| 株価(2026/4/22終値) | 時価総額 | 発行済株式数 | FY25/10 売上高 | FY25/10 営業利益率 | FY26/10E 売上高 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1,449円 | 146億円 | 1,069.64万株 | 2,805百万円 | 32.0% | 3,366百万円 |
| Item | FY2021 | FY2022 | FY2023 | FY2024 | FY2025 |
|---|---|---|---|---|---|
| Revenue(M JPY) | 1,424 | 1,681 | 2,061 | 2,405 | 2,805 |
| Operating income(M JPY) | 579 | 540 | 682 | 831 | 898 |
| Operating margin(%) | 40.7 | 32.1 | 33.1 | 34.6 | 32.0 |
| Net income(M JPY) | 386 | 309 | 496 | 586 | 625 |
| Net margin(%) | 27.1 | 18.4 | 24.1 | 24.4 | 22.3 |
| EPS(JPY) | 37.25 | 30.68 | 49.09 | 57.77 | 61.59 |
| DPS(JPY) | 10.00 | 13.00 | 16.00 | 20.00 | 22.00 |
1. 会社概要
トビラシステムズは、独自の迷惑情報データベースを核に、通信事業者向けのセキュリティ提供と法人向け電話ソリューションを二本柱で展開する情報セキュリティ企業である。2019年の上場時は通信キャリア向け売上がほぼ全てを占め、市場からは単一事業に偏重した企業として見られていたが、現在はボイスコミュニケーション領域における技術を活かしたソリューション事業を第2の柱として確立しつつある。決算開示は非連結ベースで、FY2025/10の売上高は2,805百万円、営業利益は898百万円、2026年1月末の従業員数は136名で、そのうち技術部門が67名を占める。会社は月間約1,500万人規模の利用基盤と、年間50億件以上の電話・メール・SMS判定実績を持つ独自データベースを競争力の源泉としている。
1-1. サマリー
トビラシステムズの本質は、個別の迷惑電話対策製品を売る会社ではなく、詐欺電話・迷惑SMS・危険URL等の情報を収集し、更新し、フィルタリングに転換するデータベースを複数販路で収益化する会社にある。2019年の上場時は通信キャリア向け売上が大半を占め、市場からはキャリア依存の一本足打法と見られていた。しかし、中期経営計画2028ではそこから明確に脱却し、ソリューション事業を第2の収益の柱として強く打ち出している。代表の明田氏の意思として、同社は迷惑電話ブロックだけをやる会社ではない。自社の技術を活かして広く社会課題を解決できる製品を開発したいという思想が根底にあり、その具体的な表れが「トビラフォン Biz」や「トビラフォン Cloud」、「サギトレ」である。加えて、法制化が進むカスタマーハラスメント対策需要もソリューション事業の追い風として急速に顕在化しており、同社の事業領域の広がりを後押ししている。 2025年10月期から報告セグメントを「セキュリティ事業」と「ソリューション事業」に再編しており、前者はモバイル・固定電話・その他サービスを通じた迷惑情報フィルタ提供、後者は「トビラフォン Cloud」「トビラフォン Biz」を中核とする法人向け通話管理・業務効率化サービスが担う。したがって同社は、一般的なアプリ企業でも、単機能の迷惑電話ブロック企業でもなく、ボイスコミュニケーション領域における通信起点のリスク低減をデータとソフトウェアで支える企業として位置付けるのが適切である。
足元の収益構造をみると、FY2025/10の単体売上高は2,805百万円、営業利益898百万円、経常利益907百万円、当期純利益625百万円である。セグメント別では、セキュリティ事業売上が1,905,409千円、ソリューション事業売上が899,956千円で、セグメント利益はそれぞれ1,337,863千円、151,449千円となった。利益の中核は依然としてセキュリティ側にあるが、ソリューション側もすでに売上の3割超を占めており、第2の柱として十分に無視できない水準まで育っている。
さらに、直近のFY2026/10第1四半期では売上高786,103千円、営業利益226,839千円となった。内訳はセキュリティ事業492,913千円、ソリューション事業293,189千円で、ソリューション事業は前年同期比63.2%増と高い伸びを示した。会社は中期経営計画2028で、ソリューション事業を「第2の収益の柱」と位置付け、2028年10月期売上高60億円、営業利益17億円を目標に掲げている。同社の会社概要は「安定収益のセキュリティ事業を土台に、法人向けソリューションと新規事業で成長レイヤーを積み上げる企業」と要約できる。
1-2. 基本情報
基本情報からまず押さえるべきは、同社が小規模でも人員の約半数を技術部門に置く技術集約型の上場企業だという点である。会社概要によれば、トビラシステムズは2006年12月1日設立、創業は2004年4月1日、資本金は3億3,378万円、東京・名古屋の2拠点体制で、2026年1月末時点の従業員数は136名、うち技術部67名、情報処理安全確保支援士は6名である。株式市場では東証スタンダード市場に上場し、証券コードは4441、事業年度は毎年11月1日から10月31日までである。
より詳細な雇用データを有価証券報告書でみると、2025年10月31日時点の提出会社就業人員は114名、平均年齢34.61歳、平均勤続年数3.74年、平均年間給与6,238千円であった。部門別では技術部57名、営業企画部44名が中心である。一方、会社概要ページでは2026年1月末時点の従業員数が136名とされており、こちらは基準日が3か月後で、開示上の集計定義も有価証券報告書の就業人員と必ずしも同一ではない点に留意が必要である。ただし、少なくとも中期経営計画2028の実行局面で採用と組織拡張が進んでいる方向性は両開示から共通して読み取れる。
信用力に関わる外部基盤も見逃せない。会社概要ページでは、フィッシング対策協議会、日本ユニファイド通信事業者協会(JUSA)、日本サイバー犯罪対策センター(JC3)への加盟、電気通信事業の届出、プライバシーマーク、優良電話事業者認証マーク(ETOC)、健康経営優良法人2025の取得を開示している。通信・個人情報・セキュリティを横断する事業を営む同社にとって、これらは単なる肩書きではなく、通信事業者や法人顧客に採用されるための信頼インフラとしての意味合いが強い。
1-3. 主要株主
出所:有価証券報告書よりAENTRO Research作成。2025/10末基準
株主構成の結論は明快で、トビラシステムズは依然として創業者色の強いオーナー企業である。2025年10月31日時点の大株主では、代表取締役社長の明田篤氏が4,609,600株、自己株式控除後ベースで45.63%を保有する筆頭株主である。続いてINTERACTIVE BROKERS LLCが7.78%、日本カストディ銀行(信託口)が6.31%、BNYM AS AGT/CLTS ON TREATY JASDECが3.32%で、上位10名合計は70.20%だった。加えて、自己株式は542,750株ある。
この構成が示すのは、経営の方向性が短期株価よりも創業者の事業観に強く支えられている一方、上位には海外ブローカーや信託銀行も並び、完全な閉鎖性にはなっていないという点である。明田氏の45.63%という保有比率は、M&A、新規事業、採用先行投資のような中長期施策をぶれにくくする半面、一般的な分散型企業に比べると資本市場からの圧力は相対的に弱くなりやすい。したがって同社の所有構造は、「機動的な創業者経営」と「上場企業としての説明責任」が併存する型と整理できる。
投資家の視点では、この株主構成は二つの含意を持つ。第一に、事業ポートフォリオ再編や新規事業創出のような数年単位のテーマを継続しやすい。第二に、流動性や需給の観点では、比較的限られた浮動株の中で株価形成が進みやすい可能性がある。
1-4. 経営理念・行動指針・経営の原点
トビラシステムズの理念は、事業内容と切り離された抽象的な標語ではなく、社会課題解決を起点にした企業定義そのものである。会社は企業理念として「私たちの生活 私たちの世界を よりよい未来につなぐトビラになる」を掲げる。また代表メッセージでは、「テクノロジーで社会課題の解決に挑みます」と明示し、自治体や企業の業務を安全かつ効率的にすること、さらに振り込め詐欺のような社会問題の抑止を創業来のテーマとしている。
行動指針も特徴的である。会社は、素晴らしい未来を想像し、失敗を恐れず変化を続け、常識を疑うことを掲げる一方、社会的課題を解決する製品を次々に生み出し、持続的かつ発展的に成長するために「適切な利益」を得ると明記している。つまり同社は公益性を前面に出しながらも、慈善ではなく事業として継続するための収益獲得を正面から位置付けている。この点は、社会貢献色を強く打ち出す企業説明に流れがちな小型成長株の中では、むしろ経営として健全である。
代表取締役の明田氏は、祖父が迷惑電話に困っていたことが「トビラフォン」開発の大きな後押しになったと語っている。このエピソードは単なる創業美談ではなく、同社が通信起点の迷惑・不安・詐欺を現実の生活課題として捉えてきたことを示す。重要なのは、明田氏の意思として、同社は迷惑電話ブロックだけをやりたいわけではないという点である。代表の思想は、ボイスコミュニケーション領域を中心に、自社の技術を使って広く社会課題の解決に挑むことにある。後年、事業がクラウドPBXや法人向け通話管理に広がっても、根底にあるのは“人の行動の弱み”を突く被害を減らすという問題意識で一貫している。トビラフォン Bizやトビラフォン Cloudは、まさにこの思想の延長線上にある製品であり、迷惑電話対策に閉じない、電話業務全体のDXを志向している。 同社の理念を分析用語に置き換えるなら、「通信とデータの境界で生じる社会的不信を、独自データとソフトウェアで低減する企業」と表現するのが近い。
さらに注目すべきは、理念が人材投資の考え方にも接続されている点である。代表メッセージでは、一緒に働くメンバーとその大切な人が幸せに暮らせる基盤が、革新的な技術を発明し普及させる前提だと述べている。これは単なる福利厚生の話ではなく、技術企業としての創造性の源泉を人材の挑戦環境に求める思想である。後述する人的資本施策や新規事業提案制度は、この考え方を制度に落としたものとして理解できる。
1-5. 沿革

出所:会社沿革ページよりAENTRO Research作成
沿革を俯瞰すると、トビラシステムズの歩みは「創業と技術基盤形成期」「特殊詐欺対策の社会実装期」「キャリア/OEM拡大型」「法人ソリューション併設型への転換期」の4段階で整理するのが最も理解しやすい。単なる年表の羅列より、この4段階で読む方が、現在の二本柱構造がどのように形成されたかを把握しやすい。
第1段階は、2004年4月の個人事業としての創業から、2006年12月の株式会社A&A tecnologia設立、2010年5月のトビラシステムズ株式会社への商号変更までである。この時期は、後の事業拡大を直接説明する大型案件よりも、まず技術起点の企業として輪郭を整えた時期といえる。本社移転を伴いながら名古屋を主拠点化したことも、同社の地域的な出自を形作った。
第2段階は、2011年から2015年にかけての特殊詐欺対策の社会実装期である。2011年6月に迷惑電話フィルタ「トビラフォン」を開発・販売開始し、2012年には愛知県警察と実証実験の覚書を締結、以後各都道府県警察との覚書を進め、2015年には警察庁とも特殊詐欺電話に関する覚書を締結した。これと並行して、2013年にウィルコム、2014年にマカフィー、2015年にNTTドコモとデータベース提供やサービス連携を進めている。すなわちこの時期に、警察データと通信事業者チャネルが結び付き、同社の迷惑情報データベースが“社会実装されたアセット”へと変わった。
第3段階は、2016年から2019年のキャリア/OEM拡大型である。2016年にはKDDI向けサービス提供、2017年には企業向け迷惑電話フィルタ「トビラフォンBiz 光回線用」の販売開始、2018年にはKDDIのホームゲートウェイ光電話向けサービス提供へと進み、固定電話・モバイル・ビジネスの3領域が揃った。そして2019年4月、東京証券取引所マザーズ市場へ上場し、上場企業としての資本政策と開示体制を備えた。ただし、この時点では売上の大半を通信キャリア向けが占めており、市場からはキャリア依存の一本足打法と見られていた。 ここまでで同社は、単一製品ベンダーから、データベースと販路を持つ通信セキュリティ企業へと変化したといえる。
第4段階は、2020年以降の法人ソリューション併設型への転換期である。2020年3月にクラウド型ビジネスフォンサービス「トビラフォン Cloud」を開始し、2022年1月にはAI搭載型営業ツール「Talk Book」を投入した。2024年12月には中期経営計画2028を公表し、2025年10月期から報告セグメントを「セキュリティ事業」「ソリューション事業」へ再編した。さらに、2025年10月には法人向け詐欺メール・SMS訓練サービス「サギトレ」を開始し、FY2026/10第1四半期には小規模事業者向け「トビラフォン BizLite」の開発を進めている。これは、同社が迷惑情報フィルタ提供企業から、通信・詐欺対策・業務効率化を束ねる法人向けサービス企業へと射程を広げていることを示す。
沿革から読み取れる本質は、同社が新しい市場へ無秩序に多角化してきたのではなく、独自データベースを軸に販路を増やし、その隣接領域へ機能を積み上げてきたという点にある。警察・通信キャリア・法人代理店との関係性、そしてフィルタリングから通話管理、教育訓練までの拡張は、一見すると事業が散っているようでいて、実際には「通信起点のリスク低減」という一本の線でつながっている。
1-6. コーポレートガバナンス

出所:コーポレートガバナンス報告書よりAENTRO Research作成
コーポレートガバナンスの観点でみると、トビラシステムズは創業者主導のスピードを維持しながら、外部監督を段階的に厚くしてきた会社である。ガバナンスページでは、内部統制、リスク管理、コンプライアンス、監査体制の強化が企業価値向上に不可欠だと明示している。通信・個人情報・詐欺対策を扱う同社にとって、ガバナンスは形式要件ではなく、事業継続の前提条件である。
FY2025/10の体制をサステナビリティレポートでみると、取締役会は6名(うち社外取締役3名)で17回開催、監査等委員会は3名全員が社外で17回開催、指名・報酬委員会は5名(うち社外3名)で4回開催、リスク・コンプライアンス委員会は10名(うち社外3名)で4回開催、サステナビリティ推進委員会は10名(うち社外3名)で2回開催された。特に注目すべきは、ガバナンス関連の会議体が単に存在するだけでなく、リスク抽出・評価・優先順位付けや、重点課題・施策検討まで機能分化されている点である。
そのうえで、2026年1月の定時株主総会を経て体制はさらに強化された。有価証券報告書では、同総会において取締役(監査等委員除く)4名、監査等委員3名の選任議案が提案され、可決後は社外取締役4名、うち監査等委員である社外取締役3名となる予定であることが示されている。実際、現在の役員紹介ページでは、代表取締役の明田氏、社内取締役2名に加え、社外取締役1名、社外取締役(監査等委員)3名の計7名が開示されている。現在の取締役会は社内3名・社外4名の構成へ移行したと理解できる。
社外メンバーの顔ぶれも、会社の課題に対して合理的である。菅田洋司氏は上場会社経営者としての実務知見を持ち、田名網尚氏は証券・金融分野での経営経験を有する。栁下彰彦氏は弁護士・弁理士として法務と知財の専門性を持ち、加藤耕平氏は公認会計士として財務・会計の監督機能を担う。創業者CEOが強いオーナーシップを持つ会社において、経営、金融、法務・知財、会計の4領域から外部牽制を利かせる構図は、同社の規模感に対してかなり実務的である。
加えて、指名・報酬委員会の検討テーマは、取締役候補者の選任、役員報酬制度・限度額、役員報酬額等であることが有価証券報告書に明記されている。これは、小型成長株で曖昧になりやすいサクセッションや報酬設計を、一定程度制度化していることを意味する。総じてみれば、トビラシステムズのガバナンスは、完成された大企業型というより、「創業者主導を残したまま監督機能を増強する」方向で進化している段階にある。
1-7. ESG/サステナビリティ情報

出所:有価証券報告書よりAENTRO Research作成
ESGの観点では、トビラシステムズはEよりもSとGの比重が圧倒的に大きい企業である。サステナビリティレポートでは、マテリアリティとして「気候変動への対応」「失敗を恐れず挑戦する場の実現」「コーポレートガバナンスの充実」「特殊詐欺犯罪・グレーゾーン犯罪を0に!」の4項目を掲げている。とりわけ4番目は本業そのものであり、社会性がそのまま競争優位と収益機会に接続している点が同社の特徴である。
推進体制も比較的明確だ。サステナビリティ推進委員会は代表取締役社長を委員長とし、取締役、執行役員、部長で構成され、取締役会の監督のもとで方針や重点課題、施策を検討する。社会課題のロングリスト作成、ステークホルダーと会社双方の重要性評価、委員会での議論を経て、取締役会でマテリアリティを決定するプロセスまで開示しているため、単なるスローガン型のESG開示より一段踏み込んでいる。
人的資本面では、同社は「失敗を恐れず挑戦する場」を中心テーマに据えている。2025年10月期のデータでは、正社員114名、女性比率31.6%、女性管理職比率7.7%、平均残業時間月15.5時間、有給取得率64.0%、男性育児休業取得率100%(4名/4名)であった。定量目標としては、平均残業時間を月20時間以内、育児休業取得率を男女とも100%としている。小規模上場企業でここまで明示的に人材KPIと目標値を並べている点は評価できる。
制度面でも、1on1、全社ミーティング、資格取得費用負担、資格取得時報奨金、国内外カンファレンス・研修会参加費負担、書籍購入費負担、コアタイムなしのフレックスタイム制、服装自由、人間ドックオプション会社負担、譲渡制限付株式付与制度、そして新規事業・既存事業成長戦略・業務改善の提案制度が並ぶ。これらは、技術・プロダクト人材の採用競争力を高めるだけでなく、中期経営計画2028で掲げる「メンバーの拡大、成長」を制度面から支えるものでもある。
環境面の直接インパクトは、製造業などに比べれば相対的に小さい。2025年10月期のSCOPE1排出量は0、SCOPE2は58,463.21kg-CO2、SCOPE1・2合計は58,463.21kg-CO2、電気使用量は138,210.90kWhで、CO2排出量/売上高は0.0208t/百万円だった。対象は名古屋オフィス、東京オフィス、名古屋倉庫であり、環境負荷の源泉も主として電力利用である。したがって同社のESGでは、Eを軽視するというより、S/Gが投資判断上より重要な論点になると整理するのが適切である。
最終的に、トビラシステムズのESGは「周辺的な善行評価」ではなく、通信・詐欺対策・個人情報保護を扱う事業を継続拡大するための信頼基盤として読むべきである。プライバシーマーク、データセキュリティ研修、内部通報制度、リスク・コンプライアンス委員会、サステナビリティ推進委員会といった仕組みは、同社が扱うデータと顧客基盤の性質上、収益機会の裏側にある必須装置である。ESGを本業と切り離さず、むしろ本業の持続性そのものとして設計している点に、同社開示の一貫性がある。
2. 事業内容
2-1. 事業全体像

出所:会社開示資料に基づきAENTRO Research作成
トビラシステムズの事業は、迷惑・詐欺関連の情報データベースを通信キャリア向けセキュリティと法人向け電話DXの両方に展開する構造である。2025年10月期から報告セグメントは「セキュリティ事業」と「ソリューション事業」の2区分となり、2025年10月期実績は売上高2,805百万円のうち、セキュリティ事業1,905百万円、ソリューション事業899百万円だった。さらに中期経営計画2028では、ソリューション事業と新規事業を第2の収益の柱として位置付け、2028年10月期に売上高60億円、営業利益17億円を目標に掲げている。
上場時はキャリア向けセキュリティが売上のほぼ全てを占め、一本足打法と見られがちだったが、会社は中計で明確にそこから脱し、ソリューション事業を成長の主軸に据えている。したがって同社を、単なる迷惑電話ブロックアプリ企業として理解するのは浅い。会社のプロダクト一覧を見ると、モバイル用、固定電話用、ビジネス用、その他サービスに分かれているが、実態は別々の事業の寄せ集めではない。共通するのは、電話番号、SMS、URL、通話統計、利用者フィードバックなどから成る独自データを核にし、それを異なる販路で収益化している点である。モバイルではソフトバンク、KDDI、NTTドコモ、UQ mobile、TONE、Y!mobileなどを通じて提供し、固定電話ではctc、KDDI、eo光電話、J:COMなどを通じ、法人では「トビラフォン Biz」「トビラフォン BizLite」「トビラフォン Cloud」「サギトレ」へ横展開している。
2-2. セキュリティ事業
セキュリティ事業の本質は、通信事業者やインフラ事業者に対する迷惑・詐欺関連データベースのライセンス/OEM提供である。テクノロジーページでは、迷惑電話番号、迷惑メール、有害サイトのURLなどを独自に収集・データベース化し、そのデータを利用したサービスが大手キャリアやメーカーに採用されていると説明している。さらに同社は、180万台以上のIoTデバイスから日々送られる情報を自社データセンターやクラウド上のプラットフォームで処理し、警察・行政由来のデータも含むビッグデータに統計学ベースのロジックと機械学習を適用して判定精度を高めている。つまりセキュリティ事業は、BtoCアプリ販売ではなく、データベースと判定エンジンの外部提供事業として理解するのが正しい。
商品別には、モバイル向けと固定電話向けに大別できる。モバイル向けはソフトバンク、KDDI、NTTドコモ、UQ mobile、TONEモバイル、Y!mobileなどのチャネルで展開され、固定電話向けは単体端末型に加え、ホームゲートウェイ内蔵型やネットワーク型で提供されている。会社資料では、固定電話向けのビジネスモデルを、通信キャリアへのデータベース提供とライセンス提供を中核に、最終利用者には基本料金にオプションやパック料金を上乗せする形で届ける構造として整理している。同社は最終顧客を直接大量獲得するよりも、通信インフラ側に自社機能を埋め込むことでスケールを取る設計を採っている。
足元の業績を見ると、この事業は「安定」と「制度・販売条件変更による跳ね」を併せ持つ。2026年10月期第1四半期のセキュリティ事業売上高は492百万円で、内訳はモバイル向け412百万円、固定電話向け80百万円だった。モバイル向けは前年同期比98.0%で概ね横ばいだった一方、固定電話向けは同148.4%と大きく伸びている。背景には、J:COMが「ケーブルプラス電話」で迷惑電話自動ブロックを2026年1月から月額無料で提供し始めたことがあり、会社は契約数増加による売上高への寄与を数千万円規模と見込んでいる。ここから分かるのは、セキュリティ事業はベースとしてはストック型だが、通信キャリア側の設計変更やプロモーション変更が利用者増を通じて売上を押し上げる局面があるということだ。
さらに注目すべきは、このセキュリティ事業が通信キャリア向けオプションだけに閉じていない点である。2026年3月に提供開始となった「詐欺対策 by NTTタウンページ」アプリでは、トビラシステムズがアプリの開発・運用と詐欺関連番号データベースの提供を担い、NTTタウンページからは対価としてデータベース提供料を受領する。利用者向けには無料だが、同社にとってはデータ提供事業として成立している。つまりセキュリティ事業の外縁は、キャリア課金モデルだけでなく、アプリ、機器、業務サービスへも広がり始めている。
2-3. ソリューション事業
ソリューション事業は、迷惑情報データベースと電話運用ノウハウを法人向け電話DXに変換する成長事業である。セキュリティ事業が通信キャリア主導で広く薄く展開するモデルだとすれば、ソリューション事業は1社当たりの単価と機能深度を高めながら、法人の業務改善予算を取りに行くモデルである。会社資料でも、法人向け製品は「トビラフォン Biz」が代理店販売、「トビラフォン Cloud」が直接販売を基本とし、迷惑電話対策だけでなく、通話録音、IVR、音声テキスト化など、電話業務そのもののDXを進める機能を多数搭載すると整理されている。代表の明田氏が志向するのは、迷惑電話ブロックだけに閉じない、ボイスコミュニケーション領域全体の課題解決であり、ソリューション事業はまさにその思想を具現化した事業である。とりわけカスタマーハラスメント対策の法制化を背景に、Biz・Cloudへの引き合いは急速に強まっている。
まず「トビラフォン Biz」は、既存のPBXやビジネスフォン環境に後付けで接続し、電話対応の効率化と可視化を実現する製品である。公式サイト上では、複数拠点の一括管理、柔軟な受電設定、各種PBX対応を前面に出し、実際の解決課題として、カスタマーハラスメント対策、複数拠点管理、設定変更コスト、「言った言わない」問題、通話内容の振り返り、自動音声ガイダンスによる振り分け、営業電話・FAXの抑制を挙げている。主な機能も、通話履歴・設定の一元管理、スケジュール設定、留守番電話、自動通話録音、録音告知、迷惑電話・FAXフィルタ、IVR、規制番号登録、通話分析、テキスト化、AI自動要約まで広い。したがって「トビラフォン Biz」は、迷惑電話対策機器というより、電話運用の統制・記録・可視化の統合レイヤーと位置付けるべきである。
収益面では、「トビラフォン Biz」は極めて良い構造を持つ。会社資料によると、販売は代理店経由が主流で、端末代金に5年から7年のライセンスと保守契約を組み込んだバンドル販売が中心である。販売時に端末代金とライセンス料を一括受領する一方、ライセンス料は利用期間に応じて月次按分で売上計上されるため、契約負債が積み上がる。このため、PL上の収益認識より先にキャッシュが入る。2026年10月期第1四半期の「トビラフォン Biz」売上高は200百万円、累計販売台数は6,845台で、前四半期比572台増、前年同期比148.9%となった。Bizは新規端末販売によるフローと、契約期間に応じて積み上がるストックの両方を持つ、非常に投資効率の高いプロダクトである。
次に「トビラフォン Cloud」は、既存電話番号やオンプレミス設備をクラウドへ移し、スマートフォンやPCから会社番号で発着信できるクラウドPBXである。公式サイトでは、機器不要、複数番号の一元管理、自動テキスト化と自動要約、IVR、SMS自動送信、通話分析、迷惑電話フィルタ、複数番号管理、外部システム連携、災害時の業務継続までを訴求している。解決する課題も、リモートワーク対応、電話業務の省人化、移転時コスト、設定変更の柔軟性、カスタマーハラスメント対策、業務可視化、BCPと明確である。つまりCloudは、従来の企業電話を置き換えるだけでなく、「電話が業務のボトルネックになっている会社」全体を対象にする製品である。
収益モデルとしてのCloudも魅力が強い。会社資料では、「初期費用+月額費用(基本セット数×単価)+通話料」の構成で、基本セット数が増えるほど月額ライセンスが積み上がるストックモデルと説明されている。公式サイトではブランドユーザー数約1,500万人、利用継続率99%以上を掲げており、2026年10月期第1四半期資料では課金ID数12,897件、平均月次解約率は引き続き1%程度の低水準とされる。第1四半期売上高は92百万円で前年同期比204.4%増だった。法人SaaSとして見ると、Cloudはまだ売上規模こそ小さいが、継続性と解約率の低さが確認されており、中期的に評価されやすい構造を備えている。
さらに2026年2月には「トビラフォン Biz Lite」も投入された。会社はこれを、代理店からの「より導入しやすい価格帯がほしい」という要望を受けて開発した、個人事業主、小規模オフィス、小規模店舗向けの新商材と説明している。第1四半期にはまだ業績寄与していないが、発売直後の2月から販売実績が出ており、好調なスタートとされる。これは、同社が大企業や多拠点企業だけでなく、中小規模の電話運用課題まで取り込もうとしていることを意味する。ソリューション事業の裾野を広げる施策として無視できない。
2-4. 顧客別提供価値と販路構造
トビラシステムズの顧客構造は「通信キャリア・インフラ事業者」と「法人ユーザー」に大きく分かれ、購買理由も販路も異なる。前者に対する提供価値は、特殊詐欺・フィッシング等への対策強化、ユーザー向け付加価値オプションの提供、社会的課題への対応である。後者に対する提供価値は、電話業務の効率化、通話内容の可視化、カスタマーハラスメント対策、拠点横断管理、クラウド移行、BCP対応である。両者を同じ「迷惑電話対策」という言葉で括ると、なぜ売り方が違うのかが見えなくなる。実際には、同じデータ資産を使っていても、キャリアには機能部品として、法人には業務改善ソリューションとして売っている。
その結果、販路も多層化している。セキュリティ事業は通信キャリア、機器メーカー、アプリ提供者などとのBtoBtoC/OEM色が強い。一方、トビラフォン Bizは販売代理店網が中核であり、既存のビジネスフォン流通に乗せる設計である。トビラフォン Cloudは現状では直販が中心だが、中期計画では代理店販売の拡大、エンタープライズ専属営業の配置、総合セキュリティアプリとしての導入など、三層販売へ移行する方針を示している。さらにBizについては、NTT東西のセレクト商材として既に販売されており、強い販売チャネルを通じた拡販が進んでいる。同社の販路は、売上の通り道であると同時に、競争優位の一部でもある。
2-5. 収益モデル

出所:決算説明資料よりAENTRO Research作成。非連結ベース
トビラシステムズの収益モデルは、安定ストック収益を土台にフロー収益で成長速度を上げるハイブリッド構造である。セキュリティ事業は、利用者数連動、固定契約、契約者数連動など複数の契約形態を持ちつつ、基本的には継続課金型である。固定電話向けは通信キャリアへのデータベース提供とライセンス費用が主軸で、モバイル向けも通信事業者のサービス内で継続利用される設計が多い。これが同社全体の利益率と安定性を支えている。
そこに、BizとCloudが異なる形で上乗せされる。Bizは端末販売によるフローと、ライセンス按分によるストックを併せ持つ。Cloudは基本セット数に応じた月額費用が積み上がるストック型である。2026年10月期第1四半期資料では、セキュリティ事業の安定推移とソリューション事業の販売拡大により、収益基盤であるストック収益が堅調に増加し、フロー収益はBizの販売台数増加などで伸びたと説明されている。このため、同社の売上は単なるサブスク一本足ではなく、ストックとフローを組み合わせたハイブリッド型である。
この構造は中期計画にもそのまま表れている。2026年10月期計画は、セキュリティ事業1,968百万円、ソリューション事業1,397百万円、その内訳としてトビラフォン Biz 948百万円、トビラフォン Cloud 448百万円である。さらに2028年10月期の重点施策ごとの目標売上は、Cloud約18億円、Biz約12億円、通信キャリア向け約20億円、新規事業約10億円とされる。経営陣は、安定したキャリア向け収益を維持しながら、Biz・Cloud・新規事業で増分を作る設計図を明確に示している。
2-6. 主要KPI

出所:決算短信よりAENTRO Research作成
トビラシステムズのKPIは、単なる契約社数や出荷台数ではなく、「データ資産の厚み」と「継続収益の深さ」を測る指標群として読むべきである。中核KPIは、月間利用者数約1,500万人、年間50億件超の電話・メール・SMS判定件数、180万台以上のIoTデバイス、トビラフォン Biz累計販売台数、トビラフォン Cloud課金ID数、Cloudの解約率、そしてセグメント別売上高である。これらは別々の指標ではなく、データ収集量、判定精度、販売拡大、継続率を一連で捉えるための指標群である。
業績KPIとして見ると、2025年10月期実績はセキュリティ事業1,905百万円、ソリューション事業899百万円で、内訳はモバイル向け1,669百万円、固定電話向け217百万円、その他19百万円、Biz 650百万円、Cloud 249百万円だった。2026年10月期第1四半期は、セキュリティ事業492百万円、ソリューション事業293百万円、Biz 200百万円、Cloud 92百万円である。通期計画に対する進捗率は、売上高23.4%、営業利益28.9%、経常利益29.4%、純利益29.5%で、会社は全体として計画線上と説明している。
運営KPIでは、Bizの累計販売台数6,845台、Cloudの課金ID数12,897件が現在地を示す重要数字である。特にCloudは、課金ID数が四半期ごとに着実に積み上がり、平均月次解約率も1%程度の低水準とされる。Bizが「導入社数」よりも累積販売と契約負債の積み上がりを見るべき商品であり、Cloudが「課金ID数」と解約率を見るべき商品だということだ。KPIの読み方を間違えると、同じソリューション事業の中で何が伸びているかを見誤る。
2-7. 競争優位

出所:会社開示資料に基づきAENTRO Research作成
同社の競争優位は、単なるデータベース保有量ではなく、「データ収集 → 判定精度向上 → 販路拡大 → さらにデータ蓄積」という循環そのものにある。中期計画資料では、ユーザー基盤が大きいことがデータ精度の向上に寄与し、警察からのデータ受領、利用者フィードバック、社内調査チームの更新によって、独自の迷惑情報データベースが日々改善されると整理している。テクノロジーページでも、統計学ベースの独自ロジックと機械学習を用いて、ユーザーにとって迷惑な情報かどうかを判定すると説明している。この構造がある限り、ユーザー基盤の大きさは単なる顧客数ではなく、判定品質を押し上げる生産装置になる。
加えて、同社の優位は「配り方」にもある。公式プロダクトページが示すとおり、モバイルと固定電話では既に主要チャネルに入り込んでおり、企業向けではBizとCloudがそのまま電話DX商品として立ち上がっている。さらにNTTタウンページとの協業では、同社の詐欺・迷惑番号データベースと、NTTタウンページが持つ実在確認済み事業者データベースを組み合わせ、電話に出る前に「危険」と「実在」の両方を判断できる仕組みを作っている。これは、同社のデータ資産が単なるブラックリストではなく、外部の信頼データと結合して価値を増幅できることを示している。
さらに財務面の優位も見逃せない。中期計画資料では、Bizのようにサービス提供に先んじてキャッシュを受け取れる構造や、高利益率ビジネスモデルにより、営業キャッシュフローが高い水準で推移してきたと説明している。これは、データビジネスに必要な採用、開発、販路投資を外部調達に過度に依存せず回せることを意味する。データベース型企業の優位は技術だけで完結せず、更新し続けるための財務余力まで含めて初めて強い。トビラシステムズはこの点でも条件を満たしている。
2-8. 新規事業 / 周辺サービス
新規事業は本業の周辺に置かれた実験枠ではなく、2028年の売上設計に組み込まれた成長レイヤーである。中期計画では、新規事業の売上目標を2028年10月期で約10億円とし、既存市場×既存プロダクト、既存市場×新規プロダクト、新規市場×既存プロダクト、新規市場×新規プロダクトの4象限で展開するとしている。既存の強力な販売チャネル、とりわけBizのチャネルに新規プロダクトを流し込むことで、立ち上がりを早める考え方である。
現時点で最も具体的な新規商材は「サギトレ」である。プロダクトページでは、管理者負担を抑えながらセキュリティ教育を自動実施し、従業員のリテラシー向上を図るサービスと説明される。会社は2025年10月期決算説明資料で、サギトレの収益は今後セキュリティ事業のモバイル向けに計上し、2028年10月期に売上高4億円を目標にすると述べている。新規事業といっても、完全に未知の飛び地ではなく、既存のセキュリティ提供先や法人顧客に自然に広げられるものから始めている。
また、NTTタウンページ向けアプリは、データベースの外販・外部組み込みの一例として重要である。ユーザー向けには無料でも、同社はデータベース提供料を受領する。さらに会社は、金融機関へのデータベース提供実績が既にあることや、アライアンスやM&Aを通じて他社の強みと組み合わせた新事業を検討すると明示している。したがって新規事業の方向性は、まったく新しい領域への無秩序な多角化ではなく、「保有データと既存販路を、どこまで別用途へ転用できるか」という延長戦上にある。
2-9. 事業上の主要論点

出所:有価証券報告書よりAENTRO Research作成
トビラシステムズの事業上の最大論点は、上場時に見られたキャリア依存の一本足打法からどこまで脱却できるか—すなわち「ソリューション事業と新規事業が、どの速度で売上構成を変えられるか」にある。2024年10月期の売上構成はモバイル向け68%、固定電話向け9%、ビジネスフォン向け23%だったのに対し、2028年10月期目標ではビジネスフォン向け47%、新規事業22%、モバイル・固定電話合計31%へ変える設計になっている。これは、同社が今後も同じ会社であり続けるというより、収益ポートフォリオを組み替える会社になるという宣言に近い。
そのうえで個別論点を整理すると、第一にCloudが三層販売へ移行し、クラウドPBX市場の拡大をどこまで取り込めるか。第二にBizが既存代理店網と新規チャネル拡張、2027年以降のリプレイス需要を通じてどこまで販売台数を積めるか。第三に、通信キャリア向けでは、利用者増加や高付加価値化が進む一方で、無料化のような提供条件変更が収益性へどう影響するか。第四に、新規事業がテスト段階を超え、実際に売上柱へ育つか。第五に、採用・開発・オフィス移転などの先行投資が、近い将来の成長へきちんと変換されるかである。
トビラシステムズの事業内容は「迷惑情報データベースを核にした、マルチチャネル・マルチプロダクト化」の進行形である。セキュリティ事業が収益の土台、ソリューション事業が構成比を変える成長エンジン、新規事業が次の伸びしろという三層で読むのが最も実態に近い。
3. 経営戦略
3-1. 戦略の全体像
結論として、トビラシステムズの経営戦略は、上場時にキャリア依存の一本足打法と見られていた構造から脱却し、迷惑情報データベースを核に法人向け通話管理と新規セキュリティ商材まで広げる会社へ、収益ポートフォリオを作り替える戦略である。代表の明田氏は迷惑電話ブロックだけに留まらず、ボイスコミュニケーション領域全体で技術を活かした社会課題解決を志向しており、その経営意思が中計の設計思想に色濃く反映されている。実際、中期経営計画2028では、2028年10月期に売上高60億円以上、営業利益17億円、時価総額250億円以上を目標に掲げ、重点施策として「トビラフォン Cloud」18億円、「トビラフォン Biz」12億円、通信キャリア向け20億円、新規事業10億円、そしてメンバーの拡大・成長を明示している。FY2025/10の売上構成がセキュリティ事業67.9%、ソリューション事業32.1%であったのに対し、2028年10月期の目標構成はセキュリティ31%、ソリューション47%、新規事業22%であり、会社は「同じ事業を少しずつ伸ばす」のではなく、売上の重心そのものを動かそうとしている。
この戦略は、今期の利益を守るよりも、先に成長投資を打つ意思決定として理解すべきである。2026年10月期会社予想は、売上高3,366百万円で前期比20.0%増を見込む一方、営業利益は785百万円で同12.7%減である。会社はその背景として、採用強化に加え、東京・名古屋オフィス移転関連45百万円、280blocker買収に伴うのれん償却60百万円、情報セキュリティ体制強化や新規事業創出テスト等20百万円を説明している。他方で、2026年10月期第1四半期は売上高786百万円、営業利益226百万円で通期予想を据え置いており、会社側のメッセージも「減益を避ける」ではなく「先行投資を通じて2027年10月期以降の収益拡大につなげる」に置かれている。足元の減益見通しは戦略後退ではなく、ポートフォリオ転換のためのコスト先行である。
3-2. 市場環境と市場機会

出所:警察庁資料よりAENTRO Research作成
トビラシステムズの成長余地を支える最大の外部要因は、詐欺被害が「高齢者向け迷惑電話」の域を明らかに超えて拡大していることだ。警察庁によれば、2025年の特殊詐欺被害額は約1,414.2億円で前年比96.7%増、SNS型投資詐欺の被害額は1,274.7億円で同46.3%増となった。しかも、2025年の特殊詐欺ではニセ警察詐欺の被害が顕著で、認知件数10,936件、被害額985.4億円と、特殊詐欺全体の中で極めて大きな比重を占めている。これは、被害が従来の固定的な手口から、音声、SMS、SNS、メール、本人確認、送金指示をまたぐ複合型へ移っていることを意味する。トビラシステムズにとって重要なのは、詐欺被害額の増加そのものより、「最初の接触を遮断できる事業者」の必要性が急速に高まっている点である。
政府対応も、同社の提供価値と極めて親和的である。2025年4月の犯罪対策閣僚会議で決定された「国民を詐欺から守るための総合対策2.0」では、詐欺に誘引するダイレクトメッセージ等が端末に届く前にフィルターする取組や、受信時に警告表示を行う取組の推進が明記された。政府の対策思想は「被害後の補償」より「接触前の遮断」へ軸足を移している。これは、トビラシステムズが保有する電話番号・SMS・URLのデータベースを、遮断や警告表示に結びつける仕組みと同じ方向を向いている。したがって同社の市場機会は、セキュリティ市場一般の追い風ではなく、政府の対策方針と事業モデルが真正面から一致している点にある。
加えて、脅威の広がり方自体が、同社の事業領域拡張を正当化している。会社公表の月次調査レポートでは、2025年3月に証券口座乗っ取り型フィッシング、2025年12月にビジネスメール詐欺、2026年1月にニセ警察詐欺や金融機関をかたる自動音声詐欺の増加が示されている。被害の中心が消費者向けの電話だけでなく、法人のメール、業務用番号、社内送金プロセス、本人確認へも広がっている点である。したがって同社の経営戦略は、迷惑電話ブロック市場の深耕だけでなく、法人の通信・認証・業務運用にまたがる「詐欺接触防止レイヤー」の構築へ進むのが自然である。
3-3. 制度・政策変更の追い風

出所:各省庁資料よりAENTRO Research作成
制度面では、法人向けソリューション事業にかなり明確な追い風がある。厚生労働省は、2025年6月公布の改正労働施策総合推進法について、いわゆるカスタマーハラスメント対策を事業主の義務とし、公布日から1年6か月以内に施行予定と説明している。さらに東京都では、カスタマー・ハラスメント防止条例が2025年4月1日に施行され、事業者に必要な措置を講ずるよう求める体制が既に始まっている。全国法の施行前から、自治体レベルでルール整備と周知が進んでいる点は見逃せない。企業や自治体にとってカスハラ対策は、「いつか必要になるもの」ではなく、すでに準備を始めるべきテーマになっている。実際にカスハラ対策需要は急速に伸びており、トビラシステムズのソリューション事業にとって最も強力な追い風の一つとなっている。
この制度変化は、トビラフォン Biz とトビラフォン Cloud の販売現場を直接押し上げる。トビラフォン Biz は既存の電話設備に接続するだけで、通話録音、録音告知、IVR、迷惑電話フィルタなどを追加できる製品であり、Cloud も通話録音、文字起こし、AI要約、IVR、迷惑電話フィルタ、事業者名表示など、電話業務の証跡化と統制を支える機能を備える。制度が企業に求めるのは理念ではなく運用可能な手段であり、その意味で同社製品は「カスハラに配慮しています」という建前ではなく、「通話を残す・振り分ける・遮断する・共有する」という実装手段を提供している。法改正が製品需要につながりやすいのはこのためである。
3-4. セキュリティ事業の深耕戦略
セキュリティ事業の戦略は、単に契約者数の増加を待つものではない。会社が中計で掲げる通信キャリア向け20億円という目標は、既存キャリアとの関係深化と、新たなプラットフォームへのデータベース組み込みを通じて、迷惑情報フィルタを“部品化して広げる”戦略である。2026年10月期第1四半期のセキュリティ事業売上高は492,913千円で、モバイル向けは概ね横ばい、固定電話向けは前年同期比148.4%増となった。会社資料では、J:COM の「ケーブルプラス電話」における迷惑電話自動ブロックが2026年1月から月額無料化され、契約数増加に寄与したことが示されている。ここから読み取れるのは、同事業の成長源泉が「自社単独の販促」ではなく、「パートナー側の料金設計変更や販促強化を通じた普及拡大」にあるという点である。
そのうえで、通信キャリア向け販売は既存の携帯オプションに閉じていない。KDDI は2025年8月から au・UQ mobile・auひかり契約者向けに迷惑電話対策サービスを6か月無料で提供し、その後も2026年3月に迷惑電話撃退サービスや迷惑メールブロックの施策強化を打ち出した。これは、通信事業者側が詐欺対策を有料オプションの周辺機能ではなく、回線価値そのものを支える保護機能として位置付け始めていることを示す。トビラシステムズにとっては、こうした動きが単価引き下げ圧力ではなく、データベース採用の裾野拡大へつながるかが鍵になる。少なくとも現時点では、政府対策とキャリア施策の方向は普及促進で一致している。
さらに最近の事例を見ると、同社のデータベースは通信回線以外の形でも外部組み込みが進んでいる。2026年3月には ctc のホームルーターに迷惑電話発着信ブロック機能が採用され、同月には NTTタウンページとの協業による「詐欺対策 by NTTタウンページ」アプリが、警察庁推奨制度の認定を受けて提供開始された。後者では、トビラシステムズがアプリの開発・運用と詐欺関連番号データベース提供を担い、NTTタウンページの実在性確認済みデータベースと結合している。これはセキュリティ事業の深耕が、単なる通信キャリア依存ではなく、「外部サービスへ高信頼データを提供する基盤事業」へ進化しつつあることを示す。
3-5. ソリューション事業の拡大戦略
ソリューション事業の戦略は、電話という企業インフラを押さえに行くことにある。会社は、中計2028でトビラフォン Cloud 18億円、トビラフォン Biz 12億円を目標に置き、両者合計で約30億円規模を目指す。背景には、会社資料上、PBX・ビジネスフォン・クラウドPBXを合わせた市場規模を約805億円とみる認識があり、同社は現状の売上規模に対して十分大きな余地を見込んでいる。ソリューション事業が既存セキュリティ事業の補完ではなく、将来の主役として設計されていることだ。経営戦略上の優先順位は明確で、まず法人向け電話基盤を取りに行き、その上に録音、AI要約、業務可視化、対策機能を重ねていく。
トビラフォン Cloud の戦略は、直販に依存し続けない点に特徴がある。会社資料では、直販、代理店販売、総合セキュリティアプリ/OEMという三層販売を構想し、低い平均月次解約率を背景にストック収益を積み上げる設計を示している。実際、2025年7月にエスケーアイとクロップス、2025年9月にNo.1と販売利点契約を締結している。将来の成長は、営業力そのものよりも、「どの販路にCloudを埋め込めるか」で決まる色が強い。
一方のトビラフォン Biz は、既存の強い代理店網を起点に販路を横展開する戦略だ。会社資料では、既存チャネルでの販売量増加、新規チャネル獲得、2027年以降の既存ユーザーのリプレイス需要、PBXへの組み込みなどが成長ドライバーとして示されている。実際の動きを見ると、2025年8月にリコージャパンの「電話カスハラ対策ソリューションパック」に採用され、2026年1月には「トビラフォン Biz+リコーひかり」構成が同パックに追加、2026年3月には京セラドキュメントソリューションズジャパンが取り扱いを開始し、さらにNTT東日本は2026年5月からトビラのデータベースを活用した迷惑電話ブロック機能付き「おまかせオフィステレフォン」を提供開始する。加えて、小規模事業者向けの BizLite も2026年2月に投入されており、同社は大企業向け深掘りだけでなく、単一拠点・小規模需要の裾野取りまで始めている。これは、Biz の戦略が「製品を売る」より「販路を増やす」に置かれていることを示す。
3-6. データ資産の横展開と新規事業
新規事業の位置付けも明快で、既存データ資産の隣接展開である。法人向け詐欺メール・SMS訓練サービス「サギトレ」は2025年10月に提供開始され、会社は2028年10月期に同サービスを含む新規事業で10億円、そのうちサギトレで4億円の売上を目標としている。しかも会社Q&Aでは、将来のサギトレ収益をセキュリティ事業のモバイル向けに計上する方針を示しており、新規事業を独立した飛び地としてではなく、既存セキュリティ基盤の延長として管理しようとしている。これは、同社が新規事業を「別会社の夢」として扱うのではなく、既存の販路・データ・顧客課題から派生する収益源として育てようとしていることを意味する。
この横展開の競争力の源泉は、単なる件数の多いブラックリストではない。会社資料では、約1,500万人のユーザー基盤、年間50億件以上の電話・メール・SMS判定、警察から受領するデータ、利用者フィードバック、調査チームによる日次更新が、迷惑情報データベースの精度向上を支えている。またテクノロジーページでは、180万台以上のIoTデバイスからの情報を自社データセンターやクラウドで高速処理していると説明している。重要なのは、このデータがモバイル、固定電話、法人電話、アプリ、訓練サービスへ流用可能な点である。したがって新規事業の本質は、新たな製品カテゴリを当てることではなく、既存データ資産をどれだけ多用途に再利用できるかにある。
3-7. キャピタルアロケーションと組織投資
資本配分の考え方も、経営戦略を補強している。会社は中計2028期間中の株主還元方針として、配当性向35%を目安としつつ、2024年10月期配当20円を下限とする方針を示し、資本効率や株価水準を踏まえた機動的な自己株式取得も掲げている。2025年10月期には4億円の自己株取得を予定し、総還元性向100%見込みと説明していたが、同時に2026年10月期は成長投資を優先しながらも、2025年10月期の営業利益を一時的に下回ることを受け入れている。同社のキャピタルアロケーションは、極端な成長偏重でも極端な還元偏重でもなく、「成長投資を優先しつつ、株主還元の下限は守る」という設計である。小型成長株としては比較的わかりやすい。
さらに、戦略実行のボトルネックを人材と認識している点も重要だ。2025年のサステナビリティレポートでは、2025年10月期は中計2028達成に向け、未来を見据えた採用活動や人的投資をこれまで以上に強化した一年だったと位置付けている。ソフトウェアや通信セキュリティ企業では、データや販路があっても、導入支援、カスタマーサクセス、研究開発、営業企画を回す人員がなければ伸びない。トビラシステムズの戦略が成立する条件は、データベースの存在そのものではなく、それをプロダクト化し販路化できる組織能力を拡張できるかにある。採用・育成・体制整備は補助線ではなく、戦略の中核である。
3-8. 成長戦略を左右する主要論点
以上を踏まえると、今後の主要論点はかなり整理しやすい。第一に、ソリューション事業の成長が本当にセキュリティ事業を上回る速度で続くか。第二に、Cloud の三層販売が立ち上がり、直販依存から脱却できるか。第三に、Biz が既存チャネル、新規チャネル、リプレイス需要を取り込み、構造的に販売台数を積み上げられるか。第四に、通信キャリア向けでは無料化や普及促進が採用拡大につながる一方で、キャリア内製化やOS標準機能強化のリスクをどう乗り越えるか。第五に、サギトレをはじめとする新規事業が、説明資料上の目標から実際の売上柱へ移れるかである。2026年10月期第1四半期は計画線上だが、戦略評価の焦点は、四半期利益の上下よりもこれらの進捗に移っている。
総じて、トビラシステムズの経営戦略は、上場時のキャリア依存一本足打法から脱却し、「迷惑電話対策会社」から「ボイスコミュニケーション領域で広く社会課題を解決するインフラ企業」への転換として読むのが最も実態に近い。代表の明田氏が志向する“技術を使って広く課題解決をしたい”という意思は、トビラフォン BizやCloudの展開、カスハラ対策需要の取り込みという形で着実に具現化されつつある。本レポートでは、セキュリティ事業をキャッシュ創出の土台、ソリューション事業をポートフォリオ転換の主エンジン、新規事業をデータ資産の再利用余地として位置付ける。2025年以降の詐欺被害拡大、政府の総合対策2.0、カスハラ法制の前進、そして直近の提携拡大を見る限り、同社は外部環境の追い風を受ける側にいる。ただし、評価が本格的に切り上がるかは、売上目標の掲示そのものではなく、販路拡張と人材投資を通じて再現性のある成長曲線を示せるかにかかっている。
4. 業績動向
4-1. 直近5年の経営成績
出所:決算短信よりAENTRO Research作成。非連結ベース
まず全体像を押さえると、トビラシステムズは過去5年で着実に売上規模を拡大しながら、高い利益水準も維持してきた。FY2021/10の売上高は1,424,656千円、営業利益は579,911千円、経常利益は577,980千円、当期純利益は386,047千円だった。これがFY2025/10には、売上高2,805,366千円、営業利益898,744千円、経常利益907,160千円、当期純利益625,676千円へ拡大している。売上高は5年間でほぼ2倍、営業利益も大幅に増加しており、同社が単なるニッチ企業にとどまらず、事業規模そのものを着実に引き上げてきたことが分かる。
年度別にみると、FY2021/10からFY2022/10にかけては売上高1,681,473千円、営業利益540,453千円と、増収ながら利益はやや落ち着いた。その後、FY2023/10は売上高2,061,166千円、営業利益682,420千円となり、再び成長が加速した。さらにFY2024/10は売上高2,405,885千円、営業利益831,784千円、FY2025/10は売上高2,805,366千円、営業利益898,744千円である。同社の収益成長は一本調子ではないが、FY2023/10以降は明確にステージが一段上がっている。これは、従来の迷惑情報フィルタ提供の積み上げに加え、法人向けソリューションの寄与が無視できない水準にまで高まったためである。
営業利益率の推移も特徴的である。FY2021/10は40.7%、FY2022/10は32.1%、FY2023/10は33.1%、FY2024/10は34.6%、FY2025/10は32.0%で推移した。一般的な中小型成長株では、売上成長のために利益率を大きく犠牲にする例も少なくないが、同社は30%超の営業利益率を長く維持している。FY2025/10に営業利益率がやや低下したとはいえ、絶対額ベースでは営業利益は過去最高を更新している。FY2025/10の見え方は「利益率が崩れた」ではなく、「成長ドライバーの構成変化により、全社ミックスが変わり始めた」と読む方が実態に近い。
EPSも同様に増加基調である。FY2021/10は37.25円、FY2022/10は30.68円、FY2023/10は49.09円、FY2024/10は57.77円、FY2025/10は61.59円であった。中期経営計画2028では利益成長を継続する方針が示されているため、投資家が確認すべきは単年度のEPS水準そのものよりも、FY2026/10の一時的な減速を経たあとに再び増益基調へ戻れるかである。
4-2. 収益構造の変化
| FY2023 | FY2024 | FY2025 | |
|---|---|---|---|
| セキュリティ売上 | — | 1,843 | 1,905 |
| ソリューション売上 | — | 562 | 899 |
| セキュリティ利益 | — | 1,339 | 1,337 |
| ソリューション利益 | — | 74 | 151 |
出所:決算短信(2025年10月期 通期 非連結)のセグメント情報よりAENTRO Research作成。単位:百万円。FY2024より報告セグメントを「迷惑情報フィルタ事業」単一から「セキュリティ事業」「ソリューション事業」の2区分へ変更しており、FY2023以前は単一セグメントのため細分不可(「—」)。
トビラシステムズの業績を理解するうえで単に売上が伸びたことではなく、「何が伸びたのか」を分けてみることである。2025年10月期から同社は報告セグメントを「セキュリティ事業」と「ソリューション事業」の2区分に再編しており、この再編が収益構造の変化を非常に分かりやすくしている。AENTROの既存レポートでも、この会社を「迷惑情報データベースを複数販路で収益化するデータプラットフォーム企業」と定義し、セキュリティとソリューションの二層で読む構図を採っている。
比較用の組替後数値でみると、FY2024/10のセキュリティ事業売上高は1,843,793千円、ソリューション事業売上高は562,092千円だった。これに対しFY2025/10は、セキュリティ事業1,905,409千円、ソリューション事業899,956千円である。セキュリティ事業は前年比+3.3%の増収にとどまった一方、ソリューション事業は+60.1%と急拡大した。全社売上高の増加分の大半は、実質的にソリューション事業が稼いだとみてよい。ここに、同社の成長の重心が従来のキャリア・固定電話向け対策から、法人向けソリューションへ動き始めている事実が表れている。
利益面ではさらにその傾向が鮮明である。FY2024/10のセキュリティ事業セグメント利益は1,339,817千円、ソリューション事業セグメント利益は74,327千円だった。FY2025/10は、セキュリティ事業1,337,863千円、ソリューション事業151,449千円である。セキュリティ事業はほぼ横ばいで高水準の利益を維持し、ソリューション事業は利益が倍増した。全社業績の実態は「稼ぐ土台はセキュリティ、成長増分はソリューション」と整理するのが最も正確である。
サービスライン別に見ても、変化の方向は一致する。FY2024/10はモバイル向け売上1,623百万円、固定電話向け212百万円、その他セキュリティ8百万円、トビラフォン Biz 430百万円、トビラフォン Cloud 131百万円だった。FY2025/10はモバイル向け1,669百万円、固定電話向け217百万円、その他セキュリティ19百万円、Biz 650百万円、Cloud 249百万円である。モバイル向けと固定電話向けは堅調だが伸び率は限定的で、対照的に Biz と Cloud が大きく伸びている。特に Biz は430百万円から650百万円、Cloud は131百万円から249百万円へ増加しており、同社が中計で描く「法人向け電話DX会社」への移行は、すでにPL上に現れ始めている。
この意味で、FY2025/10の業績は移行期の初年度として非常に重要である。従来型のOEM / データ提供ビジネスだけでなく、法人向けプロダクト販売とSaaSが売上構成を変え始めた最初の年であり、今後の評価は、この変化が一過性で終わるのか、それとも中計どおり加速するのかにかかっている。
4-3. 収益性と費用先行の整理
同社の収益性を論じる際、単に営業利益率32.0%という表面値だけを見ると実態を誤る。より重要なのは、セキュリティ事業の非常に高い採算性が全社を支える一方で、ソリューション事業の拡大に伴って収益ミックスが変わり、将来成長に向けた費用先行が始まっている点である。実際、AENTRO既存稿でも、法人向け Biz と Cloud が成長レイヤーであり、中計の成否は営業・開発・採用への投資をどこまで成長へ転換できるかにあると整理されている。
まずセキュリティ事業は、データベース提供という性格上、固定費負担を除けば非常に利益率が高い。FY2024/10のセグメント利益は1,339,817千円、FY2025/10も1,337,863千円で、売上高の水準に対して極めて厚い利益を生んでいる。他方、ソリューション事業はまだ拡大投資を伴うフェーズだが、それでもFY2025/10には151,449千円のセグメント利益を確保した。ソリューション事業は、赤字先行の新規事業ではなく、すでに黒字を出しながら伸びている点が重要である。これは投資家にとって、成長戦略の再現性を評価しやすい材料となる。
ただし、FY2026/10会社予想は、売上高3,366,000千円と前期比+20.0%を見込む一方、営業利益785,000千円、経常利益796,000千円、当期純利益531,000千円と減益計画である。この見え方だけを切り取ると成長失速に見えるが、むしろ本質は費用先行にある。既存稿でも、FY2025/10に31名、FY2026/10にさらに約30名の採用を予定し、人件費が大きく増えること、オフィス移転や新規事業投資も重なることが整理されている。FY2026/10は「需要減少による減益」ではなく、「中計実行のために利益を先に使う年」と位置付けるべきである。
この点は投資家にとってかなり重要である。減益そのものよりも、①セキュリティ事業の利益基盤が保たれているか、②ソリューション事業の増収率が高水準を維持するか、③費用増が一過性か恒常化か、の三点を分けてみる必要がある。セキュリティ事業の収益力が崩れず、ソリューション事業が高成長を続けるなら、FY2026/10の減益は将来の利益成長に向けた踊り場として許容される。一方で、売上成長が鈍化したまま費用だけが増えるなら、評価は崩れやすい。
4-4. 財政状態 / キャッシュ・フロー / 資本効率

出所:決算短信よりAENTRO Research作成

出所:決算短信よりAENTRO Research作成
財政状態についてみると、トビラシステムズは成長企業らしく資産規模を拡大させながらも、なお財務健全性を維持している。総資産はFY2021/10の2,170,016千円から、FY2022/10に2,667,177千円、FY2023/10に3,646,902千円、FY2024/10に4,355,634千円、FY2025/10に5,381,299千円へ増加した。純資産も同期間に1,489,008千円から2,595,254千円へ増えている。自己資本比率は68.6%から48.2%へ低下しているが、これは財務悪化というより、成長局面で資産側が大きく膨らんだ結果である。なお50%前後の自己資本比率は、同社のようなソフトウェア / データ企業としては依然十分に高い。
キャッシュ・フローはむしろ強い。営業活動によるキャッシュ・フローは、FY2021/10が491,922千円、FY2022/10が641,680千円、FY2023/10が1,220,958千円、FY2024/10が1,305,889千円、FY2025/10が1,752,043千円である。事業が拡大するにつれて営業CFも大きく伸びており、PL上の利益成長が現金創出力にもつながっている。これは同社の収益モデルが、売上の見かけだけでなく、実際に現金を稼ぐ構造であることを示す。
一方、投資活動によるキャッシュ・フローはFY2025/10に-1,383,522千円と大きく出ている。これは、事業拡大に伴う投資が本格化した結果である。財務活動によるキャッシュ・フローはFY2025/10に-549,300千円で、過度な外部調達依存ではない。期末の現金及び現金同等物残高はFY2025/10で3,034,341千円であり、投資を行ってもなお潤沢な手元資金を保持している。同社の財務運営は「無理に借入で回している成長」ではなく、「高収益事業が生む営業CFを原資に投資を前倒ししている成長」といえる。
資本効率の面では、BPSがFY2021/10の143.30円からFY2025/10の256.92円へ拡大している一方、EPSも37.25円から61.59円へ伸びている。すなわち、同社は純資産を積み上げるだけでなく、その資本を使って着実に利益を生んでいる。既存稿ではROEを高水準で維持してきた企業として整理しており、実際、利益成長と少数精鋭運営が資本効率を押し上げてきたことは間違いない。ただし今後は、採用増で固定費が増える局面に入り、従来の高ROEをそのまま維持できるかは検証が必要になる。過去の資本効率は評価しつつも、将来については「投資後の再加速」を確認するフェーズに入ったと見るべきである。
4-5. FY2026/10 1QとFY2026/10会社計画の見方
| 1Q実績 | 通期計画 | 進捗率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 786 | 3,366 | 23.4% |
| 営業利益 | 226 | 785 | 28.9% |
| 経常利益 | 233 | 796 | 29.4% |
| 当期純利益 | 156 | 531 | 29.5% |
出所:決算短信よりAENTRO Research作成。単位:百万円
FY2026/10第1四半期の着地は、通期減益計画のなかでは悪くないどころか、むしろ堅調である。売上高は786,103千円、営業利益226,839千円、経常利益233,793千円、四半期純利益156,723千円となった。通期会社計画に対する進捗としてみても、営業利益・経常利益・純利益はいずれも一定の進捗を示しており、少なくとも1Q時点では計画未達を強く懸念すべき数字ではない。既存稿でも、同社の株価評価は中計達成確度の検証局面にあるとされており、その意味で1Qは「失速確認」ではなく「投資しながらも数字を維持できるか」の初回チェックとして位置付けるのが適切である。
セグメント別では、セキュリティ事業の売上高が492,913千円、セグメント利益が331,298千円、ソリューション事業の売上高が293,189千円、セグメント利益が80,476千円であった。売上構成をみると、まだセキュリティ事業が主力だが、ソリューション事業が四半期売上の約3分の1超まで拡大している。これはFY2025/10通期の構成変化が一時的でなく、FY2026/10にも継続していることを示す。さらに利益面でもソリューション事業が黒字を確保しており、拡大投資局面でも最低限の採算を保っている点は評価できる。
通期計画との関係では、過度な上振れ期待は禁物である。なぜならFY2026/10は、人的投資、営業体制拡充、オフィス関連費用、新規事業投資などが通期で効いてくる年だからである。1Qがよかったから通期の減益計画が不要という話ではなく、むしろ「1Qでどこまで投資吸収力があるか」が見えた、と解釈すべきだろう。投資家の視点では、2Q以降もソリューション事業の高成長が続くか、採用に伴う費用増がどの程度利益を圧迫するかを追う必要がある。
4-6. 今後の注目KPI
今後の業績を見るうえで、最も重要なKPIは全社売上高や営業利益そのものではなく、事業ポートフォリオ転換を示す先行指標である。第一に見るべきは、ソリューション事業の四半期売上成長率である。FY2024/10からFY2025/10にかけて同事業は+60.1%成長しており、この高成長がFY2026/10でも維持されるかが最重要論点になる。第二に、トビラフォン Biz と Cloud の売上推移である。FY2025/10実績は Biz 650百万円、Cloud 249百万円、FY2026/10会社予想は Biz 948百万円、Cloud 448百万円であり、会社自身がこの2商材を成長エンジンとみていることは明白である。
第三に、セキュリティ事業の安定性である。成長の重心が移っても、全社利益の源泉は依然としてセキュリティ事業にある。モバイル向け・固定電話向け売上の横ばい基調が維持されるか、あるいは想定以上に鈍化するかは、全社収益を左右する。第四に、採用進捗と人件費増の吸収度合いである。FY2024/10末103名、FY2025/10末134名、2026年1月末136名という人員拡大は、中計実行力の表れであると同時に、固定費負担増の源泉でもある。人数だけでなく、その増員が売上と利益の伸びに結びつくかを見る必要がある。
第五に、新規事業の立ち上がりである。中計ではFY2028/10に新規事業売上を積み上げる前提が置かれているが、現時点で開示はまだ限定的である。このため、サギトレ等の受注や売上寄与は、現状では空欄として残しつつ、今後の開示拡充を待つのが妥当である。
5. 中期経営方針
5-1. 中期経営計画2028の位置づけ
中期経営計画2028は、トビラシステムズが通信キャリア向け迷惑情報フィルタ企業から、法人向けソリューションと新規事業を中核に伸ばす企業へ重心を移すことを明示した計画である。会社は2024年12月10日に、2025年10月期から2028年10月期までの4か年計画として「中期経営計画2028」を公表し、第2の収益の柱としてソリューション事業と新規事業に注力すると整理している。最終年度の目標は売上高60億円以上であり、単なる積み上げ型の予算ではなく、収益構成の作り替えを伴う成長計画と読むべきである。
この中計の特徴は、事業計画だけでなく、資本コストや株価を意識した経営の実現を同時に前面へ出している点にある。会社資料では、PBRは1倍を超えているものの近年は低下傾向にあり、その主因をPER低下、すなわち期待成長率の低下にあると分析している。さらに会社自身が、前中計である「中期経営計画2024」の当初目標を下回ったと総括しているため、今回の中計2028は、単なる次の計画というより「市場から見た成長期待をどう立て直すか」まで含めた再設計と位置付けるのが正確である。
5-2. 数値目標の読み方
| FY2025実績 | FY2028目標 | 成長率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,805 | 6,000 | +114% |
| セキュリティ | 1,905 | 1,800 | △5% |
| ソリューション | 899 | 1,200 | +34% |
| クラウド | — | 2,000 | 新規 |
| 新規事業 | — | 1,000 | 新規 |
| 営業利益 | 898 | 1,800 | +100% |
出所:中期経営計画2028よりAENTRO Research作成。単位:百万円
公式目標は明快で、2028年10月期に売上高60億円以上、営業利益17億円、時価総額250億円以上、目標ROE22%を掲げている。売上高だけが先行しているわけではなく、利益、資本効率、時価総額まで一体で置いている点である。小型成長株の中計では売上目標だけが大きく、資本効率の記述が薄い例も多いが、トビラシステムズは少なくとも開示設計の上では、成長と資本市場評価を同じ俎上に載せている。
数字を時系列で置くと、計画の意味はさらに見えやすい。FY2024/10実績売上高は24.05億円、FY2025/10実績は28.05億円、FY2026/10会社計画は33.66億円、そしてFY2028/10目標が60億円以上である。FY2024/10比では約2.5倍、FY2025/10比でも2倍超の売上規模を狙っている。一方、営業利益はFY2025/10実績8.98億円に対し、FY2026/10計画は7.85億円へ一時的に減るが、FY2028/10目標では17億円まで引き上げる設計である。要するに中計2028は、FY2026/10を投資先行年として受け入れ、その後の再加速で目標に到達するJ字型の計画である。
この点で見逃せないのは、利益率の設計である。FY2025/10の営業利益率は32.0%だったのに対し、FY2026/10計画は23.3%まで低下する。他方、FY2028/10目標の営業利益率は単純計算で約28.3%であり、FY2026/10からは回復するが、FY2025/10のピーク水準をそのまま再現する前提ではない。したがって経営陣が狙っているのは、「超高収益率を維持したまま少しずつ伸びる」姿ではなく、「利益率を一定程度犠牲にしてでも、売上規模と事業ポートフォリオを大きく変える」姿である。中計の評価軸は、短期的なマージン維持ではなく、売上の質と将来の評価軸の転換にある。
5-3. 中計の本質は「売上構成の転換」にある
この計画の核心は、売上高60億円そのものよりも、何で60億円を作るかにある。会社資料では、FY2024/10の売上構成はモバイル向け68%、固定電話向け9%、ビジネスフォン向け23%であるのに対し、FY2028/10目標ではモバイル・固定電話を合わせたセキュリティ領域が31%、ビジネスフォン向けが47%、新規事業が22%へ変わる。これは、現在の収益土台である通信キャリア向け中心の会社から、法人向けソリューションと新規事業が主役になる会社へ移る計画だということを意味する。
より具体的にいえば、2028年10月期の重点施策ごとの目標売上は、トビラフォン Cloud 18億円、トビラフォン Biz 12億円、通信キャリア向け20億円、新規事業10億円である。Cloud と Biz の合計だけで30億円となり、これはFY2025/10の会社全体売上高28.05億円をすでに上回る規模である。したがって中計2028は、「現在ある二本柱をそのまま伸ばす」計画ではなく、「ソリューション事業だけで現在の全社売上を超えるところまで持っていく」計画だと理解すべきである。ここにこの会社の成長ストーリーの野心がある一方、実現難度も同時にある。
5-4. 5つの重点施策をどう読むか
5つの重点施策は、「トビラフォン Cloudの販売加速」「トビラフォン Bizの販売加速」「通信キャリア向け販売の拡充」「新規事業の創出」「メンバーの拡大・成長」である。見た目には5本並列だが、実態としては役割が異なる。Cloud と Biz が売上構成を変える主エンジン、通信キャリア向けが利益の土台、新規事業が追加的な成長オプション、人材拡充がその実行条件である。5本を同列に見るより、「どの収益源が何を担うのか」で読む方がはるかに重要である。
まず Cloud は、同社が最もSaaS色を強く出せる領域である。足元の開示では、現状の直販体制では届いていない顧客へのアプローチを強化し、新機能、特にAI関連機能の開発強化とセールス・マーケティングの効率化を進める方針を示している。今後は代理店販売の拡大、エンタープライズ専属営業の配置、SFAとMAの整備によって受注数増加に対応する構想である。会社はクラウドPBX市場の成長余地も大きいと認識しており、Cloud は単に現行プロダクトを直販で売る段階から、再現性のある販売組織を持つ事業へ移る局面にある。
次に Biz は、既存の強い代理店チャネルをさらに太くしながら、対象顧客層を広げる施策である。会社資料では、代理店販売の強化が有効であるため営業人員等の採用を継続し、さらに従来のトビラフォン Biz で取り切れなかった顧客に対応するためラインナップを拡大するとしている。2026年2月から機能を限定した「トビラフォン Biz Lite」を投入し、個人事業主や小規模オフィス・店舗までカバーを広げる方針も明示された。加えて、会社は Biz を、通話録音、IVR、履歴管理、迷惑電話対策をオールインワンで備える運用基盤と位置付け、カスタマーハラスメント対策需要の高まりを追い風とみている。 とりわけカスハラ対策需要の急速な高まりは、Bizの販売現場において強力な追い風となっており、リコージャパンの「電話カスハラ対策ソリューションパック」への採用はその象徴である。 Biz は、大企業向け深掘りと小規模層への裾野拡大を同時に狙う中核商品である。
通信キャリア向け販売の拡充は、成長ドライバーというより、全社の安定収益源を磨く施策と捉えるべきである。FY2026/10計画では、セキュリティ事業売上高は19.68億円で前期比3.3%増にとどまる一方、ソリューション事業は13.97億円で同55.3%増を見込む。会社自身が、キャリア向けを急成長事業ではなく、堅いベース収益として位置付けていることが分かる。だからこそ中計全体の成否は、キャリア向けの安定性そのものより、キャリア向けの利益で Cloud / Biz / 新規事業の投資をどれだけ下支えできるかにかかっている。
新規事業の創出は、計画の中で最もアップサイドも不確実性も大きい部分である。目標売上は10億円と小さくないが、Cloud や Biz に比べて現時点の開示粒度はまだ粗い。ただし、2025年10月には法人向け詐欺メール・SMS訓練サービス「サギトレ」を開始しており、新規事業が構想段階にとどまっているわけではない。問題は、これが単発の新商材で終わるのか、それとも本当に10億円規模の第3のレイヤーへ育つのかである。中計2028の中では、新規事業は夢枠ではなく、明確に数値責任を負った項目として置かれている。
最後の「メンバーの拡大・成長」は、他の4施策の前提条件である。2026年10月期のコスト見通しでも、会社は今後の成長に向け引き続き積極的に人材採用を強化し、採用費、労務費、人件費の増加を見込むとしている。中計を成長戦略として見るだけでは不十分で、実態としては「採用計画」と「生産性回復計画」を同時に見なければならない。トビラシステムズの場合、人材施策は補助線ではなく、中計そのものの実行装置である。
5-5. 財務戦略と資本効率

出所:中期経営計画よりAENTRO Research作成。キャピタルアロケーションは3年累計
財務戦略の結論は、かなり攻めている。会社は株主資本コストを6〜10%程度と認識し、2028年10月期の目標ROEを22%に設定している。しかもこれは、FY2025/10実績24.8%、FY2026/10計画19.1%という流れの上に置かれている。したがって会社のメッセージは、「成長投資で一時的にROEは落ちるが、最終的には再び資本コストを大きく超える水準へ戻す」というものだ。ROE目標22%は、小型上場企業の中でもかなり高い部類であり、この時点で経営陣が中計を単なる売上拡大計画ではなく、資本効率再建計画としても見ていることが分かる。
キャピタルアロケーションも明快で、4年累計の営業CF72億円、2024年10月期末現預金残高32億円、必要に応じた借入を原資に、成長投資72億円以上、2028年10月期の手元流動性20億円以上、株主還元12億円以上を並べている。ここから読み取れるのは、保守的に現金を積み上げる会社ではなく、営業CFと手元資金を明示的に成長投資へ振り向ける会社へ変わろうとしていることである。他方で、手元流動性20億円以上を維持する方針も置いており、無制限にレバレッジを上げるわけではない。財務戦略は、過度な安全志向からの脱却ではあっても、無規律な拡張ではない。
また、2026年10月期の減益計画も、財務戦略の文脈で理解する必要がある。会社は中計2028達成を最重要課題とし、成長投資を継続するため意図的に一時的な減益を見込むと明示している。主因は人員採用とオフィス移転など人への投資であり、オフィス移転関連45百万円、280blocker買収に伴うのれん60百万円、その他20百万円の一過性費用を除けば、営業利益はFY2025/10比較で増益になるという整理まで示している。投資家にとって重要なのは、この説明をそのまま信じるかどうかではなく、「投資後に利益回復が実際に起きるか」を検証できるよう、2027年10月期以降の数字を追うことである。
5-6. 配当政策・株主還元政策
株主還元については、成長投資優先でありながら、下限を明示している点が特徴である。2026年10月期第1四半期資料では、中計2028期間中の方針として、創出したキャッシュフローは事業成長への投資を優先しつつも、配当性向35%を目安に、利益が計画を上回る場合には配当金も増加させる一方、成長投資で利益が減少する場合でも2024年10月期の配当金20.00円を下回らないよう配当を実施するとしている。さらに、資本効率や株価水準を踏まえた機動的な自己株式取得、新設した株主優待制度も還元メニューに入っている。これは「成長企業だから無配・低還元で当然」という設計ではなく、「投資優先だが還元の床は切らない」という設計である。
この方針は、2024年12月時点の中計説明資料でもより強い形で示されていた。そこでは、2025年10月期について上限4億円の自己株式取得を予定し、上限まで実施した場合の総還元性向は100%見込みと説明している。少なくとも計画公表時の経営陣は、投資優先と株主還元をトレードオフとせず、手元資金の使い道をかなり積極的に設計していたことになる。現在の1Q資料ではこの「100%」という表現は前面に出ていないが、機動的な自己株取得方針自体は維持されているため、還元スタンスが後退したというより、より平常運転の説明へ戻したとみるのが自然である。
5-7. 中計2028の達成確度を左右する論点
中計2028の達成確度を左右する論点は、かなりはっきりしている。最重要なのは、Cloud と Biz の再現性である。Cloud は直販だけでは届かない顧客への販売体制をどう作るか、Biz は代理店強化と Biz Lite による裾野拡大が本当に効くかが勝負になる。製品力よりも「販売モデルの立ち上がり」が最大の検証点である。中計の数字は野心的だが、販売チャネルが回れば達成可能性は一気に上がり、回らなければ目標は急速に遠のく。
第二に、新規事業10億円の確度である。ここは現在の開示がまだ限定的で、投資家が安心して織り込める段階にはない。サギトレのように立ち上がった商材が複数出てくるのか、既存販路へ横展開できるのか、収益化までの時間軸がどうか。中計のなかで最も「説明はあるが、実績の裏付けがまだ薄い」領域であるため、今後のIRではここが最も評価差を生みやすい。
第三に、人材投資の回収スピードである。2026年10月期計画では、人件費が売上原価・販管費の両面で大きく増える。これは中計達成に必要な先行投資だが、採用した人員がどの程度の期間で戦力化し、どの時点で受注増・売上増・利益回復につながるのかが最大の実務論点になる。会社は第1四半期について概ね想定どおり進捗していると説明しているが、中計評価として本当に重要なのは、四半期進捗率そのものより、採用増が営業生産性の低下で終わらないかどうかである。
総じて、中期経営計画2028は、トビラシステムズにとって「売上高60億円を目指す計画」ではなく、「キャリアOEMを土台に、法人ソリューションと新規事業で企業の評価軸を変える計画」である。目標売上高も営業利益も高いが、より重要なのは、2028年にどういう会社になっていたいかがかなり明確に書かれている点だ。市場が今後評価するのは、中計を出した事実ではなく、Cloud、Biz、新規事業、人材投資の4点が、四半期ごとにどこまで定量で裏付けられていくかである。
6. 株価インサイト
6-1. トビラシステムズの株価をどう読むべきか
結論として、トビラシステムズの株価は、もはや上場時のようなキャリア依存の一本足打法企業、あるいは「特殊詐欺対策の小型株」を素朴に評価する段階にはない。2026年4月22日終値ベースで株価は1,449円、時価総額は145.74億円、会社予想PERは24.25倍、実績PBRは5.77倍、予想配当利回りは1.39%である。これは、日本の小型株として見ればすでに相応のプレミアムが乗っている水準であり、市場は同社を単なる安定配当株でも、単なる割安株でも見ていない。むしろ「高収益のデータベース事業を持ちつつ、ソリューション事業が伸びれば評価軸が一段変わり得る会社」として見始めている、と解釈するのが近い。
この見方を数字で言い換えると、現在の株価は「現状の利益をそのまま薄く評価している」のではなく、「中計2028に向けた事業ポートフォリオ転換の一部」を先回りして織り込んでいる。会社予想ベースのEPSは52.58円で、FY2026/10は売上高3,366百万円、営業利益785百万円の計画である一方、2028年10月期には売上高60億円、営業利益17億円、時価総額250億円以上、目標ROE22%を掲げている。現在の時価総額146億円は、会社が掲げる2028年の時価総額目標250億円に対してまだ届いていないが、かといって市場が中計を無視しているわけでもない。ここが株価理解の出発点である。
6-2. 市場がプレミアムを与えている理由
市場が同社にプレミアムを与える第一の理由は、利益の質が高いことである。FY2025/10の実績は売上高2,805,366千円、営業利益898,744千円、当期純利益625,676千円で、営業利益率は約32%に達した。加えて、Yahoo!ファイナンスの指標でも実績ROEは24.82%、自己資本比率は48.2%である。高ROEかつ無理のない財務で利益を出している会社は、日本の小型株では希少であり、PBRが高くなりやすい。トビラシステムズのPBR 5倍台は一見高く見えるが、資本効率の高さを前提にすれば、完全に説明不能な水準ではない。
第二の理由は、安定収益の土台が明確であることだ。会社はセキュリティ事業を「通信キャリアや金融機関を通じたサービス提供により安定的な収益基盤を構築している」と位置付けており、FY2025/10のセキュリティ事業売上高は1,905,409千円、セグメント利益は1,337,863千円だった。FY2026/10 1Qでもセキュリティ事業売上高は492,913千円、セグメント利益は331,298千円で、前年同期比では横ばい圏でも、利益源としての役割は依然大きい。市場が同社を評価する際、まず見ているのはこの安定土台である。
第三の理由は、単なる守りの事業では終わっていない点にある。FY2025/10のソリューション事業売上高は899,956千円で前年比60.1%増、セグメント利益は151,449千円で同103.8%増だった。FY2026/10 1Qでもソリューション事業売上高は293,189千円、トビラフォン Cloud とトビラフォン Biz の拡販が続いている。市場は、セキュリティ事業をディフェンシブなキャッシュ創出源、ソリューション事業を成長オプションとして二層で評価している。高PBRのかなりの部分は、過去利益よりもこの「次の構成比変化」に対して付いている。
6-3. 現在の株価は何を織り込み、何をまだ織り込んでいないか
現在の時価総額145.74億円をFY2025/10実績売上高で割ると、トレーリングPSRは約5.20倍になる。FY2026/10会社計画売上高3,366百万円で見ても、フォワードPSRは約4.33倍である。これは小型の情報通信株としてかなり軽い評価ではなく、市場が「売上の伸びしろ」に一定の価値を認めていることを示す。他方で、これが純粋なSaaS高成長株並みの熱狂かというと、そこまでは行っていない。現在の評価は、「高収益の既存事業を持つ会社が、SaaS的な再評価を受けるかもしれない」という中間地帯にある。
市場は中計2028のストーリーを半分は信じ、半分はまだ確認待ちにしている。会社は2028年10月期に売上高60億円、時価総額250億円以上を掲げているが、現在の時価総額146億円はその目標に対してまだ約6割の位置にある。一方で、2028年に60億円売上を達成して時価総額250億円となる場合のPSRは約4.2倍であり、現在のフォワードPSR約4.3倍と大きくは変わらない。市場は、単純な売上目標達成だけで大きく再評価するというより、「売上の中身が本当にソリューション寄り・高付加価値寄りに変わるのか」「利益の伸びが伴うのか」を見ている可能性が高い。これは重要な論点である。
6-4. 類似企業比較の考え方
トビラシステムズの比較対象は、一社に固定するのではなく、三つの箱で考えるべきである。第一に、通信キャリア向けOEMと迷惑情報データベースという高収益の既存事業を見るためのデータ資産・インフラ型の箱。第二に、トビラフォン Cloud・Biz・BizLite というサブスクリプション成長領域を見るための中小企業向け SaaS型の箱。第三に、サギトレや迷惑電話対策の横展開を含む新規事業領域を見るための社会課題対応・拡張オプション型の箱である。トビラシステムズはこの三つの交点に位置するため、どれか一つの比較だけを持ち込むと必ず見誤る。これは同社の株価が割安か割高かを考えるうえで、かなり重要な前提である。
もしデータ資産・インフラの箱だけで見るなら、予想PER24倍台・実績PBR5倍台という水準は、営業利益率30%超・ROE24%台という資本効率を前提にすれば説明不能ではない。一方で、もしSaaS成長株の箱だけで見るなら、FY2026/10会社計画売上ベースのフォワードPSR約4.3倍はむしろ控えめであり、市場は Cloud / Biz の定期収益価値を相対的に慎重に織り込んでいるとも解釈できる。この"評価の揺れ"こそがトビラシステムズの難しさであり、同時に妙味でもある。市場はまだ同社を完全には言語化できていない。だからこそ、今後どの箱に近づくかで株価のレンジ自体が変わりうる。
当社は、現時点では市場はトビラシステムズを高収益の既存事業を中心に評価していると考える。その理由は、PBRが5倍台でもPERは20倍台半ばにとどまり、評価の中心がなおセキュリティ事業の安定収益と高ROEに置かれているからである。ただし、FY2026/10から FY2028/10 にかけて トビラフォン Cloud と Biz の定期収益比率が高まり、サギトレを含む新規事業が実売上として具体的に積み上がってくれば、比較対象は徐々に SaaS・成長サービス寄りへ移る可能性がある。そのとき初めて、株価は単なる"高収益の迷惑電話対策小型株"ではなく"継続的に評価軸を変えられる複合ITサービス成長株"として再評価されうる。
6-5. リレーティングの条件
株価が一段高へ移る条件は明快で、第一にソリューション事業の再現性が数字で証明されることである。会社は中計2028でトビラフォン Cloud 18億円、トビラフォン Biz 12億円を目標に置いているが、現時点ではまだその途上にある。FY2026/10 1Qでは Cloud / Biz の拡販が続き、代理店経由の取次やカスタマーハラスメント対策需要を背景に販売を伸ばしている。また、BizLite の投入で小規模事業者向けにも裾野を広げ始めた。市場が本当に見たいのは、この動きが単発の導入事例ではなく、四半期ごとに積み上がる販売モデルへ転化するかどうかである。
第二に、通信キャリア向けの安定収益が崩れず、むしろデータベース提供先の拡大で底上げされることである。2026年3月には NTTタウンページ向けの詐欺対策アプリ開発、ctc のホームルーター採用、NTT東日本「おまかせオフィステレフォン」への迷惑電話ブロック機能提供など、同社の迷惑情報データベースの提供先が広がっている。会社側も Q&A で、J:COM の無料化施策による当期売上寄与を数千万円規模と説明している。市場がここで期待するのは、単なる契約件数増ではなく、「データベースが別チャネルにも流用できる企業」への再定義である。これが進むほど、同社は迷惑電話対策の一点株から、通信起点のセキュリティ基盤株へ見え方が変わる。
第三に、FY2026/10の減益が一時要因で終わることを市場が確信できるかである。会社は、2026年10月期を成長投資の年と位置付け、通期で売上高3,366百万円、営業利益785百万円を見込む一方、オフィス移転関連45百万円、のれん償却60百万円、その他20百万円の一過性費用を除けば、2025年10月期比で実質増益になるとの見方を示している。しかも中計2028期間中は配当性向35%を目安としつつ、20円配当を下限とし、株価水準や資本効率を踏まえた自己株取得も機動的に行う方針である。株価の上方向は、成長投資の説明を市場が信じるかではなく、その後に本当に利益の回復と拡大が起きるかで決まる。
6-6. アンチテーゼ:どこで評価が崩れるか
逆に評価が崩れるポイントもはっきりしている。最大のリスクは、ソリューション事業が伸びても、その伸びが販管費や採用費の増加を吸収しきれず、「売上は伸びるが利益率は下がる会社」と見なされることである。FY2026/10 1Qは売上高16.8%増でも営業利益12.5%減であり、ソリューション事業拡大の裏で費用先行がすでに顕在化している。したがって市場は、今後の成長を好感する一方で、「この会社はどこまで高収益を維持できるのか」という問いを常に持ち続ける。高PBR株ほど、利益率低下に対する市場の反応は厳しい。
二つ目のリスクは、比較可能企業の不在が逆に評価の不安定さを生むことである。トビラシステムズは、通信キャリア向けOEM、迷惑情報データベース、法人向け通話管理、カスハラ対策、新規訓練サービスが混在する会社である。このため、業績が好調な局面では「ユニークな複合モデル」として評価されやすい反面、数字が少しでも鈍ると「何の会社なのか分かりにくい」というディスカウントが起きやすい。特に、Cloud / Biz / 新規事業の売上がまだ通信キャリア向けほどの規模に達していない現段階では、評価軸の定着そのものがリスクでもある。
三つ目のリスクは、通信キャリア側の施策変更や無料化が、契約者数拡大に寄与しても単価や利益の見え方を難しくする点である。J:COM の無料化施策は導入拡大にはプラスだが、市場は「普及拡大」と「収益性向上」を同義には見ない。また、政府の総合対策2.0や各通信事業者の対策強化は追い風である一方、詐欺対策機能が通信サービスの標準装備へ近づくほど、将来の価格設計や取り分の見え方は複雑になる。セキュリティ事業は安定源泉でありながら、永遠の高成長源泉とは限らない。ここをどう乗り越えるかが、株価の上限を決める。
6-7. 市場が次に確認したい論点
今後の株価を左右する確認項目はかなり整理しやすい。市場が最も見たいのは、①ソリューション事業売上の高成長継続、②Cloud の代理店経由を含めたID積み上がり、③Biz と BizLite の販売台数増加、④新規事業の実売上化、⑤FY2027/10以降の利益再加速である。加えて、会社が掲げる時価総額250億円以上という目標は、現時点の146億円からみれば達成不能な距離ではないため、市場は「遠い夢」より「中計の第一段階を本当にクリアできるか」を見るはずである。
総じて、トビラシステムズの株価は「割安放置株」ではなく、「高収益の基盤事業を持つ小型成長株」としてすでに一定の評価を受けている。ただし、その評価は純粋な熱狂ではなく、ソリューション事業と新規事業の証明待ちを含んだ条件付きのプレミアムである。市場が次に評価するのは、特殊詐欺対策というテーマ性そのものではない。テーマを、再現性のある四半期成長、そして2027年10月期以降の利益回復へつなげられるかである。ここを超えられれば、同社は「社会課題対応銘柄」から「継続的に高い資本効率を出す成長株」へ評価軸を変えられる。逆に超えられなければ、現在のPBR 5倍台は重くなる。
7. Appendix
出所:財務諸表サマリー(4441 トビラシステムズ、2026年4月21日時点、有価証券報告書および決算短信ベース)より AENTRO Research 作成。原ファイル `reports/TobilaSystems/ir_materials/4441_Tobila_Systems_Inc_CompanyFinancialSummary_20260420171945.xlsx`。決算区分は 単体・日本基準・日本円、FY2022/10〜FY2025/10 は有報、FY2026/01 LTM・FY2026/10(会社予想)は決算短信ベース。
7-1. 損益計算書(単位:百万円)
| 科目 | FY2022/10 | FY2023/10 | FY2024/10 | FY2025/10 | FY2026/01 LTM | FY2026/10 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,682 | 2,061 | 2,406 | 2,805 | 2,918 | 3,366 |
| 売上総利益 | 1,176 | 1,433 | 1,706 | 1,935 | 1,992 | — |
| 販売費及び一般管理費 | 635 | 750 | 874 | 1,036 | 1,125 | — |
| EBITDA | 694 | 871 | 1,032 | 1,081 | 1,049 | 967 |
| 営業利益 | 541 | 683 | 832 | 899 | 867 | 785 |
| 経常利益 | 532 | 679 | 830 | 907 | 883 | 796 |
| 特別利益 | 6 | 70 | 31 | 5 | — | — |
| 特別損失 | 46 | — | — | 41 | — | — |
| 税金等調整前当期純利益 | 492 | 749 | 860 | 871 | 846 | — |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 322 | 518 | 602 | 626 | 610 | 531 |
7-2. 貸借対照表(単位:百万円)
| 科目 | FY2022/10 | FY2023/10 | FY2024/10 | FY2025/10 | FY2026/01 LTM | FY2026/10 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 資産合計 | 2,667 | 3,647 | 4,356 | 5,381 | 5,645 | — |
| 流動資産 | 1,836 | 2,816 | 3,649 | 4,427 | 4,534 | — |
| 固定資産 | 831 | 831 | 706 | 954 | 1,111 | — |
| 有形固定資産 | 58 | 104 | 91 | 99 | 165 | — |
| 無形固定資産 | 477 | 405 | 309 | 210 | 194 | — |
| 投資その他の資産 | 296 | 322 | 306 | 646 | 752 | — |
| 負債合計 | 956 | 1,510 | 1,914 | 2,786 | 3,119 | — |
| 流動負債 | 711 | 1,314 | 1,769 | 2,690 | 3,036 | — |
| 固定負債 | 246 | 196 | 146 | 96 | 83 | — |
| 純資産合計 | 1,711 | 2,137 | 2,441 | 2,595 | 2,526 | — |
| 株主資本等合計 | 1,711 | 2,137 | 2,441 | 2,595 | 2,526 | — |
| ネット有利子負債(除く現預金・短期性有価証券) | -1,140 | -2,159 | -3,020 | -3,793 | -3,917 | — |
| 現預金同等物及び短期性有価証券 | 1,436 | 2,405 | 3,216 | 3,939 | 4,000 | — |
| 有利子負債残高 | 296 | 246 | 196 | 146 | 83 | — |
| 運転資本 | 320 | 332 | 337 | 361 | 394 | — |
| 売上債権 | 248 | 248 | 276 | 330 | 378 | — |
| 棚卸資産 | 91 | 99 | 76 | 40 | 26 | — |
| 買入債務 | 19 | 15 | 15 | 9 | 10 | — |
7-3. キャッシュ・フロー計算書(単位:百万円)
| 科目 | FY2022/10 | FY2023/10 | FY2024/10 | FY2025/10 | FY2026/01 LTM | FY2026/10 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 営業活動によるキャッシュフロー | 642 | 1,221 | 1,306 | 1,752 | — | — |
| 投資活動によるキャッシュフロー | -189 | -91 | -78 | -1,384 | — | — |
| 財務活動によるキャッシュフロー | -163 | -161 | -416 | -549 | — | — |
| フリーキャッシュフロー | 453 | 1,130 | 1,228 | 368 | — | — |
※企業の会計基準は国により異なるため、財務比較を可能にするために本セクションの財務データは標準化されています。そのため、営業利益(日本企業を除く)、EBIT、EBITDAなどの財務データは、計算された値となっています。
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