすぺっと → 株式会社コマースゲート → 2015年10月に現商号)
代表者代表取締役社長 佐俣 文平
本店所在地東京都世田谷区上馬2-14-1
決算期9月末
事業内容メディカルサポート事業(血液由来加工受託・原料販売)/D2C事業(HADA NATUREほか化粧品)
資本金57百万円(2025年12月末現在)
発行済株式数3,622,668株(自己株式100,023株を含む、2025年9月30日時点)
連結従業員数95名(2025年9月末時点、産休・育休者含)
売上高1,961百万円(FY2025/9実績)/ 2,345百万円(FY2026/9会社予想、前期比+19.6%)
営業利益151百万円(FY2025/9実績、営業利益率7.7%)/ 304百万円(FY2026/9会社予想、同13.0%)
EPS12.32円(FY2025/9実績)/ 52.44円(FY2026/9会社予想)
BPS591.15円(FY2025/9期末)
親会社SBCメディカルグループ株式会社(2025年12月19日付、所有割合51.51%)
監査法人監査法人クレア

出所:各社開示資料・株価データよりAENTRO Research作成

この基本情報から読み取れる第一の特徴は、会社規模である。連結従業員95名、売上高1,961百万円(FY2025/9)というスケールは小型成長株としても最下層に位置するが、セグメント内訳で見るとメディカルサポート事業の売上高は999百万円(前年同期比+59.3%)まで伸びており、規模はともかく成長性の重心は明確にメディカル側へ移っている。本レポートの第4章で詳述するが、D2C事業売上は2,531百万円(FY2022/9)から952百万円(FY2025/9)へ4期で▲62%と急減しており、小さな売上トータルの裏側で大規模な事業ミックス転換が進行している点を見逃してはならない。

第二の特徴は、財務体質の健全性である。FY2025/9期末の株主資本比率は65.4%、ネットキャッシュは579百万円(ネット有利子負債▲579百万円)とネット無借金状態で、現預金同等物は1,257百万円(FY2025/12 LTM)を保持している。FY2023/9期に連結化したセルプロジャパンののれんを反映して無形固定資産が1,012百万円に積み上がっている点は後述するが、手元流動性は加工受託事業の生産能力増強と親会社との協業投資に十分な余力を残している。当社は、資本構造の入替と財務余力の組み合わせが、第3章で扱うSBCシナジー顕在化のための原資として機能するとみる。

第三の特徴は、支配構造の転換である。2025年12月のTOBにより、それまで26.58%を保有していた湘南美容クリニック創業者・相川佳之氏(SBCメディカルグループ取締役、最終親会社SBC Medical Group Holdings Incorporated〈SBCHD、米NASDAQ上場〉の取締役会議長兼CEO)が保有株の全量をSBCメディカルグループに譲渡し、加えて一般株主からの応募分575,052株を同社が買い付けた結果、SBCメディカルグループの所有割合は9.49%(直接)+26.58%(相川氏経由合算)の36.07%から、直接51.51%へ切り替わった。当社はこれを「退場型TOB」ではなく、「同じ経営者〈相川氏〉の下で資本構造を整理し、Waqoo株を親会社SBCメディカルグループに集約した垂直統合再編」と読む。

第四の特徴は、Waqooが「化粧品D2Cから再生医療領域へ」と事業の重心を移しつつある点である。FY2026/9第1四半期(2025年10-12月)時点ではメディカルサポート事業が売上高200百万円(前年同期比+44.9%)、D2C事業が同200百万円(同▲25.5%)とセグメント売上が初めて拮抗しており、加工受託件数の累計はFY2023/9第1四半期の75件からFY2026/9第1四半期の17,784件へと13四半期で237倍に達した。同社はもはや「化粧品D2C銘柄」ではなく、「SBC傘下の再生医療領域プレイヤー」へ変わりつつある。

1-2. 基本情報

商号は株式会社Waqoo、英文名はWaqoo Inc.、東京証券取引所グロース市場における証券コードは4937である。設立日は2005年12月2日で、創業当初の商号は有限会社ぷらすぺっと(東京都文京区・ペット用品EC)であり、2007年7月に株式会社化および株式会社コマースゲートへの商号変更を経て、2015年10月に現商号の株式会社Waqooへと改称した。本店所在地は東京都世田谷区上馬2-14-1、連結子会社のセルプロジャパン株式会社(再生医療事業、分析・加工受託事業および化粧品・原料事業、資本金45百万円、出資比率100%)は神奈川県藤沢市に所在する。

決算期は9月末で、本レポートでは決算月基準によりFY2022/9(第17期)からFY2025/9(第20期)、および会社予想のFY2026/9(第21期)を時系列の軸に使う。資本金は57百万円(2025年12月末現在、FY2021/6のIPO時は334百万円)、発行可能株式総数は10,800,000株、発行済株式総数は3,622,668株(2025年9月30日時点、自己株式100,023株を含む)、株主数は1,399名(同日時点)である。自己株式は2025年3月10日から7月23日までの市場取引により99,923千円で100,000株を取得した。

連結従業員数は95名(2025年9月末時点、産休・育休者含む、パート従業員含む)で、前期末比+7名増である。一人当たり売上高はFY2025/9で21百万円であり、FY2022/9の62百万円からは低下しているが、これはセルプロジャパン連結化に伴い製造・研究開発人員を取り込んだ結果であって、事業生産性の低下ではない。広告宣伝費率はFY2022/9の28.2%からFY2025/9の6.9%まで圧縮されており、同社は既にD2Cでの獲得投下型成長から、メディカルでのストック型成長への収益基盤の組み替えを進めている。

会計監査人は監査法人クレア。銀行取引はみずほ銀行(残高299百万円)、りそな銀行(227百万円)、三井住友銀行(137百万円)、三菱UFJ銀行(48百万円)、日本政策金融公庫(20百万円)の5行構成で、有利子負債残高はFY2025/12 LTM時点で678百万円にとどまる。IRサイトに掲載されている問い合わせ窓口はir@waqoo.jpである。

1-3. 会社の定義

当社は株式会社Waqooを、単なるD2C化粧品ベンダーではなく、「血液由来加工(PDF-FD)という再生医療周辺の加工受託サービスを中核に据え、旧来の化粧品D2C事業で蓄積したCRM・製造管理・デジタルマーケティングのノウハウを、親会社SBCメディカルグループの臨床ネットワークと組み合わせて展開する、医療と消費者接点の両面にまたがる再生医療加工プレイヤー」と定義する。この定義は以下の3つの事実によって支えられる。

第一に、売上構成の重心が既に移動している点だ。連結売上高のセグメント内訳は、FY2022/9期はD2C事業が2,531百万円と全体の93%を占めていたが、FY2025/9期にはメディカルサポート事業が999百万円(全体の51%)とD2C事業の952百万円(同49%)を逆転した。さらに直近のFY2026/9第1四半期では、メディカルサポート事業200百万円(前年同期比+44.9%)、D2C事業200百万円(同▲25.5%)と両事業が初めて同水準に並び、次四半期以降の絶対額ではメディカル側が先行する見通しにある。売上構成の変化はそのまま会社の自己定義を書き換える。

第二に、加工受託サービスの受注基盤が「サービス会社」と呼ぶに足る規模に達している点である。血液由来加工サービスの累計受託件数はFY2023/9第1四半期の75件からFY2026/9第1四半期の17,784件まで13四半期で237倍に拡大し、提携医院数も同期間に20院から745院へと37倍に増加、1院あたり平均加工受託件数は3.8件から23.9件まで上昇した。1医院あたり稼働が進んでいることは、同社が「単発の受注を積み上げるD2C型の顧客獲得事業」ではなく、「提携医院のリピート受注を前提とするストック型のBtoB加工受託事業」へとビジネスモデルを転換していることを意味する。

第三に、親会社SBCメディカルグループとの事業連携が構想されている点だ。同社はFY2026/9第1四半期決算補足資料において、Waqoo側が製造・加工・医薬部外品を担い、クリニック網・医療専門家・顧客接点との連携を通じた4P分業(Product / Place / Price / Promotion)の構図を示している。SBCメディカルグループが運営する湘南美容クリニック(国内258店舗)との連携はその手段の一つであるが、現時点ではデータ接続や顧客接点の統合は実現しておらず、あくまで構想段階にある。それでも、提携クリニック800院超への加工受託展開を足場に、親会社の経営資源を将来的に活用しうるポジションにある点は、化粧品D2Cを起点とするピュアD2C企業(ポーラ・オルビスHD、ノエビアHD、I-ne等)では再現しにくい「医療×消費者」の両面接地として同社の戦略的な立ち位置を形成している。

以上を総合し、当社は同社を「化粧品D2Cから再生医療加工受託へ軸足を移し、提携クリニック800院超への展開を成長エンジンとしつつ、親会社SBCとの連携を将来の上乗せ余地として持つ再生医療周辺プレイヤー」と位置付ける。単なるD2Cでもなく、単なる加工受託企業でもなく、両者の交差点に立つ過渡期の銘柄として理解するのが実態に即している。

1-4. 沿革

同社の沿革は「IPO前のD2C事業確立期(2005-2021)」「IPO直後の化粧品D2C専業期(2021-2022)」「SBC業務提携からセルプロジャパン連結化までのメディカル拡大期(2022-2023)」「メディカル主軸化と代表交代期(2023-2024)」「SBCによるTOB成立後の親子会社再編期(2025-)」の5段階で整理するのが実態に即している。主要マイルストーンは下表のとおりだ。

時期主な出来事
2005年12月東京都文京区にて有限会社ぷらすぺっと設立。コマース事業(ペット用品EC)を開始
2007年4月代表取締役社長に井上 裕基氏(現会長)が就任
2007年7月株式会社化と同時に株式会社コマースゲートに商号変更
2014年4月化粧品「HADA NATUREクレンジング」の販売を開始
2015年10月株式会社Waqooに商号変更
2021年6月東京証券取引所マザーズ市場(現 グロース)に株式を上場
2022年8月SBCメディカルグループ株式会社と業務提携契約を締結
2023年6月薬用炭酸ヘッドスパ育毛剤「sodatel(ソダテル)」の販売を開始
2023年11月セルプロジャパン株式会社との株式交換契約を締結
2023年12月代表取締役社長に佐俣 文平氏が就任(井上氏は取締役会長へ)
2024年12月事業計画及び成長可能性に関する事項(2段階成長戦略)を公表
2025年3-7月自己株式100,000株を市場取引により99,923千円で取得
2025年11月14日SBCメディカルグループによるTOB開始(公開買付価格1,900円)
2025年12月13日TOB成立(買付株数575,052株、あん分比例方式)
2025年12月19日SBCメディカルグループの所有割合が51.51%となり親会社化。相川佳之氏(旧筆頭株主)は同社に保有株全量を譲渡

出所:各社開示資料よりAENTRO Research作成

第1段階(2005年12月-2021年5月:D2C事業確立期)は、ペット用品ECから始まった同社が、2014年の「HADA NATUREクレンジング」販売開始を契機に化粧品D2Cへ軸足を移し、サブスクリプション型ECとしての事業モデルを確立した15年半である。「ぷらすぺっと→コマースゲート→Waqoo」と2度の商号変更を経ている点は、同社が単一商品ドメインに依存しない柔軟な業態変化を志向する経営スタイルであることを示している。

第2段階(2021年6月-2022年7月:化粧品D2C専業期)は、2021年6月の東京証券取引所マザーズ(現グロース)上場から、翌2022年8月のSBCメディカルグループとの業務提携契約締結までの約14カ月である。上場時点の事業計画資料(2021年6月版)には「国内外D2CサブスクリプションEC」と単一事業での定義が記載されており、当時の同社は化粧品D2C専業企業であった。

第3段階(2022年8月-2023年12月:メディカル拡大期)は、SBC業務提携を起点に、2023年11月の再生医療特化企業セルプロジャパンとの株式交換契約締結を経て、2023年12月に代表取締役社長が創業者の井上裕基氏からセルプロジャパン創業者の佐俣文平氏へ交代した局面である。この期間にWaqooは「D2C一本足」から「D2C+メディカルサポート」の二本柱へと会社定義を拡張した。

第4段階(2024年1月-2025年10月:メディカル主軸化期)は、セルプロジャパンの連結子会社化を受けて血液由来加工サービスの受託件数が指数関数的に増加し、FY2025/9期にはメディカルサポート事業のセグメント売上高がD2C事業を超えた時期である。2024年12月には「着実な成長(FY25-27)」と「爆発的な成長(FY27-30)」の2段階からなる事業計画及び成長可能性資料を公表し、再生医療・医薬品への展開を明示的な将来の柱に据えた。

第5段階(2025年11月-:SBC傘下での親子会社再編期)は、2025年11月13日のTOB開始公表、同年12月12日のTOB成立、同月19日の親会社化をもって始まった。重要なのは、この第5段階が「化粧品D2C企業が外資ファンドに買収された事業売却」ではなく、「湘南美容クリニック創業者・相川氏が保有する株式と追加TOBによる応募株を、同氏がCEOを務める最終親会社SBCHDの日本法人SBCメディカルグループに集約した内部資本再編」という構図である点だ。当社は、この沿革の捉え方こそが、TOB後のWaqooを「斜陽D2C」として売るか「再生医療領域プレイヤー」として買うかを分かつ一次的な判断材料だとみる。

1-5. 経営陣

2025年9月30日時点の役員構成は、取締役4名(うち社外1名)と監査役3名(うち社外2名)の7名体制である。TOB成立が12月19日であり、本招集通知の基準日(9月30日)時点ではまだ従前の体制が維持されている。内訳は下表のとおりだ。

役職氏名主な経歴・兼職
代表取締役社長佐俣 文平京都大学大学院医学研究科博士課程修了(2017年)。京都大学iPS細胞研究所非常勤研究員(2019年〜現任)。2019年にセルプロジャパン株式会社を設立し代表取締役就任(現任)。2023年12月に当社代表取締役社長に就任。日本再生医療学会代議員、臨床培養士制度上級培養士
専務取締役中上 慶一東京理科大学卒業後、日本オラクル、アクセンチュア等のコンサルティング企業を経て2009年2月に当社入社。D2C事業部および再生医療事業部を管掌
取締役会長井上 裕基創業者。立命館大学理工学部卒業後、日本オラクル、アクセンチュア、サイバーエージェント、フジテレビラボLLCにて事業立ち上げに従事。2007年株式会社Waqooを設立し代表取締役に就任。2023年12月より現職
社外取締役池上 久西武百貨店入社、吉野家ディー・アンド・シー(現吉野家HD)常務取締役、ヨシノヤアメリカ・インクCEO兼社長、アークミール取締役会長を歴任。2021年に当社社外取締役就任。独立役員
常勤監査役山嵜 秀雄監査法人における長年の勤務経験を有し、財務および会計に関する相当程度の知見を有する
監査役渡邊 哲人税理士。税理士法人渡邊リーゼンバーグ代表社員、東京税理士会常務理事、日本税理士会連合会理事等を兼務。独立役員
監査役伊倉 吉宣弁護士。伊倉総合法律事務所代表弁護士、サイバーセキュリティクラウド社外取締役等を兼務。独立役員

出所:第20回定時株主総会招集通知(2025年9月30日現在)よりAENTRO Research作成

経営陣の顔ぶれから読み取れる最大の特徴は、代表取締役社長の佐俣文平氏がバイオテクノロジー研究者の出自であり、京都大学iPS細胞研究所で神経再生分野の研究員として現役の論文業績(Nature Communications 2016年論文のLRTM1マーカー同定ほか計9報)を持つ点だ。同氏が創業したセルプロジャパンが同社の子会社として血液由来加工サービスを担う構造は、「事業会社の代表が研究の一線に立ちながら経営する二刀流モデル」として設計されている。当社は、再生医療という規制産業で論文・特許・臨床知見がそのまま競争力に直結する領域では、経営者の研究者性が明確な参入障壁になるとみる。

一方、取締役会長の井上裕基氏は、日本オラクル時代のERP・CRM技術者経験とサイバーエージェントEC事業立ち上げ経験を持つ「IT×EC」の出自であり、D2C事業のデジタルマーケティング・CRM基盤を作り込んだ創業者である。2023年12月の代表交代は「IT系経営者から研究者経営者へのバトンタッチ」であり、会社定義の重心がD2Cから再生医療へ移ったタイミングと同期している。井上氏は会長として残留しており、TOB後もD2C事業の運営ノウハウと取締役会での連続性は確保されている。

監査役3名のうち2名は会計士(税理士・監査法人勤務経験)と弁護士が占めており、上場維持と親会社取引の独立性検証に必要な3領域(経営・会計・法務)の外部チェックは一応揃っている。当社は、後述するように支配株主をSBCメディカルグループに持つ体制へ移行した以上、社外取締役の追加選任や監査等委員会設置会社への移行など、少数株主保護のための役員構成強化が今後の焦点になるとみる。

なお、TOB成立後の役員体制変更については、2025年12月13日付の結果通知で「親会社の異動が当社の業績に与える影響については、今後、公表すべき事象が生じた場合には、速やかに開示いたします」と記載されており、本レポート執筆時点ではSBC派遣役員の具体名は未公表である。次期定時株主総会(第21期、2026年12月開催予定)に向けて、親会社取締役の派遣が想定される。

1-6. 主要株主・資本構成

出所:TOB結果通知(2025年12月13日付)・第20回定時株主総会招集通知(2025年9月30日時点)よりAENTRO Research作成

2025年12月19日付のTOB決済完了後、同社の株式所有構造は大きく二極化した。発行済株式総数3,622,668株(自己株式100,023株を含む)に対し、親会社SBCメディカルグループが所有割合51.51%(議決権ベース19,184個)を直接保有し、残る半分弱を創業者井上裕基氏(所有割合9.29%、議決権3,460個)と浮動株主が分け合う構造である。異動前後の所有割合の変化を整理したのが下表だ。

株主TOB前(2025年11月13日時点)TOB後(2025年12月19日時点)
SBCメディカルグループ株式会社直接9.49%+合算対象分26.58%=36.07%(3位)直接51.51%(1位、親会社)
相川 佳之(湘南美容クリニック創業者、SBCメディカルグループ取締役、SBCHD会長兼CEO)26.58%(1位、主要株主である筆頭株主)0%(市場外相対取引により全量SBCに譲渡)
井上 裕基(創業者、取締役会長)10.38%(2位、主要株主)9.29%(2位)※TOB応募分40,500株が決済
自己株式2.76%(100,023株、2025年9月末時点)同左(自己株式は公開買付対象外)
その他浮動株約62%(大株主上位残余+個人・機関投資家)約36%(TOB応募分を除く残余)

(注)所有割合は本基準株式数3,724,113株(発行済株式総数3,622,668株から自己株式100,023株を控除し、未行使新株予約権の目的株式201,468株を加算した数)に対する割合。小数点以下第3位を四捨五入。

出所:各社開示資料よりAENTRO Research作成

この資本構成の決定的な特徴は、一次的には「SBCメディカルグループが過半数を押さえた親会社化」だが、二次的には「湘南美容クリニック創業者・相川佳之氏が自分のWaqoo保有株を、自分がCEOを務める最終親会社SBCHDの日本法人SBCメディカルグループに集約した資本整理」である点だ。SBCメディカルグループは米NASDAQ上場のSBC Medical Group Holdings Incorporated(SBCHD)の100%子会社であり、SBCHDの取締役会議長兼CEOは相川佳之氏、SBCメディカルグループの代表取締役社長は相川慶子氏である。つまりTOBの経済実体は、相川氏の直接保有(26.58%)+SBC既保有(9.49%)+新規TOB応募分(15.44%)をひとつの法人に集約した、同一経営者支配下での資本構造の整理に近い。

TOB価格は1,900円で、公表直前株価(2025年11月13日発表直前の市場価格)に対するプレミアムを付した設定となっており、一方で相川氏からSBCへの市場外相対取引の譲渡価格は1,445円と、TOB価格より455円(▲24%)低く設定された。公開買付届出書はこの価格差について「SBCHD取締役会議長兼CEOである相川氏からの関連当事者取引であるため、市場プレミアム付きのTOB価格より低く設定した」と明示しており、一般株主への公平な市場価格と関連当事者取引の抑制的価格を明確に切り分けている。当社は、この価格設計が関連当事者取引の独立性を意識したガバナンス上の配慮であり、少数株主保護の観点では一定の評価に値するとみる。

ネガティブ側面としては、発行済株式のうち約半分がSBCグループに集中し、残る大株主は創業者井上氏(9.29%)のみとなる少数株主集中リスクが挙げられる。上場は東証グロース市場で維持される方針だが、流通株式比率の水準、親会社取引の独立性、少数株主保護の継続性は、継続的なモニタリング対象となる。この論点は1-7のコーポレートガバナンスで詳述する。

ポジティブ側面としては、提携先クリニック800院超との接続を基盤に、親会社SBCメディカルグループの臨床網(国内258店舗)や症例データ、医薬品承認連携のノウハウを将来的に活用しうるため、Waqoo単独では獲得困難な成長機会を資本関係の裏付けをもって利用できる点だ。事業計画との接続は第2章・第3章で掘り下げる。

1-7. コーポレートガバナンス

コーポレートガバナンスの観点でみると、同社は親会社SBCメディカルグループを抱える監査役会設置会社として、少数株主保護と親会社取引の独立性確保を主要論点として扱う段階にある。取締役会は4名(うち社外1名、独立役員1名)、監査役会は3名(うち社外2名、独立役員2名)で、社外独立役員は取締役1名・監査役2名の合計3名である。

FY2025/9期の取締役会開催実績は20回で、社外取締役池上氏は全20回に出席し、適宜発言を行っている。監査役会は年13回開催され、社外監査役渡邊氏は13回全出席、伊倉氏は12回出席である。取締役・監査役の報酬総額はFY2025/9期で取締役4名78,450千円(うち社外取締役1名3,450千円)、監査役3名16,200千円(うち社外監査役2名6,900千円)で、全額が固定の基本報酬として支給されており、業績連動報酬および非金銭報酬は現時点では導入されていない。

内部統制システムは、リスク・コンプライアンス委員会を中心に、コンプライアンス勉強会、内部監査室による全部署監査、反社会的勢力排除規程の運用を柱としており、有価証券報告書の記述範囲内で機能している。会計監査人は監査法人クレアで、FY2025/9期の報酬等総額は29,800千円である。

親会社取引の独立性については、招集通知の事業報告に関連当事者取引の具体的な金額開示は含まれていないものの、TOB開始時の市場外相対取引で相川氏と同社の間に価格差(TOB価格1,900円/相対取引価格1,445円)を意識的に設けた設計は、関連当事者取引の規律に対する意識を示している。今後、SBCメディカルグループとの間で原材料供給、臨床提携、研究委託、販売委託等の多様な取引が想定されるため、関連当事者取引の独立性チェック体制(独立社外取締役による事前審議、公正価格の算定根拠、取引条件の定期レビュー)の整備状況が、投資家コミュニケーション上の中心論点となる。

当社は、SBC傘下に入ったWaqooのガバナンス形態として、将来的には監査等委員会設置会社への移行、独立社外取締役の追加選任、親会社取引に関する独立特別委員会の設置といった選択肢が俎上に上がるとみる。現時点の体制は上場維持基準を満たす最小構成であり、機関投資家の継続投資判断を得るためには、構成の厚み増しが今後2-3年の課題として浮上する可能性が高い。

なお、反社会的勢力との取引排除、リスク・コンプライアンス規程の運用、内部通報制度、会計監査人の独立性確認等、上場会社として最低限求められるガバナンス要素はすでに整備済みである。TOB実施過程で特別委員会設置・公正性担保措置の検討を経ている点も、関連当事者TOBとしては一定の水準を満たしている。

1-8. ESG/サステナビリティ情報

ESG開示の観点では、同社は現時点で「サステナビリティ報告の本格整備はこれからの段階」にある。事業計画及び成長可能性に関する事項(2024年12月版)において、SDGsへの取り組みは「女性の活躍促進」「産学連携」「地方創生」「リサイクル」の4項目に整理されているが、TCFD提言に準拠した気候関連財務情報開示や、GHG排出量(Scope 1/2/3)、人的資本に関する定量指標(女性管理職比率、男女賃金差異、人的資本ROI)の開示は行われていない。

人的資本の観点では、連結従業員数は95名(2025年9月末時点、産休・育休者含)で、前期末比+7名の純増である。セルプロジャパン連結化を経て技術系人材の比率が高まっており、一人当たり売上高は21百万円(FY2025/9)、売上高総人件費率は21.2%(同)で推移している。2021年6月のIPO時資料では女性従業員比率に関する言及があったが、2024年12月版の事業計画資料では定量開示は限定的である。

環境面では、製造委託先と共同でサステナブルなパッケージ素材の採用、詰替用ボトルの導入によるプラスチック削減を進めているが、定量目標は設定されていない。当社は、同社のESG開示は現段階ではグロース市場に上場するマイクロキャップ企業として最低限の水準を満たしているが、親会社SBCHDが米NASDAQ上場企業であり、最終的には連結ベースでのSEC開示基準(human capital disclosure、climate-related disclosure)が段階的に要求される可能性がある点は、中期的な開示ロードマップに影響する論点としてみる。

リスク管理の観点では、血液由来加工サービスの事業特性上、医療関連法令(再生医療等安全性確保法、医薬品医療機器等法、臨床研究法)への継続的な適合、加工工程の品質管理、個人情報・医療情報の取扱い、提携医院との取引条件の適正性などが、継続的なコンプライアンス課題となる。同社はリスク・コンプライアンス委員会を設置してこれらに対応しているが、規模拡大に伴う管理体制の追加整備は、事業成長と並走する形で進める必要がある。

以上を総合し、当社は同社のESGは「本業の再生医療周辺事業の拡大がそのままサステナビリティへの貢献に接続し得る構造」にあるとみる。一方で、親会社SBC傘下で海外開示基準への接続が想定される点、機関投資家の投資判断フィルタが高度化する局面を想定すれば、3-5年の時間軸で定量的な人的資本KPI・環境指標・関連当事者取引情報の整備が投資家評価軸として重要性を増すと考える。

2. 事業内容

2-1. 事業全体像

Waqoo を単なる化粧品 D2C として捉えないことがまず重要である。決算補足資料および事業報告上の開示セグメントは D2C 事業とメディカルサポート事業の 2 つだが、FY24/9 期末からメディカルサポート事業に連結子会社セルプロジャパン株式会社(出資比率 100%、本社:神奈川県藤沢市)の再生医療関連業績が取り込まれた結果、同セグメントの売上は FY23/9 期 166 百万円から FY25/9 期 999 百万円へと 3 期で約 6 倍に拡大した。D2C 事業売上が同期間に 1,559 百万円から 952 百万円へ縮小した裏側で、事業ミックスはすでに入れ替わりつつある。

現状の正しい見立ては、祖業 D2C(化粧品)を「利益を維持しながら戦略的に縮小する収益源」と位置づけ、血液由来加工サービス「PDF-FD」を中核とするメディカルサポート事業を「足許の成長エンジン」として立ち上げ、さらに再生医療等製品・医薬品を「中長期の将来ドライバー」として育成中、という三層構造である。2025 年 12 月の SBC メディカルグループによる公開買付け完了によって親会社(持株比率 51.51%)となった SBC グループの国内 258 店舗(2025 年 9 月時点)の美容医療ネットワークと、Waqooグループ側の製造・加工・D2C 顧客開発力が資本関係で接続された結果、この三層構造は独立路線で組み上げるよりも明らかに速く具現化し得る環境に変わった。

出所:会社開示資料よりAENTRO Research作成

章のロードマップを示す。2-2 で成長エンジンであるメディカルサポート事業の仕組み・KPI を掘り下げ、2-3 で D2C 事業の商品ポートフォリオと縮小均衡のメカニズムを確認し、2-4 で将来ドライバーである再生医療事業のパイプラインと市場規模(TAM)を整理する。2-5 では親会社 SBC メディカルグループとの垂直分業モデルを、2-6 で 13 四半期にわたる主要 KPI の時系列推移を、2-7 で競争優位の源泉を、2-8 で事業上の主要論点を整理する。

2-2. メディカルサポート事業(成長エンジン)

ビジネスモデル:PDF-FD の仕組み

メディカルサポート事業の中核は、連結子会社セルプロジャパンが展開する血液由来加工サービス「PDF-FD(Plasma Derived Factor-Freeze Dry:血漿由来因子治療)」である。提携医療機関が採取した患者自身の血液をセルプロジャパンに送付し、遠心分離・上層回収・独自の無添加抽出・凍結乾燥製剤化の 5 工程を経て、加工済み製剤を医療機関へ返送、医療機関が患者に投与する――という B2B 型の受託加工モデルである。医療行為自体は行わず、加工技術と品質管理体制を提供するレイヤーに特化しているため、医療機関ごとの施設基準・保険診療要件から一歩引いた位置で事業を展開できる点が構造上の利点となる。

適応領域は 2025 年 9 月末時点で整形外科(変形性関節症等、提携 445 院)、AGA(男性型脱毛症、提携 39 院)、美容医療の 3 領域が実運用段階で、脳神経領域は研究開発中の上清液パイプラインが想定対象となる。Waqoo 側の既存 D2C における顧客接点・CRM インサイトと、セルプロジャパン側の細胞培養・加工・凍結乾燥のノウハウを結合することで、「受付・営業・検体手配」を Waqoo が担い、「加工・品質管理」をセルプロジャパンが担う製販一体モデルが形成されている。

提携医院ネットワークの拡大

本事業の KPI 設計は「売上=受託単価 × 受託件数」かつ「受託件数=提携医院数 × 稼働率 × 商品/サービス数」という因数分解で開示されている。このため提携医院数、年間稼働率、累計加工受託件数、1 院あたり平均加工受託件数の 4 つが重要 KPI として四半期ごとに継続開示されており、時系列の粒度・連続性は高い。

累計提携医院数は FY23/1Q の 20 院から FY26/1Q には 745 院に達し、13 四半期で 37 倍に拡大した。直近四半期(FY25/4Q → FY26/1Q)でも +60 院のネット増を記録しており、次の節目として会社側は「800 院到達が視野」としている。年間稼働率(2025 年 1 月〜12 月の対象期間に 1 件以上の発注のあった提携医院の比率)は 60.1% と高水準を維持しており、「名ばかり提携」ではなく実稼働のある医院が積み上がっていることを示す。

出所:会社開示資料よりAENTRO Research作成

加工受託件数と 1 院あたり受託件数

累計加工受託件数は FY23/1Q の 75 件から FY26/1Q には 17,784 件となり、13 四半期で約 237 倍に伸びた。直近四半期では +2,200 件の純増を記録し、絶対水準・増分ともに過去最高圏で推移している。これは提携医院数の増加(分母)を、1 院あたり加工件数の増加(分子あたりの単価)が追い越し始めた局面と言える。

主要 KPIFY23/1QFY24/4QFY25/4QFY26/1Q13 四半期倍率
累計提携医院数(院)2044568574537.3 倍
累計加工受託件数(件)757,93115,58417,784237.1 倍
1 院あたり平均加工件数(件)3.817.822.823.96.3 倍

1 院あたり平均加工受託件数は FY23/1Q の 3.8 件から FY26/1Q には 23.9 件と過去最高を更新した。提携開始初期の医院における「試行期間(月 1 件未満)」から、継続発注に基づく「定着期(月 2 件弱)」へと移行した医院が積み上がりつつある構図である。会社側が自社事業を「一時的なブームではなく、医療機関との継続取引に基づくストック型モデル」と説明する根拠はここにある。

AGA(男性型脱毛症)領域は 2023 年 3 四半期に初件(253 件)が計上された比較的新しいサブ領域で、FY24/4Q 時点で累計 2,254 件・提携 39 院、前四半期比 +458 件のペースで推移している。整形外科主体の既存ネットワークに対する「第二領域」として立ち上がりつつある。

セグメント売上の四半期トレンドと黒字化

メディカルサポート事業のセグメント売上は FY24/1Q の 64 百万円からスタートし、FY24/4Q 232 百万円、FY25/4Q 424 百万円、FY26/1Q 200 百万円と伸長した。年次サイクルとして 1Q から 4Q に向けて漸増する季節性があり、FY25/9 期通期では 999 百万円(前年同期比 +59.3%)となった。

セグメント利益ベースでは、セルプロジャパンの連結取り込み初期に当たる FY24/1Q は △61 百万円と赤字スタートだったものの、同期 4Q には +82 百万円まで改善し、連結統合後 1 年を待たずに黒字化している。FY25/9 期通期のセグメント利益は 216 百万円(前年同期比 +237.7%)と、D2C 事業のセグメント利益 295 百万円に迫る水準となった。後述する FY26/9 期通期予想の営業利益 304 百万円(前年比 +101.3%)の大半は、このメディカルサポート事業の伸長で説明される。

出所:会社開示資料よりAENTRO Research作成

2-3. D2C 事業(化粧品ブランド)

ブランドポートフォリオ

D2C 事業は 2014 年 4 月発売の「HADA NATURE クレンジング」を起点に、スキンケア・ヘアケア・美容液・化粧下地の 5 カテゴリ 20 品目前後を展開する。炭酸クレンジング(ホット/ホワイト/リッチモイスト)、炭酸洗顔料(美白/通常)、炭酸美容液(美白/リンクル)、オールインワンゲル(プレミアムモイストゲル)など、HADA NATURE 内で「炭酸」を共通テーマとした商品群が主力である。

2023 年 6 月発売の薬用炭酸ヘッドスパ育毛剤「sodatel(ソダテル)」は、瞬間フリーズドライ処方による液だれ・べたつきの解消、BSB Innovation Award 2020・PCHi 2020 Fountain Award 受賞成分の配合、21 種のボタニカルエキス配合・7 つの無添加、2way 噴射口という商品特性を持つ男女兼用ラインで、D2C 事業の第 2 の柱として育成が続く。

サブスク主体の販売構造

販売形態は自社 EC を中心としたサブスクリプション型で、ロイヤルカスタマーの購買継続率を維持しながら LTV の最大化を図る運営となっている。IPO 時点(2021 年 6 月)の開示ではサブスク比率 97%、購買継続率 88% という水準が示されていた。2023 年前半までは新規顧客獲得のため広告宣伝費を積極投下するモデルだったが、FY25/9 期 2Q 以降は方針を転換し、広告宣伝費率の圧縮と CRM 強化による既存顧客の LTV 改善にウェイトを移している。

縮小均衡ではなく「利益を守りながら縮小させる」運営

D2C 事業のセグメント売上は FY22/9 期の 2,531 百万円から FY25/9 期には 952 百万円へと約 3 期で ▲62% 縮小した。FY25/9 期の広告宣伝費率は 6.9%(FY22/9 期 28.2%)と大幅に圧縮され、同期のセグメント利益は 295 百万円(前年同期比 ▲23.5%)と、売上減少率を下回るマイナスにとどめた。

FY26/9 期 1Q 実績は売上 200 百万円(前年同期比 ▲25.5%)、セグメント利益 85 百万円(同 +6.9%)で、「売上 4 分の 1 減・利益 1 割増」というパターンが継続している。D2C は既にトップラインの成長装置ではなく、メディカルサポート事業への投資を支えるキャッシュカウとしての役割を担う運営に切り替わっていると読める。単純な「衰退ブランド」ではなく、意図的な利益維持型の縮小運営という整理が適切である。

2-4. メディカルサポート事業(将来ドライバー)

細胞培養プラットフォーム構想

メディカルサポート事業は、2023 年 11 月にセルプロジャパンとの株式交換契約を締結し、同社を連結子会社化したことで本格的に立ち上がった領域である。基盤コンセプトは「細胞培養プラットフォーム」で、「細胞理解 → 選択的培養 → 増殖培養 → 細胞加工等」というバリューチェーンの各工程に対応するコア技術を内製化・取得し、その組み合わせで再生医療等製品・医薬品・原料(試薬/上清液/エクソソーム)・化粧品/医薬部外品・食品等の幅広い出口へ展開する構想である。

プラットフォームの差別化要素として、代表取締役社長 佐俣文平氏(京都大学医学研究科博士課程修了、京都大学 iPS 細胞研究所研究員)が主導する上清液・エクソソームの「添加因子除去」技術(2024 年 4 月特許取得)、独自の増殖培養技術(2022 年 8 月出願、2024 年 4 月特許取得)、無添加加工技術(2024 年 11 月特許取得)などが開示されている。

研究開発パイプラインと京大 iPS 研との共同研究

2024 年 8 月、セルプロジャパンは京都大学 iPS 細胞研究所(CiRA)との共同研究契約を締結した。CiRA 側は iPS 細胞から各種神経細胞を誘導・培養する独自技術を、セルプロジャパン側は上清液・エクソソームの抽出・洗浄の特許技術を提供し、認知症・パーキンソン病等の神経疾患をターゲットとした「上清液による多対多の治療アプローチ」の創薬開発に着手した。

同時に、細胞移植治療で一定の有効性が報告されている 1 型糖尿病に対しても、脂肪幹細胞移植による β 細胞のインスリン産生機能回復を狙うパイプラインが示されている。保有特許は 2026 年 2 月時点で出願中を含め合計 20 件(うち登録済 4 件)で、細胞培養方法、培養上清製造方法、無細胞系血漿/血清製造方法、幹細胞培養上清液製造方法の 4 系統でポートフォリオを構成している。国際特許出願(PCT)・分割出願による海外展開も進行中である。

TAM:再生医療は 2050 年に国内 2.5 兆円/世界 38 兆円

会社側開示の世界市場規模試算では、認知症治療薬市場は約 150 億米ドル(2023 年、患者数約 5,500 万人)、糖尿病治療薬市場は約 800 億米ドル(2023 年、患者数約 5 億人)と大きく、既存治療への置き換え余地も残る。一方、経済産業省「再生医療の実用化・産業化に関する報告書」を典拠とする国内再生医療市場は 2012 年の 90 億円から 2030 年に 1.0 兆円、2050 年には 2.5 兆円(2020 年起点の CAGR 11.52%)に、世界市場は 2012 年 1,000 億円から 2050 年 38 兆円(同 CAGR 12.89%)に拡大する前提が置かれている。

国内の骨関節疾患領域だけをみても、変形性膝関節症推定患者数約 3,790 万人、変形性腰椎症約 2,530 万人という規模であり、高齢者人口の高止まりを背景に治療ニーズは継続的な拡大余地を残す。AGA(男性型脱毛症)についても成人男性の約 25%・約 1,500 万人が対象とされ、既存薬物・外科・整容対処の各カテゴリに対する「再生医療的アプローチ」の導入余地は大きい。

会社側は FY25-27 を「着実な成長」フェーズ(既存事業の利益体質化)、FY27-30 を「爆発的な成長」フェーズ(他家細胞治療の量産・承認取得・コストダウン)と位置づけており、再生医療事業の収益寄与は後者のフェーズで表面化するシナリオを描いている。足許の業績計画(FY26/9 期予想、後述)にはこの将来ドライバー分は織り込まれていない。

2-5. SBC メディカルグループとの垂直分業(「4P 戦略」)

Q1 FY2026 決算補足資料の成長ドライバー編で、会社側は SBC メディカルグループとの関係を「4P 戦略」と称しているが、開示図で実際に示されているのは Product と Place の 2 軸であり、マーケティング・ミックスの伝統的 4P(Product / Price / Place / Promotion)の全要素を対応させるものではない。実態は「Product は Waqoo グループ、Place は SBC メディカルグループ」という垂直分業の資本業務提携と捉えるのが正確である。

Product 側の Waqoo グループは、既存事業として化粧品・医薬部外品・メディカルサポート(血液由来加工)を、将来事業として原料等・再生医療等製品・医薬品を担い、開発・製造・仕入までを受け持つ。Place 側の SBC メディカルグループは、国内 258 店舗(2025 年 9 月時点)の湘南美容クリニックを中心とする SBC クリニックネットワーク、それに紐付く医療専門家ネットワーク、顧客体験の機会、顧客接点データ、医薬品の承認取得に向けた行政連携といった販売・提供側の資産を持ち寄る。

4P 分業Waqoo グループ(Product)SBC メディカルグループ(Place)
既存事業の領域化粧品、医薬部外品、メディカルサポート(PDF-FD)SBC クリニックネットワーク 258 店舗、医療専門家、顧客接点データ
将来事業の領域原料等、再生医療等製品、医薬品医薬品の承認取得に向けた連携、顧客体験の機会
主な担当機能開発・製造・仕入販売・提供(臨床アクセス)

会社側開示の「シナジー効果 8 項目」は、1) 製品企画・開発協業、2) 販売チャネル拡大とクロスチャネル戦略、3) メディカルサポート事業強化・提携医院ネットワーク拡大、4) マーケティング効率・CRM 領域の協業による収益性改善、5) 再生医療・将来技術領域での共同研究および商品・メニュー開発、6) SBC クリニックネットワークを活かした販路拡大、7) 未承認医薬品・未承認医療機器の共同研究および開発、8) コスト競争力の強化――で構成される。

注意すべきは、これらシナジー効果の業績貢献は FY26/9 期 2Q 以降に順次発現見込みとされ、FY26/9 期通期会社予想(売上 2,345 百万円、営業利益 304 百万円、純利益 184 百万円:いずれも SBC シナジー未反映)には計算上織り込まれていない点である。現行ガイダンスはあくまで Waqoo 独立路線ベースの計画で、SBC 統合効果は上振れ余地として別枠で評価する必要がある。

2-6. 主要 KPI の時系列

指標FY23/1QFY23/4QFY24/1QFY24/4QFY25/1QFY25/4QFY26/1Q
累計提携医院数(院)20153224445507685745
累計加工受託件数(件)752,5323,7027,9319,47815,58417,784
1 院あたり平均加工件数(件)3.816.516.517.818.722.823.9
メディカル売上(百万円)n.a.n.a.64232138424200
D2C 売上(百万円)n.a.n.a.n.a.n.a.269217200
D2C セグメント利益(百万円)n.a.n.a.n.a.n.a.806385

出所:各社開示資料より AENTRO Research 作成。メディカル売上は FY24/1Q 以降、D2C 売上・セグメント利益は FY25/1Q 以降のみ四半期開示。FY23/1Q〜FY23/4Q は AGA 領域の加工受託件数が本格計上前(FY23/3Q から開始、FY23/4Q 累計 614 件)。

13 四半期の時系列が示すのは、2-2 で確認した「提携医院数の増加(分母)× 1 院あたり加工件数の増加(分子)」の両輪が同時に回転しているという構造である。提携医院数の伸び率は直近 4 四半期ほど鈍化する一方、1 院あたり平均加工件数は過去最高を更新し続けており、後者の寄与度が高まる局面に入っている。D2C 側は売上 4 四半期連続減少の中で、セグメント利益が逆に過去最高水準(85 百万円)まで回復しており、利益質の入れ替えが数字で確認できる。

2-7. 競争優位

メディカルサポート事業の競争優位は、国内再生医療加工受託領域における先行者優位に集約される。血液由来加工サービスの競合として開示上の具体名は限定的で、受託件数・提携医院数ともに 13 四半期の連続開示を通じて「事業として立ち上がっている」ことを確認できる国内独立系プレイヤーは Waqoo/セルプロジャパン以外にほとんど見当たらない。再生医療等製品の製造要件を満たす CPC(Cell Processing Center)の新設・運用コスト、GMP 準拠の品質管理体制、医師との共同開発による医学的妥当性の蓄積――といった参入障壁が、先行者を保護する機能を果たしている。

次に、SBC メディカルグループの 258 店舗との資本関係による臨床データアクセスが挙げられる。2-5 で整理した垂直分業の下では、現在 Waqoo が保有していない「国内最大級の美容医療チェーンの患者接点」と「そこから発生する症例データ」が、資本関係を介して事業上の意思決定に直結しやすい状態になった。ポーラ・オルビス HD、ノエビア HD、I-ne といった化粧品 D2C の同業他社が同等の臨床網を持たないことを踏まえると、この接点は中期の優位性として機能する可能性が高い。

D2C 側の競争優位は「高マージン体質」として数値化できる。売上総利益率は FY22/9 期の 70.6% から FY25/9 期の 79.5% へ改善しており、広告投下を抑制しながらも原価コントロールと価格維持が機能している。長年の EC 実績から蓄積した D2C 基幹システム(顧客データ・レビュー・Web 行動・SNS を統合)に基づく CRM ノウハウと、アジャイル型商品開発(小ロット初回上市 → データ分析 → 顧客の声収集 → 改良)のフレームワークが、この高マージンを構造的に支えている。これらのノウハウは、メディカルサポート事業において 745 院の医療機関を「顧客」として扱う際の営業・フォロー体制にも転用されている。

最後に、再生医療領域の知財ポートフォリオも定性的な優位に寄与する。特許 20 件(登録 4 件)のうち中核は「添加因子を除去した安全な上清液・エクソソームの製造方法」(2024 年 4 月特許取得)と「独自増殖培養技術」(2022 年 8 月出願)で、国際特許出願(PCT)によるグローバル権利化も進行中である。特許の事業活用は「守り」(他社排除)ではなく「攻め」(ブランディング・技術移転)として位置づけられており、ライセンスアウトや共同研究契約の対価化余地が残る。

2-8. 事業上の主要論点

本章で整理した三層構造(D2C × メディカルサポート × 再生医療)には、投資判断の観点で留意すべき論点がいくつか存在する。

第 1 に、D2C コア事業の中期的な縮小ペースである。FY26/9 期 1Q の D2C 売上は前年同期比 ▲25.5% と縮小が続いており、メディカルサポートの伸び(同 +44.9%)が D2C の目減りをちょうど相殺して売上高は横ばい(▲0.1%)という状態にある。過渡期のトップラインの見え方はおとなしいが、セグメント別に分解しない限り「停滞」と誤読されかねない構造であり、この過渡期が想定以上に長引いた場合、全社売上の再加速タイミングが後ろ倒しになる可能性がある。

第 2 に、無形固定資産 1,012 百万円(FY25/12 末時点、期首比 △31 百万円)の償却負担である。これはセルプロジャパン株式交換に伴うのれんが主と推測され、FY26/9 期 1Q には △30 百万円ののれん償却が既に計上されている。再生医療事業の立ち上がりが想定通りに進めば償却は計画内で吸収可能だが、予定より遅延した場合は将来の減損リスクが残る。

第 3 に、親会社 SBC メディカルグループとの関連当事者取引の独立性である。51.51% の支配下で成長戦略を共有する関係にある以上、製品供給価格・加工受託料・共同研究費用の算定に合理性・透明性を担保する体制が継続的な論点となる。2024 年 12 月開示の事業計画及び成長可能性資料の事業リスクマトリクスでも、「関連当事者取引の杜撰な管理」がリスク項目として認識されている。

以上を踏まえたとき、2 章のまとめはこう整理できる。Waqoo は化粧品 D2C を起点としつつ、既にメディカルサポート事業を 13 四半期かけて「ストック型モデル」として組み上げ、親会社 SBC メディカルグループの 258 店舗ネットワークと資本接続した時点で、再生医療の社会実装を加速する受け皿として立ち位置を切り替え終えている。D2C の縮小・無形資産償却・親会社取引という三つの論点は残るが、いずれも会社側の開示で既に言語化された経営論点であり、投資判断上は「過渡期の副次的コスト」として中長期の成長シナリオに織り込み可能な範囲である。次章(第 3 章 経営戦略)では、この事業構造の上に乗る 2 段階成長戦略(着実 → 爆発)と SBC シナジーの具体的な設計を掘り下げる。

3. 経営戦略

Waqoo の経営戦略は、2025年12月のSBCメディカルグループ株式会社(以下、SBC)による株式公開買付け(TOB)成立を境に、それまでの「化粧品D2Cを母体とした独立路線」から、「SBC傘下の再生医療・加工受託プラットフォーム」へと明確にフェーズ移行した。自前でブランドを立て、自前で広告を投じ、自前で臨床パートナーを一軒ずつ開拓していく積み上げ型ではなく、国内258店舗を擁する湘南美容クリニックグループの臨床網・顧客接点・症例データを最短距離で取り込み、Waqooの製造・加工技術と垂直統合して量産化する——これが戦略の核である。本章では、この垂直統合戦略がなぜ必要だったのか、どの市場機会を取りに行くのか、そして8項目のシナジーがどのようなロードマップで発現するのかを順に検証する。

3-1. 戦略の全体像

経営の軸足は、Waqoo単独の化粧品ブランドビジネスから、SBCグループ全体の「医療 × 消費者接点」プラットフォームの中のプロダクトレイヤーへと移っている。決算補足説明資料(2026年9月期第1四半期)の4P戦略図は、この分業を簡潔に示している。Waqoo側(Product)が化粧品・医薬部外品・メディカルサポート・原料等・再生医療製品・医薬品の開発、製造、仕入を担い、SBC側(Place)が258店舗のクリニックネットワーク、医療専門家ネットワーク、顧客体験機会、顧客接点データ、医薬品承認取得の連携を担う。Waqooが自前でやっていた「良い製品を作る」と「買ってもらえる場所・人に届ける」のうち、後者を親会社に委ねる代わりに、前者のスピードを上げる構造である。

この移行は、会社が自らM&Aで買われた結果という読み解きではなく、同一経営者の下で資本構造を整理した上で事業を加速する再編、と理解するのが正しい。後述のとおり、旧筆頭株主の相川佳之氏(26.58%保有、約99万株)は親会社SBCHD(米国NASDAQ上場)の会長兼CEO兼SBC取締役でもあり、個人の保有株式がSBCに相対譲渡された結果、Waqoo株は個人からグループへ移動しただけで、経営の上位者は実質的に変わっていない。退出型のTOBではなく、垂直統合を目的とした資本集約である点が、以降の戦略議論の前提となる。

もう一つの論点は、上場形態の選択である。51.51%取得は100%取得ではない。完全子会社化して意思決定の一体性を最大化する選択肢はあったが、SBC側・Waqoo側ともに、東証グロース市場での上場維持方針を明記している。上場を残すことで、Waqoo固有の少数株主からの資本調達ルート、IPO以来築いてきたD2Cブランド「HADA NATURE」の消費者認知、そして再生医療研究開発を相対的に独立したR&D組織として運営できる自由度が、いずれもSBC本体の財務リスクから切り離される。3-7で触れる投資計画の裏返しで、再生医療事業のR&Dをグループの一部門として埋没させず、上場会社としての開示と規律の下で育てる——この判断が戦略上の柱となっている。

3-2. 市場環境と市場機会

Waqooが取りに行く市場は、化粧品D2Cではなく再生医療とその周辺である。事業計画及び成長可能性に関する事項(2024年12月開示)に示された経済産業省「再生医療の実用化・産業化に関する報告書」の試算では、国内再生医療市場は2050年時点で2.5兆円、年率CAGR 11.52%の成長が見込まれる。世界市場は同年時点で38兆円、CAGR 12.89%に達する。日本単独でも2.5兆円規模というのは、足元のWaqoo連結売上高2,345百万円(2026年9月期会社予想、SBCシナジー未反映)に対して約1,000倍の市場規模であり、わずかな市場シェアでも取れれば業績インパクトは桁違いに大きい。

疾患領域別に見ても、セルプロジャパンが共同研究契約を結んだ京都大学iPS細胞研究所(CiRA)との共同研究では、様々な細胞種から分泌される生理活性物質の成分を検証し、病態モデルを使った安全性及び有効性が評価される。これら基礎研究を積み重ねることにより、将来的に認知症などを対象として新しい治療薬の開発を目指すとされている。認知症については、治療薬市場が世界約150億米ドル、患者数約5,500万人(2023年)と算定されている(事業計画及び成長可能性に関する事項、出典:Waqoo調べ)。糖尿病は治療薬市場約800億米ドル、患者数約5億人(同)。Waqooが独自に保有する培養上清液(エクソソーム含む)の技術——上清液から添加因子を除去する世界初の特許技術(特許第7520397号、2024年取得)など——は、これらの疾患領域に「多対多」の新しい治療アプローチを持ち込む可能性があり、将来的に承認取得が進めば、認知症薬・糖尿病薬という既存巨大市場の一部を侵食する経路が開ける。

ただし、ここで冷静に見るべきは、国内再生医療の市場実装はまだ黎明期にあり、勝敗を分けるのは「臨床プロバイダとの接続のスピード」だという点である。再生医療等安全性確保法および薬機法の下で、細胞加工・投与を行うには提供医療機関・加工施設(CPC)の登録、プロトコル計画、症例蓄積、安全性データが必要になる。言い換えれば、加工技術を持っているだけでは駒が進まず、実際に患者を診療し症例を積める臨床機関と強く結びついているプレイヤーほど先に実装段階へ到達する。SBCグループは国内最大級の美容医療ネットワーク(湘南美容クリニック 258店舗)を持ち、AGAや美容領域で既に大量の診療症例を抱えている。Waqooが単独で臨床網を一軒ずつ開拓するより、SBCに合流することで症例蓄積速度を桁違いに引き上げられる構造である。

一方、祖業の化粧品D2C市場は、成熟・競合激化フェーズに入っている。当期の国内BtoC EC市場は伸長を続けているとはいえ、化粧品セグメント単独では新規プレイヤーの参入・退出が激しく、広告単価の高騰、顧客獲得コストの上昇、SNS経由のブランド寿命の短期化が共通課題となっている。Waqooの「HADA NATURE」の売上がFY22/9 2,731百万円からFY25/9 1,961百万円へと7割水準まで縮小したのは、会社固有の失策というより、市場全体のコモディティ化の中で、単独ブランドでは差別化の再投資を続けにくくなっているという構造的な結果と読み取れる。このコントラストが、D2Cから再生医療へという軸足の移動を正当化する市場環境的な裏付けとなる。

3-3. SBCメディカルグループ子会社化の経緯と戦略意義

ここが本章の中核である。2025年11月13日、SBCは金融商品取引法上の公開買付けを開始した。買付価格は1株あたり1,900円、上限575,000株(下限なし、あん分比例方式)で、買付期間は11月14日から12月12日まで20営業日。並行して、SBCは当時の筆頭株主・相川佳之氏(26.58%、989,802株)から、TOBに応募しない条件でSBCへ相対譲渡する契約を締結した。相対取引価格は1株1,445円と、TOB価格1,900円を下回る水準で、「市場株主にプレミアムを、関連当事者には割引価格を」という関連当事者取引の設計になっている。

TOBの結果は、2025年12月13日に公表された。応募株券等637,817株に対し、買付予定数上限575,000株を超過したため、あん分比例方式により575,052株が買付けられた。加えて、12月19日の決済開始日に相川氏からの相対取引(989,802株)も決済され、SBCの所有議決権は異動前の36.07%(直接9.49% + 相川合算26.58%)から異動後51.51%へと上昇し、同日付でSBCはWaqooの親会社および主要株主である筆頭株主に該当することとなった。一方、個人筆頭株主だった相川氏は保有株全量を譲渡しWaqoo主要株主から外れ、井上裕基氏(創業者・現会長)は応募した45,000株のうち40,500株が買付けられ、保有比率は10.38%から9.29%へと減少した。

区分異動前異動後
SBCメディカルグループ(直接+合算)36.07%(3位)51.51%(1位、親会社)
相川 佳之(SBCHD会長兼CEO)26.58%(1位)ゼロ(SBCへ相対譲渡)
井上 裕基(Waqoo創業者・現会長)10.38%(2位)9.29%(2位)

*出所:各社開示資料よりAENTRO Research作成*

重要なのは、なぜ2025年末というこのタイミングだったか、である。2022年8月にSBCと業務提携契約を結んで以来、Waqooは美容領域での販路提供、2024年のセルプロジャパン連結子会社化を経て加工受託ボリュームを急拡大させてきた。1Q FY26時点の累計加工受託件数17,784件(FY23/1Qから約237倍)、累計提携医院数745院、年間稼働率60.1%という数字は、業務提携ベースで既に臨床ネットワークへの接続が機能していたことを示している。しかし、年間稼働率60%台、1院あたり平均加工件数23.9件という水準は、ボリュームでも価格でもまだ最適化されきっていない。Waqoo単独では臨床網アクセスと症例データ蓄積の速度に自ずから限界があり、258店舗のSBC本体ネットワークに直結することでこれを一気に加速させる判断が、このタイミングで下された——これが経営側の開示文書から読み取れる必然性の筋道である。

TOB開始時のSBC側開示は、買付目的について次のように述べている。Waqooへの支援を通じて研究開発活動を一層加速させ、その先進的な技術とノウハウをグループ内に取り込むことで、AGAや整形外科などの臨床領域において新たな治療法や独自サービスの拡充を進め、グループ全体の競争力強化を図る、と。さらに、医療現場で得られる知見を基にしたスキンケア製品の共同開発・導入、Waqoo加工・研究ノウハウのSBCHD海外拠点での技術的支柱としての展開、両社による再生医療の社会実装に向けた協業という3つの柱が明示されている。ここで強調しておきたいのは、SBC側の買付目的に「非上場化」「整理・スリム化」の文言は一切含まれておらず、「R&Dの加速」と「臨床での応用拡大」が前面に出ているという点である。

3-4. 8項目シナジーのロードマップ

決算補足説明資料(2026年9月期第1四半期、2026年2月12日開示)では、SBCメディカルグループとのシナジー効果として次の8項目が挙げられている。これらは独立した羅列ではなく、時間軸と機能軸で整理すると「短期=販路」「中期=収益性」「長期=再生医療 R&D」の 3 層に重ねて読める。

レイヤー時間軸#シナジー項目期待される効果
販路(短期)FY26–272販売チャネルの拡大とクロスチャネル戦略SBC 258 店舗網への直接接続でクロスチャネル売上を新設
3メディカルサポート事業の強化・提携医院ネットワーク拡大提携医院 745 → 800 院超への拡張を加速
6SBCグループのクリニックネットワークを生かした販路拡大1 院あたり加工件数(現 23.9 件)の稼働率引き上げ
収益性(中期)FY27–281製品企画・開発における協業臨床知見を反映したスキンケア・医薬部外品の共同開発
4マーケティング効率・顧客管理(CRM)領域での協業による収益性改善Waqoo CRM × SBC 患者データ統合で広告宣伝費率を圧縮
8コスト競争力の強化原材料共同調達・物流統合・製造委託先共通化で粗利率を押上
再生医療 R&D(長期)FY28 以降5再生医療、将来技術領域での共同研究及び商品・メニュー開発認知症・糖尿病領域での新規治療薬開発ルート
7未承認医薬品・未承認医療機器の共同研究及び開発SBC 承認取得連携+SBCHD 海外拠点を経由した社会実装

短期で効くのは 2・3・6 の販路レイヤーである。SBC 258店舗のクリニックネットワークへの直接接続により、メディカルサポート事業(PDF-FDほか血液由来加工受託)の提携医院拡大ペースが加速するほか、化粧品・医薬部外品のクリニック向け販売というクロスチャネルが新設される。1院あたり平均加工件数が現状23.9件から、SBC本体クリニックでの高頻度使用を前提にさらに引き上げられれば、メディカルサポート売上は稼働率と件数単価の両面で押し上げられる。

中期の中核は1・4・8の収益性改善レイヤーである。Waqooが独自に保有するD2C基幹システム(CRM・顧客購買データ・LTV分析)と、SBCが保有する258店舗分の患者データ・来院履歴を統合することで、マーケティング効率が向上し、広告宣伝費率の低下が見込まれる。原材料の共同調達、物流・倉庫の統合、製造委託先の共通化によりコスト競争力が強化される。これらは損益計算書の粗利率・販管費率の両サイドから作用する構造であり、会社予想の営業利益率13.0%(=304/2,345、SBCシナジー未反映)を上振れさせる余地の大半は、この層が担うとみている。

長期の成長ドライバーが5・7の再生医療・未承認医薬品レイヤーである。セルプロジャパンが京都大学iPS細胞研究所と結んだ共同研究契約、Waqooが保有する細胞培養上清液の添加因子除去特許(特許第7520397号、7468955号、7584176号、7717413号の計4件登録済み、出願中9件、合計20件)、そしてSBCが保有する医薬品承認取得に向けた連携ルートを組み合わせることで、認知症・糖尿病といった巨大領域での新規治療薬開発の道筋が開く。ただしこの層は時間軸が長く、承認取得には数年単位の臨床試験が必要になるため、FY26/9の会社予想には一切織り込まれていない。加えて、SBCHDが米国NASDAQ上場企業として保有するアジア・北米等の海外拠点は、SBC側の買付目的文書で「Waqoo加工・研究ノウハウの技術的支柱として機能」と明示されており、海外展開ルートとして将来活用される余地がある(AENTRO Research解釈)。

ここで繰り返し強調しておく必要がある論点が、FY2026年9月期の会社予想(売上高2,345百万円・前年比+19.6%、営業利益304百万円・同+101.3%、当期純利益184百万円・同+318.2%)はSBCのTOBに伴うシナジー効果を未反映のベースで策定されている、という点である。会社側も決算補足説明資料で「グループシナジー戦略について協議中であり、推進とともに更なる収益増が期待できる状況」と明記しており、2Q以降のシナジー発現度合いが会社予想に対する上振れの源泉となる。

出所:決算補足説明資料(2026年9月期第1四半期、2026年2月12日開示)より AENTRO Research 作成。

3-5. 2段階成長戦略(着実→爆発)

事業計画及び成長可能性に関する事項(2024年12月27日公表、次回アップデートは2025年12月予定)では、成長軌道を明示的に2段階に分けて描いている。

第1段階は「着実な成長」期間(FY24/9 → FY25/9 → FY27/9、短中期)。既存事業であるD2C・メディカルサポートを着実に成長させ、利益体質化を図るフェーズである。具体的には、メディカルサポートの提携医院数・稼働率・平均加工件数の継続的な積み上げ、D2Cの広告投資効率化による収益性確保、再生医療・医薬品・医療機器といった新規事業の基盤整備(CPC新設、許認可取得、特許ポートフォリオ構築)を並行する。同資料では、この期間中に「細胞培養プラットフォーム」(細胞理解→選択的培養→増殖培養→細胞加工の4工程を貫くコア技術の集合体)の実装を進めるとしている。

第2段階は「爆発的な成長」期間(FY27/9 → FY30/9、中長期)。承認申請取得および成長投資の結実により収益化を加速し、新規事業(再生医療・医薬品)を本格的な収益の柱として加えるフェーズである。自家細胞治療(オーダーメード・量産不可・自費診療)から他家細胞治療(量産・コストダウン・保険診療適用)への移行、認知症・糖尿病領域での治療薬開発、および海外展開により、ここで事業規模が非線形に拡大するシナリオが描かれている。

SBC子会社化を経た現在、この2段階ロードマップは前倒しされる可能性がある、というのがAENTRO Researchの評価である。第1段階の根幹である提携医院数・稼働率の改善はSBCクリニックネットワーク接続で加速し、第2段階の核である再生医療・医薬品の承認取得・量産化はSBCの医薬品承認取得連携およびSBCHD海外拠点を通じて社会実装の経路が短縮される見込みである。ただし、事業計画資料自体は2024年12月版が最新で、SBC TOB成立前の時点を前提に作成されている。次回2025年12月予定のアップデートで、SBC統合後の最新ロードマップが示されるかが、投資家にとっての注目イベントとなる。

3-6. 事業ポートフォリオの組み替え方針

SBC傘下での事業ポートフォリオは、D2C・メディカルサポート・再生医療の3軸それぞれに明確に異なる役割が与えられている。

D2C事業は、典型的な「金のなる木」としての位置づけに移行する。FY25/9セグメント売上952百万円、セグメント利益は1Q FY26実績ベースで85百万円(前年同期比+6.9%)と、売上が縮小する中でも利益は逆に拡大している。広告宣伝費率はFY22/9の28.2%からFY25/9の6.9%まで圧縮されており、縮小均衡で高利益率を維持するモデルに完全に移行済みである。HADA NATUREおよび周辺ブランドに対する新規投資は抑制され、浮いたキャッシュと広告リソースはメディカルサポート・再生医療側に再配分される。株主総会招集通知の事業報告でも、D2C事業については「ロイヤルカスタマーに焦点を当てた施策」「より一層のコスト効率やターゲティング精度の高いチャネルへの投資」を明記しており、攻めではなく利益率防衛のフェーズに入ったことが確認できる。

メディカルサポート事業が売上・利益の成長ドライバーである。FY25/9にはセグメント売上999百万円とD2C事業の952百万円を抜き、1Q FY26では売上200百万円(前年同期比+44.9%)と加速度を上げている。本章3-4で述べたSBCシナジーの販路レイヤーが直接効くのがここであり、提携医院数745院から800院・さらにその先への伸長と、1院あたり平均加工件数23.9件からの引き上げ余地が、両輪として作用する。株主総会招集通知では、「既存の提携医院における稼働率の飛躍的な向上を目指すために人材採用を加速させ営業体制の増強を図り、アップグレード版の血液由来加工サービスの導入促進を積極的に推進」と明記されている。

再生医療事業は、現時点ではR&D・特許積み上げフェーズに留まる。セルプロジャパンが展開する認知症治療薬の共同研究(京都大学CiRA)、細胞培養上清液および添加因子除去技術の特許ポートフォリオ、独自加工技術による有効性・安全性の追求は、いずれも将来の収益化に向けた投資であって、短期損益への寄与は限定的である。ただし、戦略的には最も重要なレイヤーであり、このR&Dが結実すれば事業の成長軸は化粧品D2Cでもメディカルサポートでもなく、再生医療製品・医薬品へと次の転換が起きる。

3-7. 投資計画とR&D・知財戦略

ポートフォリオ再編を裏支えする投資は、既にバランスシート側に現れている。FY24/9期においてセルプロジャパンを連結子会社化したこと等により、無形固定資産が期初の8百万円水準から期末1,136百万円へと急増した。FY25/9期末では1,011百万円、1Q FY26期末で980百万円と、のれん償却が進むにつれ徐々に減少している。1Q FY26における無形固定資産の減少△31百万円のうち、△30百万円がのれん償却額で、これは今後も四半期ベースで継続的に計上される構造的コストである。つまり、営業利益304百万円(FY26会社予想)という数字は、四半期30百万円×4=約120百万円ののれん償却を吸収した上での計画値である点は、期間損益を読む際に抑えておく必要がある。

R&D・知財戦略は「守り」ではなく「攻め」の成長投資として位置付けられている。セルプロジャパンを中心とした知財ポートフォリオは、登録済4件(登録番号7717413、7468955、7584176、7520397、すべて医療・美容領域)と出願中案件9件を含め、合計20件の出願件数に達している。国際特許出願(PCT)および分割出願を戦略的に進行中で、登録済みの添加因子除去技術(特許第7520397号)は再生医療全般・化粧品・上清液関連製品の広範囲に影響を及ぼす可能性がある。Waqoo代表取締役の佐俣文平氏自身が京都大学iPS細胞研究所の非常勤研究員、日本再生医療学会代議員・上級培養士資格保有者であり、研究者と経営者の二刀流を体現している点は、特許戦略の実効性を裏付ける人的資本である。

人材投資については、株主総会招集通知で「既存の提携医院における稼働率の飛躍的な向上を目指すために人材採用を加速させ営業体制の増強を図り」と明示されているほか、AI・BIを本格活用したデータ駆動型営業インフラの構築、新設された「海外事業部」による海外展開の推進が明記されている。SBC傘下入り後は、これら人的投資もグループ内で再配分される余地があり、SBC本体の医療専門家・臨床プロフェッショナルがWaqoo側に知見を供給する一方、Waqoo側の研究者・事業開発人材がSBCグループの再生医療・海外プロジェクトに関与する双方向の人材フローが、AENTRO Research解釈として想定される。

本章で確認した戦略の構造を総括すると、Waqooの経営戦略は4層の入れ子構造で設計されている。最外層が「D2Cから再生医療加工プラットフォームへ」という軸足の移動であり、次の層が「独立成長から垂直統合」への資本構造転換、その内側が「着実→爆発」の2段階成長ロードマップ、最内層が「8項目シナジー」の個別施策である。FY2026年9月期の会社予想(売上2,345百万円、営業利益304百万円)はこのうち最内層のSBCシナジーを未反映、2段階成長の第1フェーズ・着実期の数字である。したがって投資家としての評価軸は、(a) 会社予想の達成可能性(1Q実績はOn Track)、(b) 2Q以降のSBCシナジー発現度合いによる上振れ幅、(c) 第2フェーズへの移行を規定する再生医療・未承認医薬品の進捗、(d) 少数株主保護を含む親会社取引の独立性——の4点に集約される。次章以降では、(a)と(b)を業績動向で、(c)を中長期成長方針で、(d)を株価インサイトでそれぞれ検証していく。

4. 業績動向

FY2022/9 から FY2025/9 にかけての Waqoo の業績は、化粧品 D2C の広告圧縮による縮小と、メディカルサポート事業(血液由来加工 PDF-FD)立ち上げのための先行投資が重なる過渡期であった。売上高は FY2022/9 の 2,731 百万円から FY2025/9 の 1,961 百万円へ約 770 百万円減少する一方、売上総利益率は 70.6% から 79.5% へ上昇し、営業利益は FY2022/9 の △40 百万円から FY2025/9 には 151 百万円の黒字へ回復した。FY2026/9 会社予想は売上 2,345 百万円(+19.6%)、営業利益 304 百万円(+101.3%)、純利益 184 百万円(+318.2%)と上場来最高益水準を計画しており、1Q FY2026 実績はこの計画に対し On Track で推移している。なお当期予想には 2025 年 12 月の SBC メディカルグループによる子会社化に伴うシナジー効果は未反映であり、2Q 以降順次発現する前提で議論する必要がある。

4-1. 直近5期の経営成績

Waqoo の P/L を 5 期(FY2022/9〜FY2025/9 実績に FY2026/9 会社予想を加えた 5 年スパン)で俯瞰すると、売上水準の「底入れ」と利益水準の「回復」が同時進行していることが分かる。売上高はピークの FY2022/9 から FY2023/9 にかけて 2,731 百万円 → 1,726 百万円と △36.8% 落ち込んだ後、FY2024/9 以降は 1,900 百万円台で横ばいに推移。一方、営業利益は FY2022/9 の △40 百万円から FY2023/9 には 278 百万円と大きく反転した後、FY2024/9 に 56 百万円(+79.9% 減)へ一旦反落、FY2025/9 に 151 百万円(+169.6%)へ再加速する形をとっている。

単位: 百万円FY2022/9FY2023/9FY2024/9FY2025/9FY2026/9 会社予想
売上高2,7311,7261,9431,9612,345
売上高 YoY△36.8%+12.6%+0.9%+19.6%
売上総利益1,9291,3121,5491,559
売上総利益率70.6%76.0%79.7%79.5%
営業利益△4027856151304
営業利益率△1.5%16.1%2.9%7.7%13.0%
親会社株主に帰属する当期純利益△5728△1744184

出所: 各社開示資料より AENTRO Research 作成。FY2022/9〜FY2025/9 は有価証券報告書、FY2026/9 は会社予想(SBC シナジー未反映ベース)。

FY2022/9 → FY2023/9 の売上急減(△1,005 百万円)は、D2C 中心の広告投資を意図的に絞り込み、事業ポートフォリオをメディカルサポート中心へ組み替え始めた過渡期の現象である。実際、売上高広告宣伝費率は FY2022/9 の 28.2% から FY2023/9 には 5.4% へ 22.8 ポイント圧縮されており、広告に依存した D2C の拡大路線を戦略的に収束させたことが数字に表れている。FY2024/9 の無形固定資産が 8 百万円から 1,136 百万円へ急増した点も構造変化の一端であり、これは同期に実施した連結子会社セルプロジャパン株式会社を軸とするグループ再編に伴うのれん・無形資産計上が主因と当社はみる。売上はほぼ横ばいに見えても、その中身は「化粧品 D2C の継続縮小」と「メディカルサポート事業の拡大」が相殺しながら入れ替わっているのが実像である。

4-2. 収益構造の変化と利益率の見方

上記の売上変動と利益変動をつなぐのは、原価構造と販管費構造の両方を組み替えた点にある。売上総利益率は FY2022/9 の 70.6% から FY2025/9 の 79.5% へ 8.9 ポイント改善した。D2C 時代から維持されてきた高マージン体質に、加工受託(PDF-FD)という同様に高マージンのサービス収益が重なる形でグロス・マージンは押し上げられている。一方、販管費(売上高販管費率)は FY2022/9 の 72.1% から FY2025/9 に 71.8% とほぼ横ばいに見えるが、中身は大きく組み替わっている。

単位: %FY2022/9FY2023/9FY2024/9FY2025/9
売上総利益率70.676.079.779.5
売上高販管費率72.159.976.871.8
売上高広告宣伝費率28.25.412.76.9
売上高人件費率(販管費内)13.317.816.821.2
売上高研究開発費率0.51.9
営業利益率△1.516.12.97.7
EBITDA マージン△1.216.58.314.6

出所: 各社開示資料より AENTRO Research 作成。

広告宣伝費率 28.2% → 6.9% と 3 年で 21 ポイント超の劇的な圧縮が、FY2022/9 の赤字から FY2025/9 の営業利益率 7.7% 回復の主因である。それと並行して、人件費率が 13.3% → 21.2% へ拡大し、研究開発費率も 0% 近傍から 1.9% へ立ち上がってきた点は、「広告依存のトップライン追及」から「人的資本・R&D への固定費シフト」への転換を示している。当社はこの組み替えが、加工受託というストック型ビジネスへ収益構造を寄せていくうえで合理的であるとみる。EBITDA マージン(FY2025/9 14.6%、FY2026/9 予 18.8%)が営業利益率の改善幅を上回っているのは、FY2024/9 に計上されたのれん・無形資産の償却費(年 120 百万円前後のペース)が営業利益を圧迫するが EBITDA には影響しないためであり、キャッシュ創出力の実像を把握するには EBITDA ベースで見る必要がある。

4-3. 財政状態と資本効率

B/S の構造は FY2024/9 を境に大きく変貌した。総資産は FY2022/9 末の 1,563 百万円から FY2025/9 末の 3,199 百万円へ 2 倍超に拡大し、その主因は固定資産(特に無形固定資産)の急増である。自己資本比率は FY2022/9 の 47.5% から FY2025/9 に 65.4%、FY2025/12 末(LTM ベース)には 67.6% へ上昇し、ネット有利子負債は △579 百万円とネットキャッシュ状態を維持している。

単位: 百万円FY2022/9FY2023/9FY2024/9FY2025/9FY2025/12
資産合計1,5631,5813,1343,1993,063
流動資産1,3441,5611,8551,7821,673
固定資産220201,2791,4171,390
うち無形固定資産1481,1361,012981
負債合計8218099931,108993
純資産合計7437732,1402,0922,070
現預金同等物9061,3051,5051,3021,257
有利子負債残高646636783731678
ネット有利子負債△260△669△722△571△579
自己資本比率47.5%48.9%68.3%65.4%67.6%
ROE3.7%△1.2%2.1%2.9%

出所: 各社開示資料より AENTRO Research 作成。FY2025/12 は直近四半期末(FY2026/9 Q1 末)かつ LTM ベース指標を併記。

FY2024/9 に固定資産が 20 百万円から 1,279 百万円へ急増し、無形固定資産が 1,136 百万円と資産総額の 36% を占める構造に転じた点は、セルプロジャパンとの株式交換によるグループ再編が B/S 上で計上された結果である。のれん・無形資産の償却は年約 120 百万円ペース(1Q FY2026 で 30 百万円)で進んでおり、FY2025/9 末には 1,012 百万円まで逓減している。ROE は FY2023/9 3.7%、FY2024/9 △1.2%、FY2025/9 2.1%、LTM 2.9% と一旦マイナス圏へ沈んだ後に改善基調にある。自己資本の厚みと無形資産回収の進捗を同時に追う必要がある局面であり、当社はメディカルサポート売上の持続成長が確認できれば ROE は中期的に中一桁台後半まで回復余地があるとみる。

4-4. キャッシュフローと財務運営

キャッシュフロー(CF)の推移は、営業 CF の変動性と投資 CF の方向転換の双方を示している。営業 CF は FY2022/9 の 169 百万円から FY2023/9 に 456 百万円へ急拡大した後、FY2024/9 に 49 百万円へ落ち込み、FY2025/9 に 136 百万円へ戻した。投資 CF はメディカルサポート設備・R&D 投資を背景に FY2023/9 の △49 百万円から FY2025/9 の △189 百万円へ拡大している。

単位: 百万円FY2022/9FY2023/9FY2024/9FY2025/9
営業活動による CF16945649136
投資活動による CF△176△49△76△189
財務活動による CF△129△8112△150
フリー CF(営業+投資)△7407△27△53
営業 CF マージン6.2%26.4%2.5%6.9%

出所: 各社開示資料より AENTRO Research 作成。

フリー CF は FY2023/9 の +407 百万円を除けば、直近 2 期連続で小幅なマイナス(FY2024/9 △27 百万円、FY2025/9 △53 百万円)にとどまっている。これはメディカルサポートへの設備・R&D 投資と、のれん計上を伴うグループ再編後の運転資本調整が重なったためであり、当社は「成長投資のために一時的に薄い FCF を受容している局面」と捉えている。FY2025/12 末の現預金同等物 1,257 百万円と有利子負債 678 百万円の水準は、FY2026/9 以降もシナジー未反映ベースの会社予想(営業利益 304 百万円、EBITDA 440 百万円)と整合的なキャッシュ創出を想定すれば、自己資金で賄える成長投資の幅は十分にあるとみる。

4-5. 直近四半期(FY2026/9 Q1)の概要

FY2026/9 第 1 四半期(2025 年 10〜12 月)の連結業績は、売上高 407 百万円(前年同期比 △0.1%)、営業利益 △33 百万円(同 +11 百万円改善)、EBITDA +0 百万円(同 +13 百万円改善)、親会社株主に帰属する四半期純利益 △30 百万円(同 +16 百万円改善)で着地した。トップラインは横ばいだが、セグメント別では構造変化が顕在化している。メディカルサポート事業の売上は 138 百万円 → 200 百万円(+44.9%)と急伸し、D2C 事業は 269 百万円 → 200 百万円(△25.5%)へ縮小した。D2C のセグメント利益は 80 百万円 → 85 百万円(+6.9%)とむしろ改善しており、広告投資を絞りつつ高収益ブランドを残す戦略が機能していることを示している。

B/S は FY2025/9 末対比で資産合計が 3,199 百万円から 3,063 百万円へ △135 百万円縮小、自己資本比率は 65.1% から 67.1% へ 2.0 ポイント上昇した。資産側は流動資産 △109 百万円(売掛金 △56、現預金 △45)、無形固定資産 △31 百万円(のれん償却 △30)、負債側は流動負債 △88 百万円(未払法人税等 △63)、長期借入金 △25 百万円と、営業活動と財務活動双方での収縮が同時進行している。

四半期 △33 百万円の営業赤字は年度計画(通期 304 百万円)に対して後れているように見えるが、Waqoo の事業特性は 4Q 偏重モデルである。FY2025/9 の営業利益四半期推移は 1Q △45 百万円、2Q +19 百万円、3Q +120 百万円、4Q +150 百万円(決算補足説明資料より)で、4Q に通期利益のおよそ 100% が集中する構造となっている。1Q の赤字幅縮小(△45 → △33、+11 百万円)と EBITDA の黒字転換(△13 → +0、+13 百万円)は、年度計画に対し On Track と当社は判断する。

4-6. 通期見通し(FY2026/9 会社予想)

FY2026/9 会社予想は、売上高 2,345 百万円(+19.6%)、営業利益 304 百万円(+101.3%)、経常利益 294 百万円(+93.4%)、親会社株主に帰属する当期純利益 184 百万円(+318.2%)、EPS 52.44 円、EBITDA 440 百万円(+53.3%)で、上場来最高益水準を計画している。営業利益率は FY2025/9 の 7.7% から 13.0% へ 5.3 ポイント改善する想定である。

単位: 百万円(EPS は円)FY2025/9 実績FY2026/9 会社予想前期比
売上高1,9612,345+19.6%
EBITDA287440+53.3%
営業利益151304+101.3%
経常利益152294+93.4%
親会社株主に帰属する当期純利益44184+318.2%
EPS12.3252.44+325.6%
営業利益率7.7%13.0%+5.3pt

出所: 各社開示資料より AENTRO Research 作成。会社予想はすべて SBC メディカルグループによる子会社化に伴うシナジー効果を未反映のベース。

重要な前提として、この予想には 2025 年 12 月 26 日に完了した SBC メディカルグループ子会社化に伴うシナジー効果が含まれていない。会社が開示する 8 項目のシナジー(製品企画協業、販売チャネル拡大、メディカルサポート提携医院ネットワーク拡大、未承認医薬品・医療機器の共同開発など)は 2Q 以降に順次発現する見込みとされており、通期予想の上方修正余地は存在する。当社は、1Q 実績が On Track で着地した事実と、4Q に利益が集中する季節性を踏まえ、会社予想の達成可能性は高いと判断する。

4-7. 今後の注目点

業績面で今後継続的に観察すべき論点は 3 点ある。

第 1 に、メディカルサポート事業の四半期別進捗である。決算補足説明資料ベースで、提携医院数は 1Q FY2026 時点で累計 745 院(前四半期比 +60 院、年間稼働率 60.1%)、加工受託累計件数は 17,784 件(同 +2,200 件)、1 院あたり平均加工受託件数は 23.9 件(過去最高更新)と、いずれも先行 KPI が積み上がっている。提携医院数の 800 院到達と、1 院あたり件数の引き続きの伸長が、通期売上計画 2,345 百万円の達成可否を左右する主要変数となる。

第 2 に、のれん償却の継続負担である。FY2024/9 に計上した無形固定資産(期末残高 1,136 百万円)は、四半期 30 百万円前後のペースで償却されており、FY2025/12 末には 981 百万円まで逓減している。この償却負担は営業利益を年 120 百万円程度圧迫するが、EBITDA ベースでは影響がないため、キャッシュ創出力と会計上の利益のギャップを見極める必要がある。のれんの回収可能性は、メディカルサポート事業の将来 CF で裏付けるべきものであり、四半期 KPI との整合性を継続的に検証することが重要である。

第 3 に、SBC シナジーの実体化と通期予想の上方修正可能性である。8 項目のシナジーのうち、2Q 以降に販売チャネル拡大(SBC クリニック 258 店舗網での D2C 商材クロスセル)、提携医院ネットワーク拡大(医療専門家経由での新規獲得)などが先行して顕在化すると見込まれる。実体化が確認されれば、会社予想(シナジー未反映)に対する上振れと、中長期の成長軌道に対するプレミアム評価の双方が期待できる。

以上を総括すると、Waqoo の業績は、化粧品 D2C 中心の広告依存型損益構造から、メディカルサポート主導のストック型・高マージン構造へ移行する過渡期の末期にある。FY2025/9 の営業利益 151 百万円は、その移行がすでに数字として確認できる水準に到達したことを意味し、FY2026/9 会社予想 304 百万円は、SBC シナジー未反映の独立路線でも上場来最高益を達成しうる計画である。次章以降では、この業績軌道を中長期にどのように伸ばすかという成長戦略と、市場評価の現在地について議論する。

5. 中長期成長方針

中長期の成否は、SBCメディカルグループ傘下 258 店舗(2025 年 9 月時点)とのシナジーがどの速度で通期会社予想を上振れさせる実績に結晶化するかに一本化される。Waqoo は正式な中期経営計画を開示しておらず、方針は「事業計画及び成長可能性に関する事項」(直近版 2024 年 12 月 27 日公表)、2025 年 11 月 13 日および 12 月 13 日の TOB 関連開示、2026 年 2 月 12 日公表の FY2026/9 第 1 四半期決算補足説明資料の 3 点セットから読み解く必要がある。以下では、この 3 文書を時系列で重ねながら、数値目標・重点施策・キャピタルアロケーション・株主還元・評価軸を整理する。

5-1 正式中計不在の中での方針把握

Waqoo は中期経営計画を正式には開示していない。グロース市場上場会社であることから、代替として「事業計画及び成長可能性に関する事項」を毎年度更新する運用を採っており、直近版は 2024 年 12 月 27 日公表分である。ただしこの直近版は SBC メディカルグループによる公開買付け(2025 年 11 月〜12 月)成立以前、すなわち独立路線を前提に策定されている点に留意が必要となる。2025 年 12 月 13 日の TOB 成立で所有割合は異動前 36.07%(SBCメディカルグループ 9.49% + 特別関係者 26.58%)から異動後 51.51% となり、Waqoo は SBC の連結子会社となった。東証グロース市場への上場は維持される方針である。

したがって、「中計が存在しない」ことをもって戦略不明確と見るのは適切ではなく、独立路線ベースの事業計画資料(2024/12 版)、親子統合後の戦略意義を示す TOB 開示文書、ポストTOB 初の補足説明にあたる Q1 FY2026 決算説明資料を重ね合わせることで、方向性は十分に読み取れる構造になっている。本章では、見出しを「中期経営計画」ではなく「中長期成長方針」として、この 3 文書の重ね合わせを基点に叙述する。

5-2 数値目標の読み方 — 会社予想とシナジー未反映の関係

数値として明示されているのは FY2026/9 通期会社予想までで、その先の「爆発的な成長」フェーズ(FY2027-FY2030)の定量目標は非開示となっている。まず手前の水準感を押さえる。

指標FY2024/9 実績FY2025/9 実績FY2026/9 会社予想前期比
売上高(百万円)1,9431,9612,345+19.6%
EBITDA(百万円)161287440+53.3%
営業利益(百万円)56151304+101.3%
経常利益(百万円)57152294+93.4%
親会社株主に帰属する当期純利益(百万円)△1744184+318.2%
EPS(円)△5.0312.3252.44
営業利益率2.9%7.7%13.0%+5.3pt

出所: 各社開示資料より AENTRO Research 作成。FY2026/9 会社予想は SBC メディカルグループ TOB に伴うシナジー未反映ベース。

重要なのは、この会社予想が SBC との資本業務提携発表(2025 年 12 月)以前の独立路線ベースで策定されており、SBC シナジーが未反映の数字であるという点である。上場来最高益水準の計画値であるにもかかわらず、会社側は Q1 決算資料で「グループシナジー戦略について協議中であり、推進とともに更なる収益増が期待できる状況」と明記しており、同水準はあくまで下限のアンカーと読むべきである。

その先の「爆発的な成長」フェーズについては、2024/12 の事業計画資料が「2027/9 期以降に承認申請取得および成長投資の結実により収益化を加速」と定性的に述べるにとどまる。ポテンシャルの上限を示す参考値としては、再生医療領域の国内 TAM が 2050 年時点で 2.5 兆円(CAGR 11.52%)、世界 38 兆円(CAGR 12.89%)と試算されていること(経済産業省資料に基づく同社推計)がある。PDF-FD の主戦場である骨関節疾患は 40 歳以上の変形性腰椎症推定患者数 3,790 万人・変形性関節症推定患者数 2,530 万人、AGA は成人男性約 1,500 万人という厚い需要層が存在する。中期の焦点は、この TAM の入り口をどの速度で取りに行くかに移る。

5-3 重点施策と 1Q 進捗

重点施策は事業計画資料(2024/12)と TOB 文書(2025/11)、Q1 補足説明資料(2026/2)で 3 層に整理できる。層ごとに異なる開示者(Waqoo 単独/SBC 側/ポストTOB 初の Waqoo)の視点が重なり、相互補完的に読み解ける構造にある。

第 1 に、メディカルサポート事業(血液由来加工 PDF-FD を中心とする医療機関向け加工受託)については、累計加工受託件数が FY23/1Q の 75 件から FY26/1Q の 17,784 件まで 13 四半期で 236 倍化しており、累計提携医院数は 745 院(年間稼働率 60.1%)、1 院あたり平均加工受託件数は 23.9 件で過去最高値を更新した。会社は提携医院数 800 院到達を視野に置く。Q1 売上高は前年同期比 +44.9%(138→200 百万円)で期初計画を上回り着地しており、事業拡大フェーズの持続が確認できる。展開領域としては整形外科 445 院、AGA 39 院(2024/9 時点)に加え、上清液・プレミアPDF-FD・ASC(脂肪由来幹細胞)を整形外科・AGA・美容・脳神経に横展開する計画が開発中として示されている。

第 2 に、D2C 事業(HADA NATURE を中核とする化粧品・医薬部外品)については、利益最大化路線への切り替えが継続する。Q1 売上高は前年同期比 △25.5%(269→200 百万円)で縮小する一方、セグメント利益は +6.9%(80→85 百万円)と増益を確保。売上高広告宣伝費率は FY22/9 28.2%→FY25/9 6.9% まで圧縮されており、原資を加工受託の拡大に振り向ける構図が明確になっている。D2C は、化粧品・医薬部外品の再生医療技術活用による付加価値再構築と AI によるマーケティング効率化が戦略の柱として提示されている。

第 3 に、SBC 8 項目シナジーである。Q1 補足資料は、(1) 製品企画・開発協業、(2) 販売チャネル拡大とクロスチャネル戦略、(3) メディカルサポート事業の強化・提携医院ネットワーク拡大、(4) マーケティング効率・CRM での収益性改善、(5) 再生医療・将来技術での共同研究および商品・メニュー開発、(6) SBC クリニックネットワークを生かした販路拡大、(7) 未承認医薬品・未承認医療機器の共同研究および開発、(8) コスト競争力強化、の 8 項目を掲げ、「業績貢献は 2Q 以降より順次効果の発現見込む」と明記する。加えて TOB 開始時の公表文では、SBCHD が展開する海外拠点(米国・アジア)での Waqoo 加工・研究ノウハウの技術支柱化、および医療現場の知見を基にしたスキンケア共同開発が戦略意義として掲げられている。4P 戦略図は、Product を Waqoo(医薬部外品・化粧品・メディカルサポート・原料・再生医療等製品・医薬品)、Place を SBC(258 店舗のクリニック網、医療専門家、顧客接点データ、医薬品承認連携)と明確に分業する垂直統合モデルを示す。

再生医療事業は「着実な成長」(FY2024/9〜FY2027/9)フェーズの延長上で育成される将来柱として位置づけられる。子会社セルプロジャパンを通じ、京都大学 iPS 細胞研究所との認知症治療薬共同研究(2024 年 8 月契約締結)、上清液・エクソソーム関連の特許ポートフォリオ(出願 20 件・登録 4 件、PCT 国際特許出願中)を進めており、他家細胞治療による大量生産・コストダウンで「爆発的な成長」フェーズ(FY2027/9〜FY2030/9)へつなぐ計画となっている。

5-4 キャピタルアロケーション

FY2025/12 末時点の現預金同等物は 1,257 百万円、有利子負債 678 百万円に対してネット有利子負債 △579 百万円のネットキャッシュポジションを維持する。株主資本比率は 67.6%、D/E レシオ 0.33 と財務レバレッジは低い。流動比率 271.6%・当座比率 245.3% で短期的な支払能力に問題はない。

一方、FY2024/9 にセルプロジャパン株式交換によって無形固定資産が 8 百万円から 1,136 百万円へ急増し、FY2025/9 末は 1,012 百万円(主にのれん)となっている。Q1 決算資料では当四半期ののれん償却 △30 百万円が計上されており、年間ベースでは概ね 120 百万円前後ののれん償却が継続する構造にある。これは FY2026/9 会社予想(営業利益 304 百万円)から見ても小さな負担ではなく、メディカルサポート事業の売上・利益の伸長でこの償却をどれだけ上回れるかが、投下資本の回収ペースを規定する。

資金使途の優先順位は、(1) R&D 投資(売上高研究開発費率は FY24/9 0.5%→FY25/9 1.9% と上昇中)、(2) メディカルサポート事業の営業人員・CPC 設備、(3) 長期借入金の計画償還(Q1 で △25 百万円)という構成になっている。FY25/9 の投資 CF △189 百万円は主に無形資産と設備への投下で、FCF は △53 百万円。SBC 傘下入り後は、親会社経由のグループファイナンスや関連当事者取引(製造受託・販路提供等)が資金効率の補完要素となり得る。関連当事者取引の独立性・少数株主保護の観点では、Waqoo 側も事業リスクとして「関連当事者取引の杜撰な管理」を認識しており、取引の合理性と価格妥当性の検証プロセスを明文化する方針を示している。

5-5 配当政策・株主還元

配当政策は無配継続である。FY2022/9 から FY2025/9 までの 4 期連続無配、会社予想ベースでも FY2026/9 は 1 株当たり年間配当金 0 円となっており、EPS 52.44 円に対しても配当性向 0% を維持する計画である。会社は成長投資を優先する方針を取っており、配当による株主還元は行っていない。

株主還元の実質的な代替を直近で果たしたのは、2025 年 12 月の TOB プレミアムである。SBC メディカルグループによる公開買付価格は 1 株 1,900 円で、公表直前営業日終値 1,521 円に対して +24.92% のプレミアムを付した(ただし特別関係者である相川佳之氏からの相対取引価格は 1,445 円で、市場株主に対するプレミアムはこれを上回る水準で設定された)。買付予定数上限 575,000 株に対し応募は 637,817 株となり、あん分比例方式による決済が行われた。市場株主にとっては、この TOB プレミアムが配当不在期間における唯一の実質的キャッシュ還元機会であった。

配当再開の条件は明示されていないが、中長期では、メディカルサポート事業の収益化とシナジー発現による利益成長が確立した段階で、資本政策の見直し余地が生じ得る。FY2026/9 会社予想ベースの純利益 184 百万円・ROE 水準(FY2025/9 2.1%、LTM ベース 2.9%)は資本コスト割れの領域にあり、利益水準の底上げが先行して論点となる局面である。

5-6 まとめと評価軸

資本コスト認識は明示的に開示されていない。ROE は FY2025/9 で 2.1%、LTM ベースで 2.9% にとどまり、一般的な資本コスト想定(7〜8% 程度)を割り込む水準にある。ただし FY2026/9 会社予想(純利益 184 百万円、前期比 +318.2%)が計画通りに着地すれば ROE は 7% 前後まで上昇する計算となり、さらに SBC シナジーが加われば資本コスト超過の収益性を取り戻す余地は大きい。資本コスト認識の明示とその上での ROE 目標の開示は、親会社取引下のガバナンス開示と合わせ、今後の改善項目として注視したい。

投資家が中長期にわたって追うべき最重要 KPI は、以下に集約される。第一に、提携医院数(745 院 → 800 院到達ペース)と年間稼働率(60.1%)、1 院あたり平均加工受託件数(23.9 件の更新速度)という量と質の 3 軸。第二に、メディカルサポート売上高の前年同期比(Q1 +44.9%)の四半期ごとの持続性。第三に、SBC 8 項目シナジーの進捗で、2Q 以降の発現タイミングと形態(製品協業/販路共有/コスト低減のいずれが先行するか)。第四に、再生医療領域での承認申請・臨床試験の具体的マイルストーン、および特許ポートフォリオ(現時点で出願 20 件・登録 4 件)の追加登録・海外展開の進捗である。

結論として、Waqoo の中長期成長方針は、正式な中期経営計画が存在しないという形式上の空白にもかかわらず、事業計画資料・TOB 開示・Q1 補足説明という 3 文書を重ねることで方向性は十分に読み解ける。FY2026/9 会社予想(売上 2,345 百万円・営業利益 304 百万円・純利益 184 百万円)は SBC シナジー未反映の独立路線ベースの下限アンカーであり、成長方針の成否は、SBC メディカルグループ 258 店舗とのシナジーがどの速度で通期予想を上回る実績に結晶化するかにかかっている。市場がこれをどう値付けするかは、続く第 6 章で検討する。

6. 株価インサイト

本章では株価水準・バリュエーション・類似企業比較を整理するが、当レポートは No Rating / No Target Price の方針であり、投資判断・目標株価の提示は行わない。Waqoo 株は東証グロース市場での上場が維持されており、2025年12月のSBCメディカルグループによる公開買付け成立後も流通市場での取引は継続している。

6-1 株価の読み方

Waqoo の株価を理解するうえで重要なのは、SBCメディカルグループによる公開買付価格 1,900円と直近株価 1,280円前後の乖離、そして化粧品D2C peer 比較では捉えきれない事業ミックス転換の再評価余地である。2021年6月のIPO初値 2,362円を起点に、業績変動と広告投資抑制を経て株価は2022年に400円台まで下落した後、FY2023/9 の黒字化を契機に2023年6月の2,755円まで反発した。その後はメディカルサポート事業の立ち上げ期にあたる先行投資フェーズで軟調に推移し、2025年11月12日(TOB発表前日)終値 1,521円、TOB完了直後の12月19日 1,444円を経て、直近の2026年4月23日終値は 1,280円である。

TOBプレミアム剥離後は事業計画の四半期実績を待つフェーズに入っており、1Q FY2026 時点での営業赤字(△33百万円、ただし4Q偏重モデル)と、SBCシナジーが会社予想に未反映である点を市場が様子見している構図にある。

項目
株価(2026/4/23 終値)1,280円
時価総額(FY2025/12 LTM 基準、自己株調整後)4,646百万円
発行済株式数3,622,668株(自己株式 100,023株控除)
PER(FY2026/9 会社予想EPS 52.44円ベース)25.25倍
PBR(FY2025/12 LTM)2.24倍
PSR(FY2025/12 LTM)2.37倍
EV/EBITDA(FY2026/9 会社予想)9.24倍
ROE(FY2025/12 LTM)2.9%
EPS(FY2026/9 会社予想)52.44円
BPS(FY2025/9 期末)591円
年間配当0円(FY22〜FY26予想いずれも無配)

出所:各社開示資料・株価データより AENTRO Research 作成。以下本章の数表も同様。

6-2 TOBプレミアムと現状株価の位置づけ

TOB価格 1,900円は、TOB発表前営業日である2025年11月12日の終値 1,521円に対して24.92%のプレミアムが付された水準である。同日直前1ヶ月間・3ヶ月間・6ヶ月間の市場価格に対しても、公開買付者および対象者はそれぞれ過去平均株価を上回るプレミアムを設定したと説明している。一方、相川佳之氏(SBCHD会長兼CEO、TOB直前時点では Waqoo 筆頭株主として26.58%、989,802株を保有)から公開買付者が市場外で取得した相対取引価格は 1,445円であり、TOB価格を455円下回る。これはSBCグループ内部の関連当事者取引であることを踏まえ、一般株主に付与されたプレミアム(1,521円 → 1,900円)とは区別された、ディスカウント付きの内部譲渡価格として設計された。

直近の1,280円前後という水準は、TOB完了後にプレミアム部分が市場価格から剥離し、さらに事業計画の四半期進捗を待つ期間に入ったことを反映している。換言すれば、TOB価格 1,900円は「SBCが評価した Waqoo の垂直統合シナジー込みの価値」のベンチマークであり、現状の市場価格はこのシナジー発現の蓋然性をまだ十分に織り込んでいない。市場が今後評価すべき問いは、SBCが1,900円の根拠として算定したシナジーの実体が、FY2026/9 通期決算および2Q以降の補足説明資料で開示されるかどうかに収斂していく。

6-3 バリュエーションの見方

FY2026/9 会社予想EPS 52.44円をベースとした PER は 25.25倍である。これは FY2023/9 の239.85倍(EPS 9.43円で黒字転換した直後の割高水準)や、FY2024/9 の損失年度で算定不能、FY2025/9 の112.48倍(EPS 12.32円)と比べて正常化の過程にあり、上場来実績値でみれば最低水準近傍に位置する。ただし、この PER が peer 比較で割高に見えるかという別次元の論点は次節で扱う。

PBR は FY2025/12 LTM ベースで 2.24倍(BPS 591円に対する株価水準)。同期間の ROE は 2.9% にとどまるため、会計上の資本効率と PBR 水準の間には乖離があり、この乖離はメディカルサポート事業の成長期待分と解釈するのが自然である。FY2026/9 会社予想ベースでは純利益 184百万円 / EPS 52.44円に対応する予想 ROE はおよそ8%前後(期末純資産 2,092百万円〈FY25/9 実績〉に対する予想純利益 184百万円)に上昇する計算であり、予想ベースと LTM ベースの ROE 差分がそのままバリュエーション水準の「まだ正当化されていない部分」を表している。

EV/EBITDA は FY2026/9 会社予想ベースで 9.24倍。前年(FY2025/9 実績)の 15.26倍、FY2025/12 LTM の 13.60倍から大きく低下する計算であり、これは会社予想で EBITDA が 287百万円(FY25/9)→440百万円(FY26/9 予想、+53.3%)に増える前提で収束する水準である。EBITDAマージンは FY26/9 予想 18.8% と、peer 中央値水準を上回る高マージン体質が維持される計画となっている。

プレミアム成分として市場が織り込みうる定性要素は3点ある。第一は再生医療加工事業(PDF-FD)の成長期待、第二はSBC連結入りによる258店舗ネットワークとの垂直統合シナジー(会社予想には未反映)、第三はD2Cで培った高い売上総利益率(FY25/9 79.5%)を基盤とする構造的マージン。これらは peer 比較でも議論の前提となる。

6-4 類似企業比較の考え方

外部データベンダー集計の peer 群として、通信・訪問販売(化粧品)業界小分類の11社が定義されている。規模・収益構造に大きな幅があるため、ここでは peer 表そのものを参考値として提示したうえで、Waqoo の事業ミックスとの乖離を注記する構成をとる。

企業名コード決算期売上高 (百万円)純利益率 (%)時価総額 (百万円)PER (倍)EV/EBITDA (倍)
Waqoo49372025/091,9612.2%4,64625.25(予)9.24(予)
ポーラ・オルビスHD49272025/12170,2855.6%298,67930.459.45
ノエビアHD49282025/0964,72412.4%151,65518.8910.54
I-ne49332024/1245,0066.5%19,8376.644.07
新日本製薬49312025/0941,1406.2%44,80316.974.92
プレミアアンチエイジング49342025/0716,1602.9%5,42411.522.05
ハーバー研究所49252025/0312,0624.8%6,76411.274.77
アルマード49322025/038,4777.7%7,62910.457.49
アイビー化粧品49182025/032,9301.5%2,17449.543.77
フォーシーズHD37262025/092,441△10.0%5,639△132.65
パス38402025/032,254△12.3%5,209△32.80
RAVIPA58932025/111,81213.8%1,0104.041.95
業界平均33,3903.6%49,89317.75△10.59
業界中央値12,0625.6%6,76411.524.07

Waqoo の PER・EV/EBITDA(いずれも会社予想ベース)は、業界中央値に対してそれぞれおよそ 2.2倍・2.3倍の水準にある。ただしこの表は参考値であって、Waqoo のマルチプルを peer 中央値に収束させる議論は、事業の質的相違を無視することになる。peer 群はいずれも化粧品D2C または訪問販売を主軸とする単一事業モデルに近く、Waqoo が売上構成の半分超をメディカルサポート事業(血液由来加工受託)に移行しつつある事業ミックスとは構造的に異なるためである。規模近似の peer(プレミアアンチエイジング、ハーバー研究所、アルマード、アイビー化粧品、RAVIPA)も同様の限界を持ち、大型成熟 peer(ポーラ・オルビスHD、ノエビアHD)とは事業ステージがそもそも比較不能である。

マルチプル別にみると、PER は peer 中央値 11.52倍に対して Waqoo 25.25倍。この乖離の主因は、peer 群に「再生医療加工受託」という事業オプションがなく、Waqoo 側にのみ固有の成長ドライバー(メディカルサポート事業)が織り込まれている点にある。このプレミアムが正当化されるか否かの判定条件は実績ベースで二つある。第一は、メディカル事業の売上成長率(1Q FY26 でYoY +44.9%)が FY26 通年を通じて30〜50%水準で持続するかどうか。第二は、SBC傘下での垂直統合シナジーが 2Q FY2026 以降の決算・補足資料で定量的に開示され、会社予想の上振れ要因として認識されるかどうかである。

EV/EBITDA は peer 中央値 4.07倍に対して Waqoo 9.24倍(会社予想)。EBITDAマージンの水準差(Waqoo 予想18.8% vs peer 中央値 相対的に低位)が一部吸収要因となるが、事業構成の違い、特にメディカルサポートの受託事業モデル(低CAPEX・高マージン)を peer 群が持たない点を踏まえれば、マージン格差だけでこの倍率差は説明しきれない。残差は将来の成長加速見通しとして市場が織り込んでいる部分と解釈される。

PBR については、Waqoo の 2.24倍という水準は、FY25/12 LTM の ROE 2.9% を前提にすると「高めに見える」と評価せざるを得ないが、これはストック(BPS)とフロー(ROE)の計算タイミングの違いに由来する。会社予想 EPS 52.44円を反映した予想ベース ROE がおよそ8%水準、さらに SBCシナジー発現局面で ROE が10%を超えるようになれば、PBR 2倍超の水準は ROE × 持続成長率 の積として整合的に説明できる。現状は「ROEの正常化を先取りしている PBR」の位置づけである。

出所:各社開示資料・株価データより AENTRO Research 作成。

6-5 Opportunity と Anti-thesis

Waqoo 株の再評価を押し上げる Opportunity と、評価を崩しうる Anti-thesis を、左右対照で整理する。

Positive factors
メディカル事業の指数成長継続
"累計加工受託件数237倍(75→17
SBCシナジーの会社予想超え
"FY2026/9 会社予想は TOB 前策定のシナジー未反映ベース。258 店舗との垂直統合が 2Q 以降に定量開示されれば、上振れ要因として市場が再評価する"
国内再生医療 TAM の長期拡大
"2050 年国内 2.5 兆円・世界 38 兆円の市場に対し加工受託レイヤーで先行。特許ポートフォリオと治療自社化オプションが株価プレミアムの上限を引き上げる"
Negative factors
D2C 縮小とメディカル成長の不均衡
"HADA NATURE 売上は FY2022/9 2
のれん償却の利益圧迫
"セルプロジャパン関連のれん 1
支配株主集中によるガバナンスリスク
"SBC グループが発行済株式の過半を保有。親会社取引の独立性・少数株主保護の継続性が継続的モニタリング対象となる"

出所:各社開示資料・株価データより AENTRO Research 作成。

Opportunity 側はいずれも「D2C → 再生医療加工プレイヤー」という再定義が市場に受け入れられる前提のもとで、メディカル事業の指数成長、SBC 垂直統合シナジーの会社予想上振れ、国内再生医療 TAM の長期拡大——という 3 段階で規模が積み上がる構造にある。Anti-thesis 側は対称的に、D2C 縮小をメディカル成長が補いきれないトップライン停滞、のれん償却 120 百万円/年の利益圧迫、SBC グループ集約に伴うガバナンスリスク——という 3 点で、いずれも 1Q FY2026 で既に顕在化しつつある論点である。四半期開示のたびにこの 6 項目を突合し、Opportunity 側の進捗が Anti-thesis 側の圧力を上回っているかを観察する姿勢が、Waqoo 株の評価軸となる。

6-6 今後の注目 KPI・カタリスト

株価の再評価が進むか否かを判定するための指標は、四半期決算・補足説明資料のなかに既に織り込まれている。四半期ベースで追うべきは、提携医院数(目標800院)、加工受託件数のYoY伸び、メディカルサポート売上のセグメント成長率、のれん償却の進捗、D2Cセグメント利益の維持状況の5指標である。イベントカレンダー上は、2Q FY2026 決算(2026年5月想定)でSBCシナジー具体化の初動開示があるか、続く通期決算(2026年11月想定)で会社予想に対する着地と次期計画の精度がどう示されるかが節目になる。

Waqoo の株価は依然として化粧品D2C peer との比較軸でディスカウントされており、その成否はSBCシナジー発現の速度と、メディカルサポート事業の四半期進捗が会社予想を上回るかにかかっている。再評価が進むシナリオは「メディカル事業YoY +30〜50%の持続 + SBCシナジーの IR 上の定量開示 + ROE の10%超への到達」という3条件が同時に確認される局面であり、そのトリガーは四半期開示に分散的に現れる可能性が高い。

以上を踏まえ、本レポートは No Rating / No Target Price の立場を維持する。Waqoo株の評価軸は化粧品D2Cバリュエーションではなく、再生医療加工受託事業を主軸とした事業ミックスの再定義そのものであり、peer 中央値への収束を前提とした単純なフェアバリュー議論は、本件の質的転換を過小評価するリスクを伴うためである。

出所:各社開示資料・株価データより AENTRO Research 作成。

7. Appendix

7-1. 損益計算書 主要科目の推移(連結、単位:百万円)

科目FY2022/9FY2023/9FY2024/9FY2025/9FY2026/9E
売上高2,7311,7261,9431,9612,345
売上原価802414394402
売上総利益1,9291,3121,5491,559
販売費及び一般管理費1,9691,0341,4931,408
営業利益△4027856151304
営業利益率△1.5%16.1%2.9%7.7%13.0%
経常利益△2228857152294
親会社株主に帰属する当期純利益△5728△1744184
EPS(円)△19.049.43△5.0312.3252.44

出所:各社開示資料より AENTRO Research 作成

FY2022/9 は広告宣伝費率28.2%のD2C積極投資で営業赤字、FY2023/9 は広告抑制で一気に営業利益率16.1%まで跳ね上がったが、FY2024/9 にセルプロジャパン子会社化に伴うのれん発生・人員拡大で再度利益率2.9%に低下。FY2025/9 は販管費を1,408百万円まで圧縮し営業利益151百万円(+169.6%)、FY2026/9 会社予想は売上+19.6%・営業利益+101.3%で上場来最高益水準に到達する計画。なお FY2026/9 予想は SBC メディカルグループ子会社化に伴うシナジー未反映のスタンドアローンベース。

7-2. 貸借対照表 主要科目の推移(連結、単位:百万円)

科目FY2023/9FY2024/9FY2025/9FY2025/12 LTM
流動資産合計1,5611,8551,7821,673
現金及び預金1,3051,5051,3021,257
固定資産合計201,2791,4171,390
総資産1,5813,1343,1993,063
流動負債合計503598692616
固定負債合計305396416377
純資産7732,1402,0922,070
自己資本比率48.9%68.3%65.4%67.6%
BPS(円)256.73590.33591.15

出所:各社開示資料より AENTRO Research 作成

FY2024/9 に子会社化で総資産が1,581百万円から3,134百万円へ倍増し、同時に株式交換で発行された新株により純資産も773百万円から2,140百万円へ急増。以降は自己資本比率65〜68%の高水準を維持し、現預金同等物 1,257百万円・ネット有利子負債△579百万円のネットキャッシュ状態(FY2025/12 LTM)。成長投資と M&A に耐える財務体力を確保している。

7-3. キャッシュ・フロー計算書(連結、単位:百万円)

科目FY2023/9FY2024/9FY2025/9
営業活動によるキャッシュフロー45649136
投資活動によるキャッシュフロー△49△76△189
財務活動によるキャッシュフロー△8112△150
フリーキャッシュフロー(営業+投資)407△27△53
現金及び預金期末残高1,3051,5051,302

出所:各社開示資料より AENTRO Research 作成

FY2023/9 に営業CF 456百万円・FCF 407百万円を叩き出した後、FY2024/9 以降は細胞培養加工施設の建設投資(建設仮勘定319百万円)とセルプロジャパン統合関連で投資CFが拡大し、FCF はマイナス圏に転じた。FY2025/9 の財務CF △150百万円は自己株式取得99百万円と長期借入金の返済を含む。営業CF の絶対額に対して投資規模は管理可能な水準で、現預金1,302百万円と併せ流動性は十分。

7-4. 主要財務指標(連結)

指標FY2022/9FY2023/9FY2024/9FY2025/9FY2025/12 LTMFY2026/9E
売上高増加率△36.8%12.6%0.9%2.9%19.6%
営業利益増加率△79.9%169.6%32.5%101.3%
EPS成長率△153.3%325.6%
売上総利益率70.6%76.0%79.7%79.5%79.0%
EBITDAマージン△1.2%16.5%8.3%14.6%15.2%18.8%
営業利益率△1.5%16.1%2.9%7.7%8.3%13.0%
経常利益率△0.8%16.7%2.9%7.8%8.3%12.5%
当期純利益率△2.1%1.6%△0.9%2.2%3.1%7.8%
ROE3.7%△1.2%2.1%2.9%
ROA1.8%△0.7%1.4%2.0%
ROIC19.4%△0.9%1.5%2.2%
総資産回転率(倍)1.100.820.620.64
流動比率242.2%310.3%310.2%257.5%271.6%
自己資本比率47.5%48.9%68.3%65.4%67.6%
D/Eレシオ(倍)0.870.820.370.350.33
PER(倍)239.85112.4877.4325.25
PBR(倍)3.198.692.542.372.24
PSR(倍)0.873.892.802.522.371.98
EV/EBITDA(倍)△62.0321.2929.2515.2613.609.24

出所:各社開示資料・株価データより AENTRO Research 作成

売上総利益率は FY2022/9 の 70.6% から一貫して上昇し FY2025/9 は 79.5%。これはD2Cの広告抑制と、メディカルサポート(加工受託)の高付加価値モデル移行を反映している。PER は FY2026/9 会社予想 EPS 52.44円ベースで 25.25倍と上場来最低水準に接近、EV/EBITDA も 9.24倍まで低下しており、SBC シナジー加算前のスタンドアローンガイダンスで織り込まれている評価倍率は抑制的。

7-5. 主要KPI(事業KPI、連結)

7-5-1. メディカルサポート事業 主要KPI(血液由来加工サービス「PDF-FD」、四半期累計)

項目FY2023/1QFY2023/4QFY2024/4QFY2025/4QFY2026/1Q
提携医院数(累計、院)20153445685745
加工受託件数(累計、件)752,5327,93115,58417,784
1院あたり平均加工受託件数(件)3.816.517.822.823.9
AGA加工受託件数(累計、件)06142,254
AGA提携医院数(院)39
年間稼働率63.8%60.1%

出所:各社開示資料より AENTRO Research 作成

FY2023/1Q から FY2026/1Q の 13 四半期で提携医院数は 20 院 → 745 院(37倍)、加工受託件数は 75 件 → 17,784 件(237倍)、1院あたり平均加工受託件数は 3.8 件 → 23.9 件(過去最高)と指数関数的に伸長。AGA領域は FY2024/4Q 時点で累計2,254件・39院まで拡大した時点以降の定量開示は限定的。800 院到達を視野に入れており、1 院あたり平均件数の上昇と併せて売上拡大の二軸ドライバーが機能中。

7-5-2. セグメント別 四半期売上・利益(連結、単位:百万円)

項目FY2024/1QFY2024/4QFY2025/1QFY2025/4QFY2026/1Q
メディカルサポート事業 売上高64232138424200
D2C事業 売上高269217200
D2C事業 セグメント利益807485

出所:各社開示資料より AENTRO Research 作成

メディカルサポート事業は FY2024/1Q 64百万円 → FY2026/1Q 200百万円と前年同期比 +44.9% 増。4Q偏重モデル(FY2025 は 1Q 138 → 4Q 424)で年度後半に利益が集中する特性があり、1Q 単四半期の営業赤字 △33百万円は通期計画に対して On Track。D2C 事業は売上が前年同期比 △25.5% 縮小する一方、セグメント利益は +6.9% 増と収益性を維持しつつ広告投資を抑制する運営に転換している。

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