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AENTRO Research
Initiation Report | 2026年5月11日
ツクルバ2978
「中古住宅×テクノロジー」で住宅流通を変える——粗利率低下の裏に潜む販管費レバレッジの爆発力
No Rating / No Target Price
TSE Growth
株価(2026/5/11終値)時価総額発行済株式数FY25/7 売上高FY25/7 営業利益FY26/7E 売上高
432円51億円1,172.2万株8,099百万円275百万円12,000百万円

1. 会社概要

1-1. サマリー

項目内容
会社名株式会社ツクルバ(TSUKURUBA Inc.)
証券コード2978(東証グロース市場)
代表取締役CEO野村駿太郎
創業者村上浩輝、中村真広
設立2011年8月
本社東京都渋谷区恵比寿四丁目3番14号 恵比寿SSビル
上場日2019年7月(東証マザーズ、現グロース市場)
決算期7月期
従業員数連結235名、臨時69名(FY2025/07末)
資本金14,698千円(FY2025/07末)
直近売上高8,099百万円(FY2025/07 連結)
直近営業利益275百万円(FY2025/07 連結)
cowcamo会員数約57万人(FY2025/07末)

出所:有価証券報告書・決算短信よりAENTRO Research作成

ツクルバは、中古・リノベーション住宅の流通プラットフォーム「cowcamo(カウカモ)」を運営する不動産テック企業である。FY2025/07の連結売上高は8,099百万円、営業利益は275百万円。cowcamoの会員基盤は57万人に達し、首都圏の中古・リノベーション住宅市場において独自のポジションを築いている。

同社を単なる不動産仲介会社として捉えるのは不正確である。ツクルバの本質は、中古住宅の「仕入・企画プロデュース・リノベーション・販売」をテクノロジーで統合する住宅流通のリ・デザイン企業にある。cowcamoは物件情報を掲載するポータルサイトではなく、物件の発掘から企画・リノベーション設計・メディア掲載・エージェントによる仲介・付帯サービスの斡旋まで、中古住宅のバリューチェーン全体をカバーするプラットフォームである。

このことを裏付けるのが、同社の収益構造の変化である。売上高はFY2022/07の2,766百万円からFY2025/07の8,099百万円へ3年で約2.9倍に拡大した。この間、粗利率は66.7%から43.7%へ低下したが、これは利益の質の劣化ではなく、仲介手数料中心のモデルから自社企画商品(再販)を加えたモデルへの構造転換を映している。より重要なのは、販管費率が同期間に94.6%から40.4%へ劇的に改善した点である。テクノロジー基盤の限界費用の低さが、売上拡大とともに利益を生み出す構造を作りつつある。

ツクルバはいま、長い赤字局面を脱して利益体質へ転換する過渡期にある。FY2022/07に営業損失774百万円だった会社が、FY2025/07には営業利益275百万円を計上するに至った。FY2026/07Eでは売上高12,000百万円、営業利益370百万円を見込む。第1章では、この変化がどのような経営思想と組織体制のもとで起きているのかを整理する。

1-2. 基本情報

正式名称は株式会社ツクルバ、英語表記はTSUKURUBA Inc.。2011年8月に東京都渋谷区で設立され、現在の本社は東京都渋谷区恵比寿に置く。2019年7月に東京証券取引所マザーズに上場し、2022年4月の市場再編に伴いグロース市場へ移行した。決算期は7月期であり、不動産業界の一般的な3月期決算とは異なる。

FY2025/07末時点の連結従業員数は235名、うち臨時雇用者(契約社員・アルバイト)の年間平均は69名である。FY2024/07の連結従業員数は197名であったことから、この1年で約2割の人員増を実行したことになる。当社グループは、ツクルバ本体と連結子会社1社(株式会社ツクルバボックス)の計2社で構成されている。

1-3. 会社の定義

本レポートでは、ツクルバを「中古住宅の仕入・企画プロデュース・リノベーション・販売をテクノロジーで統合する住宅流通のリ・デザイン企業」と定義する。

この定義を置く理由は3つある。第一に、同社は不動産仲介だけを行う会社ではない。cowcamoは、中古住宅の仲介手数料を収益源とする「仲介・付帯サービス」と、自ら物件を仕入れてリノベーション企画・施工・販売を行う「自社企画商品」の二つの収益形態を持つ。会社はこの両輪を「ネット計上(手数料)」と「グロス計上(販売金額)」として整理しており、両方を内包する事業設計がcowcamoの特徴である。

第二に、同社のプラットフォームは情報流通だけでなく、バリューチェーン全体をカバーしている。有価証券報告書では、中古・リノベーション住宅における「一連の顧客体験の統合・刷新」「住宅デザイン企画・メディア運営・エージェントサービスの一連のオペレーションの統合・最適化」「顧客ニーズや物件のデザイン、取引データなどの独自データの活用」を3つの特徴として整理している。これは物件情報を右から左に流す仲介業ではなく、住宅の価値そのものを企画・再定義する事業モデルである。

第三に、テクノロジーが事業の基盤となっている。顧客管理システム、業務支援システム、チャットアプリはすべて自社開発であり、非熟練者でもオペレーションを遂行可能な「事業拡大に柔軟に対応可能な組織の拡張性」を生んでいると会社は説明する。この拡張性こそが、販管費率を94.6%から40.4%へ改善させたドライバーであり、テクノロジー企業としてのツクルバの本質を示している。

1-4. 沿革

年月概要
2011年8月東京都渋谷区に株式会社ツクルバを設立
2011年12月コワーキングスペース「co-ba shibuya」を開業
2012年6月空間デザイン・プロデュース事業(現・不動産企画デザイン事業)を開始
2015年1月中古・リノベーション住宅流通プラットフォーム「cowcamo」ベータ版を公開
2015年6月「cowcamo」正式版を公開
2016年9月「cowcamo」がグッドデザイン賞を受賞
2017年11月「cowcamo」iOSアプリを正式公開
2018年12月Androidアプリが「Google Play ベスト オブ 2018」優秀賞受賞
2019年7月東京証券取引所マザーズに上場
2020年7月丸井グループと資本業務提携契約を締結
2022年4月東証グロース市場に移行
2023年11月不動産企画デザイン事業の会社分割・株式譲渡を完了

出所:有価証券報告書よりAENTRO Research作成

ツクルバの沿革は、大きく3つのフェーズで整理できる。

第一フェーズ(2011〜2014年)は創業と事業模索の時期である。共同創業者の村上浩輝氏と中村真広氏が「場の発明を通じて欲しい未来をつくる」という理念のもと会社を設立し、最初はコワーキングスペース「co-ba」や空間デザイン事業から始めた。この時期の同社はまだ不動産テック企業というより、空間プロデュース会社の色彩が強かった。

第二フェーズ(2015〜2019年)は、cowcamoの誕生と上場までの成長期である。2015年にcowcamoのベータ版を公開し、中古・リノベーション住宅に特化したプラットフォーム事業へ舵を切った。グッドデザイン賞やGoogle Playでの受賞を経て、2019年7月に東証マザーズへ上場を果たす。cowcamoの事業モデルが確立し、同社の輪郭が「住宅流通のリ・デザイン企業」として固まった時期である。

第三フェーズ(2020年〜現在)は、事業の選択と集中、そして自社企画商品への展開である。2020年に丸井グループとの資本業務提携を行う一方、2023年11月に不動産企画デザイン事業を切り離し、cowcamo事業への一本化を完了した。仲介だけでなく自社企画商品(再販)に本格参入し、売上高は急拡大。同社はいま、プラットフォーム企業からバリューチェーン統合企業へ進化する途上にある。

1-5. 経営陣

経営陣を見ると、同社は創業者から経営のバトンを渡し、不動産実務とテクノロジーのハイブリッド体制へ移行しつつあることが分かる。

代表取締役CEOの野村駿太郎氏は、2025年9月に就任した。コスモスイニシアのリテール仲介・中古買取再販部門で最年少管理職を務め、仕入・販売領域の責任者を経験した後、2023年7月にツクルバへ入社。執行役員、上級執行役員CROを経て現職に至った。中古住宅の仕入・再販という同社の成長ドライバーの実務を知る人材がトップに立ったことは、自社企画商品の拡大フェーズにおいて整合的な人事である。

取締役CSOの北原寛司氏は、東京工業大学大学院博士課程修了、パリ・ドフィーヌ大学MBA修了という学術的バックグラウンドを持ち、コーポレイトディレクション、デロイトトーマツコンサルティングを経て2016年にツクルバへ入社。2018年から取締役COOとして事業運営を担い、現在はCSOとして戦略を統括する。

取締役の竹内真氏はビジョナル(旧ビズリーチ)の取締役CTOを務めた技術者であり、テクノロジー面での知見を経営に注入する役割を担う。創業者の村上浩輝氏も取締役として経営に関与し続けている。社外取締役には、LayerX代表取締役CEOの福島良典氏、ディー・エヌ・エー元取締役でシニフィアン共同代表の小林賢治氏など、テクノロジーとベンチャー経営に精通した人材が揃う。

なお、FY2025/07において元代表取締役に関するコンプライアンス上の疑義が発覚し、社内調査委員会による調査と再発防止策の策定が行われた。同社はこれを受けてガバナンス体制の充実を進め、2025年2月に指名・報酬委員会を設置している。経営体制の刷新とガバナンス強化が同時に進行した1年だったといえる。

1-6. 主要株主と資本構成

資本構成は、創業者とVCが中心を占める典型的なグロース上場企業のパターンである。2025年7月31日現在の大株主上位10名の構成は以下のとおりである。

株主名所有株式数(株)持株比率(%)
村上浩輝(創業者)2,182,00019.17
株式会社エイチ1,167,50010.26
株式会社ワングローブキャピタル901,5007.92
合同会社エム885,0007.78
日本カストディ銀行(証券投資信託口)867,8007.63
中村真広(共同創業者)806,5007.09
竹内真(取締役)478,8004.21
イーストベンチャーズ投資事業有限責任組合350,0003.08
佐護勝紀250,0002.20
SBI証券187,6851.65
上位10名合計8,076,78570.97

出所:有価証券報告書よりAENTRO Research作成

筆頭株主は創業者の村上浩輝氏で19.17%。共同創業者の中村真広氏7.09%、取締役の竹内真氏4.21%を合わせると、経営関与者の直接保有だけで30%を超える。創業者が筆頭株主であり続けていることは、中長期の戦略遂行にとってはポジティブな要素である。一方、イーストベンチャーズや株式会社エイチ、合同会社エムなど、初期投資家の存在感も大きい。

発行済株式総数はFY2025/07末で11,715,200株(普通株式)、自己株式335,709株を除くと11,379,491株が流通している。加えてA種種類株式が700株発行されており、これは非上場で1株当たり10,000円の年間配当が付される優先株式である。なお、同社はストック・オプションを複数回発行しており、権利行使による希薄化の可能性は留意すべき論点である。

普通株式への配当は現時点で未定であり、FY2025/07、FY2026/07Eともに無配の方針である。会社は「内部留保の充実を図り、事業の効率化及び拡大のための投資を積極的に行い、企業価値の向上を図ることが、株主に対する最大の利益還元につながる」と説明している。成長投資を最優先とする資本政策は、現在の事業フェーズに鑑みれば合理的である。

1-7. 経営理念・ミッション

同社は創業時の企業理念として「『場の発明』を通じて欲しい未来をつくる。」を掲げて設立された。現在のビジョンは「住まいの『もつ』を自由に。『かえる』を何度でも。」であり、中古住宅の所有と売買を、もっと柔軟で自由なものに変えていくという方向性を示している。

この理念を投資家向けに翻訳すると、同社が狙うのは「中古住宅の流通摩擦を下げること」である。日本の住宅市場は新築偏重が長く続き、中古住宅は情報の非対称性や品質への不安から流通効率が低かった。cowcamoは、メディア・エージェント・リノベーション企画・テクノロジーを統合することで、中古住宅の価値を可視化し、取引コストを引き下げる装置として設計されている。

重要なのは、この理念が単なるスローガンにとどまらず、事業の設計原則として機能している点である。仲介手数料だけに依存するのではなく自社企画商品で住宅の価値を再定義する方針、57万人の会員基盤をプラットフォームの資産として活用する戦略、取引データを物件企画やリノベーション設計にフィードバックする仕組み——いずれも「住まいの『もつ』と『かえる』を自由にする」という思想から論理的に導かれている。以後の分析では、この理念的表現を「中古住宅バリューチェーンの統合」「住宅流通プラットフォーム」「データ駆動型の住宅企画」といった分析用語に置き換えて扱う。

2. 事業内容

2-1. 事業全体像

ツクルバの事業を理解するうえでまず重要なのは、同社を単なる「不動産仲介会社」や「不動産ポータルサイト運営会社」として捉えないことである。

同社はカウカモ事業の単一セグメントで構成される。開示上のセグメントは1つだが、収益形態は大きく二つに分かれる。第一が「仲介・付帯サービス」——中古住宅の売買仲介手数料とリノベーション等の斡旋手数料をネット計上するモデル。第二が「自社企画商品」——自ら中古物件を仕入れ、リノベーション企画・施工を行い、完成物件を販売するグロス計上のモデルである。会社はこの二つの収益形態が混在するため、「売上総利益」を財務上の主要収益指標(財務KPI)に定めている。

この事業設計の本質は、中古住宅流通のバリューチェーンを垂直統合していることにある。既存の不動産流通構造では、査定サイト、仲介会社、買取再販会社、リノベーション会社、ポータルサイトがそれぞれ分業しており、情報と体験の分断が大きい。cowcamoは「売る(リノベ価値評価・AI査定・潜在買主とのマッチング)」「つくる(ニーズ理解・デザインノウハウに基づく独自企画)」「買う(オンライン-オフラインを統合したUX・サービス)」を一連のプラットフォーム上で統合している。当社は、この垂直統合こそがツクルバのビジネスモデルの核心とみる。

なお、同社はかつて「不動産企画デザイン事業」を第二のセグメントとして運営していたが、2023年11月に会社分割・株式譲渡により切り離しを完了した。現在はcowcamo事業に完全に一本化されており、経営資源の分散はない。

2-2. cowcamoのビジネスモデル

cowcamoの収益は、仲介手数料モデルと再販モデルが共存する構造になっている。この共存が同社の財務を読み解くうえで最も重要な前提である。

仲介・付帯サービスでは、買主・売主への売買仲介手数料がネット計上される。原価は原則として発生しないため、手数料率がほぼそのまま粗利となる。加えて、リノベーション事業者や付帯サービス事業者への顧客斡旋による手数料も同様にネット計上される。FY2025/07通期の仲介・付帯サービス売上総利益は、四半期データを積み上げると709+694+688+806=2,897百万円に達し、カウカモ事業の売上総利益3,541百万円の約82%を占める。仲介・付帯サービスは依然として利益の柱である。

自社企画商品は、物件の仕入金額と施工金額が売上原価となり、販売金額がグロスで売上計上される。粗利率は仲介より大幅に低いが、1件当たりの粗利額は仲介を上回りうる。FY2025/07通期の自社企画商品売上総利益は81+158+239+165=643百万円。直近4四半期でみると、Q3(239百万円)が突出して大きく、在庫販売の進捗タイミングで四半期ごとの変動が生じやすい。

この二つのモデルの混在が、同社の粗利率が期を追うごとに低下している構造的な理由である。SSoTの数字を確認すると、粗利率はFY2022/07の66.7%からFY2025/07の43.7%、直近LTMでは37.5%まで下がっている。これは利益の質の劣化ではない。グロス計上の自社企画商品が拡大すれば、売上高は大きく伸びるが、粗利率は数学的に低下する。投資家が見るべきは粗利率ではなく、粗利額の絶対水準と、その増加ペースである。

2-3. 再販事業の収益構造

自社企画商品のビジネスは「仕入」「開発」「販売」の3フェーズで構成される。会社資料では、このプロセスにおけるcowcamoプラットフォームとのシナジーを強調している。

仕入フェーズでは、cowcamoの人気エリアデータを活用した「ドミナント戦略」をとる。cowcamoで蓄積された需要データに基づいて人気エリアに集中的に仕入れることで、高い仕入効率を実現しているという。開発フェーズでは、cowcamoの取引データに基づいて顧客ニーズに最適化したリノベーションを企画する。メーカーと連携したオリジナル商材の開発も進めている。販売フェーズでは、57万人超のcowcamo会員とのマッチングにより、スピーディーな売却を実現する。

ここで注目すべきは、自社企画商品がcowcamoプラットフォームと完全に分離した別事業ではなく、同一プラットフォーム上の派生ビジネスとして設計されている点である。仲介で蓄積したデータとユーザー基盤が再販の仕入・企画・販売を支え、再販で供給される魅力的な物件が仲介ユーザーの満足度を高め、会員基盤の拡大に寄与する。会社はこれを「売/買が循環する成長サイクル」と表現している。

再販事業の拡大は当然ながら棚卸資産の積み増しを伴う。四半期末の在庫金額(簿価ベース)は、FY2024/07 Q1の10億円からFY2026/07 Q2には49億円まで急拡大した。SSoTの数字でも、棚卸資産はFY2025/07の3,485百万円からFY2026/01 LTMでは4,910百万円へ膨らんでいる。有利子負債もFY2025/07の3,656百万円からFY2026/01 LTMでは4,491百万円に増加し、D/Eレシオは1.89倍から2.39倍に上昇した。自己資本比率は31.5%から27.7%へ低下している。

再販事業の拡大が棚卸資産と有利子負債の膨張を伴う以上、在庫の回転効率は同社の収益力と財務健全性を左右する最重要KPIの一つである。SSoTの棚卸資産回転期間はFY2023/07に184.85日まで短縮した後、FY2025/07には214.63日、LTMでは224.56日と再び長期化している。会社は「資本効率性(回転率×粗利率)」を自社企画商品のKPIとして開示しており、業界水準より秀でた水準だと説明しているが、在庫金額の急拡大局面では回転期間の推移に注意が必要である。

2-4. テクノロジー基盤

cowcamoのプラットフォームは、3つの技術的特徴を持つ。

第一に、顧客体験の統合である。従来の店舗やチラシ、物件情報検索サイトに対し、cowcamoはソーシャルメディア等のチャネルに特化し、独自に撮影した画像や取材記事を中心としたコンテンツ型メディアとしての物件情報流通モデルを確立した。会員向けには、嗜好にあった物件を選定・提案するネイティブアプリ、エージェントとのコミュニケーションをオンラインチャット上で行えるアプリを提供する。この顧客体験の統合が、57万人の会員基盤を支えている。

第二に、業務オペレーションの統合である。顧客管理システム、エージェントの業務支援システム、チャットアプリはすべて自社開発であり、一連の業務フローがシステム化されている。有価証券報告書では、これにより「非熟練者でもオペレーションを遂行できることから事業拡大に柔軟に対応可能な組織の拡張性を実現している」と説明されている。実際、販管費率が94.6%から40.4%へ半分以下になった裏側には、この自社システムによるオペレーション効率化がある。

第三に、独自データの蓄積と活用である。cowcamoでは、顧客の嗜好データ、リノベーションのデザインデータ、物件・取引データを蓄積し、ユーザーニーズの分析、最適なリノベーション企画の立案、販売価格の推計等に活用している。この蓄積データが自社企画商品の仕入判断・企画設計・価格設定を支えており、仲介と再販を結ぶデータ循環の核となっている。

テクノロジー基盤の投資家にとっての意味は、限界費用の低さにある。仲介取引件数が増えても、あるいは自社企画商品の販売が増えても、プラットフォーム側のコストは線形には増えない。売上総利益に対する販管費率(売上総利益販管費率)は、FY2022/07の160%近辺からFY2025/07末には87%まで改善した。この改善余地がさらにあるかどうかが、同社の中長期的な利益ポテンシャルを左右する。

2-5. 主要KPI

同社が開示する主要KPIは、仲介・付帯サービスと自社企画商品で明確に分かれている。

仲介・付帯サービスのKPIフレームワークは以下の分解式で整理される。売上総利益=取引件数×収益単価。取引件数は営業人員数×営業生産性(営業人員あたり取引件数)に分解でき、収益単価は仲介収益+付帯サービス収益に分解される。

KPIFY2024/07FY2025/07前期比
取引件数(通期・決済ベース)1,048件1,096件+5%
収益単価(通期・決済ベース)約2.5百万円約2.7百万円+8%
稼働営業人員数(Q4平均)70人69人△1%
営業生産性(Q4・決済ベース)1.4件1.5件+7%

出所:決算説明資料よりAENTRO Research作成

FY2025/07 Q4の取引件数は305件(決済ベース)で、4四半期連続の伸長となった。収益単価もFY2024/07 Q4の2.6百万円からFY2025/07 Q4は2.6百万円と安定している。稼働営業人員数はQ4で69人と前年同期比でほぼ横ばいだったが、営業生産性は1.5件と改善。会社は集客の改善と営業人員の平均習熟度向上を要因として挙げている。

自社企画商品のKPIは「在庫金額(簿価ベース)」と「資本効率性(回転率×粗利率)」で管理される。在庫金額はFY2024/07 Q4の19億円からFY2025/07 Q4には35億円へ拡大し、FY2026/07 Q2時点では49億円に達した。投下資本を増やしながら回転率と粗利率を維持できるかが、再販事業のスケーラビリティを測る鍵となる。

会社全体の効率性をSSoTの数字で確認する。一人当たり売上高はFY2022/07の14,332千円からFY2025/07の34,464千円へ2.4倍に改善した。上場以降の生産性(売上総利益÷通期平均人員数)も約2.4倍に向上しており、会社はこの指標をcowcamoのプラットフォーム効率の代理変数として重視している。

指標FY2022/07FY2023/07FY2024/07FY2025/07FY2026/07E
売上高(百万円)2,7664,1535,4838,09912,000
営業利益(百万円)△774△132155275370
営業利益率△28.0%△3.2%2.8%3.4%3.1%
粗利率66.7%60.7%51.5%43.7%
販管費率94.6%63.9%48.7%40.4%
一人当たり売上高(千円)14,33222,81927,83234,464
cowcamo会員数(万人)28374457

出所:決算短信・決算説明資料よりAENTRO Research作成

このテーブルから読み取るべきは、粗利率の低下と販管費率の改善が交差する構造である。粗利率は自社企画商品の拡大に伴い低下を続けているが、販管費率はそれ以上のペースで改善している。この「粗利率低下<販管費率改善」の関係が、同社が赤字から黒字に転換し、さらに増益を続けている理由である。

2-6. 顧客と市場

cowcamoのターゲット顧客は、中古・リノベーション住宅の購入を検討する個人である。特に、嗜好性の高い住まいを求め、既存の画一的な物件情報に満足していない層を主要ターゲットとしている。会員数は57万人に達しており、このユーザープールが仲介と再販の両方を支えるプラットフォーム資産である。

エリア戦略は首都圏中心のドミナント戦略をとる。成長可能性資料によれば、cowcamoが対象とする市場規模は、東京都の築20年以上・40㎡超マンション(購入前後リフォーム実施)で2.3兆円、首都圏まで広げると3.7兆円、首都圏40㎡超マンション全体で8.0兆円と整理されている。国土交通省の「住生活基本計画」では、中古住宅流通市場とリフォーム市場の合計で全国20兆円規模への成長が政府の長期目標として掲げられている。

東京都における同社のシェアは約2.9%にすぎず、市場浸透余地は依然として大きい。中古住宅市場は、築25年以上の中古マンションが首都圏ストックの6割を超える構造変化のなかにあり、リノベーション住宅が「あたりまえの選択肢」になりつつある。新築マンション価格の高騰、ストック活用政策の推進、ニーズの多様化が追い風として作用しており、cowcamoの事業ドメインは構造的な拡大局面にある。

競争環境について、cowcamoはポータルサイトとも仲介専業とも買取再販会社とも異なるポジションを取っている。不動産ポータルサイト(SUUMO等)はメディア機能に特化し自ら仲介は行わない。財閥系仲介会社は仲介に特化し自社で企画・リノベーションは行わない。中古住宅再販会社は仕入・再販に特化しメディア機能は持たない。cowcamoはこれらの機能を統合し、「見るだけで楽しいという顧客体験」と「蓄積されたユーザーとデータに基づく早く適切なマッチング」を武器に、独自のポジションを構築している。この垂直統合型のポジショニングが、参入障壁の源泉でもある。

同社の事業内容を総括すると、ツクルバは表面上は「粗利率が低下している不動産会社」に見えるが、実態は「仲介で蓄積したデータとユーザー基盤を武器に、再販事業を垂直統合しながら、テクノロジーによる販管費レバレッジで利益を刈り取るプラットフォーム企業」である。粗利率の低下は仲介から再販へのミックスシフトの帰結にすぎず、同社の事業の本質は販管費率94.6%から40.4%への劇的改善に表れている。第3章以降では、この構造がどのような成長戦略と結びついているのかを分析する。

3. 経営戦略

3-1. 成長戦略の全体像

ツクルバの経営戦略を理解するうえで重要なのは、同社が単なる不動産仲介会社の拡大版ではなく、「仲介で顧客基盤を作り、再販で売上規模を取り、テクノロジーで利益を刈る」二段階戦略を実行中の企業だと捉えることである。

同社は2022年7月期に売上高2,766百万円・営業利益△774百万円の深い赤字にあった。そこからわずか3年で売上高8,099百万円(FY2025/07)まで2.9倍に拡大し、営業利益も275百万円の黒字へ転換した。この急成長を牽引したのが、仲介・付帯サービスに加えて自社企画商品(中古マンションの仕入・リノベーション・再販)を積極的に拡大する戦略転換である。会社は「流通規模の拡大」と「付加価値獲得領域の拡大」を両輪に位置付け、売上総利益の高成長を継続する方針を示している。

当社は、同社の現在地を「規模獲得フェーズの後半、利益回収フェーズの入口」と位置付ける。FY2022/07からFY2025/07にかけて売上総利益は約2倍(1,844百万円→3,543百万円)に成長し、一人当たり売上高も14,332千円から34,464千円へ2.4倍に改善した。規模はすでに手に入った。問題は、ここから先、販管費レバレッジが営業利益率の持続的な改善につながるかどうかである。

3-2. 競争優位

ツクルバの競争優位を一言で整理すれば、「中古住宅という一点ものの商品に、データとデザインで再現可能な価値ストーリーを付加できる唯一のプラットフォーム」ということになる。

第一に、cowcamoの顧客基盤である。会員数は55万人超(FY2025/07末)、年間累計利用者数は260万人超に達し、中古・リノベーション住宅に関心を持つ買主の巨大なプールを保有している。これは売主にとって「早く適正な価格で売れる」チャネルとして機能し、買主にとっては「良いものを手軽に手に入れられる」入口として機能する。両サイドのネットワーク効果が、cowcamoの参入障壁を高めている。

第二に、物件の企画・プロデュース力である。同社は物件ごとに独自の取材記事を作成し、ストーリー調の紹介で個性を訴求する。従来の不動産ポータルサイトが「スペック情報の羅列」にとどまるのに対し、cowcamoは「見るだけで楽しい」という顧客体験を設計している。会社資料では、蓄積されたユーザーデータと空間データに基づいて、顧客ニーズに最適化したリノベーションが可能であると説明されている。ここで見るべきは、この企画力が自社企画商品の粗利率を支えている点だ。

第三に、テクノロジー基盤による効率化である。同社はバリューチェーン全体——「売る(リノベ価値評価・AI査定)」「つくる(データに基づく独自企画)」「買う(オンライン-オフライン統合UX)」——をデザインとテクノロジーで統合している。既存の不動産流通が査定サイト、仲介、買取再販、ポータルと分業していたのに対し、cowcamoは一連の流通工程を一気通貫で支援する。この統合が、販管費率の劇的改善(94.6%→35.4%)の構造的な背景にある。

3-3. 再販事業の拡大戦略

ツクルバの売上成長を直接牽引しているのは、自社企画商品——中古マンションを仕入れてリノベーションし再販する事業——の急拡大である。

棚卸資産(簿価ベース)の推移がその規模感を物語る。FY2023/07の811百万円からFY2025/07には3,485百万円へ4.3倍に膨らみ、FY2026/01 LTM時点では4,910百万円に達した。四半期ベースの在庫金額も、FY2024 Q1の10億円からFY2026 Q2の49億円まで一貫して右肩上がりである。会社は「資本効率性を維持しつつ、投下資本の増加を通じた規模拡大を推進」する方針を示しており、自社企画商品の売上総利益を前期比+40%弱で計画している。

項目FY2023/07FY2024/07FY2025/07FY2026/01 LTM
棚卸資産(百万円)8113,4854,910
棚卸資産回転期間(日)184.85214.63224.56

出所:有価証券報告書、決算短信より AENTRO Research 作成

自社企画商品の戦略的な優位は3つある。第一に、仕入はcowcamoの人気エリアデータを活用したドミナント戦略で高い仕入効率を実現している。第二に、開発はcowcamoの取引データに基づく顧客ニーズ最適化リノベーションであり、メーカーとのオリジナル商材開発も推進している。第三に、販売は50万人超のcowcamo会員プールを活用したスピーディーな売却である。仕入・開発・販売の全工程でcowcamoのデータと顧客基盤を活かせる点が、一般的な中古住宅再販会社との構造的な違いである。

2026年2月にはリノベーション工事子会社「カウカモ工務店」が建設業許可を取得し本格始動した。物件探しからリノベーション設計・施工までをワンストップで完結する体制が整ったことで、バリューチェーンのさらなる内製化が進む。FY2026/07予想ではカウカモ工務店は年度後半より収益計上を開始する前提だが、売上総利益への影響は限定的とされている。当社は、カウカモ工務店の意義は短期的な利益貢献よりも、施工品質のコントロールと粗利の内部取り込みを通じた中長期の収益構造改善にあるとみる。

3-4. 資本政策

ツクルバの資本政策は、現時点では明確に「借入で在庫を積み、売上規模を取りにいく成長優先型」である。

項目FY2023/07FY2024/07FY2025/07FY2026/01 LTM
有利子負債(百万円)3,6564,491
D/Eレシオ(倍)0.791.181.892.39
自己資本比率(%)49.442.631.527.7

出所:有価証券報告書、決算短信より AENTRO Research 作成

D/Eレシオは0.79倍(FY2023/07)から2.39倍(FY2026/01 LTM)へ急上昇し、自己資本比率は49.4%から27.7%へ低下した。この変化は自社企画商品の在庫積み増しと整合的である。棚卸資産4,910百万円に対して有利子負債4,491百万円というバランスは、在庫を借入で賄う典型的な不動産再販モデルであり、在庫回転が止まらない限りは持続可能だが、逆に在庫が捌けなくなった場合のダウンサイドも大きい。

会社は2026年1月、新経営体制における株主価値とのアラインメント施策を開示した。有償ストック・オプション165,000株(希薄化率1.4%)は、2029年7月期までに時価総額100億円以上の達成を前提に、売上総利益80億円以上で50%、90億円以上で75%、100億円以上で100%の行使が可能となる設計である。これは経営陣の報酬を中長期の株主価値に直接紐づけるものであり、資本政策と人材インセンティブの一体化として評価できる。

インタレストカバレッジ・レシオはFY2025/07の5.63倍からFY2026/01 LTMでは3.34倍へ低下しており、借入コストの上昇余地には注意が必要である。

3-5. リスク要因

ツクルバの成長戦略に対する主要リスクは以下の4点に集約される。

第一に、不動産市況リスクである。自社企画商品は中古マンションの仕入・再販であり、首都圏マンション価格の下落局面では在庫の含み損が発生しうる。棚卸資産4,910百万円(FY2026/01 LTM)は総資産6,796百万円の72%を占めており、市況変動に対する感応度は高い。

第二に、金利上昇リスクである。有利子負債4,491百万円に対してインタレストカバレッジ・レシオは3.34倍(FY2026/01 LTM)まで低下した。日銀の金融政策正常化に伴う調達コスト上昇は、自社企画商品の損益分岐点を直接押し上げる。同時に、住宅ローン金利の上昇は買主の購買力を制約し、在庫回転の鈍化を招きかねない。

第三に、在庫リスクである。棚卸資産回転期間は184.85日(FY2023/07)から224.56日(FY2026/01 LTM)へ約40日長期化した。CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)も190.04日から227.15日へ拡大している。在庫積み増しは売上成長の原動力だが、回転が鈍化すれば営業CF赤字の拡大と資金繰りの悪化に直結する。

第四に、競争激化リスクである。中古住宅再販市場にはカチタス、イーグランド、スター・マイカ・ホールディングスなど上場企業が複数存在し、リノベーション分野への参入も増加傾向にある。cowcamoの「デザイン×テクノロジー」による差別化が維持できなければ、粗利率のさらなる低下を招く。

総じて、ツクルバの経営戦略は「中古住宅×テクノロジー」で住宅流通の分断を統合し、cowcamoの顧客基盤を武器に再販事業を急拡大するという明快な構図を持つ。販管費率の改善(94.6%→35.4%)が示すように、テクノロジー基盤の固定費レバレッジは強力に効いている。ただし、粗利率の低下(66.7%→37.5%)と在庫回転期間の長期化(184.85日→224.56日)は、規模拡大のペースがバランスシートの耐久力を上回るリスクを内包する。第4章では、この戦略が実際の業績にどう表れているかを数字で検証する。

4. 業績動向

4-1. 通期業績の推移

ツクルバの業績を理解するうえでまず重要なのは、この会社が3年前まで大幅赤字企業だったという事実である。FY2022/07の営業利益は△774百万円、営業利益率は△28.0%だった。そこからFY2024/07に初の営業黒字155百万円を達成し、FY2025/07には275百万円まで拡大した。売上高は2,766百万円から8,099百万円へ2.9倍に膨らんだ。赤字体質からの脱却と急成長が同時に進んだ3年間である。

項目FY2022/07FY2023/07FY2024/07FY2025/07FY2026/07E
売上高(百万円)2,7664,1535,4838,09912,000
売上高増加率(%)50.147.748.2
売上総利益(百万円)1,8442,5222,8243,5434,260
営業利益(百万円)△774△132155275370
営業利益率(%)△28.0△3.22.83.43.1
経常利益(百万円)△795△151114200
純利益(百万円)△822△166216107170
EPS(円)△74.37△14.8318.429.3814.93
EBITDA(百万円)△737△94184297391

出所:有価証券報告書、決算短信より AENTRO Research 作成。FY2022/07・FY2023/07は単体、FY2024/07以降は連結

ここで見るべきは、売上成長と利益成長のギャップである。売上高は毎期40-50%で伸びているが、営業利益率はFY2024/07の2.8%からFY2025/07の3.4%へわずかに改善したにすぎず、FY2026/07Eでは3.1%へ小幅に低下する見通しである。FY2025/07の純利益107百万円がFY2024/07の216百万円から半減したのは、特別損失(特別調査費用・本社移転関連費用)と連結子会社の法人税負担が主因であり、本業の収益力低下ではない。それでも、この会社の利益はまだ薄い。売上の急拡大に利益が追いついていない構造を直視する必要がある。

4-2. 粗利構造の変化

粗利率の低下はツクルバの最も目立つ財務上の変化だが、これを「収益力の悪化」と読むのは誤りである。

項目FY2022/07FY2023/07FY2024/07FY2025/07FY2026/01 LTM
粗利率(%)66.760.751.543.737.5
売上総利益(百万円)1,8442,5222,8243,543

出所:有価証券報告書、決算短信より AENTRO Research 作成

粗利率は66.7%(FY2022/07)から37.5%(FY2026/01 LTM)へ29.2ポイント低下した。要因は明快で、高粗利率の仲介手数料収入(ネット計上)に対して、低粗利率だが売上高が大きい自社企画商品(グロス計上)の構成比が急拡大したためである。仲介手数料はネット計上であるため売上高=売上総利益に近いが、自社企画商品は仕入金額+施工金額を売上原価に計上するため、粗利率は構造的に低くなる。

重要なのは、粗利の絶対額は着実に成長していることだ。売上総利益は1,844百万円から3,543百万円へ1.9倍に増えた。会社自身も売上総利益を「財務上の主要収益指標(財務KPI)」に定めており、売上高と粗利率の組み合わせではなく、売上総利益の絶対額で事業の成長を測るべきだという立場を明示している。

四半期推移を見ると、仲介・付帯サービスの売上総利益はFY2024 Q1の632百万円からFY2026 Q2の735百万円へ緩やかに成長し、自社企画商品はFY2024 Q1の31百万円からFY2026 Q2の185百万円へ急拡大した。仲介が安定的な粗利の土台を提供し、自社企画商品が成長の増分を担う二層構造が定着しつつある。当社は、粗利率の低下は再販シフトの必然的帰結であり、「率」の低下よりも「額」の成長が続いているかどうかで判断すべきだとみる。

4-3. 販管費構造の変化

ツクルバの業績動向で最も注目すべき変化は、粗利率の低下ではなく販管費率の劇的な改善である。

項目FY2022/07FY2023/07FY2024/07FY2025/07FY2026/01 LTM
販管費率(%)94.663.948.740.435.4
一人当たり売上高(千円)14,33222,81927,83234,464

出所:有価証券報告書、決算短信より AENTRO Research 作成

販管費率は94.6%(FY2022/07)から35.4%(FY2026/01 LTM)へ、4年間で59.2ポイント改善した。これは年間15ポイントに近い改善ペースであり、テクノロジー企業特有の固定費レバレッジが強烈に効いていることを示す。一人当たり売上高もFY2022/07の14,332千円からFY2025/07の34,464千円へ2.4倍に改善しており、人員増を大幅に上回るペースで売上が伸びた。

会社は販管費を直接費用(直接人件費、広告費、営業経費)と間接費用に分けて管理している。FY2025/07の決算説明資料では、売上総利益販管費率(売上総利益に対する販管費の比率)が着実に改善していると説明されている。費用統制を継続しながら売上総利益の成長を実現しているため、売上総利益販管費率はFY2022 Q1の160%水準からFY2025 Q4には87%水準まで低下した。

FY2026/07Eでは販管費3,890百万円(前期比+19%)を見込む。このうち先行投資として、ガバナンス・内部統制の強化、カウカモ工務店の立ち上げ、プロダクト・サービスの改善、営業人材開発・マネジメント基盤の構築を計上している。増益の範囲で再投資を行い、FY2027/07以降の成長加速に備える方針だ。当社は、この先行投資が売上総利益販管費率の改善トレンドを一時的に鈍化させる可能性はあるが、テクノロジー基盤の限界費用の低さを考えれば、販管費レバレッジの構造は崩れていないとみる。

4-4. BS・CFの動向

ツクルバのバランスシートは、自社企画商品の在庫拡大と、それを支える借入の積み増しで急速に膨らんでいる。

項目FY2024/07FY2025/07FY2026/01 LTM
総資産(百万円)6,1416,796
棚卸資産(百万円)3,4854,910
現預金(百万円)1,8681,119
有利子負債(百万円)3,6564,491
純資産(百万円)1,9321,881
自己資本比率(%)42.631.527.7

出所:有価証券報告書、決算短信より AENTRO Research 作成

棚卸資産はFY2025/07の3,485百万円からFY2026/01 LTMで4,910百万円へ+1,425百万円増加した。総資産に占める棚卸資産の比率は72%に達する。一方、現預金はFY2025/07の1,868百万円からFY2026/01 LTMでは1,119百万円へ△749百万円減少した。在庫への資金投下が手元流動性を圧迫している構図である。

キャッシュ・フローの動きもこの構造を反映している。

項目FY2025/07FY2026/01 LTM
営業CF(百万円)△1,478△2,115
投資CF(百万円)△764
財務CF(百万円)1,5041,281
FCF(百万円)△1,554△2,111

出所:有価証券報告書、決算短信より AENTRO Research 作成

営業CFはFY2025/07に△1,478百万円、FY2026/01 LTMに△2,115百万円と大幅な赤字が続いている。FCFも△1,554百万円、△2,111百万円と拡大傾向にある。これは棚卸資産の積み増しが営業CFを押し下げている構造的な赤字であり、本業の稼ぐ力が弱いためではない。財務CFが1,504百万円(FY2025/07)、1,281百万円(FY2026/01 LTM)と借入で補填しており、在庫拡大を借入で賄う成長投資の局面にある。

当社は、この営業CF赤字を直ちに悲観すべきではないとみる。在庫が売上に変わるサイクルが維持されている限り、営業CF赤字は成長投資の裏返しにすぎない。ただし、在庫回転が鈍化すれば資金繰りは急速に悪化する。D/Eレシオ2.39倍、自己資本比率27.7%という水準は、中古住宅再販業として過度に高いわけではないが、金利上昇や市況悪化への耐久力には限りがある。

4-5. 主要KPI推移

四半期ベースの業績推移は、ツクルバの成長の質をより鮮明に映し出す。

FY2026 Q2(2025年11月-2026年1月)の売上高は2,563百万円(前年同期比+40%)、売上総利益は920百万円(同+8%)だった。売上の伸びに対して粗利の伸びが鈍いのは、自社企画商品のグロス計上が売上を押し上げる一方、粗利率が仲介より低いためである。営業利益は△26百万円(前年同期比△78百万円)で、先行費用投下の継続により一時的に赤字に転落した。

仲介・付帯サービスのKPIでは、FY2026 Q2の取引件数は234件(前年同期253件から△7%)、収益単価は3.0百万円(同2.7百万円から+11%)であった。営業人員数は75人で、営業生産性(稼働営業人員あたり取引件数)は1.2件だった。取引件数は前年同期を下回ったが、収益単価の上昇が補い、仲介・付帯サービスの売上総利益は735百万円(同694百万円から+6%)と堅調に推移した。

自社企画商品のKPIでは、FY2026 Q2の売上総利益は185百万円(前年同期158百万円から+17%)、在庫金額は49億円(同28億円から+75%)に達した。投下資本の拡大が続いている。

4-6. FY2026/07会社予想

FY2026/07の会社予想は、売上高12,000百万円(前期比+48.2%)、売上総利益4,260百万円(同+20.2%)、営業利益370百万円(同+34.5%)、純利益170-220百万円である。

項目FY2025/07実績FY2026/07E増減率
売上高(百万円)8,09912,000+48.2%
売上総利益(百万円)3,5434,260+20.2%
営業利益(百万円)275370+34.5%
純利益(百万円)107170-220+59-106%
EPS(円)9.3814.93+59.2%

出所:決算短信より AENTRO Research 作成

計画の前提はかなり保守的に設計されている。マーケットについては「中古・リノベーション住宅需要の緩やかな継続拡大を想定。マーケット要因の物件単価及び取引件数の増加は織り込まない」とされている。仲介・付帯サービスでは営業人員数の拡大と集客増により取引件数を前期比+20%強、自社企画商品では投下資本を増加させながら回転率を維持し前期比+40%弱の売上総利益増加を計画している。

上半期(FY2026 Q1-Q2)の進捗率を見ると、売上高5,241百万円は通期予想12,000百万円に対して43.7%、売上総利益1,840百万円は4,260百万円に対して43.2%、営業利益△2百万円は370百万円に対して赤字の状態にある。会社は「期初想定通り、下半期に売上総利益・営業利益の拡大を見込む」としており、下半期偏重は期初計画どおりと説明している。

達成確度について当社は、売上高は上半期の成長ペース(前年同期比+55%)を考えれば十分に射程圏内だとみる。焦点は営業利益370百万円である。上半期の営業利益が△2百万円であるため、下半期だけで372百万円を稼ぐ必要がある。FY2025/07の下半期営業利益は215百万円(Q3: 90百万円、Q4: 125百万円)だったことを踏まえると、前年同期比+73%の増益が必要になる計算だ。先行費用投下の一巡と自社企画商品の在庫販売が下半期に集中する前提が崩れなければ達成可能だが、かなりの下半期偏重であることは意識しておくべきである。

総じて、ツクルバの業績動向は「売上高は年率40-50%の急成長が続くが、利益率はまだ低く薄い」という一文に集約される。表面的には粗利率の低下が目立つが、本質は販管費率の劇的改善にある。94.6%だった販管費率が35.4%まで下がったことで、粗利率低下を吸収してなお営業黒字を確保できる構造が出来上がった。問題は、粗利率の低下と販管費率の改善がどこで交差し、営業利益率が安定的に拡大し始めるかである。第5章では、この交差点を中期的な視点から検討する。

5. 中期経営計画

5-1. 位置づけ

ツクルバは形式的な「中期経営計画」を公表していない。ただし、2025年10月の「事業計画及び成長可能性に関する事項」および2025年9月・2026年3月の決算説明資料で、中期的な成長方針と定量イメージを一貫して提示している。本章ではこれらを統合し、同社の中期的な方向性を分析する。

会社が示す中期成長の枠組みは明快である。FY2022/07からFY2025/07の3年間で売上総利益を約2倍(+約17億円)、営業損益を10億円超改善した。FY2026/07以降は「増益の範囲で創出利益を再投資し、FY2022-25と同等以上の成長率を目指す」としている。売上総利益のCAGRで24%超を継続するというのが、暗黙の定量目標である。

当社は、この方針を「利益を出しながら利益を再投資する、自律成長モデルへの移行宣言」と読む。FY2022/07まで年間7-8億円の営業赤字を出していた企業が、わずか3年でこの方針を語れるところまで来たこと自体が、テクノロジー基盤による固定費レバレッジの強さを物語っている。

5-2. 数値目標の読み方

ツクルバは通期予想としてFY2026/07の数値を開示しているが、FY2027/07以降の具体的な売上高・利益目標は公表していない。そこで、会社が示す成長イメージと過去のトレンドから中期的な収益軌道を整理する。

項目FY2024/07FY2025/07FY2026/07EFY2027/07方向性FY2028/07方向性
売上総利益(百万円)2,8243,5434,260成長継続成長継続
売上総利益CAGR+20%24%超目標24%超目標
営業利益(百万円)155275370増益見込み増益見込み
営業利益率(%)2.83.43.1改善方向改善方向

出所:決算短信、決算説明資料より AENTRO Research 作成。FY2027/07以降は会社の定性方針に基づく方向性

FY2026/07Eの売上総利益4,260百万円は前期比+20%であり、会社が目標とするCAGR 24%超をやや下回る。これは先行投資年としての性格を反映したものだ。仮にFY2027/07・FY2028/07でCAGR 24%の成長を回復すれば、FY2028/07の売上総利益は6,500百万円超に達する計算になる。有償ストック・オプションの行使条件が「売上総利益80億円以上」であることを踏まえると、経営陣は少なくともFY2029/07までにこの水準を視野に入れていることになる。

数値目標そのものより重要なのは、売上総利益の成長を「流通規模の拡大」と「付加価値獲得領域の拡大」の掛け算で実現するという構造設計である。流通規模の拡大は顧客基盤の拡大と取引件数の増加、付加価値獲得領域の拡大はバリューチェーンの拡張(カウカモ工務店による施工内製化、居住中サービス、金融関連サービスの探索)とサービスの拡充を指す。この二軸が同時に効けば、売上総利益は取引件数×収益単価の両面で伸びる。

5-3. 利益率改善シナリオ

ツクルバの営業利益率は現在3.1%(FY2026/07E)にすぎない。中期的に営業利益率5%超を安定的に実現できるかが、企業価値を大きく左右する。

利益率改善の構造を分解すると、2つの力が拮抗している。粗利率は自社企画商品の構成比拡大に伴い低下圧力が続く。一方、販管費率はテクノロジー基盤の固定費レバレッジにより改善が続く。営業利益率は「粗利率-販管費率」であるから、粗利率の低下速度が販管費率の改善速度を下回れば、営業利益率は拡大に転じる。

項目FY2022/07FY2023/07FY2025/07FY2026/01 LTM
粗利率(%)66.760.743.737.5
販管費率(%)94.663.940.435.4
営業利益率(%)△28.0△3.23.42.1
粗利率の前期差(pp)△6.0
販管費率の前期差(pp)△30.7

出所:有価証券報告書、決算短信より AENTRO Research 作成

過去の推移を見ると、販管費率の改善ペースは初期に極めて大きく(94.6%→63.9%で△30.7pp)、直近では鈍化している(40.4%→35.4%で△5.0pp)。粗利率の低下も初期に大きく(66.7%→60.7%で△6.0pp)、自社企画商品の構成比が一定水準に達すれば底打ちが近づく。

当社は、粗利率の底打ちが利益率改善の最大の鍵だとみる。仲介・付帯サービスの粗利率は構造的に安定しており、自社企画商品の粗利率も資本効率性(回転率×粗利率)を維持する方針が示されている。自社企画商品の売上構成比がある水準で安定すれば、全社粗利率の低下も止まる。仮に粗利率が35%前後で底打ちし、販管費率が売上総利益の成長に伴い30%台前半まで低下すれば、営業利益率5%は射程に入る。

もうひとつの改善ドライバーは、カウカモ工務店による施工の内製化である。現在は外部のリノベーション事業者に依頼している施工を自社グループで行うことで、粗利の内部取り込みが可能になる。FY2026/07では収益への影響は限定的だが、中期的には自社企画商品の粗利率改善に寄与する可能性がある。

5-4. 在庫回転改善の重要性

利益率と並んで中期的な企業価値を左右するのが、在庫回転の効率である。

棚卸資産回転期間は184.85日(FY2023/07)から224.56日(FY2026/01 LTM)へ約40日長期化した。CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)も190.04日から227.15日へ拡大している。在庫を積み増すこと自体は成長戦略の帰結だが、回転期間が長期化すると資金効率が悪化し、営業CF赤字の拡大と借入依存の深化を招く。

項目FY2023/07FY2025/07FY2026/01 LTM
棚卸資産回転期間(日)184.85214.63224.56
CCC(日)190.04215.32227.15
総資産回転率(回)1.401.561.65

出所:有価証券報告書、決算短信より AENTRO Research 作成

会社は自社企画商品の資本効率性を「回転率×粗利率」で管理しており、資本効率性を維持しつつ投下資本を増加させる方針を示している。総資産回転率は1.40回(FY2023/07)から1.65回(FY2026/01 LTM)へ改善しているが、これは売上高の急拡大による分子効果が大きく、棚卸資産の回転そのものが改善したわけではない。

当社は、在庫回転期間の改善が営業利益率の改善と同等以上に重要だとみる。仮に棚卸資産回転期間を224日から200日へ25日短縮できれば、同じ在庫水準でも年間の売上高は約12%増加する計算になる。逆に回転がさらに鈍化すれば、売上成長のために必要な在庫投資がますます膨らみ、借入依存が加速する。cowcamoの55万人超の会員基盤を活用したスピーディーな販売は、この在庫回転を支える最大の武器であり、会員数と在庫金額のバランスが中期的な経営効率を左右する。

5-5. 資本効率(ROE)の改善戦略

ツクルバのROEはFY2025/07に5.7%、FY2026/01 LTMでは3.8%に低下した。ROIC(投下資本ベース)もFY2025/07の4.6%からFY2026/01 LTMでは3.1%へ悪化している。資本コストを上回る収益性を実現できていない可能性がある。

項目FY2023/07FY2024/07FY2025/07FY2026/01 LTM
ROE(%)△13.75.73.8
ROIC(%)△5.34.63.1
PBR(倍)7.685.733.402.59

出所:有価証券報告書、株価データより AENTRO Research 作成

PBRは7.68倍(FY2023/07)から2.59倍(FY2026/01 LTM)へ低下した。市場がツクルバに付与するプレミアムが縮小していることを示す。ROEが5.7%にとどまる現状では、PBR 2.59倍でも「成長期待込みで割高」と見られかねない。ROEの改善には3つのレバーがある。

第一に、純利益率の改善である。FY2025/07の純利益率1.3%は、営業利益率3.4%に対して低い。特別損失の一巡と繰延税金資産の活用により、FY2026/07Eでは純利益率1.4%への回復を見込む。営業利益率が5%を超えれば、純利益率も3%前後まで改善する余地がある。

第二に、総資産回転率の維持・向上である。現在1.65回と比較的高水準にあるが、在庫回転の効率化が鍵を握る。

第三に、財務レバレッジの適正管理である。D/Eレシオ2.39倍はすでに高い水準にあり、これ以上のレバレッジ拡大は借入コストの上昇リスクを高める。利益の蓄積による自己資本の充実が、持続的なROE改善の前提条件になる。

5-6. まとめと評価軸

ツクルバの中期的な企業価値は、2つの交差点がいつ訪れるかで決まる。

第一の交差点は、粗利率の底打ちと販管費率の改善が交わるポイントである。粗利率66.7%→37.5%の低下と販管費率94.6%→35.4%の改善はFY2025/07付近で接近し、営業利益率3.4%を生み出した。今後、粗利率が35%前後で安定し、販管費率が30%台前半まで下がれば、営業利益率5%超の世界が見えてくる。この交差の時期が早いほど、企業価値の再評価は早まる。

第二の交差点は、在庫回転の改善と借入依存度の安定が交わるポイントである。在庫積み増しに伴う営業CF赤字とD/Eレシオの上昇は、成長投資として合理的だが、無限に続けられるモデルではない。在庫回転期間が短縮に転じ、営業CFが黒字化する局面が来れば、ツクルバは「借入で成長する会社」から「自律的に成長する会社」へ質的に変わる。

投資家が中期的に追うべきKPIは以下の3点に集約される。第一に、売上総利益の絶対額と成長率(CAGR 24%超を維持できるか)。第二に、棚卸資産回転期間の推移(224日からの短縮が確認できるか)。第三に、売上総利益販管費率の推移(87%からさらに低下し、営業レバレッジが効いているか)。これらが同時に改善に向かえば、PSR 0.5倍割れの現在の株価水準は大幅なディスカウントと評価されうる。逆に、粗利率の底打ちが見えず在庫回転がさらに悪化すれば、利益の質への懐疑は強まり、バリュエーションの切り上がりは遠のく。

結論として、ツクルバの中期計画の成否は「利益率5%超への道筋を示せるかどうか」にかかっている。テクノロジー基盤による販管費レバレッジという武器は実証済みであり、粗利率の底打ちと在庫回転の改善が加われば、同社は「住宅流通のリ・デザイン企業」として本格的な利益成長フェーズに入る。

6. 株価インサイト

6-1. ツクルバの株価をどう読むべきか

ツクルバの株価を読むうえで最も重要な前提は、同社を「不動産仲介会社」として見るか、「中古住宅流通プラットフォーム」として見るかで、評価の基準線がまったく変わることである。2026年4月22日時点の株価は416円、時価総額は約49億円、52週高値は794円(2024年5月)、52週安値は413円(2026年4月)である。直近1年で株価はほぼ半値となっており、市場は明確にディスカウントを深めている。

指標基準
株価416円2026/4/22
時価総額約4,900百万円同上
PER(実績)70.50倍FY2026/01 LTM
PER(予想)28.62倍FY2026/07E
PBR2.59倍FY2026/01 LTM
PSR0.49倍FY2026/01 LTM
ROE5.7%FY2025/07
EPS(予想)14.93円FY2026/07E
BPS94.85円FY2025/07
配当0円FY2026/07E
52週高値794円2024/5月
52週安値413円2026/4月

出所:各社開示資料・株価データよりAENTRO Research作成(2026/4/22基準)

見かけのPERは実績70.5倍と高く映るが、これはFY2025/07期に特別損失50百万円や連結化に伴う一過性コストが利益を押し下げた結果であり、FY2026/07会社予想ベースではPER 28.6倍まで低下する。一方、PSRは0.49倍と1倍を大きく割り込んでおり、売上高12,000百万円に対して時価総額がその半分にも満たない水準にある。ツクルバの株価は、トップラインの成長力に対して明確にディスカウントされている。当社は、このディスカウントの本質を「利益の質と持続性に対する市場の懐疑」だとみる。

6-2. 市場がディスカウントしている理由

市場がツクルバに慎重な値付けをしている第一の理由は、粗利率の構造的な低下トレンドである。売上総利益率はFY2022/07の66.7%からFY2026/01 LTMの37.5%まで一貫して低下しており、この傾向に歯止めがかかっていない。仲介手数料中心のビジネスモデルから中古住宅の仕入・リノベーション・再販(買取再販)へのシフトがこの変化の主因であり、再販事業は売上規模を大きくする一方で粗利率を引き下げる。市場は「売上は伸びるが、利益の伸びがそれに追いつかない会社」という見方を拭えていない。

第二の理由は、バランスシートの膨張と資本効率の低さである。棚卸資産はFY2026/01 LTM時点で4,910百万円と総資産の72%を占め、有利子負債は4,491百万円、D/Eレシオは2.39倍に達している。自己資本比率は27.7%まで低下した。不動産再販業としてのレバレッジ水準は異常ではないが、ROEが5.7%(FY2025/07)にとどまる状態で財務レバレッジが上昇しているということは、ビジネスの稼ぐ力がバランスシートの膨張に追いついていないことを意味する。

第三の理由は、フリーキャッシュフローが常にマイナスであることだ。営業CFはFY2026/01 LTMで-2,115百万円、フリーCFは-2,111百万円で、成長するほどキャッシュが流出する構造にある。これは不動産再販事業の宿命ではあるが、市場は「自律的にキャッシュを生まない会社」を高く評価しにくい。成長のたびに借入を増やす必要がある事業構造は、金利上昇局面では特にリスクとして意識される。

当社は、これらのディスカウント要因を理解したうえで、同社を評価する軸は「見かけの利益率」ではなく「在庫回転と粗利額の複合成長」に置くべきだとみる。粗利率が低下しても、粗利額がFY2022/07の1,844百万円からFY2025/07の3,543百万円へ1.9倍に成長している事実は看過できない。問題は、この粗利額成長が販管費を上回るペースで拡大し続けられるかである。

6-3. ポジティブ・シナリオ(Opportunity 3点)

① 中古住宅流通市場の構造拡大

日本の住宅市場では新築偏重から中古住宅・リノベーション志向への構造転換が進行している。人口減少・空き家増加・住宅価格高騰を背景に、中古住宅の流通量は増加傾向にあり、ツクルバはこの構造変化のど真ん中に位置している。同社の売上高がFY2022/07からFY2025/07にかけて2.9倍に成長した背景には、市場そのものの拡大と、cowcamoを通じたブランド認知の向上がある。市場が仮にこの構造変化を「一過性のブーム」ではなく「不可逆なシフト」と認識すれば、同社のトップライン成長に対する信認は高まる。

② 販管費レバレッジによる利益率改善余地

販管費率はFY2022/07の94.6%からFY2026/01 LTMの35.4%へ劇的に改善しており、固定費のレバレッジが効き始めている。売上高が1兆円規模まで伸びるなかで、テクノロジー基盤(cowcamoプラットフォーム)の限界費用は低い。一人当たり売上高もFY2022/07の14,332千円からFY2025/07の34,464千円へ2.4倍に改善しており、組織の生産性向上が確認できる。粗利率低下と販管費率改善が交差する点で営業利益率が跳ねる可能性があり、その臨界点がFY2026/07〜FY2027/07にかけて到来しうる。

③ プラットフォーム型ビジネスへの再評価

ツクルバは単なる不動産仲介・再販会社ではなく、cowcamoを通じて中古住宅の仕入・リノベーション設計・販売をテクノロジーで統合するプラットフォーム事業者である。物件の企画・プロデュース力に強みがあり、単純な横流しの買取再販とは異なるポジションにいる。もし市場がこの会社を「不動産テック」として再定義すれば、PSR 0.5倍割れの現水準はかなり控えめな評価となる。GA technologies(3491)のPSRと比較しても、ツクルバの評価はかなり低い位置にある。

6-4. アンチテーゼ(Anti-thesis 3点)

① 粗利率低下に底が見えない

再販事業へのシフトが進むほど粗利率は構造的に下がる。FY2022/07の66.7%からFY2026/01 LTMの37.5%まで低下が続いており、市場は「どこで底を打つのか」を見極められていない。売上原価率が70%を超える水準まで上昇すれば、いかに販管費を圧縮しても営業利益率の改善は困難になる。粗利率低下の「底」が示されない限り、市場は利益成長の持続性を信じにくい。

② 在庫リスクと金利上昇感応度

棚卸資産4,910百万円は同社の時価総額とほぼ同額であり、在庫回転期間は224日と7カ月を超える。不動産市況が悪化した場合、在庫の評価損リスクが一気に顕在化する。加えて、有利子負債4,491百万円に対してインタレストカバレッジ・レシオはFY2026/01 LTMで3.34倍まで低下しており、金利上昇局面での利益圧迫が懸念される。日銀の利上げサイクルが継続する場合、借入コストの上昇が利益を直撃する構造にある。

③ 資本効率の改善が遅い

ROEはFY2025/07に5.7%まで改善したものの、資本コストを上回る水準には達していない可能性が高い。FY2026/01 LTMでは3.8%にさらに低下した。D/Eレシオ2.39倍というレバレッジを効かせてもROEが一桁前半に留まるということは、事業そのものの資本効率(ROIC)が低いことを意味する。ROIC(投下資本ベース)はFY2026/01 LTMで3.1%であり、WACCを下回っている可能性がある。この状態が続く限り、企業価値の創造は困難であり、PBR 2.59倍は資本効率に対して割高ともいえる。

6-5. 同業比較

ツクルバの比較対象は、不動産仲介業界の中でも、テクノロジーを活用した中古住宅流通に関わるプレイヤーを中心に選定すべきである。以下に主要な比較企業を整理する。

企業名コード売上高(百万円)営業利益率ROE時価総額(百万円)PER(倍)EV/EBITDA(倍)
ツクルバ29788,0993.4%5.7%4,90844.5922.08
GA technologies3491248,9472.9%14.5%65,80816.924.93
SREホールディングス298026,69111.6%13.0%59,80334.9517.74
ランドネット299195,9933.9%23.9%14,7806.206.92
And Doホールディングス345764,7354.0%13.1%22,2669.5117.17
ビーロット345237,77820.1%23.5%29,5486.2210.92
ランディックス298120,26811.1%18.1%12,6799.028.11

出所:各社開示資料・株価データ(直近年度)よりAENTRO Research作成

同業比較から浮かび上がるのは、ツクルバの「高PER・低ROE」という特異なポジションである。PER 44.59倍は比較対象6社の中で最も高く、SREホールディングス(34.95倍)を上回る。にもかかわらずROEは5.7%と最も低い。これは市場がツクルバに成長プレミアムを付けているものの、その成長が利益に結びつくまでの時間軸を長めに見積もっていることを意味する。

EV/EBITDA 22.08倍も比較対象の中では高い水準にあり、GA technologies(4.93倍)やランドネット(6.92倍)と比べると突出している。ただし、GA technologiesは売上高24.9兆円規模で規模の経済が効いており、ランドネットはROE 23.9%と高い資本効率を実現している。ツクルバがこれらの水準に近づくためには、①売上規模の拡大、②利益率の改善、③ROEの引き上げ、のいずれかで市場の期待に応える必要がある。

当社は、ツクルバの現在のバリュエーションは「不動産仲介・再販会社」として見れば割高だが、「中古住宅流通のプラットフォーム企業」として見れば評価の入口にあると考える。もし同社がGA technologiesのようなプラットフォーム型の再評価を受けるなら、PSR 0.5倍割れは極めて低い水準となる。しかしそのためには、プラットフォームとしての競争優位——テクノロジーによる仕入・販売の効率化、顧客基盤の拡大、リピート率の向上——を数字で証明する必要がある。

6-6. 今後の注目KPI・カタリスト

市場がツクルバの株価を再評価するために確認したいポイントは明確に整理できる。

第一に、粗利率の底打ち確認である。売上総利益率が37.5%(FY2026/01 LTM)からさらに低下するのか、あるいはここが底なのかは、同社の利益成長ストーリーの前提条件そのものである。FY2026/07通期で粗利率が35%を下回らなければ、市場は「再販シフトによる粗利率低下は一巡した」と解釈できる。逆に30%台前半まで低下すれば、売上成長にかかわらず利益見通しは厳しくなる。

第二に、棚卸資産回転期間の動向である。現在224日の回転期間が200日を切る方向に改善すれば、在庫リスクに対する市場の警戒感は和らぐ。逆に250日を超えるようであれば、在庫の質と流動性に対する懸念が高まる。会社が開示する四半期ごとの棚卸資産残高と売上原価の推移を追うことが、この銘柄の短期的な方向感を読むうえで最も有効である。

第三に、FY2026/07通期業績予想の達成確度である。会社予想は売上高12,000百万円(+48.2%)、営業利益370百万円(+34.5%)、純利益170百万円(+58.9%)だが、FY2026/01 LTM時点の営業利益は214百万円にとどまり、下期の大幅回復が前提となっている。不動産再販事業は売却が下期に集中しやすい特性があるため、計画未達イコール即悲観ではないが、3Q決算時点の進捗率が注目される。

第四に、FY2027/07以降の中期的な利益成長パスである。同社が営業利益率を5%以上に引き上げるシナリオを示せれば、売上高15,000百万円×営業利益率5%=営業利益750百万円という水準が見えてくる。現在の時価総額約49億円に対して、こうした利益水準が2-3年内に実現可能と見なされれば、株価の見直し余地は大きい。

次回決算: FY2026/07 3Q決算(2026年6月頃公表見込み)

総じて、ツクルバ株は「売上高は年率40-50%で成長するが、利益の質と持続性がまだ証明されていない中古住宅流通プラットフォーム」として市場に位置付けられている。PSR 0.5倍割れというトップラインに対する極端なディスカウントは、裏を返せば、利益の質が改善したときの再評価余地も大きいことを意味する。その成否は、粗利率の底打ち、在庫回転の改善、そしてFY2026/07通期計画の達成にかかっている。No Rating / No Target Price。

7. Appendix

7-1. 損益計算書(単位:百万円)

科目FY2022/07FY2023/07FY2024/07FY2025/07FY2026/01 LTMFY2026/07
連結/単体単体単体連結連結連結連結
売上高2,7664,1535,4838,0999,96512,000
売上総利益1,8442,5222,8243,5433,739
販売費及び一般管理費2,6182,6552,6693,2693,526
EBITDA-737-94184297235391
営業利益-774-132155275214370
営業利益率-28.0%-3.2%2.8%3.4%2.1%3.1%
経常利益-795-151114200109240
特別利益141081132
特別損失2612235031
税金等調整前当期純利益-820-159200161111
親会社株主に帰属する当期純利益-822-16621610769170
EPS(円)-74.37-14.8318.429.3814.93

出所:有価証券報告書(FY2022/07〜FY2025/07)、決算短信(連結業績予想)より AENTRO Research 作成。FY2024/07 より連結決算に移行。

ツクルバの損益は、赤字体質から黒字転換を果たし、現在はトップライン成長と利益率改善の両立局面にある。売上高はFY2022/07の2,766百万円からFY2025/07に8,099百万円へ3年で約2.9倍に拡大し、FY2026/07会社予想は12,000百万円(前年比+48.2%)と高成長の継続を見込む。営業利益はFY2024/07に155百万円で初の通期黒字を達成し、FY2025/07には275百万円まで拡大した。ただし営業利益率はFY2025/07で3.4%にとどまり、不動産再販ビジネス特有の売上原価率上昇(FY2022/07の33.3%→FY2025/07の56.3%)と、販管費の効率化(同94.6%→40.4%)が同時進行している。FY2026/01 LTMでは営業利益214百万円と一時的に鈍化しているが、これは物件仕入の先行投資に伴う季節性を含むためであり、通期では370百万円(営業利益率3.1%)への回復を会社は見込んでいる。投資テーゼの観点からは、売上成長率40-50%を維持しながら営業利益率を3%台に定着させられるかが、同社の収益性の持続可能性を測る鍵となる。

7-2. 貸借対照表(単位:百万円)

科目FY2022/07FY2023/07FY2024/07FY2025/07FY2026/01 LTM
連結/単体単体単体連結連結連結
資産合計2,8793,0644,2226,1416,796
流動資産2,5612,7293,9675,8026,488
現預金同等物及び短期性有価証券1,6541,7721,9181,8681,119
売上債権447472149162
棚卸資産8118401,8733,4854,910
固定資産317335254339308
有形固定資産1991727589103
無形固定資産2
投資その他の資産119163179250204
負債合計1,9691,5522,4214,2104,915
流動負債5388031,7073,5004,317
固定負債1,431749714710597
純資産合計9101,5131,8001,9321,881
有利子負債残高1,6431,1882,1223,6564,491
ネット有利子負債-11-5842041,7883,372
自己資本比率31.6%49.4%42.6%31.5%27.7%
BPS(円)73.6760.8284.0094.85

出所:有価証券報告書(FY2022/07〜FY2025/07)、決算短信より AENTRO Research 作成

ツクルバのバランスシートは、中古住宅の仕入・リノベーション・再販を主力とするビジネスモデルを鮮明に映している。総資産はFY2022/07の2,879百万円からFY2026/01 LTM時点で6,796百万円へ拡大し、その太宗は棚卸資産(仕入済み中古住宅在庫)の積み上がりである。棚卸資産はFY2022/07の811百万円からFY2026/01 LTMで4,910百万円と6倍に膨らんでおり、総資産の72.3%を占める。現預金はFY2025/07の1,868百万円からFY2026/01 LTMで1,119百万円へ減少しており、仕入資金の先行投下が進んでいる局面にある。負債サイドでは有利子負債が4,491百万円まで増加し、自己資本比率は27.7%へ低下した。D/Eレシオは2.39倍と財務レバレッジが効いた状態であり、ネット有利子負債は3,372百万円に達している。このバランスシート構造は不動産再販事業として一般的ではあるが、棚卸資産の回転期間が224日(約7.5カ月)と長期化傾向にある点には留意が必要である。成長の加速には在庫の積み増しが不可欠だが、回転効率の維持が資本効率を左右する。

7-3. キャッシュ・フロー計算書(単位:百万円)

科目FY2022/07FY2023/07FY2024/07FY2025/07FY2026/01 LTM
連結/単体単体単体連結連結連結
営業活動によるキャッシュフロー-1,025-85-901-1,478-2,115
投資活動によるキャッシュフロー-109-5981-764
財務活動によるキャッシュフロー5442639541,5041,281
フリーキャッシュフロー-1,134-144-820-1,554-2,111

出所:有価証券報告書(FY2022/07〜FY2025/07)、決算短信より AENTRO Research 作成

ツクルバのキャッシュ・フローは、不動産再販事業の典型的なパターン――営業CFがマイナス、財務CFで補填――を示している。営業CFは全期間を通じてマイナスであり、FY2026/01 LTMでは-2,115百万円に拡大した。これは損益上の赤字ではなく、物件仕入による棚卸資産の積み増しが営業CFを食っているためである。同社のビジネスモデルでは、仕入代金は営業CF流出、売却代金は営業CF流入となるが、成長期には仕入が売却を上回るため営業CFは構造的にマイナスとなる。財務CFは借入金の純増によりFY2025/07に1,504百万円、FY2026/01 LTMに1,281百万円のプラスを計上しており、事業拡大の原資は金融機関からの借入に依存している。フリーCFはFY2025/07に-1,554百万円、FY2026/01 LTMに-2,111百万円と赤字幅が拡大しているが、これは成長投資(在庫積み増し)の結果であり、販売が進めばCF回収局面に転じる。重要なのは、在庫を回転させて営業CFを生む力があるかどうかであり、棚卸資産回転期間の推移がCFの先行指標となる。

7-4. 主要KPI

KPIFY2022/07FY2023/07FY2024/07FY2025/07FY2026/01 LTM
売上高増加率70.3%50.1%47.7%46.2%
売上総利益率66.7%60.7%51.5%43.7%37.5%
売上原価率33.3%39.2%48.5%56.3%62.5%
販管費率94.6%63.9%48.7%40.4%35.4%
棚卸資産(百万円)8118401,8733,4854,910
棚卸資産回転期間(日)223.67184.85214.63224.56
CCC(日)228.62190.04215.32227.15
ROE-91.8%-13.7%5.7%3.8%
ROIC(投下資本)-29.1%-5.3%4.6%3.1%
総資産回転率(回)0.931.401.561.65
D/Eレシオ(倍)1.810.791.181.892.39
自己資本比率31.6%49.4%42.6%31.5%27.7%
一人当たり売上高(千円)14,33222,81927,83234,464
PER(倍)47.7161.3670.50
PBR(倍)7.887.685.733.402.59
EV/EBITDA(倍)57.1228.1335.05

出所:有価証券報告書および決算短信より AENTRO Research 作成

ツクルバの主要KPIから浮かぶ構図は、「トップラインの急成長と引き換えに、粗利率が低下し、バランスシートが膨張している」というものである。売上高は年率40-50%で伸び続ける一方、売上総利益率はFY2022/07の66.7%からFY2026/01 LTMの37.5%まで一貫して低下している。これは仲介手数料中心(高粗利)のモデルから再販事業(低粗利・高回転)へのミックスシフトを反映しており、同社の事業戦略そのものの帰結である。一方、販管費率は94.6%から35.4%へ劇的に改善しており、固定費のレバレッジが効き始めている。ROEはFY2025/07に5.7%まで改善したが、FY2026/01 LTMでは3.8%に低下しており、資本効率の安定化はまだ道半ばである。棚卸資産回転期間は224日と7カ月超であり、在庫効率の改善が利益率・ROE向上の鍵を握る。投資テーゼとの接続でいえば、売上成長率の維持、粗利率低下の底打ち、販管費率のさらなる改善の3点が同時に進むかどうかが、同社の企業価値の方向性を決定する。

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