| 株価(2026/5/11終値) | 時価総額 | FY2025/3 売上高 | FY2025/3 EBITDA | SaaS ARR(FY2026/3 3Q末) | NJSS 解約率(12ヶ月平均) |
|---|---|---|---|---|---|
| ¥361 | ¥9,992M | ¥6,701M | ¥1,003M | ¥5,619M | 1.44% |
| Item | FY2022/3 | FY2023/3 | FY2024/3 | FY2025/3 | FY2026/3E |
|---|---|---|---|---|---|
| Revenue(M JPY) | 4,029 | 4,862 | 5,938 | 6,701 | 7,710 |
| Operating income(M JPY) | -245 | 9 | 1,324 | 763 | 870 |
| Operating margin(%) | -6.1 | 0.2 | 22.3 | 11.4 | 11.3 |
| Net income(M JPY) | -64 | -46 | 720 | 458 | 575 |
| Net margin(%) | -1.6 | -0.9 | 12.1 | 6.8 | 7.5 |
| EPS(JPY) | -2.34 | -1.65 | 26.03 | 16.55 | 20.78 |
| DPS(JPY) | — | — | 8.75 | 2.50 | 3.00 |
1. 会社概要
1-1. サマリー
うるるは、単なる「NJSS 1 本足の入札情報屋」ではなく、自社が抱えるクラウドワーカー網と業界特化 SaaS を一体運営する CGS(Crowd Generated Service)プラットフォーマーである。祖業の BPO で培ったクラウドワーカーへの業務ディレクション・ノウハウと、シュフティ(登録クラウドワーカー約 49 万人、2025 年 12 月末時点)という労働供給インフラを束ね、その上に NJSS(公共調達 SaaS)・fondesk(受電 SaaS)・えんフォト/OurPhoto(フォト領域 SaaS)を積み上げる構造になっている。「人 + IT/AI のハイブリッド」というプロダクト設計思想は、バーティカルが切り替わっても同一型で再現されている。
FY2025/3 の連結業績は売上高 6,701 百万円、営業利益 763 百万円、親会社株主帰属当期純利益 458 百万円で、EBITDA は 1,003 百万円となった。連結従業員数は 268 名(臨時雇用者 192 名は外数、2025 年 3 月末)、資本金 1,037 百万円。前期である FY2024/3 の EBITDA 1,517 百万円と比べて数字は落ちるが、これは前中計の達成期(FY2024/3)と平常運行(FY2025/3)のサイクル上のメリハリを反映したもので、失速ではない。実際 FY2026/3 第 3 四半期累計では営業利益 +46.3%・純利益 +79.3%(前年同期比)の再加速が始まり、通期 EBITDA 予想は 1,100〜1,200 百万円に上方修正されている。
SaaS 売上比率は FY2025/3 で 73.6%、SaaS 合算 ARR は FY2026/3 第 3 四半期末で 5,619 百万円に達する。NJSS の 12 ヶ月平均解約率は 1.44%(FY2026/3 3Q)で、国内 SaaS としても優良水準を維持している。表面的には東証グロースの小型 BPO・アウトソーシング銘柄に映るが、数字は「業界特化 SaaS + クラウドワーカー網を生産ラインとして再利用する複線型 SaaS+BPaaS 企業」として読むのが整合的だ。
資本政策の軸も短期間で大きく動いている。2025 年 5 月に配当性向 15% 以上を目安とする累進配当を宣言、同年 10 月 1 日付で普通株式 1 株を 4 株に分割、株主優待(OurPhoto クーポン)は維持、さらに同年 9 月の新経営体制移行で CEO(星知也氏)と COO(桶山雄平氏)を分離した。配当・分割・ガバナンス刷新・M&A(横浜綜合写真)が同じ一年に並んで起きており、「現金を貯める会社」から「貯めた現金を規律的に使う会社」への転換点を迎えている。
1-2. 基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 株式会社うるる(英訳名:ULURU.CO.,LTD.) |
| 代表者 | 代表取締役社長 CEO 星 知也 |
| 設立 | 2001 年 8 月(北海道札幌市にて株式会社リナックスとして設立、2003 年 10 月に株式会社うるるへ商号変更) |
| 本社 | 東京都中央区晴海三丁目 12 番 1 号 KDX 晴海ビル 9F |
| 上場 | 2017 年 3 月東証マザーズ上場 → 2022 年 4 月東証グロース市場へ移行(証券コード 3979) |
| 決算期 | 3 月期 |
| 従業員数(連結、2025/3 末) | 268 名(臨時雇用者 192 名は外数) |
| 従業員数(単体、2025/3 末) | 221 名(平均年齢 34.2 歳、平均勤続年数 3.8 年、平均年間給与 6,245,996 円) |
| 資本金 | 1,037,746 千円 |
| 発行済株式総数(2025/10/1 1:4 分割後) | 27,701,600 株(うち自己株式 24,136 株) |
出所:有価証券報告書および会社開示資料より AENTRO Research 作成
事業年度は毎年 4 月 1 日から翌年 3 月 31 日まで。事業セグメントは CGS(Crowd Generated Service)/BPO/クラウドソーシングの 3 区分で、CGS の中に NJSS・fondesk・フォト(えんフォト/OurPhoto/横浜綜合写真)・その他の 4 サービスが並置される構造をとる。単体従業員 221 名のセグメント別内訳では CGS 事業 NJSS が 127 名、同 fondesk が 13 名、同フォトが 30 名で、全社(共通)45 名を含む管理職能は本社に集約されている。登記上の本店は 2014 年 10 月に勝どきから晴海へ移転して以降変わっていない。海外拠点は過去にインドネシア子会社(PT. ULURU BALI、2020 年清算)を保有した時期があるが、現在は国内完結型の体制である。
1-3. 会社の定義(労働力供給 × 業界特化 SaaS / CGS モデル)
本レポートでは、うるるを「労働供給側のクラウドワーカー網と、需要側の業界特化 SaaS を、自社内で一体運営する CGS プラットフォーマー」と定義する。事業は会計上 3 セグメント(CGS/BPO/クラウドソーシング)で開示されるが、事業の中身を理解するには、①労働供給レイヤー(シュフティ・うるる BPO)、②業界特化 SaaS レイヤー(NJSS・fondesk・えんフォト)、③両者を束ねる BPaaS・ソリューションレイヤー(入札 BPO・GoSTEP・fondesk IVR 等)の 3 層で読むのが自然である。
この定義が重要なのは、同社の収益源が「NJSS 一つ」でも「BPO 一つ」でもなく、労働供給と需要側 DX を重ねた掛け算の結果生まれている点にある。NJSS(入札情報速報サービス)は公共調達バーティカル、fondesk は企業の代表電話受電、えんフォトは幼稚園・保育園向けの写真販売といった具合にドメインはばらばらだが、裏側の生産方式は「人 × IT/AI のハイブリッドで一次情報を取得・処理し、業界固有の業務プロセスに合わせて SaaS 化する」という一本の型で統一されている。同社はこの型を CGS(Crowd Generated Service)と呼び、複数バーティカルでの再現に成功してきた。したがって同社を BPO 屋として括ると、業界特化 SaaS の利益率構造や、第二・第三の CGS 生成余地といった重要論点を見落としやすい。実態としては、労働供給インフラを共通基盤として業界特化 SaaS を量産する、うるる版 SaaS ファクトリーである。
1-3.5. 経営理念と創業の原体験
同社のビジョンは「労働力不足を解決し 人と企業を豊かに」、理念は「世界に期待され 応援される企業であれ」と掲げられる。CGS という独自モデルがこの理念から生まれたものであることを押さえると、事業ドメインが安定している理由がよく見える。
創業の原体験は、星社長が 2006 年に経営権を譲り受けた時点にまで遡る。子どもが小さく外に働きに出られない主婦、家族介護を抱えて通勤が難しい人々——彼らが当時アクセスできる労働の大半は、時給換算で 100〜200 円程度の内職にとどまっていた。そこで同社は、インターネットと PC の普及を前提に、家にいながら企業から業務を受託できる仕組みをつくる、という発想から BPO 事業(現うるる BPO)を立ち上げた。企業から受注したデータ入力業務をクラウドワーカーへ再委託し、検品と納品を会社側が担うというワーカーディレクションのノウハウは、この時点で作られている。2007 年にクラウドソーシング・プラットフォーム「シュフティ」を立ち上げて労働供給側の層を厚くし、2008 年に NJSS をリリースして CGS の第一号を生んだ。この順番——「人を集める仕組み → 人を動かすノウハウ → 業界特化 SaaS」——が、その後の fondesk・えんフォト・OurPhoto・BPaaS にそのまま応用されていく。
会社側はこのモデルを外に向かって「労働力不足解決のリーディングカンパニー」と表現してきた。本レポートでは以降、このスローガンの直接引用は避け、「労働供給インフラ × 業界特化 SaaS を一体運営する CGS プラットフォーマー」「人 + IT/AI のハイブリッド」といった分析語に置換して用いる。創業者が「労働力としてカウントされてこなかった主婦層を企業に再接続する」という問題意識から始めた会社であるため、労働力不足というマクロ環境が事業機会をそのまま規定している。この構造が第 3 章(経営戦略)で扱う「埋蔵労働力資産」「ULURU IMPACT BASE」「自治体 DX」といった拡張施策の連続性を支えている。
1-4. 沿革
同社の沿革は、①創業・BPO 立ち上げ期(2001〜2007)、②CGS モデル確立期(2008〜2016)、③マザーズ上場と SaaS 拡大期(2017〜2022)、④ULURU Sustainable Growth 期(2023〜現在)、の 4 段階で整理すると流れがつかみやすい。
| 年月 | 主要イベント |
|---|---|
| 2001 年 8 月 | 北海道札幌市にて株式会社リナックス設立 |
| 2003 年 10 月 | 商号を株式会社うるるへ変更、星 知也 代表取締役就任、BPO データ入力サービス開始 |
| 2007 年 2 月 | クラウドソーシング「シュフティ」リリース |
| 2008 年 9 月 | 入札情報速報サービス「NJSS」リリース |
| 2014 年 10 月 | うるる BPO を新設分割、「えんフォト」リリース、本社を晴海へ移転 |
| 2017 年 3 月 | 東京証券取引所マザーズ市場に上場(3979) |
| 2019 年 4 月 | 電話一次受付 SaaS「fondesk」リリース |
| 2020 年 10 月 | OurPhoto 株式会社を完全子会社化(出張撮影マッチング参入) |
| 2022 年 4 月 | 市場区分見直しによりグロース市場へ移行 |
| 2023 年 11 月 | 中長期経営方針「ULURU Sustainable Growth」公表(CAGR 20%+ 成長と累進配当の両立) |
| 2024 年 3 月 | 長期借入 200 百万円を調達(成長投資・M&A 枠) |
| 2025 年 2 月 | 「埋蔵労働力資産」提言(135 兆円規模の新フレーム) |
| 2025 年 4 月 | OurPhoto 株式会社・株式会社ブレインフィードを吸収合併 |
| 2025 年 5 月 | 累進配当(配当性向 15% 以上)宣言 |
| 2025 年 8 月 | 1:4 株式分割を決議 |
| 2025 年 9 月 | 新経営体制決議(CEO/COO 分離、取締役 4 名が執行役員へ) |
| 2025 年 10 月 | 1:4 株式分割効力発生、株主優待(OurPhoto クーポン)継続 |
| 2025 年 11 月 | 横浜綜合写真株式会社の株式取得を決議(フォト領域 M&A) |
出所:有価証券報告書および会社開示資料より AENTRO Research 作成
第一段階(2001〜2007)は祖業の BPO 立ち上げ期である。星社長が前職時代に担当していたデータ入力サービスを、休眠会社だったリナックスの商号変更を経て引き継ぐ形で現体制が始まった。この段階で同社は「企業から受託した業務をクラウドワーカーへ再委託する」というワーカーディレクションの原型を作り込んでいる。
第二段階(2008〜2016)が CGS モデルの確立期で、NJSS のリリース(2008 年)を起点に、「クラウドワーカー × 業界特化 SaaS」という独自フォーマットが形になる。同じ型を横展開する動きとして、2014 年にはえんフォトを立ち上げ、保育園・幼稚園向けの写真販売を SaaS 化した。うるる BPO の新設分割(2014 年)もこの時期で、労働供給レイヤーを独立子会社に切り出すことで CGS 全体の運用効率を整えている。
第三段階(2017〜2022)が東証マザーズ上場とその後の SaaS 拡大期である。2017 年の上場で約 13 億円の資金を調達し、2019 年に fondesk(受電 SaaS)、2020 年に OurPhoto の子会社化、2022 年 4 月にはマザーズからグロース市場へ移行した。第四の CGS 系サービスが揃い、SaaS 売上比率の上昇と会社全体の SaaS 企業化が進んだ時期と位置づけられる。
第四段階(2023〜現在)が「ULURU Sustainable Growth」期である。2023 年 11 月に人的資本投資を軸とした規律ある成長投資と累進配当の両立を中長期方針として公表し、同方針のもと FY2024/3 の中計達成期(EBITDA 1,517 百万円)と FY2025/3 の平常運行期(同 1,003 百万円)を経て、2025 年に入ってから累進配当・1:4 株式分割・新経営体制・横浜綜合写真の M&A を短期間で立て続けに実施した。沿革全体を通してみると、同社は「BPO 受託会社」から出発し、途中で CGS という独自モデルを手に入れ、上場後にそれを複線化し、直近は株主還元と M&A を軸とする資本政策フェーズへと段階を進めてきた。
1-5. 主要株主・資本構成
2025 年 3 月 31 日時点(1:4 株式分割前)の大株主構成では、筆頭が星社長 17.48%、2 位が創業経営陣関連の株式会社エアーズロック 9.54%、3 位が光通信グループの株式会社 UH Partners 3 7.65%、4 位が光通信株式会社本体 7.59%、5 位が同グループの株式会社 UH5 7.50% と続く。上位 10 名合計で発行済株式の 69.91% を占める構図となっている(詳細は Appendix §7-5)。
株主の質としてまず目立つのは、光通信グループ(UH Partners 3 + UH5 + 本体他2社)の合算保有比率が約 31.84% と第二の安定株主層を形成している点である。上場後、同グループが徐々に持分を厚くしてきた経緯があり、財務投資家というより中長期の政策保有株主として機能している。三番目の特徴は、星社長を含む創業経営陣・関連会社で約 4 割が押さえられていることで、意思決定の機動性と、資本政策上のぶれにくさを担保している。反面、機関投資家の厚みや流通株式比率の面では、時価総額 100 億円前後という規模と相まって薄さが残り、グロース市場改革への対応余地でもある。
資本政策の設計思想も踏み込んで読み取れる。2025 年 10 月 1 日付の 1:4 株式分割で 1 単元(100 株)あたりの最低投資金額を 4 分の 1 に落としつつ、OurPhoto の 3,000 円割引クーポンを贈呈する株主優待は維持、加えて配当性向 15% 以上を目安とする累進配当を 2026 年 3 月期から適用する。個人投資家層を厚くしながら「減配しない」という可視性の高い株主還元を組み込み、分割後発行済株式 27,701,600 株で流動性も取りに行く、という三点を同時に置きに行っている。安定株主比率の高さを前提に、流通株式側の厚みをどう積み増すか、が次の資本政策論点として残る。
1-6. 経営陣
代表取締役社長 CEO の星知也氏は 1976 年生まれ、1999 年に在籍していた会社で主婦層の在宅データ入力業務を担当した経験を持つ。この業務経験が、クラウドワーカーを企業向け BPO 業務に再接続するというビジネスモデルの出発点になっている。2003 年 10 月の商号変更と同時にうるるの代表取締役社長に就任し、以降 20 年超にわたり同社の経営トップを務めてきた。2025 年 10 月 1 日付で代表取締役社長 CEO に職位名称を変更し、中長期の経営戦略策定と取締役会監督を主に担う立場となった。筆頭株主でもあり、発行済株式の 17.48% を保有する(2025 年 3 月末、分割前)。
取締役副社長 COO の桶山雄平氏はうるる BPO の代表取締役社長を兼任しており、BPO の労働供給レイヤーと業務執行全般を取り仕切るポジションに就いた。7 位の大株主(5.51%、2025 年 3 月末、分割前)でもあり、業務執行の責任と資本関係の両輪で結びついている。
もう一つの柱が執行役員 CFO の内丸泰昭氏である。2025 年 10 月以降、前 IR 管掌役員の近藤浩計氏(旧 Co-CFO・未来創造担当役員、2025 年 9 月末で取締役退任・執行役員へ)から IR の前面を引き継ぎ、決算説明資料・月次 NJSS レポートの主導作成者となっている。SNS(X アカウントは 2025 年 12 月開設、note は同年 7 月開設)でも発信を行っており、CFO が投資家対話の一次接点に立つ体制が明示されている。新経営体制移行後の同社の IR ナラティブは、事実上内丸氏を軸に再構築されている。
社外取締役 2 名(税理士の市川貴弘氏、日本 CTO 協会代表理事で旧ミクシィ/現コインチェックの松岡剛志氏)は 2025 年 10 月以降も継続する。会計・税務と、インターネットサービス分野の技術・組織知見の 2 角度で独立性を担保する体制となっている。
1-7. コーポレートガバナンス + 経営体制刷新
うるるのガバナンスは監査役設置会社という標準的な機関設計をとるが、評価の焦点は制度形式そのものよりも、2025 年 9 月に決議された経営体制刷新(CEO/COO 分離、取締役 4 名の執行役員化)にある。この刷新はグロース市場の過渡期銘柄にとって珍しく踏み込みが大きい構造変更で、IR ナラティブと業務執行の両方に影響が及ぶ。
まず機関設計の現状を確認する。2025 年 10 月 1 日付の新体制では、取締役は社内 2 名(星 CEO・桶山 COO)と社外 2 名(市川貴弘・松岡剛志、両名とも独立役員)の計 4 名となり、その下に執行役員 8 名(CFO 内丸、CIO・CRO/CISO 長屋、CCO 小林、未来創造担当 近藤、Govtech 事業担当 渡邉、おもいで事業担当 田中、シュフティ事業・うるる BPO 新規事業担当 野坂、fondesk 事業担当 脇村)が並ぶ。監査役会は常勤 1 名(鈴木秀和)と社外 2 名(弁護士・公認会計士の鈴木規央、萩原怜奈)の 3 名体制で、うち 2 名は独立役員である。取締役会は原則月次開催、監査役会も月次、経営執行会議(社長・社内取締役・全執行役員・経営企画部長で構成)も月次で、日常の業務執行情報を集約する仕組みが並走する。
経営体制刷新の論点は二つある。第一に、「監督」と「執行」の線引きが明確化された点である。2025 年 9 月 18 日の取締役会決議では、長屋洋介氏(VPoE・CIO・CRO/CISO)、小林伸輔氏(CCO)、近藤浩計氏(未来創造担当、前 IR 管掌・旧 Co-CFO)、渡邉貴彦氏(Govtech 事業担当)の 4 名が取締役を退任し、それぞれの担当領域における業務執行に専念する執行役員へ移行した。これにより、取締役会の議論は戦略・監督に、日常の業務執行は COO 桶山氏が統括する執行役員ラインに集約されるかたちに整理された。小型グロース銘柄では取締役が事業執行まで抱えている例が多く、本刷新はサイズの割に一歩先の形を採用したといえる。
第二に、IR 体制の再構築である。近藤浩計氏はかつて Co-CFO として IR 管掌を担っていたが、2025 年 10 月以降は未来創造担当の執行役員として新規事業・M&A 側に専念する。これに伴い、IR の前面には CFO 内丸氏が単独で立ち、決算説明資料や月次 NJSS レポートの作成主導、SNS 発信までを担う。IR を「共同担当」から「CFO 単独主導」へ切り替えたことで、投資家との対話窓口と、資本政策(累進配当・株式分割等)の設計窓口が同一人物に集約された。市場対話の一貫性が取りやすくなる一方で、CFO 個人への依存度が上がるため、属人化リスクの管理が次の課題として残る。
サステナビリティ・人的資本面では、単体従業員 221 名の平均年間給与 6,245,996 円、管理職に占める女性比率 25.0%、男性育休取得率 75.0% という数字が有報で開示されている。連結従業員は 1 年間で 57 名純増(FY2024/3 211 名 → FY2025/3 268 名)で、これは「ULURU Sustainable Growth」の柱である人的資本投資の実行結果である。ISO 27001(2013 年取得)を含む情報セキュリティと、労働者派遣事業・有料職業紹介事業の許認可を土台に、クラウドワーカーを扱う事業構造に必要なコンプライアンスと品質管理の枠組みを整備してきた。
以上を踏まえると、うるるは「創業者が筆頭株主として経営を主導しつつ、2025 年 9 月時点で監督と執行を制度的に分離し、CFO 主導の IR 体制へ切り替えた」会社として整理できる。表層的な市場区分(東証グロース・小型)に対して、ガバナンス側の準備は一段先に進んでおり、次に問われるのは、この新しい経営体制のもとで CGS モデルが具体的に何を生み出し、どう儲けているのか、という事業そのものの中身である。第 2 章ではその問いに、各サービスの収益モデルと KPI から踏み込んでいく。
2. 事業内容
2-1. 事業全体像
うるるの事業を理解するうえでまず重要なのは、同社を「NJSS 一本足の入札情報屋」でも「BPO 屋の祖業企業」でもなく、約 49 万人のクラウドワーカー網と業界特化 SaaS を掛け合わせて複数のバーティカルに事業を量産する CGS(Crowd Generated Service)プラットフォーマーとして読み直すことである。開示上の報告セグメントは CGS 事業・BPO 事業・クラウドソーシング事業の 3 つだが、実務運営の単位は CGS 内部の NJSS/fondesk/フォト/その他の 4 サービスに分かれており、合わせて 6 ユニットで事業ポートフォリオを構成している。
| セグメント | 売上高(百万円) | 構成比 | 前期比 |
|---|---|---|---|
| CGS NJSS | 2,752 | 50.6% | +15.8% |
| CGS fondesk | 838 | 15.4% | +14.3% |
| CGS フォト | 698 | 12.8% | +23.1% |
| CGS その他 | 47 | 0.9% | — |
| BPO | 1,087 | 20.0% | +2.2% |
| クラウドソーシング | 16 | 0.3% | -7.9% |
| 合計 | 5,442 | 100.0% | +14.3% |
出所:FY2026/3 第 3 四半期決算短信より AENTRO Research 作成。FY2026/3 第 3 四半期連結累計。
FY2026/3 第 3 四半期累計で見ると、CGS が連結売上の 79.7%、BPO が 20.0%、クラウドソーシングが 0.3% を占める。さらに CGS 内の NJSS 単独で全社売上の 50.6% と半分を握り、fondesk・フォト・その他の 3 サービスが残りの CGS 枠を分け合う。絵柄としては、NJSS が利益の中核を支え、その脇で fondesk とフォトが第 2・第 3 の SaaS 柱として育ち、BPO が裏側でプロセスを回し、シュフティが労働力供給のインフラを担う、という役割分担になっている。本章の目的は、この 6 ユニットを並べて並列比較することではなく、共通の設計原理を取り出したうえで各ユニットの現在地を読み解くことにある。
2-2. セグメント構成と共通アーキテクチャ
同社の 6 ユニットを貫く共通アーキテクチャは、「業界特化 SaaS × BPaaS×クラウドワーカー」の三層である。一次データの収集・運用部分を自社クラウドワーカー網で担い、その出力を業界特化の SaaS プロダクトに載せて顧客へ課金し、さらに他社 SaaS の運用アナログ部分まで自社の BPO 組織で引き受ける。この三層を 1 社の中で垂直統合していることが、同社を「単一バーティカル SaaS」や「労働集約型 BPO」から区別する。
入り口のクラウドワーカー層を担うのがシュフティである。2025 年 12 月末時点で登録クラウドワーカー数は約 49 万人に達し、ここから NJSS の入札情報収集、fondesk の代理受電、えんフォトのフォトグラファー派遣、OurPhoto の出張撮影、そして BPO のデータ入力・スキャン業務まで、事業ドメインの異なる 4 種類以上のタスクに分配されている。49 万人という数字を単なる会員数として読むのではなく、「NJSS・fondesk・フォト・BPO の 4 事業に同時に労働力を供給している共通インフラ」として読むと、同社がなぜ複数バーティカルに SaaS を量産できるかが見える。
真ん中の SaaS 層は、NJSS(公共調達)・fondesk(受電)・えんフォト(園写真)・nSearch(入札検索)の 4 プロダクトで構成される。いずれも月額サブスクリプションを基本に、契約時点で 1 年分の利用料を前受金として受領する仕組みで、FY2026/3 第 3 四半期末の契約負債 20.5 億円が示すとおり、翌期収益の可視性は高い。SaaS 合算 ARR は FY2025/3 末 51 億円から FY2026/3 第 3 四半期末の 56 億円超へ拡大し、SaaS 売上比率は FY2025/3 の 73.6% から直近期 75.5% まで切り上がっている。
出口の BPaaS 層は、祖業 BPO を起点とする。従来型のスキャン・データ入力を主力としつつ、近年は他社 SaaS の運用アナログ部分を「SaaS の裏側」として受託する BPaaS(Business Process as a Service)へ重心を移している。経費・会計テック、リーガルテック、HR テック、フィンテック、不動産テック、セールステックなど複数業界の SaaS 事業者に対し、人力とテクノロジーを組み合わせた運用構築を提供している。自社で SaaS を 4 本運営してきたノウハウをそのまま外販する構図で、従来「BPO = 人月型アウトソーシング」と読んできた投資家の先入観を更新する必要がある領域だ。
三層構造の要は、層の間で労働力とノウハウが循環している点にある。シュフティのクラウドワーカーが SaaS の一次データを作り、SaaS 運営で得たオペレーション知見が BPaaS の提案材料になり、BPaaS で得た業界解像度が次の SaaS プロダクトの種になる。この循環が動く限り、同社はバーティカルを 1 つ追加するたびに全体の再現性が上がる設計になっている。
2-3. NJSS(CGS 事業の主力 SaaS)
NJSS(エヌジェス)は、官公庁等が発注する入札情報を網羅的に収集・検索できる業界特化 SaaS で、同社の連結売上の過半を稼ぐ主力プロダクトである。2008 年 9 月のサービス開始以降、数百名のクラウドワーカーが全国約 8,800 の入札実施機関から情報を収集し、当社が入札・落札案件データベースを構築する仕組みで、情報収集の網羅性そのものが参入障壁を形成している。
| 指標 | FY2024/3 | FY2025/3 | FY2026/3 3Q 末 |
|---|---|---|---|
| 売上高(百万円、四半期累計) | 2,874 | 3,244 | 2,752 |
| 期末 ARR(百万円) | 2,875 | 3,302 | 3,681 |
| 有料契約件数(件) | 6,567 | 7,073 | 7,275 |
| ARPU(円、日割り) | 1,223 | 1,210 | 1,302 |
| 解約率(12 ヶ月平均、%) | 1.53 | 1.50 | 1.44 |
| LTV(千円) | 2,189 | 2,172 | 2,492 |
| 売上総利益率(%) | 92.4 | 91.3 | — |
出所:決算短信および決算説明資料より AENTRO Research 作成。FY2025/3 の契約件数・ARPU・LTV は 2025 年 5 月 26 日付の訂正開示に基づく。
読みどころは 3 つある。第一に、TAM の広さと浸透余地である。日本の入札市場は 2021 年度で約 26 兆円、近年も 25 兆円超で安定的に推移している。NJSS と低価格版の nSearch を合算した有料契約件数は、落札実績のある企業数約 40 万社に対して約 2%、全省庁統一資格保有企業数約 7 万社に対して約 10% にとどまり、契約件数の上限はかなり遠い。
第二に、KPI ツリーの健全性である。同社は「将来に渡る売上高 = 契約件数 × LTV × 売上総利益率 90%」と分解したうえで、LTV を「ARPU × 1/解約率 × 粗利率」で管理している。前期までは契約件数の伸長を優先してきたが、FY2026/3 からは ARPU 向上に軸足を移す方針を打ち出しており、FY2026/3 第 3 四半期末の ARPU は 1,302 円と FY2025/3 期末の 1,210 円から 8% 引き上がった。12 ヶ月平均解約率は 1.44% と SaaS 標準で見ても優秀な水準を維持しつつ、ARPU の底上げが効いて LTV は 2,172 千円から 2,492 千円へ 15% 切り上がっている。SaaS 評価軸でいう「解約率を抑えたまま単価を取る」という理想形で KPI が動いている局面だ。
第三に、周辺サービス群による TAM 拡張である。2019 年に官公庁・自治体向け「調達インフォ」、2021 年に AI クローラー中心の低価格版「nSearch」、2023 年に自治体アプローチ用の「GoSTEP」と BPaaS 型の「入札 BPO」、2024 年に「入札資格ポータル」有料版と、継続的にマーケット周辺機能を追加している。FY2026/3 第 3 四半期末の nSearch 有料契約件数は 772 件と前期末比 13% 増、入札 BPO も ARPU・LTV が四半期ベースで波を打ちながら試験段階を越えつつある。NJSS は「単一プロダクト」ではなく、すでに入札ドメインのプロダクトクラスターへ進化している。
セグメント損益でも、NJSS は FY2026/3 第 3 四半期累計の売上高 2,752 百万円(前年同期比 +15.8%)、セグメント利益 1,265 百万円(同 +24.1%)、EBITDA 1,416 百万円(同 +26.6%)と、単価引き上げと成長投資の両立が数字に出ている。解約率 1.44%・ARR 36 億円超・売上総利益率 91.3% という組み合わせは、同社のテーゼを支える核心数字であり、本章のほかに第 4 章(業績動向)・第 5 章(成長方針)・第 6 章(株価評価)でも角度を変えて繰り返し参照される。
2-4. fondesk・fondesk IVR
fondesk は、企業にかかってきた電話をクラウドワーカーが代理受電し、Slack・Chatwork・Microsoft Teams 等のチャットツールで内容を通知する、月 1 万円台からの受電 SaaS である。2019 年 2 月リリース、コロナ禍でのテレワーク需要を起点に伸び、現在は企業の DX・働き方改革の追い風の中で SaaS 第 2 の柱として育ちつつある。
| 指標 | FY2024/3 | FY2025/3 | FY2026/3 3Q 末 |
|---|---|---|---|
| 売上高(百万円、四半期累計) | 833 | 982 | 838 |
| 期末 ARR(百万円) | 844 | 995 | 1,132 |
| 有料契約件数(件) | 4,682 | 5,589 | 6,094 |
| ARPU(円、月割り) | 15,274 | 14,810 | 15,184 |
| 解約率(12 ヶ月平均、%) | 1.3 | 1.2 | 1.1 |
出所:決算短信および決算説明資料より AENTRO Research 作成。
fondesk の TAM は、NTT 固定電話の事務用加入電話 334 万契約に ARPU 月 14,810 円と 12 ヶ月を掛け合わせた約 5,935 億円と整理されている。FY2026/3 第 3 四半期末の有料契約件数 6,094 件は、この TAM に対し 0.2% に満たない水準で、シェア上限は遠い。同時期の解約率は 12 ヶ月平均で 1.1% と SaaS としても低水準にあり、契約が積み上がるほど ARR が厚くなる構造が数字に出ている。
重要なのは、2024 年 12 月にリリースされた「fondesk IVR」が、従来取り切れなかった領域に同社を接続し始めた点である。fondesk 本体は平日 9 時〜19 時・オペレーター受電・月額 1 万円+従量課金という設計で、中小企業〜大企業のオフィス型 BtoB が中心顧客だった。IVR は自動音声応答で 24 時間 365 日対応・多言語対応・月額 2,980 円からという別レイヤーを作り、SOHO や個人事業主、飲食・美容などの店舗型 BtoC まで射程を広げる。当社は IVR の本格的な損益貢献を FY2026/3 後半から FY2027/3 にかけての立ち上がりと読んでおり、fondesk セグメントの FY2026/3 EBITDA が 0〜110 百万円と前期対比で落ち込むガイダンスは、IVR のマーケティング・組織増強に伴う先行費用の反映として整合的である。
競争優位を支えるのは、クラウドワーカーの教育とシフト管理の運営ノウハウ、そして Slack・Chatwork 等のビジネスチャットを前提にした UI/UX である。受電担当者を雇う代わりにチャットで通知を受ける、という発想は 2019 年時点では先進的だったが、現在ではユーザー側にほぼ学習コストがない水準まで磨かれている。fondesk の伸びを見るときに投資家が読むべきは、件数の純増だけでなく、IVR 経由で広がる新規セグメントの獲得速度と、既存オペレーター型との共食い有無である。
2-5. えんフォト・OurPhoto・横浜綜合写真
フォトは、CGS 内で最も産みの苦しみが続いている領域である。えんフォト(園写真 SaaS)・OurPhoto(出張撮影マッチング)・横浜綜合写真(小中高向け写真)の 3 事業で構成され、園→家族→学校という被写体のライフステージをつなぐ構想のもとに統合が進められている。
| 指標 | FY2024/3 | FY2025/3 | FY2026/3 3Q 末 |
|---|---|---|---|
| フォト合計 売上高(百万円、四半期累計) | 725 | 836 | 698 |
| フォト合計 EBITDA(百万円、通期または累計) | 69 | -43 | -73 |
| えんフォト契約園数(期末) | 4,725 園 | 5,139 園 | 5,360 園 |
| えんフォト園当たり売上高(Q 値、円) | 45,397 | 47,661 | 37,628 |
| えんフォト ARR(百万円) | — | 979 | 806 |
| OurPhoto 撮影件数(Q 値、件) | 3,085 | 2,961 | 10,551 |
出所:決算短信および決算説明資料より AENTRO Research 作成。
えんフォトは幼稚園・保育園向けの写真販売システムで、園に対して利用料金 0 円で提供し、保護者が購入する写真販売の手数料を収益源にするストック型のモデルである。園にとって手間のかかる写真選別・販売業務をオンライン化し、同時に登録フォトグラファーを派遣できるため、契約園数は継続率が極めて高く積み上がりやすい。FY2026/3 第 3 四半期末の契約園数は 5,360 園と 1 年で 400 園以上積み増え、ARR は 8 億円台に到達した。TAM 側も余地が大きく、えんフォトでサービス提供可能な幼稚園・保育園等の施設数は約 56,000 施設、現状の契約園数はその 1 割未満である。
OurPhoto は、依頼者と約 2,100 名の登録フォトグラファーをマッチングする出張撮影 C2C プラットフォームで、撮影代金から 35% の手数料を差し引く構造になっている。えんフォトとの併設意図は明確で、OurPhoto のフォトグラファーをえんフォトのイベント撮影に派遣したり、えんフォトの保護者を OurPhoto に送客したり、園で取り扱う写真プリント商材を OurPhoto でクロスセルする、といったリソース共有が設計されている。FY2026/3 第 3 四半期の撮影件数は 10,551 件と前年同期の 9,051 件から約 17% 増えており、単体としての需要も緩やかに立ち上がっている。
2025 年 9 月に全株式を取得した横浜綜合写真は、首都圏の小中高に対する写真撮影・卒業アルバム制作・販売を手掛ける非上場会社で、2024 年 5 月期の売上高 228 百万円・営業利益 39 百万円・純資産 274 百万円である。取得価額は当社の連結純資産の 15% 以上に相当する規模とされ、FY2026/3 第 2 四半期からの連結化に伴いのれんは FY2025/3 期末の 181 百万円から FY2026/3 第 3 四半期末の 309 百万円へ 128 百万円積み上がった。戦略意図は、「えんフォト・えんアルバム × 横浜綜合写真のネットワーク」で園から小中高まで被写体のライフステージをつなぎ、写真販売の年次収益を同一世帯内で継続させることにある。
数字で厳しいのは統合途上の損益である。フォト合算の EBITDA は FY2024/3 に 69 百万円の黒字を付けた後、FY2025/3 は -43 百万円、FY2026/3 第 3 四半期累計も -73 百万円と赤字が続く。えんフォトの園当たり売上高は毎期第 4 四半期に跳ね上がる季節性があり(FY2025/3 第 4 四半期は 47,661 円)、通期で見れば単価は切り上がっているが、OurPhoto の手数料ビジネスと横浜綜合写真ののれん負担が重石になっている。フォト事業は、うるるのテーゼのなかで「CGS 横展開の再現性を測るためのハードケース」にあたり、投資家が追うべきは契約園数と ARR ではなく、3 事業を束ねた後の EBITDA の黒字転換時期そのものである。
2-6. BPO 事業・BPaaS
BPO 事業は、同社が 2003 年の創業時に開始した祖業であり、CGS の「C(クラウド)」の原点となった領域でもある。徳島の第一・第二・第三センターを中心としたスキャン業務と、大分センターを中核とする SaaS 裏側の高難度業務、そして国内外の協力会社およびクラウドワーカーを組み合わせたディレクション型のアウトソーシングを提供する。
| 指標 | FY2024/3 | FY2025/3 | FY2026/3 3Q 末 |
|---|---|---|---|
| 売上高(百万円、通期または累計) | 1,476 | 1,615 | 1,087 |
| EBITDA(百万円、通期または累計) | 241 | 210 | 115 |
| セグメント利益(百万円、累計) | — | — | 55 |
出所:決算短信および決算説明資料より AENTRO Research 作成。FY2026/3 は第 3 四半期連結累計。
単純な人月ベースの受託開発会社と決定的に違うのは、BPO がすでに「BPaaS」として再定義されていることだ。会社資料では、AI-OCR と人力を掛け合わせたデータ入力自動化サービス「eas(イース)」をベースに、複数の SaaS プロダクトをバーティカルに提供する方針が示されている。さらに SaaS 事業者の運用構築における「ラストワンマイル」、すなわち、SaaS 単体ではカバーしきれないアナログ業務領域の運用設計・運用代行まで同社が引き受ける。経費・会計テック、リーガルテック、HR テック、フィンテック、不動産テック、セールステックなど幅広い SaaS バーティカルへの支援実績がこの設計を裏付けている。
重要なのは、この BPaaS の発想が「社内で SaaS を 4 本運営してきたノウハウの外販」である点だ。NJSS のクラウドワーカーディレクション、fondesk の受電運用、えんフォトのフォトグラファー派遣、すべて自社 SaaS の裏側を回してきた経験そのものが BPaaS の売り物になっている。このため同社の BPO は、他社の薄利多売型 BPO と違って、SaaS 運営の深度に比例して粗利の取り方を学習できる構造を持つ。
直近の業績変化はこの定義転換が数字に出始めたことを示している。BPO セグメントは、FY2026/3 第 3 四半期連結累計の売上高 1,087 百万円(前年同期比 +2.2%)に対し、EBITDA 115 百万円(同 +83.6%)、セグメント利益 55 百万円(同 +429.7%)と、売上成長率を大きく上回る利益変化率を示している。この +429.7% は同社の既存読解(BPO は祖業・低成長)を修正する重ね塗り数字にあたる。会社は FY2026/3 通期でも BPO の EBITDA を 330〜350 百万円とし、DX 化に伴うスキャン業務の掘り起こしと BPaaS 案件のリカーリング化を成長ドライバーに位置づけている。
2-7. クラウドソーシング(シュフティ)
クラウドソーシング事業のシュフティは、2007 年に開始された同社の労働供給プラットフォームで、時間や場所の制約なく働きたいクラウドワーカーと、仕事を依頼したい企業・うるるグループをマッチングする。FY2026/3 第 3 四半期累計の売上高は 16 百万円・セグメント損失 3 百万円と、連結 PL 上の貢献はほぼゼロだが、この事業を単年度売上で評価してはいけない。
シュフティの本質は、セグメント売上ではなく登録クラウドワーカー数にある。2025 年 12 月末時点の登録者は約 49 万人で、NJSS の入札情報収集、fondesk の代理受電、えんフォトのフォトグラファー派遣、OurPhoto の出張撮影、BPO のデータ入力・スキャン業務まで、グループ内 4 事業に労働供給を行う共通プラットフォームとして機能している。2023 年 3 月末時点で約 47 万人だった登録者数が 2 年 9 ヶ月で 2 万人増えた計算で、派手な伸びではないが、労働供給側のストックはじわじわ積み上がっている。
ここで投資家が読むべきは、シュフティ単体の損益ではなく、「49 万人の登録プールがうるるグループの CGS 全サービスの変動費を相対的に抑えている」という構造効果である。NJSS の 91.3% という売上総利益率や fondesk の低い変動費構造は、シュフティのプールに支えられている。同社がこの登録者数を「全社従業員数」のように扱うのは、事業価値の源泉が社員より先にワーカーにあるという認識の裏返しと読める。
2-8. 事業上の主要論点
第一の論点は、CGS モデルの再現性である。NJSS で実証された「業界特化 SaaS × クラウドワーカー × 年契約前受」の型を、fondesk はすでにテレワーク需要を取り込みながら再現しつつあり、えんフォトも園側無料・保護者課金というストック設計で上半身は整いつつある。一方で、再現性を最も厳しく試されているのはフォト領域である。OurPhoto のマッチング単価と、横浜綜合写真ののれん負担、えんフォトの季節性という 3 つの変数を同時にさばきながら、合算 EBITDA をどこまで黒字に戻せるかが、CGS の設計原理の一般性を投資家に示す試金石になる。
第二の論点は、NJSS 一極依存である。FY2026/3 第 3 四半期累計の連結売上に占める NJSS の構成比は 50.6%、セグメント利益の大半も NJSS が占める。同社の成長ストーリーは NJSS の解約率 1.44%・ARR 36 億円超という体温計に依存しており、ここが反転すればテーゼの大前提が崩れる。ただし、NJSS 単体の中でも nSearch・GoSTEP・入札 BPO など周辺プロダクト化が進んでおり、「NJSS」という名前の下にすでに複数プロダクトが並ぶクラスター構造へ移行しつつある点は、依存度リスクを読み解く際の補正材料として押さえておきたい。
第三の論点は、フォト統合の時間軸である。えんフォト・OurPhoto・横浜綜合写真の 3 事業を、被写体のライフステージ(園→家族→小中高)で束ねる構想は明快だが、会計数字で統合効果が出るまでには、のれん償却とオペレーション統合の両方をこなす必要がある。FY2026/3 第 3 四半期末時点ののれん 309 百万円は、大半が横浜綜合写真分で、フォト合算 EBITDA -73 百万円の戻しをさらに遅らせる要因になる。フォト事業の EBITDA 黒字化が FY2027/3 にずれ込むのか、それとも FY2026/3 第 4 四半期の繁忙期で決着するのかは、同社の M&A 実行力を測る定点として四半期ごとに追うべき指標である。
総じて、同社の事業構造は表面的には「NJSS 頼みの小型 SaaS 会社」に見えるが、実態としては「業界特化 SaaS × BPaaS×クラウドワーカー」という共通アーキテクチャのもとに 6 ユニットを走らせる SaaS プラットフォーマーであり、さらに BPaaS が従来の BPO 像を書き換えつつある段階にある。次章では、この事業構造がなぜ今このタイミングで評価されるのか、マクロ環境と「ULURU Sustainable Growth」以降の経営戦略の整合性から読み解いていく。
3. 経営戦略
3-1. ULURU Sustainable Growth フェーズの位置づけ
うるるの経営戦略を読むうえでまず押さえるべきは、同社が前中期経営計画(FY2020/3〜FY2024/3)を EBITDA ベースで完走させ、現在は「平常運行 → 再加速」に向けた中継ぎフェーズにあるという時系列の把握である。前中計期間の売上高 CAGR は 21.5%、5 年間で売上高 2.6 倍・EBITDA 3.4 倍という達成値を出した一方、FY2024/3 の EBITDA 1,517 百万円は上場後最大のピーク、翌 FY2025/3 は ULURU Sustainable Growth 初年度の成長投資集中で EBITDA 1,003 百万円へと落とした。FY2026/3 通期は会社予想で EBITDA 1,050〜1,200 百万円、3Q 累計は営業利益 +46.3% / 純利益 +79.3% で推移し、期初からレンジ上限寄りに書き換える上方修正を既に入れている。利益が一本調子で伸びない会社という第一印象は、「中計達成のための一時集中 → 平常運行 → 再加速」という設計された利益サイクルの途中を切り取っていることから生まれている(数字は §7-1 の通り)。
ULURU Sustainable Growth は 2023 年 11 月に開示された中長期経営方針で、正式な中期経営計画としては数値目標が据え置かれていない。代わりに「売上高・EBITDA いずれも中長期で CAGR 20% 以上」「配当性向 15% 以上の累進配当」「人的資本投資を中心とする規律ある成長投資」の 3 本を明文化しており、星社長は FY2025/3 決算説明会でも「中長期の経営方針に変更はない。売上高・EBITDA いずれも CAGR 20% 以上の成長を目指す」と繰り返している。重要なのは、前中計のように数値目標を期間内集中で取りに行くのではなく、「単年のボラを許容しても中長期で 20% を乗せ続ける」運行設計に切り替えた点である。つまり FY2025/3 の EBITDA 減は失速ではなく、中計達成後の再加速に向けて人的資本と広告宣伝費に投資予算を意図的に振り直した結果と読む必要がある。
3-2. 労働力不足というマクロ構造
この中継ぎフェーズで同社が狙っているのは、「労働力不足」という長期の需要押し上げ要因である。総務省「情報通信白書(平成 30 年版)」によれば、日本の生産年齢人口は 2040 年までに約 1,600 万人減少し、経済的価値ベースで 69 兆円分の労働力が消失する見込みとされる。これを埋める現実的な経路として、会社は自社試算でクラウドワーカー(1,000 万人、3 兆円)・高齢者労働力(1,200 万人、26 兆円)・女性労働力(240 万人、7 兆円)・外国人労働力(200 万人、9 兆円)・労働生産性向上と DX(600 万人、26 兆円)の 5 経路を列挙している。この 69 兆円の内訳に、うるるの各事業の位置が素直に重なる。シュフティと OurPhoto は「クラウドワーカー」と「女性労働力」、NJSS / fondesk / えんフォトは「労働生産性向上・DX」、ULURU IMPACT BASE のいろはな社への出資は「外国人労働力」である。マクロ追い風の 5 経路の少なくとも 4 つに、事業または出資先が張っている構造になっている。
加えて 2Q〜3Q 累計時点の NJSS 解約率 1.44%(12 ヶ月平均)や fondesk 解約率 1.1%、えんフォト契約園数 5,360 園など、マクロ追い風を実需に落とし込む KPI は改善基調を維持している(§7-4 参照)。労働力不足を会社のストーリーに変換するうえで、機械的に TAM を伸ばせば足りるという話ではなく、既にプロダクト側の解約率が落ち着いているのが特徴である。当社は、マクロが大きいこと自体より、「マクロ追い風のうち 4 経路に張っている」事業ポートフォリオ設計と、各 SaaS の解約率が 1〜1.5% 帯で実需を既に取りきっていることをセットで読む方が、戦略評価としては正確だと見る。
3-2-2. 埋蔵労働力資産 135 兆円という独自フレーム
同社が 2025 年 2 月に提言した「埋蔵労働力資産」は、上記の 69 兆円フレームを一歩先に拡張した独自概念である。会社定義では、(1) 働きたくても働けない「埋もれている労働力」約 15 兆円と、(2) IT・AI による業務代替で将来生まれる「埋もれゆく労働力」約 120 兆円を合算し、135 兆円の潜在労働力資産として経済価値換算する。算定は 1 時間当たりの経済価値を 2,573.3 円と置き、各区分の労働時間を掛け合わせるシンプルな積算で、推計詳細と専門家コメント(ワーク・ライフバランス社代表 小室淑恵氏)を付したプレスリリースとして開示されている(出所:同社「埋蔵労働力資産」提言、2025 年 2 月)。
この概念は 3 つの効果を持っている。第一に、政府統計(69 兆円の労働力消失)に対して同社独自の「AI 代替で生まれる将来労働力」という視点を接ぎ、マクロの数字を会社の投資テーマに結び直している。第二に、後述する ULURU IMPACT BASE のマイノリティ出資先(Lightblue、いろはな、LX DESIGN、エイジレス)を「埋蔵労働力資産の創出と活用」という共通軸で束ね、個別の出資が単発の財務投資に見えないよう並べている。第三に、NJSS の自治体 DX 展開(後述の 2.4 兆円インパクト試算)やシュフティ 49 万人の登録クラウドワーカー網を、同じ言葉で投資家に説明できるようになっている。会社のスローガンではなく提言として外部に発信している以上、テーマ設定の妥当性は検証可能であり、当社は「この数字がどの程度政策議論に取り入れられるかは未知数だが、社内の戦略言語としては既に機能している」と見る。星社長が FY2025/3 決算説明会で「埋もれている労働力が約 15 兆円、埋もれゆく労働力が 120 兆円、合算すると 135 兆円、これが日本における埋蔵労働力資産」と言い切っているのは、M&A・出資・新規事業を判断する 1 次スクリーンにこの言葉を置いていることの裏付けである。
3-3. 成長戦略の 4 経路
ULURU Sustainable Growth の下にぶら下がる具体的な成長経路は、会社資料では「既存事業の成長」「既存事業の周辺領域」「新規事業創出」「M&A」の 4 レイヤーに整理されている。本レポートでは、これを(a)CGS の横展開、(b)自治体 DX、(c)M&A、(d)マイノリティ出資の 4 経路として読み解く。4 つに切る理由は、いずれも同社の共通アセット(クラウドワーカー網、ワーカーディレクションノウハウ、業界特化 SaaS の運用経験)を再利用しているためで、独立した事業開発ではなく「CGS ファクトリーの横展開」として一貫している。
(a)CGS の横展開 — NJSS(公共調達 SaaS)から fondesk(受電 SaaS)、えんフォト(園写真 SaaS)、OurPhoto(出張撮影マッチング)、BPaaS(他社 SaaS 運用受託)へと、同じアーキテクチャで横展開している。会社は FY2026/3 のセグメント別予想で NJSS 売上 +13.1% / EBITDA +16.4〜+19.7%、fondesk 売上 +18.1%、フォト売上 +14.8%、BPO 売上 +17.7% / EBITDA +57.4〜+66.9% のオーガニック成長を見込んでおり、NJSS 単体に依存しない伸び筋を設計している。BPO セグメントの EBITDA 成長率が最も高いのは、「AI × BPO」としての AI ブリッジ for Lightblue(2025 年 7 月リリース)や、SaaS 事業者のラストワンマイル運用受託(BPaaS)の拡大で、祖業だった BPO が SaaS の裏側を回す高付加価値事業に再定義された結果と読める。
(b)自治体 DX — NJSS のデータベースを自治体側に横展開する経路で、調達インフォ(2019 年 11 月)、GoSTEP(2023 年 3 月)、入札資格ポータル(2023 年 7 月)、入札 BPO(2023 年 11 月)が主要商品である。会社は「民間入札マーケットの年 25 兆円(2021 年度、出所:中小企業庁)+ 自治体 DX 領域で 2.4 兆円以上の付加価値創出機会」という TAM 構造を示しており、2.4 兆円の根拠は「1,700 超の自治体で公務員の生産性を 10% 向上させた場合の経済的機会費用」としている。調達インフォは 2025 年時点で約 880 自治体に導入済、うるるは 2025 年 10 月 3 日に「GovTech Bridge Conference 2025」を開催し、自治体職員・CIO 補佐官と民間企業の 500〜600 名規模の場作りまで踏み込んだ。NJSS 本体の ARR(FY2026/3 3Q 末 3,681 百万円)を 100 億円規模に引き上げるという同社ビジョンは、この自治体 DX レイヤーが主柱である。
(c)M&A — 2025 年 6 月に公表した横浜綜合写真の全株式取得は、同社にとって過去最大規模の事業 M&A である(詳細は §3-5)。星社長は FY2025/3 決算説明会で「年間 1〜2 件、もう少しインパクトのある規模感の M&A も検討していきたい」と述べ、これまで 1〜2 億円規模にとどまっていた M&A を、連結純資産 15% 以上のサイズまで上げている。3 年前から未来創造チームを立ち上げてソーシングと DD を複数走らせているとの発言もあり、単発の機会取引ではなく恒常的な M&A パイプラインに移行した。
(d)マイノリティ出資 — ULURU IMPACT BASE(詳細は §3-5)は累計 5 億円・1 件 1 億円以内という小口枠で、Lightblue(AI)、いろはな(外国人労働)、LX DESIGN(教育 DX)、エイジレス(ミドル・シニア)の 4 社に既に配分している。M&A が「既存事業のシナジーと規模」を取る手段なのに対し、出資は「未だ手がけていない労働力不足関連領域の探索」を狙うため、両者は明確に役割分離されている。
この 4 経路が揃うことで、NJSS 単体の ARR 100 億円到達シナリオが頓挫した場合でも、fondesk IVR の SOHO 層拡大、えんフォト × 横浜綜合写真の小中高展開、BPaaS の大型案件化、ULURU IMPACT BASE 経由の新領域探索のどれかが代替候補として準備されている構造になる。投資家視点では「NJSS 解約率の反転で一発で崩れない」テーゼの裏付けである。
3-4. NJSS 周辺サービスの自治体 DX 展開
前節(b)のうち、自治体 DX 経路は現時点で最も構造的な追い風が効いている領域である。公務員は国家公務員約 80 万人と地方公務員約 260 万人の計 340 万人規模で、星社長は「340 万人に平均年収 432 万円を掛けると約 14 兆円。10% の生産性改善で 1.4 兆円」という暗算ベースのインパクト試算を FY2025/3 決算説明会で披露している。会社資料の 2.4 兆円という試算はこれを自治体 1,700 団体ベースで組み直したものだが、いずれにしても国家レベルの DX 遅延が同社の TAM に素直に載っている構図である。
具体的なプロダクトは 4 層で整理できる。(1) 案件情報レイヤー — NJSS(民間向け、有料契約 7,275 件、FY2026/3 3Q 末)と調達インフォ(自治体向け、約 880 団体導入)を双方向で使い、2025 年には NJSS と調達インフォを連携させた「案件 PR 機能」の提供も開始した。(2) 予算・事業情報レイヤー — GoSTEP(2023 年 3 月、公共機関の予算・事業情報の検索ツール)が自治体側の川上工程をカバーする。(3) 入札参加資格レイヤー — 入札資格ポータル(2023 年 7 月、2024 年 7 月有料版)が全省庁統一資格保有約 7 万社の管理 DX を担う。(4) 実務受託レイヤー — 入札 BPO(2023 年 11 月)が BPaaS 型で入札公示前のマーケット調査から案件履行までを請け負う。NJSS の ARPU が FY2025/3 末 1,210 円から FY2026/3 3Q 末 1,302 円まで 3 四半期連続で切り上がったのは、NJSS 単体の値上げよりも、この周辺サービスのアップセル・クロスセルが重なった結果という説明が整合する。
民間向け入札マーケットは中小企業庁データで 2021 年度 26 兆円(国・独立行政法人・地方公共団体合算)、このうち物品・役務が約 6 割で、NJSS と nSearch の有料契約合計 7,755 件(FY2025/3 末、nSearch 含む)は落札実績ある企業約 40 万社の約 2%、全省庁統一資格保有企業約 7 万社の約 10% にすぎない。ここに自治体 DX レイヤーの 2.4 兆円を乗せ、さらに官民双方の入札業務全体を「入札調達業務全体の DX プラットフォーム」として押さえにいくのが、会社が開示している「ARR 100 億円」への拡張シナリオである。NJSS 本体の ARR 36.81 億円(FY2026/3 3Q 末)を 100 億円に引き上げるには周辺サービス込みで年間 +20〜25% 程度の ARR 成長を 4〜5 年継続する必要があり、これは FY2022/3 以降の NJSS 売上高成長率(+12〜20% 帯)と同水準か、やや上を要求する水準である。重要なのは目標自体の難易度ではなく、「本体 NJSS に加えて GoSTEP・調達インフォ・入札 BPO の 3 層を重ねて顧客単価を引き上げる」という引き上げ経路が既に立ち上がっていることだと当社は見る。
3-5. ULURU IMPACT BASE と M&A 戦略
ULURU Sustainable Growth の中で、外部リソースを取り込む経路として並置されているのが ULURU IMPACT BASE と M&A である。両者は同じ「成長投資」カテゴリに入るが、資金規模・関与形態・出口設計が異なる。
ULURU IMPACT BASE は 2024 年に立ち上がった戦略的マイノリティ出資プログラムで、累計投資額 5 億円、新規投資分として年間 2 億円、1 件当たり 1 億円以内という枠で運用される。出資比率は 50% 未満に抑え、株式保有に加えて業務提携への展開も想定する設計である。投資テーマは「埋蔵労働力資産の創出と活用」の 1 本で、現時点の投資先は以下 4 社に整理できる。
| 領域 | 企業 | 投資時期 | 事業内容 |
|---|---|---|---|
| AI 活用・労働生産性向上 | 株式会社 Lightblue | 2023 年 10 月 | 自然言語処理 AI・画像解析のソリューション開発 |
| 外国人労働力の活用 | いろはな株式会社 | 2025 年 4 月 | 外国籍社員の雇用管理 DX/人材採用支援 |
| 学校と社会をつなぐ教育 DX | 株式会社 LX DESIGN | (FY2026/3 開示) | 出前授業マッチングサービス「複業先生」運営 |
| ミドル・シニア人材の活躍 | 株式会社エイジレス | (FY2026/3 開示) | ミドル・シニア IT 人材向け転職・顧問サービス |
出所:同社「事業計画及び成長可能性に関する事項」および FY2026/3 第 3 四半期決算説明資料より AENTRO Research 作成
Lightblue との連携は BPO セグメントの「AI ブリッジ for Lightblue」(2025 年 7 月リリース)として既に売上化ルートに接続されており、出資が単純な財務投資ではなく BPO 事業の AI 機能を補強するアウトソース R&D として機能している。いろはな社への出資は、外国人労働力という同社が自社事業として持っていない領域への「実験的レンズ」と読むのが素直で、事業 M&A ではなく出資という形を選んだのは、特定技能外国人の受け入れ手続きという規制・運営ノウハウが重い領域を内製せず共同運営する狙いと整合する。
M&A のほうは規模が大きく出口は連結化を前提に設計される。2025 年 6 月 16 日公表の横浜綜合写真(神奈川県横浜市、1985 年設立、2024 年 8 月期売上 228 百万円・営業利益 39 百万円・純資産 274 百万円)の全株式取得は、取得価額を非開示としつつ「当社の連結純資産の 15% 以上」(2025/3 末の連結純資産 3,028 百万円に照らすと約 4.5 億円以上)と明示されており、従来 1〜2 億円規模にとどまっていた事業 M&A を明確にワンサイズ上げた案件である。2025 年 9 月 1 日付で株式譲渡実行、FY2026/3 第 2 四半期から連結化、のれんは FY2025/3 末 181 百万円から FY2026/3 3Q 末 309 百万円へ 128 百万円積み上がった(§7-2 参照)。ここで重要なのは、横浜綜合写真が首都圏の小学校・中学校・高等学校向けに写真撮影・卒業アルバム制作・販売を営んでおり、えんフォトが SAM として開示する施設数が幼稚園・保育園の 56,417 施設から小中高を含む 91,758 施設へ 1.6 倍に拡大した点である(§2-5 参照)。単体では年商 2 億円規模の小さな会社だが、えんフォトの TAM 拡張を駆動するレバレッジポイントに選んだ案件設計と読める。
統合リスクは率直に評価しておく必要がある。フォトセグメント(えんフォト + OurPhoto)は FY2025/3 で EBITDA -43 百万円、FY2026/3 3Q 累計で -73 百万円と連続赤字が続き、横浜綜合写真の単体 OPM(FY2024/8 期で約 17%)を連結に取り込んでも、のれん償却と統合費用で当面はセグメント赤字を吸収しきれない可能性が高い。会社の FY2026/3 セグメント予想でフォト EBITDA が 0〜10 百万円とほぼトントンで置かれていることからも、同セグメントは黒字化に 1〜2 年はかかると見るのが妥当である。一方で、えんフォトの契約園数(5,360 園、2025/12 末)とえんアルバム・OurPhoto との商品クロスセルがプロダクト側で既に設計されているため、統合完了後の利益レバレッジ自体は見込める構造になっている。
M&A と ULURU IMPACT BASE を並べると、同社のキャピタルアロケーションは次のように整理できる。FY2025/3 末の現預金 3,405 百万円・自己資本比率 48.5%・ネットキャッシュ、FY2026/3 3Q 末の現預金 4,218 百万円と長期借入 505 百万円(うち横浜綜合写真取得資金を含む)を前提に、(1) 累進配当(FY2026/3 期末 3 円、配当性向 15.1% 下限)で年間約 1 億円強、(2) ULURU IMPACT BASE で年間 2 億円上限、(3) 事業 M&A で年間 1〜2 件、4〜5 億円規模、(4) 残余を人的資本・広告宣伝投資に回す、という 4 軸配分である。東証グロース市場改革(上場 5 年超・時価総額 100 億円以上の新基準)への対応として株式分割(2025/10/1 付 1:4)と累進配当も同時に実装されているが、星社長は決算説明会で「東証方針で慌てて変えたものはない。従来の方針と整合的」と述べており、還元強化は市場改革対応というより、ULURU Sustainable Growth の株主還元軸を明文化した結果に近い。
3-6. 人的資本投資と組織の再設計
ULURU Sustainable Growth が他の成長戦略と異なるのは、「人的資本投資」が中核施策として明示的に位置づけられている点である。有価証券報告書では「特に重要なリスク」として (1)「ULURU Sustainable Growth」における人材採用の進捗停滞、(2) 人材採用過多に伴う固定費増大、(3) 人材成長の停滞、の 3 点が並列で挙げられており、人的資本投資は同時に「成長の起点」と「最大の下振れ要因」として経営陣に認識されている。
連結従業員数(正社員)は FY2023/3 期末 201 名から FY2025/3 期末 268 名へ 2 年で 67 名の純増、内訳は NJSS +29・fondesk +1・フォト +11・BPO +3・コーポレート他 +13 となっており、採用配分は NJSS 周辺の自治体 DX 拡張とコーポレート機能強化に偏っている。平均年間給与は連結ベースで FY2025/3 期末時点の数字は有報に直接記載されていないが、提出会社ベースでの女性管理職比率 22.5%、男性育休取得率 75%、離職率 6.4%(情報通信業平均 12.8% の半分程度)、Wevox エンゲージメントスコア 79.8(業種平均 73、上位 20% 82)と、人材定着側の指標も改善している(数字は §7-1 および成長可能性資料より)。
組織体制では 2025 年3月末付でCo-CFOの一角であった近藤取締役(現執行役員)がIR管掌から離れ、もう一名のCo-CFOであった内丸氏が単独のCFOに就任。経営企画・IR・経理財務の各機能を「経営推進本部」へと統合し、CFO直下の体制に一本化することで、意思決定の迅速化と経営管理の効率化を図っている。その後、2025 年 10 月 1 日付でさらなるガバナンス強化を目的にCEOとCOOの分離を実施。人事機能の強化は ULURU Sustainable Growth の採用計画を実行に落とすうえでの前提条件で、星社長は「売上高成長に繋がるプロフィット部門へのリソース配分を高めるための人員配置」と説明している。新体制下では IR・SR 部を専任 2 名へ増員、投資家の意見を取締役会へ直接戻す動線を整備した。累進配当の導入(2025 年 5 月)と株式分割(2025 年 10 月)はこの投資家対話体制の成果物として位置づけられている。
人的資本投資の会計的な帰結は営業利益率の振れに現れる。FY2024/3 の営業利益率 22.3%(前中計最終年のピーク)から FY2025/3 は 11.4%(平常運行)、FY2026/3 予想は 10.6〜11.9%(レンジ)で、会社は FY2026/3 のウォーターフォール(出所:FY2025/3 決算説明会資料)で「人件費 +220 百万円・広告宣伝費 +135 百万円・その他 97〜150 百万円」の投資を EBITDA 1,002 → 1,050〜1,200 百万円のレンジに吸収させる設計を開示している。FY2026/3 のマーケティング投資は「積極投資を実施した FY2025/3 よりさらに増額」と明文化されており、利益率の短期回復よりも中長期 CAGR 20% のインフラ作りを優先する意思が明確である。
4 経路の成長戦略、独自フレーム「埋蔵労働力資産」、年間 2 億円のマイノリティ出資と連結純資産 15% 超の事業 M&A、採用配分の NJSS 周辺シフトと経営体制刷新、そして累進配当と株式分割による株主還元枠の整備 — これらが全て ULURU Sustainable Growth というひとつの中継ぎフェーズの中で同時進行している。戦略設計の多層さそのものは評価できるが、投資家にとって次に問うべきは「この戦略の成果が数字として見え始めているのか」である。FY2026/3 3Q 累計の営業利益 +46.3% / 純利益 +79.3% と通期 EBITDA 1,100〜1,200 百万円への上方修正は、戦略転換の初期シグナルと読むには十分だろうか、それともまだ四半期のノイズに過ぎないのか。次章では 5 期の PL / BS / CF と四半期推移を分解し、この問いに数字の側から答えていく。
4. 業績動向
4-1. 業績ハイライト
うるるの 5 期業績を 1 枚で読むなら、FY2024/3 に付けた EBITDA 15 億円のピークを一時的な頂点として受け止め、FY2025/3 の平常運行と FY2026/3 の再加速を同じサイクルの中で見るのが正しい読み方である。表面上は FY2024/3 → FY2025/3 で営業利益が 1,324 百万円から 763 百万円へ 42% 落ち込んでいるが、これは ULURU Sustainable Growth 初年度として人的資本・プロダクト投資を再配分した結果であり、FY2026/3 は 2026 年 2 月 13 日付の上方修正でレンジ中央値が営業利益 870 百万円・EBITDA 1,150 百万円と提示されている。
直近 5 期に通期会社予想を並置すると、利益の「落ちて戻って伸びる」軌道が一枚絵で把握できる(単位:百万円)。
| 科目 | FY2022/3 | FY2023/3 | FY2024/3 | FY2025/3 | FY2026/3E |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 4,029 | 4,862 | 5,938 | 6,701 | 7,710 |
| 営業利益 | -245 | 9 | 1,324 | 763 | 820〜920 |
| 営業利益率 (%) | -6.1 | 0.2 | 22.3 | 11.4 | 10.6〜11.9 |
| EBITDA | — | 106 | 1,517 | 1,003 | 1,100〜1,200 |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | -64 | -46 | 720 | 458 | 550〜600 |
出所:有価証券報告書および決算短信より AENTRO Research 作成
売上高は FY2022/3 4,029 百万円から FY2026/3E 7,710 百万円へ 4 年で約 1.9 倍、CAGR は 17.6% に達する。営業利益が FY2022/3 にマイナスを抱えていた状態から FY2024/3 22.3% の高採算を経て FY2026/3E 10%台で定着していく構図は、成長投資の局面を一巡させながら採算の底上げが進んでいる企業の姿を示す。FY2025/3 単年だけを切り出して「減益企業」と読むのは、5 期の波を 1 年断面で評価する誤りである。
4-2. 5 期 PL 推移:「ピーク → 平常 → 再加速」の構造
当社の 5 期 PL を通して見ると、FY2024/3 の営業利益 1,324 百万円・EBITDA 1,517 百万円は前中期経営計画の最終年として売上・利益・キャッシュを集中的に押し上げた結果であり、FY2025/3 の減益はその反動と次フェーズへの意図的な切り替えの合算で説明できる。具体的には、FY2025/3 の売上高は前年比 12.8% 増の 6,701 百万円と二桁成長を継続する一方、販管費は 2,924 百万円から 3,913 百万円へ 33.8% 拡大しており、差額の大半が人員増と NJSS 周辺プロダクト開発への振替である。減損損失 66 百万円を特別損失で吸収した上で親会社株主帰属当期純利益 458 百万円・EBITDA 1,003 百万円を確保しており、これを「平常運行」と位置づけるのが Appendix §7-1 の示す事実に整合する読み方である。
重要なのは、FY2025/3 着地の 763 百万円の営業利益が既に期初計画を上回っていた点である。会社は 2024 年 5 月公表の FY2025/3 計画で営業利益 731 百万円を置いており、実績はこれを 32 百万円上振れて着地した。その上で、FY2026/3 第 3 四半期累計は 2025 年 4 月〜12 月の 9 ヶ月で売上 5,442 百万円、営業利益 618 百万円、親会社株主帰属当期純利益 507 百万円(前年同期比 +22.3% / +46.3% / +79.3%)となり、通期予想は同年 2 月 13 日付で上方修正された。FY2026/3E EBITDA 1,100〜1,200 百万円の下限でも FY2025/3 対比で 9.7% 増、中央値(1,150 百万円)では 14.6% 増となる。
FY2024/3 のピーク水準は中計達成の打ち上げ花火的性格を持つ。前期比で販管費が 2,924 百万円にまで抑制された一方、売上高総利益率は 71.5% と SaaS 比率上昇を反映して切り上がっており、その差が営業利益 1,324 百万円として現れた。これを 5 期の巡航点と誤読すると、FY2025/3 の 10 億円台 EBITDA はフェーズ後退に見えてしまう。しかし FY2026/3E の通期予想レンジが EBITDA 11〜12 億円・営業利益 820〜920 百万円で提示されたことで、FY2024/3 はむしろ「初期ピーク」、FY2025/3 以降は「規律ある再成長の起点」として位置づけ直されつつある。当社は、FY2025/3 の減益を「失速」ではなく「投資の先行計上を伴う成長基盤の再設計」と読むのが妥当とみる。
4-3. セグメント別業績:NJSS の安定と BPO の加速、フォトの踊り場
3 セグメント(CGS / BPO / クラウドソーシング)の内訳を Appendix §7-4 から整理すると、CGS 内の 3 主力サービス(NJSS / fondesk / フォト)と BPO / クラウドソーシングの計 5 ユニットで利益プロファイルが明確に分化している。FY2026/3 第 3 四半期累計の各事業の位置づけは以下のとおり(単位:百万円)。
| 事業ユニット | FY2024/3 EBITDA | FY2025/3 EBITDA | FY2026/3 3Q EBITDA |
|---|---|---|---|
| NJSS(nSearch・入札 BPO 含む) | 1,581 | 1,546 | 1,417 |
| fondesk | 270 | 166 | 95 |
| フォト(えんフォト + OurPhoto + 横浜綜合写真) | 69 | -43 | -73 |
| BPO | 241 | 210 | 116 |
| クラウドソーシング(シュフティ) | -9 | -7 | -3 |
出所:決算短信および決算説明資料より AENTRO Research 作成
NJSS は FY2022/3 EBITDA 702 百万円から FY2025/3 1,546 百万円へ 4 年で 2.2 倍に拡大し、FY2026/3 第 3 四半期累計でも前年同期比 +3.5% の 1,417 百万円(9 ヶ月値)と安定している。解約率 1.44%(12 ヶ月平均)と ARPU の日割り 1,302 円への引き上げが寄与し、LTV は FY2025/3 末の 2,172 千円から FY2026/3 第 3 四半期末で 2,492 千円へ 15% 改善した。有料契約件数 7,275 件・ARR 3,681 百万円は公共調達 SaaS としての地位確立と整合する数字である。
fondesk は契約件数 6,094 件・ARR 1,132 百万円と SaaS 単独サービスとしては堅調だが、EBITDA は FY2024/3 270 百万円の高採算から FY2025/3 166 百万円へ一度落ち、FY2026/3 第 3 四半期累計では 95 百万円(9 ヶ月)にとどまっている。解約率 1.1% は改善しているものの、マス広告投入と IVR サブプロダクトへの開発投資がコスト面を一時的に押している局面である。
フォト(えんフォト/OurPhoto/横浜綜合写真)は FY2024/3 に 69 百万円の黒字化を果たしたものの、FY2025/3 -43 百万円、FY2026/3 第 3 四半期累計 -73 百万円と再び赤字圏にある。2025 年 10 月の横浜綜合写真連結化(のれん 168 百万円増)と統合費用、OurPhoto 周りのマーケ再投資が嵩んでおり、写真ドメイン全体の損益分岐まではもう 1〜2 年の時間が必要と見ておくべきである。
一方で BPO は、2026 年 2 月 13 日付の業績修正開示で会社側が明記したとおり、FY2026/3 第 3 四半期累計でセグメント利益(営業利益ベース)が前年同期比 +429.7% と跳ね上がった。EBITDA 水準で見ると 9 ヶ月で 116 百万円と規模はまだ大きくないが、BPaaS 化が進んだことで、従来「低採算の人海戦術」と捉えられていた祖業の見え方が変わりつつある。クラウドソーシング(シュフティ)自体の売上は FY2026/3 第 3 四半期累計で 17 百万円と小さいが、登録クラウドワーカー 49 万人(2025 年 12 月末)が CGS 4 サービス全体の労働供給インフラになっている点で、損益数字以上の戦略的重みがある。
セグメント全体を通して見ると、NJSS が利益の太宗を担いつつ fondesk と BPO が第 2・第 3 の柱に育ち、フォトは投資先行フェーズで一時的赤字を許容する、という利益ミックスの役割分担が明確である。
4-4. SaaS 主要 KPI の推移:解約率と ARR が語る事業の体温
全社で見ると、SaaS 4 サービス(NJSS/nSearch/fondesk/えんフォト)の合算 ARR は FY2025/3 末の 5,143 百万円から FY2026/3 第 3 四半期末の 5,619 百万円へ 9.3% 拡大した。SaaS 売上高比率(OurPhoto・横浜綜合写真を含まない定義)は FY2025/3 の 73.6% から FY2026/3 第 3 四半期末では 75.5% まで切り上がっており、連結売上の 4 分の 3 がリカーリングで構成される SaaS 企業としての輪郭が明確化してきた。
SaaS 売上比率 73.6% という水準は、BPO 主体のアウトソーシング企業群と比較して際立って高く、うるるが単なる BPO 屋ではないことを定量的に示す起点の数字である。業績のボラティリティ低減の構造的根拠としても、この比率の上昇は重要な意味を持つ。第 2 章で事業構造の観点から提示したこの比率は、第 4 章では「なぜ FY2025/3 の減益を通常の景気循環リスクとして読まなくてよいか」の財務的裏付けとして機能する。一旦契約すると継続される前受金型の契約負債が FY2023/3 末 1,481 百万円から FY2026/3 第 3 四半期末 2,049 百万円へ 38% 積み上がっている事実と合わせて見ると、売上の可視性は 5 期前と比較して構造的に高まっている。
NJSS 単体で見ると、有料契約件数は FY2022/3 4,704 件から FY2026/3 第 3 四半期末 7,275 件へ 55% 増加し、ARPU は日割り 1,213 円から 1,302 円へ 7.3% 上昇、解約率は 12 ヶ月平均で 1.48% → 1.44% 帯を維持している。解約率 1.44% という水準は国内 BtoB SaaS の標準と比較しても上位である。会社定義の LTV(ARPU × 1/解約率 × 粗利率)で算出すると NJSS の 1 契約当たり生涯価値は 2,492 千円となる。つまり NJSS は契約件数を積むほど将来キャッシュフローが積層する構造で、ARR 3,681 百万円は単なる期末残高ではなく「解約率 1.44% なら今後 5〜10 年間、毎年 3,681 百万円近い売上の後追い認識が続く」ことを意味する。
fondesk は解約率を FY2022/3 の 1.9% から FY2026/3 第 3 四半期末 1.1% まで圧縮し、有料契約件数 6,094 件・ARR 1,132 百万円と SaaS としての規模を拡大している。ARPU は月 15,184 円で、受付代行の市場単価を考えると積み上げ余地がまだ大きい。えんフォトは契約園数 5,360 園・ARR 806 百万円で SaaS 4 サービスの第 3 の柱として位置づく。
まとめると、SaaS 合算 ARR 56 億円超・売上比率 75% 台・NJSS 解約率 1.44% という 3 点セットは、当社を「単発受注の BPO 企業」ではなく「契約残高が積み上がる SaaS プラットフォーマー」と読み直すための数値的根拠である。
4-5. BS・CF 概況:契約負債の積み上がりと規律的な資本配分
貸借対照表は、自己資本比率 47.3%(FY2026/3 第 3 四半期末)、現預金 4,218 百万円、ネットキャッシュ状態を維持する、という 3 点で特徴づけられる(Appendix §7-2)。総資産は FY2023/3 末 4,621 百万円から FY2026/3 第 3 四半期末 7,320 百万円へ 58% 拡大したが、資本構造の健全性は一貫して維持されている。
注目すべきは契約負債である。NJSS の年契約前受金を中心とする契約負債は FY2023/3 末 1,481 百万円から FY2026/3 第 3 四半期末 2,049 百万円へ 38% 積み上がった。これは単なる繰延売上ではなく、解約率 1.44% 台に支えられた「当面 1 年以内に売上認識される確定的リカーリング収益の先行計上」であり、SaaS 型の売上可視性を物理的に担保する BS 科目である。契約負債の拡大ペース(FY2025/3 末 1,787 → FY2026/3 第 3 四半期末 2,049、9 ヶ月で +262 百万円)が続く限り、翌期売上の「見える化」の厚みは維持される。
固定負債は FY2024/3 末 169 百万円から FY2026/3 第 3 四半期末 599 百万円へ増えたが、これは 2025 年 10 月の横浜綜合写真連結化に伴う取得資金調達(長期借入 387 百万円増、のれん 128 百万円増)が主因であり、事業拡張と整合的な動きである。自己資本比率 47.3% と現預金 4,218 百万円は、累進配当(配当性向 15% 以上)と機動的 M&A、ULURU IMPACT BASE(マイノリティ出資枠 5 億円)の 3 軸を並走させるに十分な厚みを備えている。
キャッシュ・フローは Appendix §7-3 のとおり、営業 CF が FY2023/3 329 百万円 → FY2024/3 1,475 百万円 → FY2025/3 652 百万円と推移した。FY2025/3 の減少は法人税支払額が 116 百万円から 577 百万円へ正常化したタイミング要因が主因で、税前 CF(小計)ベースでは 1,580 → 1,206 百万円と 24% 減にとどまる。投資 CF は FY2024/3 -441 百万円 → FY2025/3 -553 百万円で、NJSS 周辺の機能開発(ソフトウェア取得 373 百万円)と BPO 拠点拡張(有形固定資産取得 143 百万円)が中心である。財務 CF は FY2025/3 に -284 百万円(配当支払 242 百万円、長期借入金返済 40 百万円)と、配当開始を反映した純流出に転じた。
FCF(営業 CF+投資 CF)は FY2024/3 1,034 百万円 → FY2025/3 99 百万円と縮んだが、現預金期末残高 3,405 百万円(FY2025/3)、4,218 百万円(FY2026/3 第 3 四半期末)と現金ポジションは厚く維持されており、累進配当・M&A・成長投資の同時進行に耐える財務余力がある。
4-6. 直近四半期:FY2026/3 第 3 四半期累計で再加速
FY2026/3 第 3 四半期累計(2025 年 4 月〜12 月の 9 ヶ月)は、売上高 5,442 百万円(前年同期比 +22.3%)、営業利益 618 百万円(+46.3%)、経常利益 614 百万円(+45.7%)、親会社株主帰属四半期純利益 507 百万円(+79.3%)と、全利益段階で前年を大きく上回って着地した。売上の伸びを利益の伸びが明確に上回っており、営業レバレッジが効いている構図が四半期ベースで確認できる。
増益の要因は 3 層に分解できる。第一に、NJSS のセグメント利益が 9 ヶ月累計で堅調に伸び、ARPU 引き上げと契約件数増の二重効果が通年で効いている点。第二に、BPO のセグメント利益が前年同期比 +429.7% と跳ね上がり、BPaaS 化の初期成果が利益インパクトとして認識され始めた点。第三に、FY2025/3 第 4 四半期に計上した減損損失 66 百万円(フォト事業関連)のような特別損失が当期は発生しておらず、ボトムラインの増益幅(+79.3%)が営業増益率(+46.3%)を上回った点である。
SaaS 4 サービス合算 ARR は 5,619 百万円(FY2026/3 第 3 四半期末)、NJSS 契約件数 7,275 件(同)、fondesk 契約件数 6,094 件(同)、えんフォト契約園数 5,360 園(同)、シュフティ登録クラウドワーカー約 49 万人(2025 年 12 月末)という 5 つの KPI がいずれも過去最高を更新中で、四半期の「瞬間最大風速」ではなく「3 四半期連続の再加速」として読むべき事実がそろった。FY2026/3 第 3 四半期累計 営業利益 +46.3% / 純利益 +79.3% は、通期予想の上方修正(後述 4-7)と利益レンジ縮小の起点として機能している。
4-7. 通期予想:2026 年 2 月 13 日付の上方修正
FY2026/3 通期会社予想は 2026 年 2 月 13 日付で上方修正され、売上高 7,710 百万円、EBITDA 1,100〜1,200 百万円、営業利益 820〜920 百万円、経常利益 820〜920 百万円、親会社株主帰属当期純利益 550〜600 百万円のレンジに置き直された。当初計画との対比では、売上高は期初 7,410 百万円から +4.0%、EBITDA は 950〜1,050 百万円から +15.8%(中央値比較)、営業利益は 700〜800 百万円から +16.0%(中央値比較)、親会社株主帰属当期純利益は 470〜520 百万円から +16.2%(中央値比較)の上振れである。
レンジ提示の性格も注目に値する。EBITDA の下限 1,100 百万円は FY2025/3 の 1,003 百万円比で 9.7% 増、上限 1,200 百万円では 19.6% 増となり、どちらを採用しても「前期比一桁後半〜二桁前半の増益ガイダンス」の範囲に収まる。レンジ幅(上限-下限)が EBITDA で 100 百万円、営業利益で 100 百万円、親会社株主帰属当期純利益で 50 百万円と第 3 四半期時点にしては絞られており、会社側の着地確度の自信が読み取れる。
配当面では、累進配当方針(配当性向 15% 以上)に基づき、FY2026/3 年間配当金は 12 円(1:4 分割後ベースでは 3 円、配当性向 15.1%・下限値ベース)と前期比で増配修正された。2025 年 5 月の累進配当宣言、同年 8 月の 1:4 株式分割と株主優待継続、FY2026/3 第 3 四半期発表での増配修正という一連の流れで、株主還元軸は FY2024/3 の中計達成記念配当(1 株 35 円)の単発性から、恒常的な累進配当+機動的 M&A+成長投資の 4 軸併走体制へと移行した。
4-8. 業績動向の 3 つの注目点
第一に、NJSS 解約率 1.44%(12 ヶ月平均、FY2026/3 第 3 四半期末)が今後もこの帯を維持できるかである。解約率が 2% 台に反転すると LTV は単純計算で 3 割弱縮み、ARR の積み上がりスピードも鈍る。nSearch(自社競合型プロダクト)や自治体 DX 領域の競合動向を睨みつつ、四半期ごとの解約率推移を最重要の体温計として追うべきである。
第二に、SaaS 売上比率 73.6%(FY2025/3)から 75.5%(FY2026/3 第 3 四半期末)への上昇基調がどこまで伸ばせるかである。うるるが「BPO 屋」から「SaaS プラットフォーマー」へ評価軸を移行するには、SaaS 比率 80% 前後が 1 つの心理的なしきい値になる。fondesk の ARR 拡大、えんフォトの契約園数増、NJSS 単体の伸びの 3 本すべてが揃わないと 80% には届かない。どのサービスがこの比率を押し上げるか、事業別 ARR の積み上がり方を見続ける必要がある。
第三に、FY2026/3 第 3 四半期累計 営業利益 +46.3% / 純利益 +79.3% の再加速が FY2027/3 以降も持続するかである。FY2026/3E の EBITDA レンジ 1,100〜1,200 百万円は FY2024/3 のピーク 1,517 百万円を未だ下回っており、再加速が本格化するのは中央値基準でも FY2027/3 以降になる。フォト事業の損益分岐到達と横浜綜合写真の統合完了の 2 点が、FY2027/3 に ULURU Sustainable Growth が掲げる CAGR 20%+ 軌道を継続できるかを決める。
総じて、FY2024/3 のピークを一過性のものとして切り捨てず、FY2025/3 を投資先行局面の平常運行、FY2026/3 を再加速の起点として 3 年連続で並べて見たとき、うるるは「ボラ銘柄」ではなく「規律ある成長投資とストック収益の両立フェーズに入った SaaS+BPaaS プラットフォーマー」として読むのが、Appendix §7 の数字が示す客観的な姿である。であれば、この成長軌道は中長期で本当に続くのか、株主還元はどう設計されているのかが、次章で検討すべき論点となる。
5. 中長期成長方針・資本政策
5-1. ULURU Sustainable Growth の位置づけ ― 「中計がない」のではなく「硬い中計を意図的に置かない」
うるるは現時点で、いわゆる中期経営計画として年限・売上目標・利益目標を 1 枚に固定した文書を出していない。前 5 カ年中期経営計画(FY2020/3〜FY2024/3)が FY2024/3 に終了した後、後継として 2023 年 11 月 14 日に公表されたのが「ULURU Sustainable Growth」であり、これを毎期更新の「事業計画及び成長可能性に関する事項」と組み合わせる形で中長期方針が示されている。前者が会社としての成長スタンス(人的資本投資を中心とした規律ある成長投資、累進配当による株主還元)を、後者がその時点での定量レンジ(売上高・EBITDA の単年予想と中長期 CAGR ターゲット)を担う二段構えの構造である。
この構造をどう読むかが第 5 章の入口になる。表面だけを見ると「中計がないから計画性に欠ける」と捉えがちだが、有価証券報告書の「中長期的な経営戦略及び優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」では、ULURU Sustainable Growth のもとで FY2026/3 は売上 7,710 百万円・EBITDA 1,050〜1,200 百万円のレンジ予想を提示し、FY2027/3 以降は売上高・EBITDA いずれも中長期で CAGR 20% 以上の継続的な成長を目指すと明記している。つまり方針自体は固定的に置きながら、単年度の利益はレンジで開示し、期中の機動的な成長投資を許容する設計になっている。前中計時代に「赤字を掘る年もある」と先に宣言したうえで FY2024/3 に EBITDA 1,517 百万円までやり切ったように、コミットの粒度を「中長期 CAGR 20% 以上」と「単年レンジ EBITDA」の二段で切る方が、人的資本投資・マーケティング投資・M&A をバランスさせやすいと判断していると読める。中計の体裁を取らないこと自体が、この会社の資本政策思想の表明である。
5-2. 開示されている定量目標と前中計の達成実績
ULURU Sustainable Growth が定量面で示しているのは、中長期での売上高 CAGR 20% 以上・EBITDA CAGR 20% 以上、配当性向 15% 以上を目安とした累進配当、そして単年では FY2026/3 の業績予想レンジである。FY2026/3 第 3 四半期決算と同時に発表された 2026 年 2 月 13 日の業績予想修正で、通期予想は売上 7,710 百万円据え置きのまま、EBITDA 1,100〜1,200 百万円(修正前 1,050〜1,200 百万円)、営業利益 820〜920 百万円、親会社株主帰属当期純利益 550〜600 百万円へとレンジ下限を引き上げる形で上方修正された。レンジ幅を縮小しつつも上限の達成を最大限目指し、機動的な投資余地を残す、というのがレンジ開示の運用思想である。
前中計(FY2020/3〜FY2024/3)の実績は、ULURU Sustainable Growth が示す CAGR 20% 以上が空想ではないことの傍証として読むべきである。会社開示によれば、前中計 5 年間で売上高は 24 億円から 67 億円へ約 2.7 倍、EBITDA は約 3.4 倍に拡大した(同期間の売上 CAGR は 21.5%、Appendix §7-1)。FY2024/3 の EBITDA 1,517 百万円というピークは中計達成のための一時的負荷集中の結果で、FY2025/3 はその反動と人的資本投資の積み上げで EBITDA 1,002 百万円に戻し、FY2026/3 は再加速フェーズに入っている。FY2026/3 第 3 四半期累計の営業利益が前年同期比 +46.3%、純利益が同 +79.3% と走っているのは、その軌道の途上での確認材料である。中長期 CAGR 20% 以上というターゲットは、過去 5 年の実績ペース(21.5%)と整合する数字であり、ストレッチ目標ではあるが「実現したことのある成長率」を再現しに行く構図になっている。
5-3. 重点テーマ ― NJSS 周辺拡張・Govtech・fondesk IVR・フォト統合
ULURU Sustainable Growth が掲げる事業戦略は、(A) NJSS を核とした入札マーケットの拡大、(B) fondesk・えんフォト・BPO の更なる成長、(C) M&A・新規事業創出、の三本立てである。その中で第 5 章として注目すべき重点テーマは四つある。
第一は NJSS の周辺拡張である。NJSS 単体の SaaS 成長に加えて、入札情報検索の nSearch、調達インフラ情報を補強する GoSTEP(公共機関の事業予算・公開統計・自治体組織情報を一括検索)、入札 BPO(NJSS で蓄積した入札ノウハウとうるる BPO の業務遂行ノウハウを掛け合わせた BPaaS)、自治体・公的機関向けの調達インフォといった周辺サービスを束ねた「入札マーケットの面取り」が、FY2026/3 の NJSS セグメント売上 3,670 百万円・EBITDA 1,800〜1,850 百万円という会社予想の前提となっている。NJSS 解約率が 12 ヶ月平均 1.44%(FY2026/3 3Q)まで戻り、ARPU は 1,210 円 → 1,302 円と単価引き上げ施策が奏功したことで、NJSS は「契約件数の伸び」から「LTV の引き上げ」(2,172 千円 → 2,492 千円)にギアが入ったフェーズにある。
第二は Govtech 領域である。NJSS で 17 年間蓄積してきた自治体側との接点を、調達のデータ取得から自治体 DX 全体へ広げる構想が立ち上がっている。2025 年 10 月 3 日に開催した「GovTech Bridge Conference 2025」は、自治体職員と CIO 補佐官 200〜300 名、自治体向けにツール・サービスを提供する民間企業 200〜300 名、合計 500〜600 名規模を一堂に集める官民共創イベントで、リアルイベントを起点に自治体 DX のハブ機能を取りに行く設計になっている。会社は地方公務員 260 万人を含む公務員 340 万人の労働力(平均年収 432 万円換算で約 14 兆円規模)の生産性 1〜3 割改善に 1.4〜4.2 兆円のインパクトを置いており、NJSS 周辺の延長というより独立した中長期テーマとして育てている。
第三は fondesk IVR である。fondesk 本体の有料契約件数は 6,094 件、ARR 11.3 億円(FY2026/3 3Q)まで来ており、解約率は 12 ヶ月平均 1.1% と SaaS 標準でも優秀な水準にある。これに対し、2024 年 12 月にリリースした「fondesk IVR」は、シンプルで使いやすい・低価格を売りにした自動応答 SaaS で、fondesk と並走する第 2 プロダクトとして本格立ち上げ期に入った。FY2026/3 の fondesk セグメント EBITDA 予想 0〜110 百万円というレンジは、IVR 立ち上げ期のマーケティング・人員投資を吸収するためのものである。
第四はフォト事業の M&A 統合である。2025 年 4 月に横浜綜合写真株式会社を 100% 子会社化(取得対価は連結純資産の 15% 超、FY2026/3 第 2 四半期に連結化、のれん 168 百万円増)し、えんフォト × OurPhoto × 横浜綜合写真の三本立てで写真ドメインの拡張を進めている。フォト合算 EBITDA は FY2024/3 の 69 百万円黒字から FY2025/3 −44 百万円・FY2026/3 3Q 累計 −73 百万円と統合費用で再び赤字化しているが、えんフォト契約園数 5,360 園・園当たり売上高 4 万円台後半という KPI 自体は順調で、フォトグラファーリソースの確保(OurPhoto との連携)と販売単価見直しを通じて FY2026/3 の損益分岐を図る計画になっている。
5-4. キャピタルアロケーション ― 4 軸併置と ULURU IMPACT BASE
ULURU Sustainable Growth のキャッシュアロケーションは、営業 CF を原資に「成長投資・出資/M&A・株主還元」の 3 経路に配分する整理になっている。これに自社のバランスシート上の余剰流動性を組み合わせた「成長投資 + M&A + 累進配当 + 株主優待」の 4 軸を併置するのが、現フェーズの資本政策の特徴である。
成長投資は人的資本投資(人件費)と広告宣伝費(マーケティング投資)の二系統で、FY2026/3 の EBITDA レンジが幅を持っているのはこの二系統を期中で機動的に振り向ける余地を確保するためである。会社開示の EBITDA 増減要因分析では、FY2025/3 EBITDA 1,002 百万円を起点に売上総利益 +650 百万円(オーガニック増収)に対し、人件費 −220 百万円・広告宣伝費 −135 百万円・その他費用 −97〜+150 百万円を吸収して 1,050〜1,200 百万円のレンジに着地する組み立てになっている。営業 CF が FY2025/3 で 652 百万円、FY2024/3 で 1,475 百万円と振れる中で、成長投資の規律を「投資予算ありき」ではなく「機動的な期中判断」に置いている点が他社と異なる。
出資・M&A は二層構造である。本体での M&A は経営者コメントによれば年間 1〜2 件、これまでの 1〜2 億円規模から「もう少しインパクトのある規模感」への引き上げを検討段階に入っている。横浜綜合写真の取得(FY2026/3 第 2 四半期)はその第一歩で、長期借入 505 百万円増(FY2025/3 末 118 百万円 → FY2026/3 3Q 末 505 百万円・Appendix §7-2)が取得資金として手当てされた。一方、マイノリティ出資の枠が「ULURU IMPACT BASE」として独立している。会社の独自概念「埋蔵労働力資産」(135 兆円規模)の創出・活用を提言する企業に対し、累計投資額 5 億円を上限に、年間 2 億円・1 件当たり 1 億円以内のサイズで出資する設計で、2023 年 10 月に AI スペシャリスト集団の Lightblue 株式会社、2025 年 4 月に特定技能外国人材の受け入れ手続き・雇用管理 DX の いろはな株式会社へ第 1 弾・第 2 弾を実行している。本体 M&A が「既存事業の周辺領域・シナジー優先」、ULURU IMPACT BASE が「新領域の探索的出資」という棲み分けで、未来創造チームによるソーシングと連携している。
株主還元は次節で扱うが、現預金 42 億円超(FY2026/3 3Q 末 4,218 百万円・Appendix §7-2)と自己資本比率 47.3%、ネットキャッシュ・ポジションを維持していることが、4 軸併置を支える前提条件になっている。FY2025/3 の財務 CF −284 百万円(うち配当金支払 −242 百万円、長期借入金返済 −40 百万円)と、FY2026/3 第 2 四半期の長期借入 +500 百万円規模(横浜綜合写真取得資金)を合わせて読むと、現預金水準は 34〜42 億円のレンジで安定運営されており、累進配当・機動的 M&A・成長投資のいずれかが他を圧迫する構造ではない。
5-5. 株主還元 ― 累進配当・1:4 株式分割・OurPhoto 株主優待
うるるの株主還元は、2024 年 3 月期の特別配当を起点に、2025 年 5 月の累進配当宣言、2025 年 8 月の 1:4 株式分割、2026 年 2 月の増配修正と、約 1 年半で一気に整備された。Appendix §7-4-7 のとおり、1 株当たり配当金(実額)は FY2024/3 の特別配当 35 円(配当性向 33.6%)、FY2025/3 の普通配当 10 円(配当性向 15.1%)、FY2026/3 予想 12 円(分割考慮後 3 円、配当性向 15.1% 下限値ベース)と推移している。
累進配当の定義は厳密に押さえておく必要がある。2025 年 5 月 14 日の株主還元方針変更に関する取締役会決議では、累進配当を「原則として減配せず、配当の維持もしくは増配を行う配当政策」と定義した上で、これとは別に「配当性向 15% 以上を目安」とすることを基本方針として明記している。すなわち累進配当は (1)「減配しない」というフロアの設定と、(2)「配当性向 15% 以上」という水準目線、の二つの軸で構成されており、どちらか一方ではない。この二軸併置によって、利益の絶対水準が一時的に下振れた局面でも前期配当額をフロアとして維持しつつ、利益の拡大局面では 15% 以上の配当性向を目安に増配方向で還元する設計になっている。経営者コメント上も「累進配当というと金額の据え置きも含まれるが、我々の意図としては増配を目指す」と強調されている。FY2026/3 の増配修正(前回予想 1 株 2.75 円 → 修正後 3.00 円、分割後)は、業績予想レンジ下限の引き上げに合わせて配当性向 15.1% を維持する形での運用例である。
2025 年 8 月 14 日に発表され、2025 年 10 月 1 日に効力発生した 1 株 → 4 株の株式分割は、株式の流動性を高めて投資家層を拡大する目的で実施された。発行済株式総数は 6,925,400 株から 27,701,600 株(自己株式 24,136 株含む)に増え、Appendix §7-1 の EPS と §7-2 の BPS は分割後ベースで揃えている。配当予想(FY2026/3 期末 11 円)は分割比率に応じて 1 株 2.75 円に機械的に修正され(実質変更なし)、その後 2026 年 2 月 13 日の増配修正で 3.00 円へ引き上げられた。
株主優待制度は分割後も従来どおり維持されている。毎年 3 月 31 日基準で 1 単元(100 株)以上を保有する株主に対し、同社が運営する出張撮影サービス「OurPhoto」の 3,000 円割引クーポンを 1 枚贈呈する内容で、株式分割で必要投資金額が 4 分の 1 になったことで個人投資家層の取り込みと相性が良い設計になっている。配当・分割・優待を 1 年強の間に同時に整える動きは、グロース市場の小型銘柄としては相対的に踏み込んだ部類に入る。
5-6. 評価軸とまとめ ― 中計なし状態での方針評価とグロース市場改革対応
中計を持たない会社の中長期方針を評価する場合、評価軸は通常の「中計達成率」ではなく、(i) 方針の継続性と更新規律、(ii) キャッシュアロケーションの規律、(iii) 還元方針の安定性、の三つに置き換える必要がある。うるるはこの三つで概ね及第点を取っている。(i) は ULURU Sustainable Growth が 2023 年 11 月に公表されてから 2 年強、毎期の事業計画及び成長可能性資料で更新されつつ、CAGR 20% 以上というターゲットがブレずに維持されている。(ii) は前述の通り、本体 M&A・ULURU IMPACT BASE・成長投資・配当の 4 軸が手元現預金 42 億円超とネットキャッシュ・ポジションの中で併存しており、いずれかが過大に偏った形跡はない。(iii) は累進配当の二軸定義と株式分割・株主優待維持の組み合わせで、グロース市場の小型銘柄としては安定性が高い。
東証のグロース市場改革(上場 5 年経過後の時価総額 100 億円基準と「高い成長を目指した経営」の要請)への対応について、経営者コメントは「東証の方針が出たことによって慌てて変えたものはない、従来からの株主還元と会社成長のバランスは影響を受けていない」とした上で、「株価に関して分割してもう少し安くした方がいい、といった東証の細かい推奨は検討していく」と踏み込んでいる。1:4 株式分割と株主優待維持はその検討の具体化であり、累進配当の宣言はそれより前の 2025 年 5 月に独自タイミングで実行されたものである。グロース市場改革対応として後追いで作ったパッケージではなく、自社の成長フェーズ移行のロジックに沿ってアクションを並べた結果、改革の方向性とも整合した、と読むのが正確である。
新経営体制(2025 年 10 月 1 日付の CEO/COO 分離、執行役員ラインへの 4 名移行、現 CFO 内丸氏主導の決算説明資料刷新)は、第 1 章で扱った監督・執行分離のガバナンス論点であると同時に、第 5 章の文脈では「IR ナラティブと開示の継続性」の刷新フェーズに該当する。前 IR 管掌の近藤氏が未来創造チーム(M&A ソーシングを担う)に専念し、CFO 内丸氏が IR・株主還元・キャピタルアロケーションを束ねる体制は、4 軸併置の資本政策を機能させるための内部体制整備とも整合する。
総じて、第 5 章として読むべき結論は「うるるは中計を意図的に置かず、方針 + レンジ予想 + 累進配当の組み合わせで CAGR 20% 以上を取りに行く設計を選び、現預金 42 億円超を背景に成長投資・M&A・配当・優待の 4 軸併置を実行段階に入れた」ということである。
では、この方針を市場はどう値付けしているのか。次章ではマーケットデータと PER・PBR・EV/EBITDA の解体、Peer 比較と Opportunity・Anti-thesis を通じて、その評価のレンジを検証する。
6. 株価インサイト
うるるの現在の株価は、PER 13〜17 倍・EV/EBITDA 5 倍前後・PBR 2.7〜3.8 倍というレンジに収まっており、見かけはアウトソーシング業界中央値に重なる。だが第 1 章から第 5 章までで積み上げてきた CGS(Crowd Generated Service)モデルの再現性、SaaS 売上比率 73.6%、SaaS 合算 ARR 56 億円超、累進配当への移行といった構造的な質感を「業界中央値」で読み切るには無理がある。本章では、市場が現状の倍率をどう組み立てているかを分解したうえで、再評価につながる Opportunity 3 点とリスク監視点としての Anti-thesis 3 点を並置し、最後に Peer 比較で立ち位置を立体化する。No Rating / No Target Price の前提に立ち、四半期で追うべき KPI とカタリストを最後に整理する。
6-1. 株価推移と業績の符号
うるるの株価は、2017 年 3 月のマザーズ上場後、SaaS 比率の上昇と業績ボラの間で 2 つのフェーズに分かれて動いてきた。前中計達成の助走として FY2024/3 通期で営業利益 1,324 百万円・EBITDA 1,517 百万円のピークを付けた局面では、最高株価 2,443 円(分割前)まで上値を試した一方、FY2025/3 は ULURU Sustainable Growth 初年度として人的資本中心の成長投資を集中させ、営業利益 763 百万円・EBITDA 1,003 百万円へ平常運行に戻したことで、最高 1,733 円・最低 1,008 円のレンジに調整した。株主総利回りは FY2025/3 期末時点で 298.4%(配当込み TOPIX 214.9% を 84pt 上回る)であり、業績ボラを抱えながらも長期では市場平均を明確に上回ってきた銘柄である。
直近 1 年の color として押さえるべき変化は 3 つある。第一に、2025 年 5 月 14 日の累進配当宣言(配当性向 15% 以上を目安)と、同年 8 月 14 日決議の 1:4 株式分割(効力発生日 2025/10/1、分割後発行済株式総数 27,701,600 株)により、流動性と個人投資家のエントリ単価が大きく整理された。第二に、2025 年 9 月の経営体制刷新(CEO/COO 分離、現 CFO 内丸氏主導)と、2026 年 3 月の月次 NJSS 開示で MRR 319,651 千円・前年同月比 +16.1% を確認したことで、業績の見通しと開示頻度に対する市場の信頼が再構築されている。第三に、FY2026/3 第 3 四半期累計で営業利益 +46.3%・親会社株主帰属純利益 +79.3% という上方修正を伴う再加速が示され、株式が「業績ボラ銘柄」というラベルから外れる初動が起き始めている。直近 12 ヶ月平均(LTM)ベースの PER は 13.84 倍と過去 2 年で最も低水準にあり、利益の戻りに対して株価がまだ追いついていない。
6-2. バリュエーション指標の解体
FY2025/3 通期実績ベースのバリュエーションは、PER 20.85 倍、EV/EBITDA 6.28 倍、PBR 3.81 倍、PSR 1.72 倍である(時価総額 9,557 百万円、企業価値 8,281 百万円)。これを LTM(FY2025/12 末)に巻き直すと、PER は 13.84 倍、EV/EBITDA は 4.68 倍、PBR は 2.72 倍まで切り下がる。今期会社予想ベースで再計算すると PER は 17.16 倍、EV/EBITDA は 5.27 倍となり、ROE は FY2025/3 実績 15.7%、LTM ベース 21.6% である。すなわち市場は「FY2025/3 単体の見え方では適正、利益再加速を織り込み始めた LTM ベースでは割安寄り、会社予想(保守的下限)を素直に取れば中庸」というグラデーションで値付けしている。
3 つのマルチプルを独立に読むと、PER は規模ディスカウント(時価総額 100 億円前後・グロース小型)と、SaaS とアウトソーシングのハイブリッドで業種ラベルが定まりにくいことによる構造的な低水準という 2 成分が見える。PER の解消条件は、SaaS 合算 ARR の絶対額(FY2026/3 3Q 末 56 億円超)が NJSS 単独依存ではなく fondesk・えんフォトの第 2・第 3 柱を伴って積み上がっていく事実が、四半期ごとに明示開示で確認されることである。EV/EBITDA については、ネットキャッシュ 32〜36 億円の厚みで EV が時価総額より小さく、機械的にマルチプルが低く出るバイアスがある。横浜綜合写真取得に伴う長期借入 505 百万円の積み増しでも依然ネットキャッシュ・ポジションを維持しており、この EV ディスカウントは構造的に続く。PBR は ROE 15〜21% に対する妥当域で、ROE が中計が想定する高水準(FY2024/3 の 29.4% は前中計達成期の特殊値)を平常運行で何 % に落ち着かせるかが決まれば、PBR レンジは自ずと収束する。総じて、うるるの倍率は「アウトソーシング業界中央値(PER 20.98 倍 / EV/EBITDA 6.64 倍)に概ね近い」という定量的観察と、「SaaS 比率 73.6% を持つ会社としては安い」という定性的観察が同居する位置にある。
6-3. Opportunity(評価が一段切り上がる条件)
第一の Opportunity は、自治体 DX 領域での TAM レバレッジである。NJSS が捕捉してきた民間入札マーケットは年 25 兆円規模だが、うるるは 2024 年以降、GoSTEP(行政電子化支援)・調達インフォ(自治体向け調達情報基盤)・ULURU × 自治体 DX の枠組みで、需要側である行政側へ事業機会を拡張している。会社推計では自治体 DX 領域で年 2.4 兆円規模の付加価値創出機会があり、これは民間入札 25 兆円とは別の TAM として上乗せされる。市場が同社を「入札情報屋」ではなく「公共調達周辺の DX プラットフォーム」と再定義し始めれば、PER のテック株並みプレミアム(業界平均 31.96 倍水準)への接近余地が出る。確認すべきは、GoSTEP・調達インフォの自治体導入件数と、四半期セグメント開示で nSearch を含む NJSS 周辺の有料契約件数(FY2026/3 3Q 末で nSearch 単独 772 件)の継続的な積み上がりである。
第二は、fondesk と fondesk IVR / IT を単独 SaaS として再評価する余地である。fondesk は有料契約件数 6,094 件(FY2026/3 3Q 末)、ARR 1,132 百万円、解約率 12 ヶ月平均 1.1% という SaaS として優秀な KPI を持ちながら、現状はうるる連結内で NJSS の影に隠れている。マス広告費の戻し局面で EBITDA は FY2025/3 166 百万円から FY2026/3 3Q 累計 95 百万円へ一旦調整しているが、fondesk IVR といった派生プロダクトを含めて単体 SaaS として時価評価可能になれば、SaaS マルチプルの第 2 の柱が立ち、NJSS 一極依存ディスカウントの直接的な解消につながる。中期で見るのは「fondesk セグメント単体の EBITDA マージン回復」と、fondesk IVR の月次新規契約件数の開示頻度向上である。
第三は、BPaaS(Business Process as a Service)への BPO 再定義である。同社は祖業の BPO を「他社 SaaS の裏側を運用するチーム」として再構築しており、FY2026/3 3Q 累計の BPO セグメント利益は前年同期比 +429.7% という極端な変化率を示した。これは単なる人件費勝負の BPO ではなく、SaaS の前後工程(オンボーディング、データ入力、運用監視)を有料化したリカーリング寄りの収益が育ち始めている兆しである。BPaaS は売上規模ではまだ NJSS の半分未満だが、利益寄与の角度(前年同期比 +429.7%)と SaaS 比率 75.5%(FY2026/3 3Q)への押し上げ寄与が四半期で確認できれば、BPO 部分のマルチプルが「人材派遣的(PER 一桁台)」から「業務運用 SaaS 的」へ書き換わる余地が残る。
6-4. Anti-thesis(リスク監視点)
第一のリスクは、NJSS 解約率の反転である。NJSS の 12 ヶ月平均解約率は FY2026/3 3Q 末で 1.44% と SaaS 標準で見ても優秀な水準を維持しているが、ARPU 単価引き上げ政策の本格化(FY2025/3 第 4 四半期以降、FY2026/3 3Q 末 ARPU は 1,302 円)で値上げ起因の解約が後追いで出る可能性は否定できない。仮に解約率が SaaS 中央値水準(2% 台)に跳ねれば、LTV = ARPU × 1/解約率 × 粗利率 の式から LTV が 30% 程度毀損する。FY2026/3 3Q 末の LTV 2,492 千円が 1,700 千円台へ後退する計算になり、SaaS 比率の質的評価が下方修正される。四半期で追うべきは、月次 NJSS 開示の MRR 前年同期比成長率(直近 +16.1%)と、決算短信内の解約率 12 ヶ月平均値である。
第二は、フォト事業の長期赤字と横浜綜合写真統合の遅延リスクである。フォト事業(えんフォト・OurPhoto・横浜綜合写真)の合算 EBITDA は FY2024/3 に 69 百万円の黒字を一度確保したものの、FY2025/3 は -43 百万円、FY2026/3 3Q 累計は -73 百万円と赤字が継続している。横浜綜合写真の取得(FY2026/3 第 2 四半期に連結化)でのれんは 181 → 309 百万円(128 百万円増)に積み上がっており、統合効果が出ないままセグメント赤字が続けば、のれん減損の可能性が生じる。ここはセグメント利益の絶対額そのものよりも、四半期ごとに「フォト事業の損益分岐点に何 Q で到達するか」というマイルストーンが会社側から開示されるかを見る局面である。
第三は、東証グロース市場改革(2030 年に向けた段階的移行、上場 5 年経過後の時価総額 100 億円基準等)への対応不確実性である。うるるは 2017 年 3 月マザーズ上場・2022 年 4 月グロース移行という経歴で、改革ルールが確定する局面で時価総額 100 億円前後の境界線上に位置する。1:4 株式分割と株主優待維持で個人投資家層の取り込みは進んでいるが、機関投資家のカバレッジが薄い構造は変わっておらず、改革移行期の流動性低下や指数除外リスクが完全には払拭されていない。投資家として確認するのは、四半期ごとの 1 日平均出来高、IR 説明会の開催頻度、機関投資家向け開示資料の英文化進捗である。
6-5. Peer 比較
Peer は、東証アウトソーシングサービス業界(小分類)に属する 38 社プールから、ビジネスモデルの類似度を優先して 5 社選定した。エフアンドエム(4771)は中小企業向け業界特化 SaaS と BPO を併走させる成熟版、バリュー HR(6078)は健康管理ドメインのバーティカル SaaS+BPO、ビーウィズ(9216)は人力リソース型 BPO+SaaS の大型化された参照点、メンタルヘルステクノロジーズ(9218)はうるると規模感の近い小型バーティカル SaaS+BPO、ユナイトアンドグロウ(4486)は中小企業向け IT 人材シェアリング(労働供給型プラットフォーム)として CGS との対比軸を担う。大型 BPO・人材派遣(トランス・コスモス、パソナグループ等)は規模が桁違いでモデル比較が歪むため意図的に外している。
| 社名 | コード | 売上高(百万円) | 当期純利益率 | 売上高増加率 | 時価総額(百万円) | PER(倍) | EV/EBITDA(倍) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| うるる | 3979 | 6,701 | 6.8% | 12.8% | 9,557 | 20.85 | 6.28 |
| エフアンドエム | 4771 | 17,066 | 10.6% | 14.8% | 34,163 | 17.73 | 6.03 |
| バリューHR | 6078 | 10,068 | 6.2% | 20.2% | 40,246 | 62.38 | 29.22 |
| ビーウィズ | 9216 | 36,424 | 1.2% | -4.8% | 26,877 | 59.33 | 14.16 |
| メンタルヘルステクノロジーズ | 9218 | 6,435 | 4.0% | 25.3% | 7,961 | 31.22 | 12.30 |
| ユナイトアンドグロウ | 4486 | 3,515 | 11.7% | 18.5% | 5,455 | 13.18 | 3.75 |
| 業界中央値 | — | 8,827 | 3.7% | 7.3% | 8,041 | 20.98 | 6.64 |
| 業界平均値 | — | 40,899 | 5.0% | 6.1% | 29,431 | 31.96 | 8.14 |
出所:各社開示資料・株価データより AENTRO Research 作成
注:バリューHR(PER 62.38 倍 / EV/EBITDA 29.22 倍)とビーウィズ(PER 59.33 倍 / EV/EBITDA 14.16 倍)は EBITDA 水準が低位で機械的にマルチプルが膨らんでおり、水準比較の参考としては割り引いて読む。業界平均値も両社の影響を受け中央値より高位に振れている。
この表が示すのは、うるるが PER 20.85 倍・EV/EBITDA 6.28 倍と業界中央値(PER 20.98 倍 / EV/EBITDA 6.64 倍)にほぼ重なる位置にいる一方、ビジネスモデル類似度の高いエフアンドエム(PER 17.73 倍 / EV/EBITDA 6.03 倍)とは PER でわずかに上、EV/EBITDA でほぼ同水準という関係である。両社は売上規模・SaaS+BPO 構造・累進的な株主還元という点で似通うが、エフアンドエムが既に成熟期収益(純利益率 10.6%)に入っている分、市場は「うるるはまだ平常運行への戻り途上」というディスカウントを残している。一方、急成長中のメンタルヘルステクノロジーズ(売上高増加率 25.3% / PER 31.22 倍)と比べると、うるるは成長率(12.8%)でやや劣後する代わりに PER で 10pt 近く割安に置かれており、再加速(FY2026/3 3Q 累計の純利益 +79.3%)が続けば PER ギャップの縮小余地がある。総じて、Peer 比較から見えるうるるの位置は「業界中央値水準のマルチプルだが、SaaS 比率 73.6% と CGS の再現性を織り込み切ってはいない、再評価のリザーブを残した銘柄」である。
6-6. 注目 KPI とカタリスト
本レポートは No Rating / No Target Price の前提で書かれており、株価の方向性を断定するものではない。代わりに、うるるの再評価が進むか後退するかを四半期で判定するための KPI を 4 点に整理する。第一は NJSS の解約率(12 ヶ月平均、現状 1.44%)と MRR 前年同月比成長率(直近 +16.1%)。月次 NJSS 開示で公表されており、SaaS 比率の質を最も早く映す体温計である。第二は SaaS 合算 ARR 成長率(FY2025/3 期末 5,143 百万円 → FY2026/3 3Q 末 5,619 百万円、+9.3%)。NJSS 単独ではなく fondesk・えんフォトを含めた 3 本足での積み上がりが Opportunity 第一・第二の前提条件となる。第三はフォト事業の損益分岐点到達時期。横浜綜合写真の連結化後、四半期セグメント EBITDA がいつ黒字化するか、会社側のマイルストーン開示の更新頻度を見る。第四は累進配当の継続。FY2026/3 期末配当は分割後 3 円(配当性向 15.1% 下限ベース)で予告されており、減配がない年度を積み重ねるごとに配当主軸の個人投資家層が定着していく。
カタリストとしては、(1) 月次 NJSS 開示(毎月第 2 営業日前後)、(2) 四半期決算(次回は FY2026/3 通期、2026 年 5 月予定)、(3) ULURU IMPACT BASE のマイノリティ出資バジェット 5 億円の使途開示、(4) 横浜綜合写真の統合進捗開示、(5) 株主総会(2026 年 6 月予定)の 5 つを順次追う。とりわけ FY2026/3 通期決算では、上方修正後の EBITDA 11〜12 億円レンジでの着地と、FY2027/3 ガイダンス(中長期 CAGR 20%+ 軌道の 2 年目)の提示が、業績ボラ銘柄から持続成長銘柄への評価軸転換を確定させる節目となる。
うるるは、表面的なマルチプル(PER 13〜17 倍 / EV/EBITDA 5 倍前後 / PBR 2.7〜3.8 倍)でアウトソーシング業界中央値に紛れて見えるが、本レポートの第 1 章から積み上げてきた角度で読み直せば、これは「BPO 屋」ではなく「労働供給インフラ × バーティカル SaaS の量産企業」である。クラウドワーカー約 49 万人(2025 年 12 月末、シュフティ登録)という労働供給側の資産と、NJSS・fondesk・えんフォト・nSearch という需要側のバーティカル SaaS を同じアーキテクチャで横並びに生産する CGS モデルは、業界中央値で測ろうとした瞬間に取りこぼされる質的差分を抱えている。投資家がここからの 4 四半期で確認するのは、その質的差分が SaaS ARR・解約率・セグメント利益の各時系列に着実に刻まれていくかどうかである。
7. Appendix
7-1. 損益計算書 主要科目の推移
過去 5 期実績(FY2021/3〜FY2025/3)と FY2026/3 通期会社予想を並置する。FY2024/3 のピークから FY2025/3 で平常運行に戻し、FY2026/3 で再加速する利益サイクルが視覚化される。
単位:百万円(EPS は円。1 株当たり当期純利益は 2025/10/1 付 1:4 株式分割考慮後)
| 科目 | FY2021/3 | FY2022/3 | FY2023/3 | FY2024/3 | FY2025/3 | FY2026/3E |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,220 | 4,029 | 4,862 | 5,938 | 6,701 | 7,710 |
| 売上原価 | — | — | 1,368 | 1,689 | 2,026 | — |
| 売上総利益 | — | — | 3,494 | 4,248 | 4,676 | — |
| 販管費 | — | — | 3,485 | 2,924 | 3,913 | — |
| 営業利益 | 153 | -245 | 9 | 1,324 | 763 | 820〜920 |
| 営業利益率 (%) | 4.7 | -6.1 | 0.2 | 22.3 | 11.4 | 10.6〜11.9 |
| EBITDA | — | — | 106 | 1,517 | 1,003 | 1,100〜1,200 |
| 経常利益 | 148 | -252 | 6 | 1,289 | 762 | 820〜920 |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 42 | -64 | -46 | 720 | 458 | 550〜600 |
| EPS(円, 分割考慮後) | 1.54 | -2.34 | -1.65 | 26.03 | 16.55 | 19.87〜21.68 |
出所:有価証券報告書および決算短信より AENTRO Research 作成
FY2021/3〜FY2023/3 はマザーズ上場後の中期経営計画期間で利益が振れたが、FY2024/3 は前中計の最終年として営業利益 1,324 百万円・EBITDA 1,517 百万円のピークを付けた。FY2025/3 はその反動と成長投資集中で利益が戻り、FY2026/3 は中長期 CAGR 20%+ 軌道の起点として営業利益 820〜920 百万円のレンジに上方修正されている。
7-2. 貸借対照表 主要科目の推移
FY2023/3 から FY2026/3 第 3 四半期末までの 4 時点で、契約負債(NJSS 前受金)と現預金の積み上がり、横浜綜合写真取得に伴う長期借入の発生を見る。
単位:百万円(自己資本比率は %、BPS は円・1:4 株式分割考慮後)
| 科目 | FY2023/3 | FY2024/3 | FY2025/3 | FY2026/3 3Q |
|---|---|---|---|---|
| 流動資産合計 | 2,931 | 4,367 | 4,259 | 5,002 |
| 現金及び預金 | 2,396 | 3,590 | 3,405 | 4,218 |
| 売掛金 | 343 | 613 | 580 | 401 |
| 固定資産合計 | 1,690 | 1,684 | 1,982 | 2,318 |
| うち、のれん | 434 | 226 | 181 | 309 |
| 総資産 | 4,621 | 6,051 | 6,241 | 7,320 |
| 流動負債合計 | 2,520 | 3,070 | 3,044 | 3,255 |
| うち、契約負債(NJSS 前受金中心) | 1,481 | 1,597 | 1,787 | 2,049 |
| 固定負債合計 | 13 | 169 | 168 | 599 |
| うち、長期借入金 | - | 158 | 118 | 505 |
| 純資産 | 2,089 | 2,812 | 3,028 | 3,465 |
| 自己資本比率 (%) | 45.2 | 46.5 | 48.5 | 47.3 |
| BPS(円, 分割考慮後) | 75.50 | 101.59 | 109.41 | 125.17 |
出所:有価証券報告書および決算短信より AENTRO Research 作成
契約負債は FY2023/3 1,481 百万円から FY2026/3 3Q 末 2,049 百万円へ 1.4 倍に拡大し、ストック型売上の前受け化が進んでいる。FY2026/3 3Q 末の長期借入 505 百万円増は横浜綜合写真の取得資金で、のれんも 181 → 309 百万円へ 128 百万円積み上がった。資本構造は自己資本比率 47% 台で安定しており、ネットキャッシュ・ポジションを維持している。
7-3. キャッシュ・フロー計算書 主要科目の推移
3 期推移で営業 CF・投資 CF・財務 CF と FCF・期末現金の関係を見る。
単位:百万円
| 科目 | FY2023/3 | FY2024/3 | FY2025/3 |
|---|---|---|---|
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | 329 | 1,475 | 652 |
| 投資活動によるキャッシュ・フロー | -695 | -441 | -553 |
| 財務活動によるキャッシュ・フロー | -43 | 160 | -284 |
| フリーキャッシュフロー(営業 + 投資) | -366 | 1,034 | 99 |
| 現金及び現金同等物 期末残高 | 2,396 | 3,590 | 3,405 |
出所:有価証券報告書より AENTRO Research 作成
注:FY2026/3 第 3 四半期累計の四半期キャッシュ・フロー計算書は作成されていないため、本表には含めない。
FCF は中計達成期の FY2024/3 にピークを付けた後、FY2025/3 は無形固定資産投資の積み上げで 99 百万円まで縮んだものの、現預金期末残高 3,405 百万円は実需に対し厚く、累進配当と機動的 M&A の併走に耐える水準にある。
7-4. 主要 KPI(事業別)
セグメント別の KPI を直近 5 期 + 直近四半期で展開する。NJSS 関連の FY2025/3 第 4 四半期数値は 2025 年 5 月 26 日付の訂正開示に基づく。SaaS 4 サービス(NJSS/nSearch/fondesk/えんフォト)の合算 ARR と SaaS 売上比率は会社開示の定義に従う。
7-4-1. 全社 SaaS 合算
単位:百万円・%
| 項目 | FY2022/3 | FY2023/3 | FY2024/3 | FY2025/3 | FY2026/3 3Q |
|---|---|---|---|---|---|
| SaaS 合算 ARR(NJSS + fondesk + えんフォト) | — | — | — | 5,143 | 5,619 |
| うち、NJSS(nSearch・GoSTEP 含む) | 2,127 | 2,471 | 2,875 | 3,302 | 3,681 |
| うち、fondesk | 486 | 720 | 844 | 995 | 1,132 |
| うち、えんフォト | 631 | — | — | — | 806 |
| SaaS 売上高比率(OurPhoto・YSS 含まず, %) | — | — | — | 73.6 | 75.5 |
出所:決算短信および決算説明資料より AENTRO Research 作成
SaaS 合算 ARR は FY2025/3 末 51 億円から FY2026/3 3Q 末 56 億円超へ 9% 拡大した。NJSS が約 3 分の 2 を占めるが、fondesk が 2025/12 末に 11 億円台、えんフォトが ARR 8 億円台に到達し、第 2・第 3 の SaaS 柱として育ってきている。
7-4-2. NJSS(nSearch・GoSTEP・入札 BPO 含む)
単位:百万円・件・円・%・千円
| 項目 | FY2022/3 | FY2023/3 | FY2024/3 | FY2025/3 | FY2026/3 3Q |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,995 | 2,384 | 2,874 | 3,245 | 2,753 |
| 売上総利益(FY2022/3 以降) | 1,105 | 1,212 | 1,500 | 1,833 | — |
| EBITDA | 702 | 940 | 1,581 | 1,546 | 1,417 |
| 期末 ARR | 2,127 | 2,471 | 2,875 | 3,302 | 3,681 |
| 有料契約件数(期末) | 4,704 | 5,722 | 6,567 | 7,073 | 7,275 |
| ARPU(円, 日割り) | 1,213 | 1,164 | 1,223 | 1,210 | 1,302 |
| 解約率(12 ヶ月平均, %) | 1.48 | 1.44 | 1.53 | 1.50 | 1.44 |
| LTV(千円) | 2,220 | 2,189 | 2,189 | 2,172 | 2,492 |
| 入札 BPO ARPU(円) | — | — | 72 | 81 | — |
| 入札 BPO LTV(千円) | — | — | 129 | 145 | — |
| nSearch 有料契約件数 | — | — | 565 | 682 | 772 |
| 従業員数(期末, 人) | 103 | 111 | 112 | 140 | 140 |
出所:決算短信および決算説明資料より AENTRO Research 作成
NJSS は有料契約件数を 5 年で 1.5 倍にしつつ、解約率 1.4〜1.5% 帯で踏みとどまり、ARPU 単価引き上げ政策が FY2025/3 第 4 四半期以降本格化したことで FY2026/3 3Q 末の LTV は 2,492 千円と最高水準に切り上がった。
7-4-3. fondesk
単位:百万円・件・円・%
| 項目 | FY2022/3 | FY2023/3 | FY2024/3 | FY2025/3 | FY2026/3 3Q |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 453 | 658 | 833 | 982 | 838 |
| EBITDA | -75 | -31 | 270 | 166 | 95 |
| 期末 ARR | 486 | 720 | 844 | 995 | 1,132 |
| 有料契約件数(期末) | 3,105 | 3,896 | 4,682 | 5,589 | 6,094 |
| ARPU(円, 月割り) | 12,920 | 15,056 | 15,274 | 14,810 | 15,184 |
| 解約率(12 ヶ月平均, %) | 1.9 | 1.5 | 1.3 | 1.2 | 1.1 |
| 従業員数(期末, 人) | 13 | 15 | 16 | 16 | — |
出所:決算短信および決算説明資料より AENTRO Research 作成
fondesk は契約件数を 4 年で約 2 倍にし、解約率を 2.9% → 1.1% へ 3 分の 1 に圧縮した。FY2025/3 はマス広告再加速で EBITDA が 166 百万円へ後退したが、ARR 1,132 百万円・契約件数 6,094 件と SaaS 単独の規模拡大は続いている。
7-4-4. フォト(えんフォト・OurPhoto・横浜綜合写真)
単位:百万円・園・円・件
| 項目 | FY2022/3 | FY2023/3 | FY2024/3 | FY2025/3 | FY2026/3 3Q |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高(フォト合計) | 463 | 571 | 725 | 836 | 699 |
| EBITDA(フォト合計) | -217 | -208 | 69 | -43 | -73 |
| えんフォト契約園数(期末) | 3,662 | 4,186 | 4,725 | 5,139 | 5,360 |
| えんフォト 園当たり売上高(円, Q4 値) | 32,347 | 34,882 | 45,397 | 47,661 | — |
| えんフォト ARR(期末) | 631 | — | — | — | 806 |
| OurPhoto 撮影件数(Q4 値) | 2,760 | 3,138 | 3,085 | 2,961 | — |
| 従業員数(期末, 人) | 31 | 36 | 34 | 46 | — |
出所:決算短信および決算説明資料より AENTRO Research 作成
えんフォトの契約園数は 5,360 園に到達し、園当たり売上高も 4 万円台後半で推移している。一方でフォト合算 EBITDA は FY2024/3 の 69 百万円黒字から FY2025/3 -43 百万円・FY2026/3 3Q 累計 -73 百万円と再び赤字化しており、横浜綜合写真の取得(FY2026/3 第 2 四半期に連結化、のれん 168 百万円増)と統合費用が利益を圧迫する局面が続く。
7-4-5. BPO
単位:百万円
| 項目 | FY2022/3 | FY2023/3 | FY2024/3 | FY2025/3 | FY2026/3 3Q |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,079 | 1,214 | 1,476 | 1,615 | 1,088 |
| EBITDA | 47 | 61 | 241 | 210 | 116 |
| 従業員数(期末, 人) | 117 | 132 | 148 | 197 | — |
出所:決算短信および決算説明資料より AENTRO Research 作成
BPO は祖業ながら、SaaS の裏側を運用するチーム(BPaaS)として再定義され、FY2025/3 売上 1,615 百万円・FY2026/3 3Q 累計セグメント利益は前年同期比 +429.7% と高い変化率で伸びている。リカーリング売上比率は会社未開示。
7-4-6. クラウドソーシング(シュフティ)
単位:百万円
| 項目 | FY2022/3 | FY2023/3 | FY2024/3 | FY2025/3 | FY2026/3 3Q |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 29 | 26 | 25 | 24 | 17 |
| EBITDA | -29 | -13 | -9 | -7 | -3 |
| 登録クラウドワーカー数(万人, 期中時点) | — | — | — | — | 49 |
| 従業員数(期末, 人) | 6 | 6 | 5 | 4 | — |
出所:決算短信および決算説明資料より AENTRO Research 作成
シュフティ自体の売上は微少だが、登録クラウドワーカー約 49 万人(2025/12 末時点)が CGS 全 4 サービスの労働供給インフラとして機能している点が事業価値の源泉である。
7-4-7. 会社全体(株主還元)
単位:円・%
| 項目 | FY2024/3 | FY2025/3 | FY2026/3E |
|---|---|---|---|
| 1 株当たり配当金(分割考慮後, 円) | 8.75 | 2.50 | 3.00 |
| 1 株当たり配当金(実額, 円) | 35.00 | 10.00 | 12.00 |
| 配当性向(%) | 33.6 | 15.1 | 15.1(下限値ベース) |
| 株主還元方針 | 中計達成記念の特別配当 | 普通配当開始 | 累進配当 + 1:4 株式分割 + 株主優待継続 |
出所:決算短信および会社開示資料より AENTRO Research 作成
FY2025/3 から普通配当 10 円を開始し、2025 年 5 月の累進配当宣言、同年 8 月の 1:4 株式分割と株主優待維持、FY2026/3 第 3 四半期発表での増配修正(配当性向下限 15.1%)と、株主還元軸が一気に整備された。
7-5. 株主構成・株式情報
7-5-1. 大株主(2025 年 3 月 31 日現在、1:4 分割前)
| 順位 | 氏名又は名称 | 所有株式数(株) | 発行済株式に対する割合(%) |
|---|---|---|---|
| 1 | 星 知也 | 1,209,400 | 17.48 |
| 2 | 株式会社エアーズロック | 660,000 | 9.54 |
| 3 | 株式会社 UH Partners 3 | 529,200 | 7.65 |
| 4 | 光通信株式会社 | 525,000 | 7.59 |
| 5 | 株式会社 UH5 | 518,900 | 7.50 |
| 6 | 株式会社エスアイエル | 441,300 | 6.38 |
| 7 | 桶山 雄平 | 381,400 | 5.51 |
| 8 | 長屋 洋介 | 192,300 | 2.78 |
| 9 | 五味 大輔 | 190,000 | 2.75 |
| 10 | 日本生命保険相互会社 | 190,000 | 2.75 |
| 上位 10 名 計 | 4,837,500 | 69.91 |
出所:有価証券報告書より AENTRO Research 作成
注:所有株式数は 2025 年 9 月 30 日基準日の 1:4 株式分割前の数値。分割後は各株主の所有株式数が 4 倍となる(分割後発行済株式総数 27,701,600 株)。
7-5-2. 株式情報・株式分割・配当方針・株主優待
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 上場市場 | 東京証券取引所 グロース市場(2017 年 3 月マザーズ上場 → 2022 年 4 月グロース移行) |
| 決算期 | 3 月期 |
| 発行済株式総数(2026/3/31 想定) | 27,701,600 株(うち自己株式 24,136 株、2025/10/1 1:4 株式分割後) |
| 株式分割 | 2025/10/1 効力発生日、普通株式 1 株を 4 株に分割。基準日 2025/9/30 |
| 配当方針 | 配当性向 15% 以上を目安とした累進配当(2025/5/14 取締役会決議、2026/3 期から適用)。減配は原則として行わない |
| 1 株当たり配当金(FY2026/3 予想, 分割後) | 期末 3 円(年間 3 円、配当性向 15.1%・下限値ベース) |
| 株主優待 | 毎年 3 月 31 日基準。1 単元(100 株)以上保有株主に「OurPhoto」3,000 円割引クーポン 1 枚を贈呈 |
出所:有価証券報告書および会社開示資料より AENTRO Research 作成
筆頭株主の星社長 17.48% を含む創業経営陣・関連会社が約 50% を保有し、光通信グループ(UH Partners 3 / UH5 / 光通信他2社合算で約 31.84%(2026年3月時点変更報告書より抜粋))が次いで主要株主層を形成している。1:4 株式分割と株主優待維持、累進配当の組み合わせで個人投資家層の取り込みが資本政策の柱に置かれた。
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